特別地域・中山間地域の訪問看護加算とは?【介護保険】

介護保険の訪問看護には、離島や過疎地域、豪雪地帯など地理的に不利な地域での事業運営を、経営面から後押しするための加算が3種類用意されています。それぞれ対象地域と加算率が異なり、組み合わせ方によっては複数の加算を同時に算定できる場合もあるため、正しい理解が経営に直結します。

この記事では、特別地域訪問看護加算・中山間地域等小規模事業所加算・中山間地域等居住者提供加算の対象地域・加算率・算定要件を、順を追って整理しながら解説します。

この記事でわかること
  • 3つの加算の全体像と加算率の違い
  • それぞれの対象地域
  • 小規模事業所の定義(月延訪問回数の基準)
  • 複数加算を組み合わせて算定できるケース
  • 加算の対象となるサービス・ならないサービス

3つの加算の全体像

介護保険の訪問看護には、地理的な条件に応じて次の3つの加算が設けられています。いずれも「規定された地域に訪問看護事業所が所在する場合」に算定できる加算であり、加算率・対象地域・算定条件が三者三様に設計されています。

加算名加算率
特別地域訪問看護加算所定単位数の15%
中山間地域等小規模事業所加算所定単位数の10%
中山間地域等居住者提供加算所定単位数の5%

それぞれの対象地域

3つの加算は対象地域が異なります。それぞれ関連する法令に基づいて指定地域が定められており、自事業所が該当するかどうかは名称だけで判断せず、必ず個別に確認する必要があります。開業準備の段階でこれらの加算を織り込んで収支シミュレーションを行っておくと、地理的に不利な条件下でも経営を安定させやすくなります。

特別地域訪問看護加算の対象地域

  • 離島振興対策実施地域(離島振興法)
  • 奄美群島
  • 振興山村(山村振興法指定地域)
  • 小笠原諸島
  • 沖縄の離島(沖縄振興特別措置法)
  • 豪雪地帯・特別豪雪地帯・辺地・過疎地域等のうち、人口密度が希薄(116人/平方キロメートル未満等)かつ交通が不便な地域

中山間地域等小規模事業所加算の対象地域

特別地域訪問看護加算の対象地域を除いた、次の地域が該当します。

  • 豪雪地帯・特別豪雪地帯(豪雪地帯対策特別措置法)
  • 辺地(辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律)
  • 半島振興対策実施地域(半島振興法)
  • 特定農山村地域(特定農山村法)
  • 過疎地域(過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法)

中山間地域等居住者提供加算の対象地域

特別地域訪問看護加算の対象地域と、中山間地域等小規模事業所加算の対象地域の両方が該当します。

小規模事業所の定義

中山間地域等小規模事業所加算を算定するには、次の基準を満たす「小規模事業所」に該当している必要があります。

  • 要介護者向け訪問看護:月あたりの延訪問回数が100回以下
  • 要支援者向け訪問看護:月あたりの延訪問回数が5回以下
注意

延訪問回数は前年度(3月を除く)の月平均値で判定する仕組みになっています。前年度実績が6か月未満の新規事業所は、直近3か月分の平均値で判定します。回数が基準を超えた場合は、速やかに都道府県知事へ届出を行い、利用者への事前説明・同意も忘れずに行う必要があります。逆に基準を下回る状態が続く見込みが立った場合も、届出内容の見直しが必要になることがあるため、増減どちらの方向であっても、毎月の実績値を記録として残しておくことが望ましいです。

看護師 上妻
看護師 上妻

事業所の訪問件数が増えて小規模事業所の基準を超えそうな場合は、届出漏れがないよう毎月の延訪問回数を継続的にモニタリングしておくことをおすすめします。

複数加算を組み合わせて算定できるケース

対象地域に所在する事業所が、通常のサービス提供地域を越えて中山間地域等にサービスを提供する場合、複数の加算を組み合わせて算定できることがあります。この組み合わせ算定は見落とされやすく、本来より低い加算率でしか算定していないケースも見受けられるため、通常のサービス提供地域の範囲を改めて確認しておくことをおすすめします。

  • 特別地域加算対象地域の事業所が、通常実施地域外の中山間地域にサービス提供する場合:特別地域加算+中山間地域等居住者提供加算
  • 中山間地域等小規模事業所加算対象地域の事業所も、同様に加算の組み合わせが可能
注意

サテライト事業所がある場合、その拠点からのサービス提供分は本体事業所とは別に管理する必要があります。本体事業所は対象地域でも、サテライト事業所が対象地域外にある場合(あるいはその逆)は、それぞれの拠点ごとに算定の可否を確認しなければなりません。また、中山間地域等居住者提供加算を算定する場合は、交通費の支払を利用者から受けることができません。

加算の対象となるサービス・ならないサービス

3つの加算はいずれも、基本単位数や一部の加算に対して算定します。次の加算は対象外です。

  • 緊急時訪問看護加算
  • 特別管理加算
  • ターミナルケア加算
  • 初回加算
  • 退院時共同指導加算
  • 看護・介護職員連携強化加算
  • 看護体制強化加算
  • サービス提供体制強化加算

一方、基本単位数・夜間早朝/深夜加算・複数名訪問加算・長時間訪問看護加算は、特別地域訪問看護加算・中山間地域等小規模事業所加算の対象になります。中山間地域等居住者提供加算は、これらに加えて特別地域訪問看護加算・中山間地域等小規模事業所加算そのものも対象に含まれます。請求ソフトの設定を行う際は、対象・対象外のリストを見比べながら、加算漏れがないかを丁寧に確認しておくとよいでしょう。

なぜ加算率が3段階に分かれているのか

3つの加算の加算率(15%・10%・5%)は、対象地域における移動・運営の困難さの度合いに応じて段階的に設定されていると考えられます。特別地域訪問看護加算の対象地域(離島・振興山村等)は、最も交通アクセスが限られる地域が中心であるため加算率が高く設定され、中山間地域等小規模事業所加算の対象地域(豪雪地帯・辺地等)はそれに次ぐ困難度として10%、居住者提供加算はさらに広い範囲を対象に、通常のサービス提供地域を越えた分の負担を補う位置づけとして5%が設定されている、という整理で理解すると全体像がつかみやすくなります。

算定前に確認したいチェックリスト

  • 自事業所の所在地が3つの加算のいずれかの対象地域に該当するか確認したか
  • 小規模事業所加算を算定する場合、月延訪問回数が基準内に収まっているか
  • 複数加算を組み合わせて算定できるケースに該当しないか確認したか
  • 中山間地域等居住者提供加算を算定する利用者から交通費を受け取っていないか
  • 加算の対象外となるサービス(緊急時訪問看護加算等)を誤って含めていないか
  • サテライト事業所がある場合、本体事業所と拠点ごとに対象地域の該当可否を分けて確認しているか
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医療保険版の特別地域訪問看護加算と比較したい方はこちら。

特別地域訪問看護加算とは?【医療保険】要件を解説を読む

都道府県への確認が重要な理由

対象地域の指定は、離島振興法・山村振興法・過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法など、複数の法令の指定地域に基づいています。こうした指定地域は、法令改正や地域の実情に応じて見直されることがあるため、開業時点で確認した情報をそのまま使い続けるのではなく、定期的に最新の指定状況を確認しておくことが望ましいとされています。特に事業拡大やエリア変更のタイミングは、確認を怠りやすい時期でもあります。

多くの都道府県は、介護保険の特別地域加算・中山間地域等加算の対象地域一覧を公式サイトで公表しています。自事業所の所在地・サービス提供エリアが該当するかどうかは、こうした都道府県の公式情報を優先的に確認することをおすすめします。

複数の都道府県にまたがってサービスを提供する場合

訪問看護ステーションのサービス提供エリアが複数の都道府県にまたがる場合、それぞれの都道府県が公表する対象地域一覧を個別に確認する必要があります。同じ「過疎地域」という名称でも、都道府県ごとに指定される市町村・地区が異なるため、エリアごとの確認作業を怠らないようにしましょう。訪問エリアを拡大する際にも、新たに加わった市町村が対象地域に含まれるかどうかを、その都度チェックしておくことが重要です。担当者の異動や業務引き継ぎのタイミングで確認漏れが起きやすいポイントでもあるため、対象地域の一覧や確認手順を事業所内のマニュアルに残しておくと安心です。

よくある質問

特別地域訪問看護加算と中山間地域等居住者提供加算は同時に算定できますか?

特別地域加算対象地域の事業所が、通常実施地域外の中山間地域にサービスを提供する場合は、両方の加算を組み合わせて算定できます。

月の途中で利用者が対象地域から転居した場合はどうなりますか?

該当期間にサービスを提供した分のみが算定対象になります。転居日を境に対象・対象外の期間を区別して算定する必要があります。

中山間地域等居住者提供加算を算定する利用者から交通費を受け取れますか?

受け取れません。この加算を算定する場合、利用者から交通費の支払を受けることはできない仕組みになっています。

対象地域の指定は変わることがありますか?

対象地域は離島振興法・山村振興法等の法令の指定地域に基づいており、法令改正や地域の実情に応じて見直されることがあります。定期的に都道府県の公式情報で最新の指定状況を確認することが望ましいです。

出典・参考

※自事業所の対象地域該当可否は所轄の都道府県・市町村にご確認ください。

まとめ|3つの加算の違いと組み合わせを正しく理解しよう

特別地域訪問看護加算・中山間地域等小規模事業所加算・中山間地域等居住者提供加算は、対象地域と加算率がそれぞれ異なります。自事業所の所在地・サービス提供エリアを踏まえて、どの加算に該当するかを正しく整理しておきましょう。3つの加算を正しく理解し、組み合わせて算定できる場面を見落とさないことが、地理的に不利な地域で訪問看護を安定的に継続していくための経営基盤づくりにつながります。制度の見直しに合わせて対象地域や加算率が変わる可能性もあるため、開業後も定期的に情報を更新し続ける姿勢を持っておくとよいでしょう。

この記事のまとめ
  • 特別地域訪問看護加算(15%)・中山間地域等小規模事業所加算(10%)・中山間地域等居住者提供加算(5%)の3種類がある
  • 対象地域はそれぞれ異なり、居住者提供加算は他2つの対象地域を合わせたもの
  • 小規模事業所加算は月延訪問回数100回以下(要支援者は5回以下)が条件
  • 通常実施地域外へのサービス提供時は、複数の加算を組み合わせて算定できる場合がある
  • 中山間地域等居住者提供加算を算定する場合は交通費を受け取れない

医療保険版の特別地域訪問看護加算、サービス提供体制強化加算についても、関連記事をあわせてご確認ください。加算の届出・算定は自事業所だけで完結せず、都道府県・地方厚生局への確認とセットで進めることが、後々のトラブルを避ける近道になります。

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上妻 裕弥看護師/MBA取得
株式会社ビジケア代表取締役/看護師・MBA取得。これまで200社以上の訪問看護事業所へ経営コンサルティング・BPOサービスを実施。経営者・管理者のサロン等も含めると500社を超える。単月黒字化から複数拠点展開、事業承継まで支援し、看護師の視点で「続く経営」をつくる。別法人にて自身でも全国に訪問看護ステーション展開している。