このような疑問にお答えする記事です。
訪問看護の現場では、利用者さんの容体が急変した際に、迅速に救急車を呼ぶ判断が求められることがあります。
訪問看護師として、適切に対応するためには、事前の準備や知識が欠かせません。
本記事では、訪問看護で救急車を要請する際の方法や注意点について解説します。
- 訪問看護を始めたばかりの方
- 訪問中の救急車対応に不安がある方
このような方に是非読んでいただきたい記事です。
目次
救急車を要請する判断のポイント
まず、救急車を要請するべき状況を判断する際に重要なポイントを押さえましょう。
以下は、一般的に緊急性が高いとされる状況です。
- 意識がない場合
- 呼吸に異常がある場合
- 胸の痛みや、強い腹痛を訴える場合
- 痙攣が止まらない場合
- 出血が止まらない場合
- その他の急変
1つずつ解説します。
意識がない場合
利用者さんが呼びかけに反応しない、意識レベルが急に低下したとき。
意識がない場合は、失神や意識障害の可能性があり、原因は脳や心臓の血行障害など様々な可能性が考えられます。
1分以上意識消失が続く場合は、救急搬送を検討します。
一時的な失神で、すぐに回復した場合も主治医に報告し指示を仰ぎましょう。
呼吸に異常がある場合
息苦しさを訴えているときや、呼吸が非常に速い、または遅いとき。
チアノーゼが見られていて、改善しないとき。
意識がない場合と同様に、数分以上状況が続く場合は救急搬送を検討する必要があります。
胸の痛みや強い腹痛を訴える場合
胸の痛みや強い腹痛は、不整脈や、内臓の炎症、心筋梗塞や大動脈解離の可能性も考えられます。
顔色や痛みの程度、バイタルサインなどからアセスメントし、必要と判断した時は救急車を呼びます。
痙攣が止まらない場合
初めての痙攣や、5分以上痙攣が続くとき。
痙攣の強さや持続時間、意識状態によって救急搬送を検討します。
痙攣が止まっても、意識が戻らないときや呼吸に異常がある際は早急に医療機関への受診が必要です。
出血が止まらない場合
出血部位により止血方法は異なりますが、圧迫や止血の手当をしても出血が止まらない場合は救急搬送の検討が必要です。
その他の急変
発熱を伴う重篤な感染症の疑いや、急な麻痺や言語障害(脳卒中が疑われる場合)など。
普段と明らかに様子が違い、緊急で対応が必要だと感じたとき。
これらの状況では救急車を呼ぶこと検討する必要があります。
訪問看護師は現場でのアセスメント能力が求められ、適切な判断が利用者の命を守る鍵となります。
救急車を要請する手順
具体的に救急車を要請するときの手順を解説します。
- 主治医や訪問看護ステーション、家族に連絡
- 救急車を呼ぶ前に主治医、訪問看護ステーションの責任者、家族に連絡し、状況を共有します。
- ただし、緊急性が高い場合は先に救急車を呼び、後から連絡する形でも構いません。
- 119番通報
- 「119」に電話をかけ、以下の情報を正確に伝えます(作業しやすいように、スピーカーホンで電話を掛けることを推奨します)
- 住所(建物名、部屋番号も含む)
- 利用者さんの状態(意識の有無、呼吸の状態など)
- 症状が始まった時間や状況
- 持病や服用中の薬の情報(わかる範囲で)
- 「119」に電話をかけ、以下の情報を正確に伝えます(作業しやすいように、スピーカーホンで電話を掛けることを推奨します)
- 必要な物品を準備
- 利用者さんの医療情報やお薬手帳、健康保険証、診療情報提供書(ある場合)は救急隊員に渡せるよう準備します。
- バイタルサインや利用者さんの状態を簡単にメモしておくと役立ちます。
- 通報者の身元を確認されるため、訪問看護ステーションの名刺を渡すとスムーズです。
- 靴(靴を履かずに搬送されることが多いため、病院ではける靴を持参する)
- 救急車の誘導
- 建物が複雑な場合や夜間で分かりにくい場合には、可能であれば外で救急車を誘導する人を確保します。
- 現場保存と家族や関係者に連絡
- 利用者さんが明らかに死亡している場合や状況が不明瞭な場合、警察に連絡が必要です。無闇に現場を動かさず、状況をそのまま保つことが求められます。
- 救急搬送を終えた後に、状況をご家族や主治医、ケアマネージャーに報告をします。
適切な救急対応のために心がけること
救急搬送が必要な際に、適切に対応するためには、救急車を呼ぶ方法を理解しておく以外にも必要なことがあります。
適切な救急対応が出来るために心がけるポイントを説明します。
- 利用者さんや家族への説明
- 日頃からの主治医との連携
- 緊急性の過小評価を避ける
- 定期的なシュミレーションの実施
利用者さんや家族への説明
救急車を呼ぶ際には、利用者さん本人や家族に状況を説明し、了承を得ることが基本です。
ただし、利用者さんが意識不明の場合や緊急度が高い場合は、迅速な対応を優先します。
また、利用者さんによっては、緊急時も救急搬送をしないことを希望される人もいます。
訪問看護師は、利用者さんの病態や身体状況を把握し、状態変化の可能性を考えておく必要があります。
そして、もしそのような状況になった時はどうしたいか、どう対応して欲しいかを利用者さんや家族と日頃から相談しておくことが緊急時のスムーズな対応に繋がります。
日頃からの主治医との連携
日頃から利用者さんの主治医と、連絡を密にして緊急時の対応を共有しておきましょう。
緊急時や状態変化時に、必ず救急搬送をするわけではありません。
例えば、利用者さんが終末期を自宅で過ごすために訪問診療や訪問看護を利用している場合は、状態変化時も救急搬送は行わないことがあります。
訪問看護指示書には、緊急時の連絡先・不在時対応方法を記載する欄があります。
体調や状況の変化が予想される利用者さんの場合は、記載されている内容が現状と合っているかを確認し、状況の共有を日頃から行いましょう。
緊急性の過小評価を避ける
「大丈夫だろう」と判断するのではなく、少しでも危険だと感じたら救急車を呼ぶことを検討しましょう。
そして、1人で悩まずに主治医や訪問看護ステーションの管理者に相談しましょう。
訪問看護は、基本的に1人で訪問します。
目の前の利用者さんのその時の様子を直接観察できるのは、訪問している看護師だけです。
自分の違和感をないがしろにせず、冷静に状態を把握し、1人で判断できないことは躊躇せずに相談しましょう。
状況が改善する場合でも、主治医への報告をし、医療機関での診察を受けることをすすめます。
定期的なシミュレーションの実施
日頃からシミュレーションをしておくことで、いざという時にスムーズに対応することができます。
訪問看護ステーションで、緊急時の対応や救急搬送が必要になった際のシミュレーションを定期的に行いましょう。
体調や状況変化の可能性が高い利用者さんの情報をスタッフ同士で共有し、統一して救急時の対応が出来るようにしておくことも大切です。
日頃からの準備が安心に繋がる
訪問看護で救急車を要請するときの手順や注意点を解説しました。
訪問看護の現場で利用者さんの容体が急変した場合、救急車を迅速かつ的確に呼ぶことは、命を守るために非常に重要です。
この記事で紹介した手順や注意点を参考に、日頃から緊急時への備えをしておきましょう。
また、訪問看護チーム内で定期的に情報共有やシミュレーションを行うことも、救急対応力を高めることに繋がります。
さらに、利用者さんや家族、利用者さんを取り巻く関係者と緊急時の対応について、話し合い共通理解を深めておくことも重要です。
日頃からの準備と心構えが、大きな安心に繋がります。
この記事が、少しでも訪問看護師の皆さんのお役に立てたら嬉しいです。
訪問して利用者さんの容体が悪かったり、体調が急に悪くなったときは救急車を呼ぶこともあるんですよね。
経験がないから不安です。
救急車を呼ぶときの方法や注意することはありますか?