【事例も紹介】訪問看護でよくあるクレーム5選 

どんな業種や仕事でも、「お客さんからのクレームが全くない」ということはほぼありません。

訪問看護は利用者さんやそのご家族と密接に関わります。

人と人が関わるので、相性や意見の相違などもあり、利用者さんからクレームを頂くこともあります。

クレームは失敗やミスを指摘されたと感じるとマイナスの印象を受けてしまいます。

一方で、クレームに適切に対応をすることで、訪問看護師の成長や訪問看護ステーションの信頼の向上につながります。

私自身、訪問看護師になって5年が経ちますが、最近も新規の利用者さんとの関わりがうまくいかず訪問のたびに様々な指摘を受けることがありました。

落ち込むこともありましたが、良いきっかけと捉えて真摯に対応したところ、徐々に利用者さんの信頼を得て、今は気持ちに余裕をもって訪問を継続することができています。

訪問看護では、どのようなクレームを受けることが多いのでしょうか。

クレームの内容を知ることができれば、クレームを受けないような対応を心がけることもできます。

この記事では、訪問看護でよくあるクレームを具体的な事例を交えて解説します

ぜひ、最後まで読んでみて下さい。

 

訪問看護でよくあるクレーム5選

 

訪問看護でよくあるクレームを以下の5つに分けて紹介します。

 

  • 看護師の対応やコミュニケーションに不満がある
  • サービスの質と利用料金が適切でない
  • 訪問の予定時間に遅れる
  • 管理や事務手続きのミスがある
  • 訪問看護師同士の連携ができていない

 

1つずつ説明していきます。

 

看護師の対応やコミュニケーションに不満がある

訪問看護師にとって、コミュニケーションスキルはどの看護技術より大切です。

利用者さんの状態によっては、清潔ケアなどの看護技術を提供することよりも、コミュニケーションを通して利用者さんの状況を把握することや、日常生活上のアドバイスをすることがメインになることもあります。

そのため、訪問看護師の対応やコミュニケーションを、利用者さんが合わない、不足していると感じるとクレームにつながることがあります。

 

事例

訪問看護師Aさんは訪問看護に転職したばかりです。

利用者さんへのケアの内容を覚えることで精一杯で、緊張しやすい性格もあり余裕がない状況でした。

ある日、同じ利用者さんに訪問している別の看護師から、「利用者さんが、Aさんはこちらの話しをあまり聞いてくれない、もっと話を聞いて欲しいと言っていた。」

と伝えられました。

 

この事例では、Aさんに余裕がなく利用者さんと十分にコミュニケーションを取れていないことがクレームの原因でした。

Aさんは、気持ちに余裕をもって訪問にのぞむことができるようにケア手順の確認やイメージトレーニングを繰り返しました。

利用者さんには、緊張して余裕がなく言葉数が少なくなっていて、話を聞いていないと思わせてしまったことを説明し謝罪しました。

その後は積極的にコミュニケーションを取ることを心がけたことで、利用者さんとの関係が深まり信頼を得ることができました。

 

サービスの質と利用料金が見合っていない

 

利用者さんは訪問看護師が訪問に来て、ケアを提供することに対してお金を払っています。

そのため、訪問看護師が提供するケアが利用者さんの期待を下回るとクレームになる可能性があります。

 

事例

訪問看護師Bさんは、ストーマを装着している利用者さんを担当していました。

腹壁の状態や利用者さんの食生活など、様々な原因でストーマが剥がれやすく、訪問をしてストーマ交換をしても、次回訪問日までに剥がれてしまうことが続きました。

ある日利用者さんから「こんなにストーマが剥がれてしまうのは看護師のやり方がなっていないからだ。お金を払っているのにこれでは意味がない。」

と言われてしまいました。

 

Bさんは、現在のストーマの状況や看護師がアセスメントをしてストーマ交換の際に工夫していることを、利用者さんに説明をして理解を得ることができていませんでした。

そのため、訪問看護師の技術が不足していて訪問看護を受けていても状況が良くならず、料金と見合っていないと思われてしまいました。

Bさんは、利用者さんにストーマの状況やケアの際にアセスメントをして工夫している内容、病院のストーマ外来の看護師と連携をしていくことなどを説明し利用者さんの理解を得ることができました。

ストーマ外来の看護師からのアドバイスなどを受け、徐々にストーマが剥がれずに一定期間貼付していることができるようになりました。

利用者さん自身もストーマ管理に積極的に協力をしてくれるようになり、看護師と利用者さんと一緒にストーマ管理を継続することができています。

 

訪問の予定時間に遅れる

訪問看護では、基本的に決まった曜日の決まった時間に訪問をします。

利用者さんは、訪問看護のために時間を空けて看護師の訪問を待っています。

そのため、訪問の予定時刻に遅れることはクレームにつながります。

訪問時間を守ることは訪問看護の基本です

しかし、道路事情や天候、緊急訪問などの都合で、どうしても予定の訪問時間に間に合わないこともあります。

その際は、焦らずに電話などで連絡をして利用者さんの了承を得て下さい。

 

 

管理や事務手続きのミスがある

 

訪問看護ステーションの管理体制や利用料金の請求処理に不備があると、金銭的な問題が発生しクレームの原因になります。

訪問看護の料金は、介護保険や医療保険に基づいて定められており、利用者さんの介護度や状況、訪問時間などにより料金が異なります。

訪問実績の確認や請求業務は間違いや不足がないように注意して行う必要があります。

 

事例

訪問看護師Cさんは、膀胱留置カテーテルが挿入された利用者さんを担当していました。

膀胱留置カテーテル留置中の利用者さんに対しては、訪問看護師がカテーテル管理を行うことに特別管理管加算Ⅰという加算を請求することができます。

Cさんは、加算の条件を見落としていたため、カテーテルを初めて留置した月は加算を請求することができず、翌月から請求することになりました。

利用者さんに請求書を渡したところ、「先月までとお会計が違っているのはどうしてか。何も説明もないのに、加算というものが増えている。」と問い合わせがありました。

膀胱留置カテーテルの管理に対して、加算がついて料金が変更になっていることを説明し、理解してもらうことができました。

利用者さんからは、「お金に関することは気になるので、事前に教えて欲しかった。」と発言がありました。

 

こちらの事例では、請求に対する訪問看護師の知識不足や管理体制の不備があり、適切に加算を算定することができなかったこと、利用者さんに料金に対する適切な説明を事前に行わなかったことがクレームの原因でした。

1件1件の訪問が訪問看護ステーションの収入につながります。

そのため、請求に関わるスタッフだけでなく訪問看護師も料金に関して基本的な内容を理解していることが求められます。

利用者さんに請求する料金が変更になるときなどは、説明ができるようにしておくことが大切です。

 

訪問看護師同士の連携ができていない

訪問看護では、基本的に1人で利用者さんのお宅に訪問するため、訪問中に得た情報は関わる看護師全員に共有する必要があります。

訪問看護師間の連携が不足していると、看護師の訪問のたびに利用者さんが同じ説明をすることになり利用者さんの負担になります。

 

事例

1人の利用者さんのお宅に4人の看護師が訪問をしていました。

利用者さんは疾患により、発語ができないため、文字盤で会話をしていました。

訪問看護師Dさんが利用者さんから、「このケアはこういう風にやって欲しい」と言われた際に、「以前も別の看護師さんに同じことを言った。共有はしてもらえないのか」と言われました。

 

この事例は、1人の利用者さんに常勤や非常勤の看護師など複数の看護師が関わっていて、全員で情報共有ができていないことがクレームの原因でした。

その後は、訪問の度に言われたことや注意事項などを1か所にまとめて、全員が見ることができるようにしました。

また、定期的に利用者さんについてのミーテイングを行い、情報共有することで連携不足の解消に努めました。

利用さんにも、情報共有ができるように対策をしていることを説明し理解を得ました。

訪問時に、「先週訪問した看護師から、このように聞いています」など具体的に共有した内容を伝えることで、利用者さんからも信頼をして頂けるようになりました。

 

クレームは信頼関係の不足から生まれる

 

訪問看護でよくあるクレームを5つに分けて説明しました。

 

  • 看護師の対応やコミュニケーションに不満がある
  • サービスの質と利用料金が適切でない
  • 訪問の予定時間に遅れる
  • 管理や事務手続きのミスがある
  • 訪問看護師同士の連携ができていない

 

クレームの原因には様々なものがありますが、クレームが生じる根底には、利用者さんと訪問看護師の間の信頼関係不足が関係している場合があります。

訪問看護は、日々の関わりの中で信頼関係を積み重ねていくことが大切です。

信頼関係を構築することができていれば、利用者さんが訪問看護師の言動に違和感を感じたときや、要望があるときにその都度話をしたり、相談をしてもらうことができます。

逆に、信頼関係が築けていないとささいな違和感や不満を利用者さんが表出できず、結果として大きなクレームになってしまうことがあります。

信頼関係を築くためには、丁寧にコミュニケーションを取ることが大切です。

丁寧にコミュニケーションを取ることを心がけていれば、利用者さんの訪問看護への満足度やケアの充実にもつながります。

その結果、クレームの減少にもつながるでしょう。

また、クレームが発生したときも、利用者さんと真摯に向き合い対応することで解決に導くことができます。

この記事が、訪問看護師の皆さんが日々の業務を行う上での参考になりましたら幸いです。

 

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ABOUT US
清水 千夏ライター
東京都在住/看護師・保健師/ 卒業後大学病院9年勤務 その後、派遣看護師としてクリニックやデイサービス、訪問入浴などを経験。 現在は訪問看護ステーションの立ち上げメンバーとして奮闘中です。