透明文字盤の使い方とコツ!詳しく解説します

訪問看護師

透明文字盤を使っている利用者さんがいます。

なかなか透明文字盤の文字を読むことができないのですが、使い方のコツはありますか?

 

透明文字盤の使用方法で悩んでいる方はいないでしょうか。

透明文字盤は言葉でのコミュニケーションが難しい方が、視線やまばたきで意思を伝えるツールの1つです。

私は、訪問看護師になり筋萎縮性側索硬化症(ALS)の方に関わって、初めて透明文字盤を使用しました。

利用者さんと介護士さんが、透明文字盤を使ってコミュニケーションを取っている様子がとても楽しそうに見えましたが、自分がやってみると全く文字盤を読むことができませんでした。

透明文字盤に苦手意識を持ちましたが、読み方を学習しちょっとしたコツをつかむことで文字が格段に読みやすくなりました。

今は透明文字盤を読む難しさよりも、利用者さんとコミュニケーションを取ることができる楽しさを感じています。

この記事では、透明文字盤の読み方や、文字盤を使用する上で押さえておきたいポイントを詳しく解説しています。

透明文字盤を使ったことがない方や経験が浅い方、透明文字盤を使っているけれど苦手意識がある方にぜひ読んでいただきたいです。

 

透明文字盤とは

 

透明文字盤とは、50音が並んだ透明な板のことです。

筋萎縮性側索硬化症(以下ALSと表記)などの難治性神経・筋疾患で会話をすることが困難な方が使用する、視線や瞬きを利用して意思疎通をはかるためのツールです。

ALSは全身の骨格筋が徐々に萎縮し筋力が低下します。

構音障害や呼吸筋の易疲労・筋力低下、肺活量低下、声量低下をきたし、音声による意思疎通が徐々に困難になります。

筆談なども、腕の筋力低下に伴い難しくなります。

高度に筋力低下が進行した場合でも、眼球を動かす筋肉の動きは比較的保たれるため、透明文字盤は意思疎通の有効なツールです。

 

透明文字盤を使用する前に確認すること

透明文字盤を使ってコミュニケーションを試みる前に、確認しておきたいポイントがあります。

このポイントを押さえておくことで、文字の読み取りがよりスムーズにできます。

透明文字盤を使用する前に確認することは以下の4つです。

 

透明文字盤を使用する前に確認すること
  • 利用者さんの利き目を確認する
  • 透明文字盤の表裏の向きを確認する
  • 利用者さんの「はい」「いいえ」のサインを確認する
  • 体勢を整える

 

1つずつ解説していきます。

 

利用者さんの利き目を確認する

 

人には利き目があります。

利き目とは無意識によく使っている方の目です。

透明文字盤を読むときは利用者さんの両目の動きを見るのではなく、利き目の動きを追うことで正しい文字を読み取りやすくなります。

私が関わったことがある透明文字盤を使用している利用者さんは、皆さんご自身の利き目をご存知でした。

透明文字盤でコミュニケーションを取る前に、利き目は右目・左目どちらかを確認しましょう。

読み手側も自分の利き目で、利用者さんの利き目の動きを追った方が文字を読み取りやすいです。

 

透明文字盤の表裏を確認する

透明文字盤の表側を利用者さんに向けるのか、読み手側に向けるのかを確認します。

一般的には患者さん側に読みやすい表側を向け、読み手側が裏側の反転した文字を読むことが多いです。

透明文字盤を使用する度に、面が変わることがないように事前に確認をしましょう。

 

利用者さんの「はい」「いいえ」のサインを確認する

 

透明文字盤を使用する上で、読み手が指し示す文字が合っているのかどうかなど、利用者さんの「はい」「いいえ」を表現する方法を確認します。

「はい」であれば瞬きをする、「いいえ」であれば黒目を左右に動かすなどです。

人によってサインは異なるため、その方のサインを確認しましょう。

また疾患の進行によって、今まで使っていた表現が難しくなることもあります。

状況が変化した際には、本人、関係者で相談し、対応を統一できるようにします。

 

体勢を整える

 

透明文字盤を正しく読むために、読み取りやすい体勢があります。

利用者さんと読み手の顔が正面に向き合い、お互いの利き目が一直線上に位置すると文字が読み取りやすくなります。

顔と顔の距離は60~80cm程度で調整し、お互いの顔の中間に文字盤を平行に持ちます。

利用者さんと透明文字盤の距離が近すぎると、利用者さんは透明文字盤の全体を見ることが出来ません。

利用者さんと文字盤の距離が遠くなればなるほど、読み手が利用者さんの視線の先を読み取りにくくなります。

利用者さんの視力や視野、その他の条件でも変わるため、人や状況によって適切な距離は異なります。

利用者さんの姿勢や身体の向きに合わせて、なるべく読み手側が体勢を整えられるようにしましょう。

 

透明文字盤の使い方

事前に知っておきたいポイントを押さえ体勢を整えたら、実際に透明文字盤を使用してみましょう。

透明文字盤の使い方を具体的に解説します。

 

  1. 利用者さんが見つめている文字をさがす。
    読み手は利用者さんの利き目の動きを追い、見つめている文字の検討を付けます。
  2. 読み手は利用者さんが見つめている文字がお互いの目線を結んだ真ん中にくるように文字盤を動かす。
    利用者さんの視線の先に、自分の顔を動かすのではなく、文字盤を動かします。
  3. お互いの視線の先に来た文字が分かったら、文字を指でさし声に出して読む。
  4. 利用者さんの「はい」「いいえ」のサインを確認する。
    1文字が確定したら上記①~④を繰り返す。
  5. ③で指した文字が間違っていた場合は、その周囲の文字を指でさし確認を繰り返す。

 

①利用者さんが見ている文字が〇のあたりだと検討を付ける

②利用者さん、読み手の視線の真ん中に検討をつけた文字がくるように文字盤を動かす

③「き」が視線の互いの視線の真ん中にきたら、「き」を読み上げ、利用者さんの反応を確認する

④1文字が確定したら、同じ手順を繰り返す

⑤読み上げた文字が異なっていた場合、検討を付けた文字の周囲の文字を指さし、再度確認をする。

 

透明文字盤を読むときに心がけること

透明文字盤は使えば使うほど、スムーズに読み取りが出来るようになっていきます。

透明文字盤の使い方のコツを掴むことができたら、後は練習を重ねるのみです。

訪問先以外でも、スタッフ同士で練習をしてお互いに感想やアドバイスを交換することも良いですね。

ぜひ、以下の透明文字盤を読むときに心がけたいポイントに注意しながら練習をしてみて下さい。

 

文字盤を読むときに心がけること
  • 読んだ文字を忘れないように反復する
  • 先読みは控える
  • 文字を読むことを諦めない
  • 読み取った言葉を気にしすぎない

 

1つずつ解説していきます。

 

読んだ文字を忘れないように反復する

 

文字を追うことに一生懸命になると、つい前に読んだ文字を忘れてしまい、利用者さんが言いたいことが分からなくなってしまうことがあります。

何文字か読めたら単語や短文を反復して、会話の途中で利用者さんに確認をします。

または、読んだ文字をメモしておくことも良いでしょう。

 

先読みは控える

透明文字盤を読んでいる途中で、読み取った内容から「○○ということですね」と先読みをすることは控えましょう。

利用者さんは「○○して」ではなく、「○○するときは」と伝えたいのかもしれません。

相手の負担を軽減するために先読みをすることが、コミュニケーションミスに繋がることがあります。

 

文字を読むことを諦めない

 

透明文字盤を読んでいる途中で分からなくなったときや、読み取りに時間がかかってしまうとコミュニ―ションを中断したくなることもあるかもしれません。

そんな時も、できるだけ文字を読むことを途中で諦めないようにしましょう。

利用者さんにとっては、会話の途中で「分からないからもうやめた」と中断されたことになってしまいます。

焦らずに1文字ずつ確認をすれば、必ず分かるはずです。

そして、諦めずにコミュニケーションを取ろうとする真摯な気持ちは利用者さんに伝わります。

丁寧にコミュニケーションを取ることは、信頼関係を作るために大切です。

 

読み取った言葉を気にしすぎない

透明文字盤で伝わる言葉は、抑揚がないため音声で伝わる言葉よりもそっけなく感じることがあります。

また、利用者さんはなるべく短い言葉で端的に伝えようとするため言葉はシンプルになります。

たとえばケアの途中で、「やめて」と文字盤で言われたときに、その言葉には「充分ケアをしてもらったからもう(やめて)いいですよ」という意味が隠れているかもしれません。

読み取った言葉の受け取り方次第では、利用者さんから冷たい言葉を掛けられたと感じることがあるかもしれませんが、透明文字盤の言葉だけが利用者さんの意思の全てではありません。

言葉の内容だけを気にしすぎないようにしましょう。

 

透明文字盤のコミュニケーションで世界を広げよう!

 

透明文字盤の使い方と、透明文字盤を使用する上で押さえておきたいポイントを解説しました。

透明文字盤を使用する前に確認すること
  • 利用者さんの利き目を確認する
  • 文字盤の表裏の向きを確認する
  • 利用者さんの「はい」「いいえ」のサインを確認する
  • 体勢を整える

 

透明文字盤を読むときに心がけること
  • 文字を忘れないように反復する、メモを取る
  • 先読みは控える
  • 文字を読むことを諦めない
  • 読み取った言葉を気にしすぎない

 

ALSの利用者さんと初めて透明文字盤を使用して会話をしようとしたときに、簡単そうに見えていた透明文字盤読みが全くできなくて一気に苦手意識を持ちました。

その経験があったので、透明文字盤の使用方法のコツを掴み少しずつ利用者さんと意思疎通が図れるようになったときの喜びは大きいものでした。

記事で解説した内容以外にも、利用者さんならではの透明文字盤使用のコツやポイントもあると思います。

透明文字盤は50音が順に並んだシンプルなものだけでなく、利用者さんがよく使う単語やフレーズが表記されカスタマイズされているものなど様々な種類があります。

利用者さんや経験の長い介護士さんなどにもアドバイスをもらいながら、少しずつ透明文字盤に慣れていきましょう。

音声による言葉を使わない、コミュニケーションの世界はとても奥が深く学びが多いです。

透明文字盤を使いコミュニケーションを取ることの楽しさを、ぜひ多くの看護師さんに感じてもらいたいです。

この記事が少しでもお役に立てば幸いです。

 

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ABOUT US
清水 千夏ライター
東京都在住/看護師・保健師/ 卒業後大学病院9年勤務 その後、派遣看護師としてクリニックやデイサービス、訪問入浴などを経験。 現在は訪問看護ステーションの立ち上げメンバーとして奮闘中です。