潰れる訪問看護ステーションの特徴3つと予防策を解説

「開業したはいいけれど、このままでは事業を続けられないかもしれない」——訪問看護ステーションの経営に携わる中で、そんな不安を感じたことはありませんか。開業数が過去最多を更新し続ける一方で、廃止・休止に追い込まれる事業所も、実は過去最多を更新しています。

潰れてしまう訪問看護ステーションには、いくつかの共通した特徴があります。この記事では、最新の統計データをもとに廃止・休止の実態を整理したうえで、潰れる訪問看護ステーションに共通する3つの特徴と、それを避けるための具体的な予防策を解説します。

この記事でわかること
  • 訪問看護ステーションの開業・廃止・休止の最新データ
  • 潰れる訪問看護ステーションに共通する3つの特徴
  • 特徴ごとの具体的な予防策
  • 安定経営を続けるために経営者・管理者が意識すべきこと

訪問看護ステーションの開業・廃止の最新データ

訪問看護ステーションは、開業数・稼働数ともに右肩上がりで増え続けている業界です。一般社団法人全国訪問看護事業協会が公表した「令和7年度 訪問看護ステーション数 調査結果」によると、全国の訪問看護ステーションの稼働数は2025年4月1日時点で18,754件となり、15年連続で増加しています。2012年以降の13年間の年平均成長率は8.8%に達し、この間ステーション数は約3倍に増加しました。

一方で、令和6年度中の廃止・休止も過去最多を更新しています。同調査によれば、令和6年度中の新規開設数は2,487件(過去最多)だったのに対し、廃止数は886件、休止数は355件と、いずれも過去最多を記録しました。開業ラッシュの裏側で、多くの事業所が撤退を余儀なくされている、というのが業界の実態です。

看護師 上妻
看護師 上妻

開業数が増えているから業界として安泰、というわけではないんですね。むしろ新規参入が増えるほど、経営の基礎を押さえていない事業所が淘汰されやすくなっている、とも言えます。

潰れる訪問看護ステーションの特徴1|看護師が不足している

訪問看護ステーションの指定基準では、看護職員を常勤換算で2.5人以上配置することが定められています。この基準を満たせなくなることが、事業継続を困難にする最も直接的な要因のひとつです。

訪問看護は1人の利用者宅に1人で訪問する形態が基本で、病院のように複数人でカバーし合う体制を組みにくい仕事です。そのため離職者が1人出るだけでも、残った職員の負担が急増し、さらなる離職を招く悪循環に陥りやすい業界だといえます。採用してもすぐに退職してしまうと、採用コストがかさむだけでなく、利用者や連携先の医療機関・ケアマネジャーに「体制が不安定な事業所」という印象を与え、新規依頼の減少にもつながります。

注意

人員基準ぎりぎり、あるいは一時的にでも基準を下回る運営をしている事業所は、指定取消などの行政処分のリスクに加え、利用者を受け入れられず売上が伸びないという経営上のリスクも同時に抱えることになります。

特に近年は、リハビリ職員(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)を中心に人員を構成し、看護職員の比率が低いまま運営している事業所も見られます。訪問看護の本来の役割は医療的なケア・観察・判断であり、看護職員が手薄な体制は、重度の利用者さんへの対応力不足や、医療保険・介護保険の給付調整上の判断ミスにもつながりかねません。人員配置は「基準を満たしているかどうか」だけでなく、「利用者さんの状態に見合った体制になっているか」という視点でも点検することが大切です。

潰れる訪問看護ステーションの特徴2|利用者さんの数が少ない

訪問看護ステーションは、利用者さんがいなければ報酬が発生しないという、シンプルながら厳しい構造の事業です。特に開業直後は、地域の医療機関やケアマネジャーとの人脈がまだ限定的で、利用者獲得に苦労するケースが少なくありません。病院勤務の経験しかないまま独立した場合、営業活動そのものに不慣れで、利用者を増やす動き方がわからない、という声もよく聞かれます。

特別訪問看護指示書による短期集中的な訪問や、ターミナルケースへの対応は、一時的に訪問回数が増えても長続きしないことが多く、安定した利用者数の確保にはつながりにくいという特徴があります。利用者数が少ない状態が続くと、人件費などの固定費だけがかさみ、資金繰りが徐々に悪化していきます。

訪問看護の利用者さんの多くは、要介護度や病状が変化しやすく、入院・施設入所・看取りなどによって利用が終了するタイミングも読みにくいという特性があります。新規の利用者さんを継続的に獲得できる仕組みを持たないまま既存の利用者さんに依存していると、数件の利用終了が重なるだけで一気に稼働率が下がり、経営が不安定になります。

POINT

利用者数が少ない事業所ほど「今いる利用者さんへの対応」で手一杯になり、新規開拓に手が回らなくなる悪循環に陥りがちです。開業初期から、ケア提供と並行して営業活動の時間を意図的に確保しておくことが重要です。

潰れる訪問看護ステーションの特徴3|経営理念と看護理念のズレ

訪問看護ステーションの運営には、労務管理・組織運営・経営戦略といった経営の知識が欠かせません。経営者は事業を継続させるために売上拡大を重視しがちですが、現場の看護師は「困っている利用者さんを支えたい」という使命感から、報酬の対象にならない対応にも時間を割いてしまうことがあります。

こうした視点の違いは、放置すると経営者と現場職員との間に深い溝を生みます。職員が経営方針を理解できないまま「やりがい」だけで働き続ける状態は長続きせず、管理者クラスの人材が離職してしまうと、利用者さんや連携先の医療機関・ケアマネジャーからの信頼も揺らぎ、依頼の減少と職場環境の悪化という悪循環に陥りかねません。

POINT

経営理念と看護理念は、対立するものではなく、本来は両立させるべきものです。「なぜこの経営判断をするのか」を現場に丁寧に説明し、逆に現場の使命感を経営に活かす仕組みをつくることが、両者の溝を防ぐ鍵になります。

潰れないための予防策

ここまで紹介した3つの特徴は、裏を返せばそのまま予防策の方向性にもなります。

  1. 看護師の確保と定着採用コストを抑えるには、リファラル採用(職員紹介)やSNSでの情報発信が有効です。定着のためには、給与や待遇だけでなく、事業所の理念・方針を職員が理解し、「この事業所に貢献したい」と思える環境をつくることが欠かせません。
  2. 利用者さんを増やすための人脈づくり在宅医、病院・診療所のソーシャルワーカー、居宅介護支援事業所のケアマネジャーとの直接の関係構築が、紹介・依頼の増加に直結します。ただ挨拶に回るだけでなく、自事業所の強み・対応可能な医療処置を具体的に伝える営業の工夫が重要です。
  3. 経営について学ぶ研修会への参加や、他の訪問看護ステーション経営者との情報交換を通じて、経営の知識を継続的にアップデートすることが大切です。あわせて、職員にも経営状況をある程度共有し、経営への関心を持ってもらうことで、特徴3で挙げた理念のズレを防ぎやすくなります。

これら3つの予防策は、どれか1つだけを頑張れば済むものではなく、日常的に並行して取り組むべき経営課題です。定期的に自事業所の状態を点検する習慣を持つことが、潰れないステーション経営の土台になります。

チェック項目目安・視点
看護職員の常勤換算数2.5人以上を安定して満たせているか、余裕を持った体制か
直近1年の離職者数離職理由を把握し、繰り返し発生していないか
新規依頼の月平均件数特定の紹介元に依存しすぎていないか
連携先(在宅医・居宅介護支援事業所等)の数継続的に接点を持てている先がどれだけあるか
経営方針の職員への共有頻度ミーティング等で定期的に説明する場があるか
看護師 上妻
看護師 上妻

特別なことをしなくても、この5項目を四半期に一度でも見直す習慣があるだけで、経営の危うさに早く気づけるようになります。「なんとなく忙しい」で終わらせず、数字と状況を定期的に確認してみてください。

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よくある質問

訪問看護ステーションの廃止・休止件数は、実際どのくらい増えていますか?

全国訪問看護事業協会の調査によると、令和6年度中の廃止数は886件、休止数は355件で、いずれも過去最多を記録しています。同じ年度の新規開設数も2,487件と過去最多だったため、開業と廃止・休止の両方が同時に増えているのが現在の業界の特徴です。

訪問看護ステーションの人員基準はどのくらいですか?

指定基準では、看護職員を常勤換算で2.5人以上配置することが定められています。この基準を継続的に満たせない状態は、指定取消などの行政上のリスクに加え、利用者を十分に受け入れられないという経営上のリスクにもつながります。

開業直後で利用者さんが少ないのは仕方ないことでしょうか?

開業直後に人脈が限られ、利用者獲得に時間がかかること自体は珍しくありません。ただし、その状態を放置せず、在宅医やケアマネジャーとの関係構築、地域への情報発信など、意図的な営業活動を早い段階から行うかどうかで、その後の経営の安定度に大きな差が出ます。

経営者と現場看護師の考え方が合わないときは、どうすればよいですか?

経営判断の理由を現場に丁寧に説明し、なぜその判断が必要なのかを共有することが第一歩です。あわせて、現場の使命感や気づきを経営判断に取り入れる仕組みをつくることで、経営理念と看護理念の両立がしやすくなります。

出典・参考

記事中の件数は上記調査結果(令和7年4月1日時点・令和6年度中の実績)に基づきます。年度が進むと最新の数値に更新される可能性があるため、最新の調査結果もあわせてご確認ください。

まとめ|潰れない訪問看護ステーションは「基本」を押さえている

潰れる訪問看護ステーションに共通する3つの特徴は、いずれも特別な事情ではなく、多くの事業所が直面しうる基本的な経営課題です。だからこそ、早い段階から意識して対策を打てるかどうかが、事業の存続を大きく左右します。

この記事のまとめ
  • 訪問看護ステーションは開業数・廃止休止数がともに過去最多という状況にある
  • 潰れる特徴は「看護師不足」「利用者不足」「経営理念と看護理念のズレ」の3つ
  • それぞれに対応する予防策(人材の確保定着・人脈づくり・経営の学び)を早期から実践することが重要

目の前のケアに真摯に向き合いながら、経営の基本もあわせて押さえていくことが、事業所と利用者さんの双方を守ることにつながります。

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上妻 裕弥看護師/MBA取得
株式会社ビジケア代表取締役/看護師・MBA取得。これまで200社以上の訪問看護事業所へ経営コンサルティング・BPOサービスを実施。経営者・管理者のサロン等も含めると500社を超える。単月黒字化から複数拠点展開、事業承継まで支援し、看護師の視点で「続く経営」をつくる。別法人にて自身でも全国に訪問看護ステーション展開している。