訪問看護ステーションが赤字になる4つの主な理由とは?

 

近年、営利法人による訪問看護ステーションの開設が増えており、訪問看護ステーションは儲かると思って立ち上げる人も少なくありません。

実際、収支差率は4%台と他の保険事業と比べて高い水準を推移しています。

しかし、実は赤字体質の訪問看護ステーション少なくないんですよね。

 

今回は、訪問看護ステーションが赤字になる4つの主な理由を考えていきたいと思います。

 

訪問看護ステーションが赤字になる4つの理由

訪問看護ステーションが赤字になる4つの主な理由は下記の通りです。

 

主な4つの理由
  1. 人件費率が80%以上
  2. 事業規模が小さい
  3. 訪問エリアが広い
  4. 単価が安い

 

では、一つひとつ解説していきます。

 

❶人件費率が80%以上

 

令和2年度介護事業経営実態調査結果によると、訪問看護の人件費率は平均で78.0%(給料費)となっております。

他業種と比較して圧倒的に高く、病院でも50%~70%であり、医療業界内でも高い水準となっております。

しかし、以前の介護事業経営実態調査の結果では、収入に対する給料の割合が80%を超えると収支差率がマイナスとなり、赤字経営になるというデータもあります。

その為、人件費率のコントロールは訪問看護経営にとっては最重要課題となります。

 

さらにそこに追い打ちをかけるのが、看護師を中心とした人材不足です。

ホームページで求人を出し、SNS等で呼びかけてもなかなか集まりません。

その為、人材不足を補うために、人材紹介会社を使用し、スタッフを雇うことも決して珍しくありません。

しかし、人材紹介料は高く、大手人材紹介会社では年収の20%~30%を紹介料と支払うことになります。

ざっと100万円程度です。

これがさらに人件費率を引き上げることになり、赤字経営を引き起こす一つの原因になります。(勘定科目によっては含まれないこともある)

人材紹介会社を使用しないためにも、急な退職、計画的な運営が必要となってきます。

 

 

❷事業規模が小さい

どこの訪問看護ステーションもそうですが、最初は小規模で行います。

そうすることで、人件費は抑えられ、黒字は出やすくなります。

 

近年の訪問看護では、重症度の高く、頻回な訪問が必要な利用者さんの需要が増えてきております。

また加算が多く付くため、単価も上がり、収益も上がります。

 

その為、訪問看護としては積極的にそのような利用者さんを獲得していきたいのですが、事業規模の小さい訪問看護で毎日訪問の利用者さんを受け入れると、一時的に売上は上昇しますが、その利用者さんが介入終了となると同時に枠が大幅に空くというジェットコースター運営になってしまいます。

そうすると単月黒字経営が難しくなるため、必然的に介護保険中心の訪問看護ステーションになっていきます。

また、忙しい時期に耐えられないスタッフは離職していきます。

先ほどのところでもお伝えした通り、急な退職に対応できる求人はなかなかありません。

その為、人材紹介料を払ってでも存続することになり、赤字に転落する訪問看護ステーションも多く存在します。

 

❸訪問エリアが広い

訪問看護は病院と違い、個人の時間売りの仕事になります。

その為、訪問エリアが広いと移動時間が掛かり、訪問件数が少なくなってしまいます。

最低限5件訪問行ける訪問エリアを設定する必要があります。

訪問エリアが広くなると、新規利用者さんの訪問の受け入れも難しくなります。

近くに介入時間の合う利用者さんがいればよいのですが、なかなかうまくいきません。

訪問枠が空いているのに、空いている枠の前後が遠すぎて、訪問エリア内でも新規利用者さんを受けいれることが出来ないこともが生じるのです。

また、日中の緊急訪問も同様です。

緊急訪問するために多くの利用者の時間変更をお願いしないといけませんし、関係各所にも連絡しないといけません。

一件の緊急でも大きな労力がかかってしまいます。

 

❹単価が安い

訪問看護は、医療保険と介護保険の2種類の介入方法があります。

 

医療保険は介護保険を利用していない方、医療依存の高い利用者さんが対象となり、30分以上全て同じ値段になります(加算も色々あります)。

それに比べ、介護保険は、要支援と要介護で点数が違い、20分、30分などで細かく時間によって区切られています。

より介護保険は、時間売りの性質が強いということです。

 

その為、売上だけみれば、医療保険重症度が高い方に、30分程度の訪問を毎日行くことで一番売上単価が高くなりやすいシステムになっています。

ターミナルの方はもちろん、神経難病などの利用者さんなどを獲得することで売上単価は上昇します。

しかし、その売上単価の高い利用者さんを獲得するには、事業所規模を大きくするしかありません。

 

まとめ

 

今回は、訪問看護ステーションが赤字になる主な理由を纏めさせていただきましたが、逆にいうと「人件費率を80%未満に抑える」、「大規模ステーション」、「訪問エリアは狭く」、「高単価を狙う」の4つをクリアすれば、黒字経営出来る確率はグッと上がります。

 

ぜひ、安定した運営していただき、よりよいサービスを継続的に利用者さんに届けていただけたら嬉しいです。

 

 

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ABOUT US
篠田 真志ライター/理学療法士
愛知県在住/訪看運営PT/認定理学療法士(介護予防) 総合病院(急性期、回復期、外来、デイケア)勤務後、訪看の立ち上げ参加。 現在、名古屋の訪看で「やりがい」と「待遇」の両立を目指した組織運営中 管理職育成/成長支援/訪看立ち上げ/ダイエット事業/自費コンディションニング事業