訪問看護の医療保険と介護保険の使い分け|別表7・特別指示書を解説

「この利用者さん、要介護認定を受けているのに、なぜ医療保険で訪問看護をしているんですか?」——ケアマネジャーや新人スタッフから、こう質問された経験はありませんか。訪問看護は医療保険と介護保険のどちらでも提供されるサービスですが、どちらが適用されるかは利用者ごとに決まっており、思い込みで判断すると算定誤りにつながります

この記事では、訪問看護における医療保険と介護保険の使い分けの原則と3つの例外を整理し、現場で誤解されやすいポイントまで解説します。

この記事でわかること
  • 訪問看護における医療保険と介護保険の使い分けの原則
  • 介護保険認定者でも医療保険が優先される3つの例外
  • 「頸髄損傷」と「頚椎損傷」など、現場で混同されやすいポイント
  • 医療保険に切り替わることで、実務上どう変わるか

結論|訪問看護は「介護保険が原則」、3つの例外で医療保険に切り替わる

訪問看護は、医療保険と介護保険という2つの制度のいずれかで提供されます。基本的な考え方はシンプルで、要介護認定・要支援認定を受けている利用者は介護保険が優先されます。認定を受けていない利用者は医療保険での提供になります。

ただし、要介護認定を受けている利用者であっても、次の3つのいずれかに該当する場合は、介護保険ではなく医療保険が優先されます。

  • 厚生労働大臣が定める疾病等(別表7)に該当する場合
  • 急性増悪等により特別訪問看護指示書が交付された場合
  • 認知症以外の精神疾患で、精神科訪問看護指示書に基づく訪問看護を行う場合
看護師 上妻
看護師 上妻

「要介護認定があるかどうか」だけを見て終わりにせず、「この3つの例外に当てはまらないか」を毎回チェックする癖をつけると、算定ミスがぐっと減りますよ。

原則のルール|要介護認定の有無で保険が決まる

まず基本となる原則を整理します。

利用者の状況適用される保険
要介護・要支援認定を受けていない医療保険
要介護・要支援認定を受けている(例外に該当しない)介護保険
要介護・要支援認定を受けている+3つの例外のいずれかに該当医療保険

この原則さえ押さえておけば、あとは「例外に該当するかどうか」を利用者ごとに確認するだけで、多くのケースは判断できます。

例外①|別表7(厚生労働大臣が定める疾病等)に該当する場合

別表7とは、厚生労働大臣が定める特定の疾病等の一覧です。ここに該当する疾病がある利用者は、要介護認定の有無にかかわらず医療保険の訪問看護が優先され、週4日以上の訪問が可能になるなどの違いが生じます。主な対象疾患は次のとおりです。

  • 末期の悪性腫瘍
  • 多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病関連疾患などの進行性神経・筋疾患
  • 後天性免疫不全症候群(AIDS)
  • 頸髄損傷
  • 人工呼吸器を装着している状態

このほかにも複数の疾患が指定されています。正確な最新の一覧は、後述の出典(厚生労働省)でご確認ください。

例外②|特別訪問看護指示書が交付された場合

病状が急に悪化し、主治医が頻回の訪問看護が必要と判断して「特別訪問看護指示書」を交付した場合も、その指示期間(原則14日間)は医療保険の訪問看護に切り替わります。急性増悪時のほか、終末期(末期の悪性腫瘍を除く)、退院直後などのケースで交付されるとされています。詳しい交付要件は関連記事で解説しています。

例外③|認知症以外の精神疾患で精神科訪問看護指示書がある場合

利用者が認知症以外の精神疾患を有し、精神科を標榜する医療機関の医師から精神科訪問看護指示書が交付されている場合も、要介護認定の有無にかかわらず医療保険(精神科訪問看護基本療養費)が優先されます。逆に、認知症の場合はこの例外の対象にはならず、原則どおり介護保険が優先されます。

注意

認知症を有する利用者が、認知症以外の精神疾患もあわせて有している場合など、判断が難しいケースもあります。精神科訪問看護指示書の交付元の医師や、主治医・ケアマネジャーとの連携のもとで確認してください。

ここまでの整理|医療保険と介護保険の使い分けチャート

ここまでの原則と3つの例外を、判断の流れとして整理すると次のようになります。

現場で誤解しやすいポイント|「頸髄損傷」と「頚椎損傷」の違いなど

別表7に関する実務でとくに誤解されやすいのが、「頸髄損傷」と「頚椎損傷」の違いです。別表7に該当するのは脊髄(神経)が損傷した「頸髄損傷」であり、頸椎(骨)を損傷していても脊髄に損傷が及んでいない「頚椎損傷」は、別表7の対象には含まれません。この場合は原則どおり介護保険が優先されます。名称が似ているため混同しやすいポイントなので、指示書の傷病名を確認する際は特に注意してください。

看護師 上妻
看護師 上妻

「頸髄」と「頚椎」、漢字も読みも似ているので、指示書に書かれた傷病名をパッと見て判断してしまうと危険です。迷ったら主治医に確認するのが一番確実ですよ。

医療保険に切り替わることで、実務上どう変わるか

別表7該当・特別訪問看護指示書・精神科訪問看護指示書のいずれかで医療保険に切り替わると、実務上は次のような変化があります。

  • 週4日以上の訪問看護が可能になる(介護保険では通常、区分支給限度基準額の範囲内での利用回数になる)
  • 訪問看護に使っていた介護保険の区分支給限度基準額の枠が空くため、訪問リハビリテーションなど他の介護サービスを組み合わせやすくなる
  • 自己負担については、医療保険の高額療養費制度(所得に応じた自己負担額の上限)が適用される

利用者・家族にとっても負担の仕組みが変わるポイントなので、保険が切り替わるタイミングでは、ケアマネジャーと連携してわかりやすく説明することが大切です。

実務でのチェック方法|新規利用者・更新のたびに確認する

使い分けの判断ミスを防ぐには、次のタイミングで必ず確認する運用をルール化しておくことをおすすめします。

  • 新規利用開始時:訪問看護指示書に記載された傷病名を確認し、別表7に該当する疾病名かどうかを照合する。
  • 主治医の交付する指示書が更新されるたび:特別訪問看護指示書が交付されていないか、精神科訪問看護指示書に変更がないかを確認する。
  • 要介護認定の更新・区分変更のたび:認定状況が変わっても、別表7該当や指示書による医療保険の適用は別軸のルールであるため、あわせて再確認する。
  • 傷病名の記載が紛らわしい場合:「頸髄」「頚椎」のように似た用語が使われているときは、指示書を交付した主治医に直接確認する。

これらの確認を訪問看護計画書・記録に残しておくと、運営指導等で保険選択の根拠を説明する際にも役立ちます。

看護師 上妻
看護師 上妻

保険の切り替えは、利用者・ご家族への説明のタイミングでもあります。「なぜ保険が変わるのか」を先回りして説明しておくと、自己負担額の変化に驚かれることも少なくなりますよ。

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特別訪問看護指示書の交付要件をさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご確認ください。

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まとめ|「原則+3つの例外」で迷わず判断できる

訪問看護の医療保険・介護保険の使い分けは、「要介護認定の有無」という原則と、「別表7・特別訪問看護指示書・精神科訪問看護指示書」という3つの例外を押さえておけば、多くのケースで迷わず判断できます。

この記事のまとめ
  • 原則は「要介護認定なし=医療保険」「要介護認定あり=介護保険」
  • 例外は3つ:別表7の疾病等/特別訪問看護指示書/認知症以外の精神疾患+精神科訪問看護指示書
  • 「頸髄損傷(医療保険対象)」と「頚椎損傷(対象外)」など、似た名称の混同に注意する
  • 医療保険に切り替わると、訪問回数・他サービスとの組み合わせ・自己負担の仕組みが変わる

個別のケースで判断に迷う場合は、指示書の傷病名や交付経緯を確認したうえで、主治医・ケアマネジャーと連携して最終確認してください。

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よくある質問

要介護認定を受けている利用者は、絶対に介護保険の訪問看護になりますか?

いいえ、絶対ではありません。要介護認定を受けていても、別表7の疾病等に該当する場合、特別訪問看護指示書が交付されている場合、または認知症以外の精神疾患で精神科訪問看護指示書がある場合は、医療保険の訪問看護が優先されます。

「頸髄損傷」と「頚椎損傷」は同じ意味ですか?

異なります。頸髄損傷は脊髄(神経)の損傷を指し、別表7に該当するため医療保険の対象です。頚椎損傷は頸椎(骨)の損傷を指し、脊髄に損傷が及んでいなければ別表7の対象にはならず、原則どおり介護保険が優先されます。指示書の傷病名を確認する際は混同しないよう注意してください。

認知症の利用者が精神科の診断も受けている場合、医療保険になりますか?

認知症以外の精神疾患であることが例外③の条件のため、認知症そのものについては原則どおり介護保険が優先されます。ただし、認知症とは別に精神疾患を有し精神科訪問看護指示書が交付されている場合など、個別の判断が必要なケースもあるため、指示書の内容を確認し、必要に応じて主治医・ケアマネジャーと連携してください。

特別訪問看護指示書の期間が終わったら、どうなりますか?

特別訪問看護指示書による医療保険の適用は、指示期間(原則14日間)が終わると終了し、要介護認定を受けている利用者は再び介護保険の訪問看護に戻ります。指示期間の終了日を事前に把握し、切り替えのタイミングでケアプランの調整が必要かどうか確認しておくとスムーズです。

保険の使い分けを間違えて請求してしまった場合、どうすればよいですか?

誤った保険で請求・算定していたことに気づいた場合は、速やかに事実関係を確認したうえで、国民健康保険団体連合会や保険者(医療保険の場合は審査支払機関)への返戻・修正の手続きが必要になります。判断に迷う個別のケースについては、指定権者や地方厚生局に早めに相談することをおすすめします。

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ABOUT US
上妻 裕弥看護師/MBA取得
株式会社ビジケア代表取締役/看護師・MBA取得。これまで200社以上の訪問看護事業所へ経営コンサルティング・BPOサービスを実施。経営者・管理者のサロン等も含めると500社を超える。単月黒字化から複数拠点展開、事業承継まで支援し、看護師の視点で「続く経営」をつくる。別法人にて自身でも全国に訪問看護ステーション展開している。