精神科重症患者支援管理連携加算とは?【医療保険】

入退院を繰り返す重症の精神疾患患者が地域で安定した生活を続けるには、訪問看護ステーションと医療機関が緊密に連携し、支援計画に沿った訪問看護を継続することが欠かせません。精神科重症患者支援管理連携加算は、こうした連携体制を評価する加算です。

この記事では、精神科重症患者支援管理連携加算の対象患者・金額区分(イ・ロ)・算定要件・留意点をわかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 精神科重症患者支援管理連携加算の基本的な仕組み
  • 対象患者とイ・ロの区分の違い
  • 事業所要件・算定要件(多職種チーム編成、カンファレンス頻度)
  • 算定時の留意点
  • 実務でよくあるQ&A

精神科重症患者支援管理連携加算とは?

精神科重症患者支援管理連携加算とは、精神科在宅患者支援管理料2を算定する利用者に対し、保険医療機関と連携して支援計画を策定し、一定頻度以上の訪問看護を実施した場合に月1回に限り算定できる加算です。入退院を繰り返しやすい重度の精神疾患患者が地域生活を継続できるよう、訪問看護ステーションと医療機関が一体となって支援する体制を評価するものです。名称に「連携」と入っているとおり、訪問看護ステーション単独の努力だけでなく、医療機関との継続的な情報共有が算定の前提となっています。

料金(イ・ロの区分)

この加算は、対象患者の状態に応じて2つの区分に分かれています。

区分訪問頻度金額(月1回限り)
週2回以上8,400円
月2回以上5,800円

対象患者とイ・ロの区分

対象となるのは、次のいずれかの状態に該当する患者です。

  • 1年以上の入院歴を有する患者
  • 措置入院または緊急措置入院を経て退院した患者
  • 入退院を繰り返す患者

これらのいずれかに該当し、かつ統合失調症等で退院時のGAF尺度が40以下である場合が「イ」の対象となり、それ以外の対象患者が「ロ」として扱われます。GAF尺度の評価方法については、別記事で詳しく解説しているのでそちらもご確認ください。

なぜこの加算が設けられているのか

入退院を繰り返す重症の精神疾患患者は、退院後に地域での支援が途切れると、再び病状が悪化して再入院に至ってしまうケースが少なくありません。訪問看護ステーションと医療機関が支援計画を共有し、頻回の訪問看護とカンファレンスを組み合わせて継続的に見守ることで、再入院のリスクを減らし、地域での生活を安定させることがこの加算の狙いです。

精神科在宅患者支援管理料2は医療機関側が算定する報酬であり、この加算はその取り組みに連動する形で、訪問看護ステーション側の支援を評価する仕組みになっています。医療機関と訪問看護ステーションの双方が連携して初めて成立する加算といえます。片方だけが取り組みを進めても算定要件を満たすことはできないため、受け入れの初期段階から医療機関側と丁寧にすり合わせを行うことが欠かせません。

特に、精神科の訪問看護を専門的に担う人材は地域によって不足しがちであり、専任チームの編成自体がハードルになるステーションも少なくありません。受け入れを検討する段階で、既存スタッフのスキルや経験を踏まえ、無理のない体制が組めるかをまず確認しておくことが重要です。

事業所要件・算定要件

算定には、事業所・チーム体制に関する次の要件を満たす必要があります。

  • 精神科訪問看護基本療養費の届出をしていること
  • 24時間対応体制加算をあらかじめ届け出ていること
  • 保険医療機関と連携して設置する専任チームに、保健師・看護師・作業療法士又は精神保健福祉士のいずれか1名以上が参加していること
  • 専任チームで専任チームが中心となって支援計画を策定していること

カンファレンス・訪問頻度の要件

区分カンファレンス頻度訪問看護の頻度
週1回(月1回は保健センター等と共同)週2回以上
月1回以上月2回以上
看護師 上妻
看護師 上妻

「イ」は訪問頻度もカンファレンス頻度も高く設定されており、より重症度の高い利用者を想定した区分です。自ステーションの体制でどちらの区分に対応できるか、事前に確認しておきましょう。

専任チームの編成で確認したいポイント

専任チームの編成にあたっては、次のような点を確認しておくとスムーズです。

  • チームに参加する職種(保健師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士)の勤務シフトが、カンファレンス・訪問頻度の要件を継続的に満たせるか
  • 医療機関側の担当者(主治医・精神保健福祉士等)との連絡窓口をあらかじめ一本化できているか
  • 支援計画の見直しタイミング(利用者の状態変化時、退院直後等)をあらかじめ関係者間で共有しているか
  • 緊急時に専任チーム以外のスタッフが対応する場合の情報共有ルールを整備できているか
POINT

「イ」は週1回のカンファレンスが求められるため、担当者の異動・退職があった場合に体制が崩れやすい区分です。専任チームのメンバーが欠けた場合の代替要員を事前に検討しておくと、要件を継続的に満たしやすくなります。年に数回は体制の見直しを行う機会を設けておくと安心です。

算定時の留意点

  • 1人の利用者につき、算定できるのは1つの訪問看護ステーションのみ
  • 医療機関の往診料と同一時間帯には併算定できない
注意

複数の訪問看護ステーションが同じ利用者に関わっている場合でも、この加算を算定できるのは1つのステーションのみです。事前にどのステーションが算定するかを関係者間で協議しておく必要があります。

往診料との併算定不可のルールは同一時間帯に限られるため、時間帯が重ならないよう医療機関側とあらかじめ訪問・往診のスケジュールをすり合わせておくと、算定漏れや重複請求のトラブルを防ぎやすくなります。

訪問看護記録・カンファレンス記録の残し方

この加算は多職種連携が要件の中核にあるため、記録の残し方が算定要件の充足を示す重要な根拠になります。次の内容は必ず記録に残しておくことをおすすめします。

  1. カンファレンスの実施記録開催日・出席者(医療機関側・訪問看護側それぞれ)・議題・決定事項を記録する。
  2. 支援計画の内容と見直し履歴初回の支援計画に加え、状態変化に応じた見直しの経緯も残す。
  3. 訪問看護の実施記録区分(イ・ロ)に応じた訪問頻度を満たしていることがわかるよう、訪問日を一覧化しておく。
注意

カンファレンスの一部をオンラインで実施する場合も、実施日・参加者・内容を対面時と同様に記録しておく必要があります。記録の抜け漏れは、算定要件を満たしていることの説明を難しくする原因になります。日々の記録を後回しにせず、その都度入力する習慣を事業所全体で徹底しておくとよいでしょう。

算定前に確認したいチェックリスト

  • 対象患者が「イ」「ロ」いずれの区分に該当するかを確認したか
  • 精神科訪問看護基本療養費・24時間対応体制加算の届出をしているか
  • 専任チームに保健師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士のいずれかが参加しているか
  • 区分に応じたカンファレンス頻度・訪問頻度を満たしているか
  • 複数ステーションが関わる場合、算定するステーションを協議済みか
あわせて読んでおきたい関連記事

精神科訪問看護基本療養費の算定要件を確認したい方はこちら。

精神科訪問看護基本療養費とは?【医療保険】要件を解説を読む

他の精神科関連加算との関係

この加算は、精神科訪問看護基本療養費や24時間対応体制加算の届出が前提となっているため、単独では算定できません。すでにこれらの加算・療養費を算定しているステーションが、対象患者の受け入れにあたって追加的に検討する加算という位置づけになります。GAF尺度の評価が必要な精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅲ)とあわせて、記録・算定の全体像を事業所内で整理しておくと、精神科分野の加算をまとめて管理しやすくなります。

よくある質問

「イ」と「ロ」はどちらが金額が高いですか?

「イ」の方が金額が高く(8,400円)、週2回以上の訪問と週1回のカンファレンスが求められます。「ロ」は5,800円で、月2回以上の訪問と月1回以上のカンファレンスが要件です。

複数のステーションが関わる利用者の場合、それぞれ算定できますか?

算定できるのは1人の利用者につき1つの訪問看護ステーションのみです。複数のステーションが関わる場合は、事前にどのステーションが算定するかを協議する必要があります。

専任チームには必ず精神保健福祉士が必要ですか?

必須ではありません。保健師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士のうち、いずれか1名以上が専任チームに参加していれば要件を満たします。

この加算だけを単独で算定することはできますか?

単独では算定できません。精神科訪問看護基本療養費と24時間対応体制加算の届出を行っていることが前提要件になります。

出典・参考

※最新の算定要件は所轄の地方厚生局にご確認ください。

受け入れ検討時に確認したい経営的な視点

この加算の対象となる利用者は、入退院を繰り返す重症の精神疾患患者であり、状態が不安定になりやすく、緊急対応が必要になる場面も想定されます。受け入れを検討する際は、加算による増収効果だけでなく、頻回訪問・カンファレンス参加にかかる人員負担、緊急時対応体制の余力についても、あわせて検討することが望ましいとされています。特に「イ」の区分は週2回以上の訪問と週1回のカンファレンスが継続的に発生するため、担当者の負担が特定のスタッフに偏らないよう、チーム内でのローテーションを検討しておくと持続可能な体制を作りやすくなります。

また、医療機関側の担当者と定期的に顔を合わせる機会を持つことは、この加算の対象患者以外の精神科利用者への対応力向上にもつながります。単発の加算算定にとどめず、地域の医療機関との関係構築の機会として、中長期的な視点で活用していくとよいでしょう。

人員体制に余力がない状態で対象患者を受け入れると、緊急対応の頻発により他の利用者への訪問にしわ寄せが及ぶ可能性もあります。受け入れの可否は個々のケースごとに、現場スタッフの意見も交えて慎重に判断することをおすすめします。

まとめ|区分と連携体制の要件を正しく整理しよう

精神科重症患者支援管理連携加算は、重症の精神疾患患者を地域で支えるための、訪問看護ステーションと医療機関の連携を評価する加算です。イ・ロの区分による訪問頻度・カンファレンス頻度の違いを正しく理解しておきましょう。区分ごとの訪問・カンファレンス頻度を継続的に満たせる体制かどうかを、受け入れ前に見極めておくことが、安定した算定と質の高い支援の両立につながります。

この記事のまとめ
  • 精神科在宅患者支援管理料2算定者に対し、月1回に限り算定できる加算
  • 「イ」は週2回以上訪問・週1回カンファレンスで8,400円
  • 「ロ」は月2回以上訪問・月1回以上カンファレンスで5,800円
  • 専任チームに保健師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士のいずれかが参加している必要がある
  • 算定できるのは1利用者につき1ステーションのみ

精神科訪問看護基本療養費、GAF尺度の評価方法についても、関連記事をあわせてご確認ください。

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上妻 裕弥看護師/MBA取得
株式会社ビジケア代表取締役/看護師・MBA取得。これまで200社以上の訪問看護事業所へ経営コンサルティング・BPOサービスを実施。経営者・管理者のサロン等も含めると500社を超える。単月黒字化から複数拠点展開、事業承継まで支援し、看護師の視点で「続く経営」をつくる。別法人にて自身でも全国に訪問看護ステーション展開している。