1日に複数回の訪問看護を提供する場合、訪問と訪問の間隔によっては、それぞれ別々に算定できず「合算」しなければならないルールがあります。これがいわゆる「2時間ルール」です。
この記事では、2時間ルールの基本的な考え方・合算されるケースとされないケース・厚労省Q&Aを、具体例とあわせてわかりやすく解説します。
- 2時間ルールとは何か、なぜ設けられているのか
- 合算されるケース・されないケースの違い
- 具体例で見る合算の考え方
- 厚生労働省Q&Aのポイント
- 医療保険と介護保険での扱いの違い
目次
訪問看護の2時間ルールとは?
2時間ルールとは、介護保険の訪問看護において、前回の訪問看護から概ね2時間未満の間隔で次の訪問看護を行った場合、それぞれの所要時間を合算して算定するというルールです。
介護保険の訪問看護は、20分未満・30分未満・30分以上60分未満・60分以上90分未満といった時間区分ごとに単位数が設定されており、訪問時間が短いほど1分あたりの単価は割高になる構造になっています。この特性を利用して、本来1回で済む長時間の訪問をあえて短時間に分割し、複数回訪問として算定するといった不適切な請求を防ぐために、2時間ルールが設けられています。制度の趣旨を理解しておくことは、日々の訪問スケジュールを組む際の判断基準としても役立ちます。特にシフト作成担当者にとっては、訪問間隔の設計そのものが算定額に直結するため、単なる移動効率の観点だけでなく、算定ルールとあわせて組み立てる視点が求められます。
合算されるケース・されないケース
2時間ルールの適用にはいくつかの例外があります。
| ケース | 合算の可否 |
|---|---|
| 前回訪問から概ね2時間未満の間隔で訪問 | 合算する(原則) |
| 同一職種の別スタッフが連続して訪問 | 合算する(准看護師が含まれる場合は准看護師料金が適用) |
| 異なる職種が連続して訪問(例:看護師→理学療法士) | 合算しない(各職種で個別に算定可) |
| 緊急の訪問看護 | 合算しない |
| 20分未満の訪問看護 | 合算しない |
「異なる職種なら合算しない」という点は見落とされがちです。ただし、連続して訪問看護を提供すること自体の必要性は、適切なケアマネジメントに基づいて判断される必要があります。単に合算を避ける目的で職種を分けるような運用は避けましょう。

なぜ「概ね2時間」という曖昧な表現になっているのか
2時間ルールは「概ね2時間以上」という表現が使われており、「必ず2時間0分ぴったり空けなければならない」という厳格な規定ではありません。これは、訪問看護の現場では処置の所要時間や交通事情によって、訪問時刻が計画から前後することが実務上避けられないためです。計画段階で2時間以上の間隔を確保していれば、実際の訪問時刻が多少前後しても、その経緯を記録に残しておけば計画どおりの算定が認められるという運用になっています。
一方で、この「概ね」という表現を都合よく解釈し、恒常的に2時間未満の間隔で訪問を繰り返すような運用は、意図的な分割請求とみなされるおそれがあります。あくまで例外的な前後にとどめ、日常的な訪問計画そのものは2時間以上の間隔で組むことが基本です。訪問計画を立てる段階から2時間ルールを織り込んでおけば、当日のイレギュラーな時間変更が起きても慌てず対応できます。
具体例で見る合算の考え方
厚労省Q&Aで示されている具体例をもとに、実際の算定パターンを確認しましょう。
| 訪問パターン | 算定の考え方 |
|---|---|
| 70分訪問+2時間未満の間隔で40分訪問 | 合算して110分(1時間30分以上2時間未満の区分ではなく、実際の合計時間に応じた区分)として算定 |
| 計画上2時間後の訪問予定が、処置終了の都合で若干前後した | 計画どおりの内容で算定してよい |
| 20分未満の訪問と、計画外の緊急訪問 | いずれも合算の対象外 |

「計画上は2時間空いていたはずが、処置が早く終わって結果的に2時間未満になってしまった」というケースは現場でよくあります。この場合は計画どおりの算定でよいとされているので、慌てて合算し直す必要はありません。ただし、記録にはその経緯を残しておくと安心です。
厚生労働省Q&Aのポイント
2時間以上経過していなければ必ず合算しますか?
20分未満の訪問看護と、計画外の緊急訪問看護は合算の対象外です。また、計画上は2時間後の訪問予定であったものが、処置の都合等で若干時間が前後した場合は、計画どおりの報酬で算定できます。
70分の訪問看護のあと、2時間未満の間隔で40分の訪問看護を行った場合はどうなりますか?
別々に算定するのではなく、所要時間を合算して考えます。この例では合計110分となり、実際の合計時間に応じた時間区分で算定します。

訪問看護記録に残しておきたい情報
2時間未満の間隔で連続訪問が発生した場合は、後から算定内容を振り返れるよう、次の情報を訪問看護記録に残しておくことが望ましいとされています。
- 各訪問の開始・終了時刻
- 連続訪問となった理由(緊急対応・計画変動・処置の都合等)
- 担当した職種・スタッフ名
- 合算の要否とその判断根拠
医療保険には2時間ルールがない?
ここまで解説してきた2時間ルールは、介護保険の訪問看護に適用される規定です。一方、医療保険の訪問看護には「20分未満」の時間区分や「2時間ルール」に相当する明確な規定はなく、医療的な必要性に応じて訪問回数・時間が判断されるという違いがあります。
医療保険の訪問看護は原則1日1回・週3回までとされており、1日に複数回の訪問が必要な場合は、難病等複数回訪問加算の対象となる利用者や、特別訪問看護指示書が交付された利用者など、別の枠組みで扱われます。介護保険と医療保険を併用しているケースでは、どちらの保険のルールが適用される訪問かを区別して記録・算定する必要があります。
複数のステーション・職種が関わる場合の注意点
1人の利用者に、看護師と理学療法士など複数の職種が同日に訪問するケースは珍しくありません。この場合、職種が異なれば2時間ルールの合算対象にはなりませんが、次のような点は別途注意が必要です。
- 訪問看護計画書に、複数職種が関わる理由・役割分担を明記しているか
- 同一日に複数回訪問すること自体の必要性を、ケアマネジャー・主治医と共有しているか
- 複数の訪問看護ステーションが関わる場合は、それぞれの訪問時間の重複・間隔をステーション間で情報共有できているか
特に複数のステーションが同じ利用者に関わっている場合、それぞれのステーションが独立して訪問時刻を決めてしまうと、意図せず2時間未満の間隔になってしまうことがあります。ケアマネジャーを通じて訪問スケジュールを共有し、無用な合算や算定誤りを防ぐ体制を整えておくとよいでしょう。定期的な担当者会議やサービス担当者会議の場で、各事業所の訪問時刻を突き合わせておくことも有効です。利用者・家族から見ても、複数の事業所からバラバラの時間帯に訪問が続くよりも、ある程度まとまった時間帯に集約されている方が生活リズムを保ちやすいという側面もあります。
請求ソフト任せにしない確認の重要性
多くの請求ソフトは2時間ルールの合算判定を自動化していますが、緊急訪問や計画変更が絡むケースでは、自動判定だけに頼らず人の目で内容を確認することが望ましいとされています。特に月末のレセプト確認時には、同一日に複数回訪問した利用者の記録を重点的にチェックしておくと、算定誤りによる返戻や査定を防ぎやすくなります。
スケジュール調整時のチェックリスト
訪問スケジュールを組む段階から、次の点をあらかじめ確認しておくと、算定誤りや不要な合算を防ぎやすくなります。
- 同一利用者への1日複数回訪問が、介護保険・医療保険どちらのルールで扱われるかを確認したか
- 介護保険の場合、前回訪問からの間隔が概ね2時間未満になっていないか
- 合算対象になる場合、正しい時間区分で請求ソフトに反映されているか
- 異なる職種による連続訪問の場合、それぞれの訪問の必要性を記録に残しているか
- 緊急訪問・20分未満訪問など、合算対象外のケースを正しく区別しているか
- 複数のステーションが同じ利用者に関わる場合、互いの訪問時刻を事前に共有できているか
准看護師が訪問看護に含まれる場合、合算後の料金は准看護師の料金区分が適用される点にも注意が必要です。看護師と准看護師が同日に連続して訪問した場合の取り扱いについては、事前に事業所内でルールを統一しておくと安心です。
よくある質問
2時間ルールは医療保険の訪問看護にも適用されますか?
2時間ルールは介護保険の訪問看護に適用される規定です。医療保険の訪問看護には同様の明確な規定はなく、医療的必要性に応じて訪問回数・時間が判断されます。
同じ利用者に看護師と理学療法士が続けて訪問した場合も合算されますか?
異なる職種が連続して訪問する場合は合算されず、それぞれの職種で個別に算定できます。ただし、連続訪問の必要性は適切なケアマネジメントに基づいて判断する必要があります。
緊急訪問の場合も2時間ルールの対象になりますか?
計画外の緊急訪問看護は、2時間ルールの合算対象にはなりません。
准看護師が含まれる連続訪問の場合、料金はどうなりますか?
合算の対象となる連続訪問に准看護師が含まれる場合は、准看護師の料金区分が適用されます。事業所内で職種の組み合わせごとの取り扱いを事前に確認しておくと安心です。

まとめ|間隔と職種の組み合わせを正しく整理しよう
2時間ルールは、介護保険の訪問看護における不適切な分割請求を防ぐための仕組みです。合算・非合算の判断は、訪問間隔だけでなく職種の組み合わせや緊急性によっても変わります。ルールの趣旨を理解したうえで、日々のスケジュール調整と記録の付け方に反映していくことが、適正な請求運用につながります。新任のスタッフやシフト作成を初めて担当するスタッフには、この記事で紹介したような具体例を用いて説明すると、理解が定着しやすくなります。
- 前回訪問から概ね2時間未満の間隔での訪問は所要時間を合算する
- 異なる職種による連続訪問・緊急訪問・20分未満の訪問は合算しない
- 計画上2時間空いていた予定が処置の都合で前後した場合は計画どおり算定できる
- 2時間ルールは介護保険の規定であり、医療保険には同様の明確な規定がない
- 介護保険・医療保険どちらのルールが適用される訪問かを区別して記録する
- 複数のステーション・職種が関わる場合は、訪問時刻の共有と役割分担の明記を徹底する
訪問看護ステーションの人員基準・設備基準についても、関連記事をあわせてご確認ください。









における厚生労働省のQA【まとめ①】-485x300.jpg)













