訪問看護ステーションの管理者として、夜間・休日の緊急対応体制を整えることは利用者の安心を守るうえで欠かせません。しかし、「24時間対応体制加算の算定要件がよくわからない」「令和6年度改定で区分が増えたが、自ステーションはどちらを算定すべきか」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、24時間対応体制加算(医療保険)の概要・料金・算定要件・届出方法を、令和6年度診療報酬改定および令和8年度改定(令和8年6月施行)の最新情報をもとに徹底解説します。新設された区分イ・ロの違いや、看護師以外が連絡担当になれる条件も詳しくまとめました。
- 24時間対応体制加算(医療保険)の定義と算定の考え方
- 令和6年度改定後の料金(区分イ:6,800円 / 区分ロ:6,520円)と区分の違い
- 区分イを算定するための「看護業務の負担軽減の取組」の具体的な要件
- 看護師以外が連絡担当者になれる6つの条件と届出の手順
- 緊急訪問看護加算との違いと実務上の注意点
目次
24時間対応体制加算とは?【医療保険】
24時間対応体制加算とは、訪問看護ステーションが利用者またはその家族等から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応でき、かつ必要に応じて緊急の訪問看護を行う体制にある場合に算定できる加算です(医療保険)。
この加算の最大の特徴は、緊急訪問が実際に発生しなくても算定できる点です。「緊急対応の実績」ではなく「24時間いつでも対応できる体制が整っているかどうか」が問われます。つまり、スタッフが待機しながら利用者の安心を守っているコストそのものを評価する加算といえます。
平成30年4月の診療報酬改定で、それまで存在していた「24時間連絡体制加算」と「24時間対応体制加算(旧)」が統合・一本化されました。現在の24時間対応体制加算は統合後の制度であり、区分イ・ロの2種類があります。

「24時間体制を整えている事業所への評価」と理解するとシンプルですね。緊急訪問が0件の月でも体制が整っていれば算定できます。スタッフの待機という”見えないコスト”を診療報酬として評価してもらえる、とても重要な加算です。
24時間対応体制加算の料金(令和6年度改定〜最新)
令和6年度診療報酬改定(令和6年6月1日施行)から、24時間対応体制加算は「看護業務の負担軽減の取組」の有無によって2区分に分かれました。月1回のみ算定できます。
| 区分 | 算定条件 | 料金(月1回) |
|---|---|---|
| 区分イ | 24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取組を行っている場合 | 6,800円 |
| 区分ロ | 区分イ以外の場合 | 6,520円 |
改定前(令和6年5月31日まで)は月1回6,400円の一律算定でしたが、看護師の夜間対応負担を軽減するための取組を実施しているステーションを評価する仕組みが導入されました。区分イとロの差額は月280円ですが、利用者数が多いステーションでは年間の収入差に影響します。
令和8年度診療報酬改定(令和8年6月1日施行)においても、24時間対応体制加算の料金は区分イ:6,800円、区分ロ:6,520円で据え置きとなっています(厚生労働省告示第74号)。当面はこの料金体系が継続されます。

「令和6年改定で突然2区分になって戸惑った」というお声はよく聞きます。ポイントは「負担軽減の取組をしているか」だけです。具体的な取組要件は次の章で詳しく説明しますね。できれば区分イを目指しましょう!
24時間対応体制加算の算定要件
24時間対応体制加算を算定するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 地方厚生(支)局長に体制の届出を行っていること
- 保健師または看護師(准看護師を除く)が利用者に対して24時間対応体制の内容を説明し、同意を得て文書を交付していること
- 電話等により連絡を受けた場合、または緊急訪問看護を実施した場合に、日時・内容・対応状況を訪問看護記録書に記録していること
- 月1回限り、区分イまたはロのいずれかを算定すること
利用者への説明・同意・文書交付は准看護師を除く看護職員(保健師または看護師)が行う必要があります。また交付する文書には、訪問看護ステーションの名称・所在地・電話番号・時間外および緊急時の連絡方法を記載することが必要です。
令和6年度改定で拡大した「連絡相談担当者」の範囲
令和6年度改定で大きな変更がありました。それまで24時間の電話連絡相談担当は保健師または看護師でなければなりませんでしたが、一定の条件を満たせば看護師等以外の職員(事務スタッフ等)でも担当できるようになりました。
これは訪問看護師の深夜・早朝の電話待機という精神的・身体的な負担を軽減するための改定です。要件緩和の適用には6つの条件をすべて満たす必要があり、次の章で詳しく解説します。
区分イを算定するための「看護業務の負担軽減の取組」
月6,800円の区分イを算定するには、次のア〜カの取組のうち、ア・イの両方を必ず含んだ2項目以上を実施することが必要です。アとイの2項目を満たすだけで最低限の要件はクリアできますが、より多くの項目に取り組むことがスタッフの働き方改善につながります。
| 項目 | 取組内容 | 必須 |
|---|---|---|
| ア | 夜間対応した翌日の勤務間隔の確保(例:翌日は一定時間以上遅い出勤を保証する) | 必須 |
| イ | 夜間対応に係る勤務の連続回数が2連続(2回)まで | 必須 |
| ウ | 夜間対応後の暦日の休日の確保 | 任意 |
| エ | 夜間勤務のニーズを踏まえた勤務体制の工夫(例:対応件数や時間帯に応じたローテーション調整) | 任意 |
| オ | ICT・AI・IoT等の活用による業務負担軽減(例:電子記録・オンコール管理ツールの導入) | 任意 |
| カ | 電話等による連絡及び相談を担当する者に対する支援体制の確保(例:担当者が孤立しないよう管理者がサポートする体制) | 任意 |

「アとイの2点だけでも区分イが算定できると知って安心された管理者さんは多いですよ。まず”夜間対応翌日の勤務間隔確保”と”夜間対応2連続まで”という2点のルールをシフト表に明記するところから始めてみましょう。書面で記録・管理することが重要です。
ア・イの両方を満たさない限り、区分イは算定できません。たとえば「イ(2連続まで)は守っているが、翌日の出勤時間は変わらない(アが未達)」という場合、区分イは不可です。どちらか一方だけでは要件を満たしませんので注意してください。
看護師以外が連絡相談担当者になれる6つの条件
令和6年度改定の重要な変更点として、24時間の電話連絡相談を「看護師等以外の職員」が担当できるようになりました。ただし、以下の6つの条件をすべて満たすことが必要です。1つでも欠けると要件を満たさないため、実装前に必ず全条件を確認してください。
- マニュアルの整備利用者・家族からの電話等による連絡及び相談に対応する際の手順を定めたマニュアルを整備する。
- 迅速な判断・連絡体制の確保緊急訪問看護の必要性を保健師または看護師が速やかに判断できる連絡体制と、緊急訪問が可能な体制を別途整備する。
- 勤務体制の明確化ステーションの管理者が、連絡相談を担当する非看護師等の勤務体制および勤務状況を把握・管理する。
- 報告と記録の徹底非看護師等が電話等で相談を受けた際は、対応内容を保健師または看護師に報告し、報告を受けた看護師が訪問看護記録書に記録する。
- 利用者・家族への説明と同意の取得上記①〜④の体制について利用者および家族等に説明し、文書による同意を得る。
- 地方厚生局への届出非看護師等を連絡相談担当者として配置する旨を、地方厚生(支)局に届け出る。
この要件緩和はあくまで「電話の一次応答」の担当者に関する規定です。緊急訪問が必要かどうかの判断、および緊急訪問の実施は、引き続き保健師または看護師が担わなければなりません。非看護師等があくまで一次受付を担い、その後すぐに看護師へ橋渡しをする体制が求められています。

夜中の電話を専担の事務スタッフに任せられるようになったのは、現場にとって大きな変化です。6つの条件はやや多く感じますが、マニュアル整備・体制構築・届出をきちんと行えば決して難しくはありません。まず管轄の地方厚生局に相談してみることをおすすめします。
24時間対応体制加算の留意事項
24時間対応体制加算は、1人の利用者につき1つの訪問看護ステーションのみ算定できます。複数のステーションから訪問を受けている利用者であっても、算定できる事業所は1か所に限られます。
特別地域の連携特例(2ステーション連携)
離島・山村振興地域・過疎地域等の特別地域に所在する訪問看護ステーションは、もう1つの訪問看護ステーションと連携して24時間対応体制を整えることで、加算を算定できる特例があります。ただし連携できるのは「他の1つのステーションのみ」で、利用者の状況や体制について十分な連携を図ることが必要です。
令和8年度新設の包括型訪問看護療養費との関係
令和8年度診療報酬改定(令和8年6月施行)では「包括型訪問看護療養費」が新設されましたが、この療養費を算定しているステーションでも、24時間対応体制加算は別途算定することが可能です(訪問看護療養費の注2として規定)。包括型の算定が24時間対応体制加算の算定を妨げるものではありません。

令和8年度改定では新しいサービス類型が加わり、「どの加算と併算定できるの?」と混乱しやすいですね。24時間対応体制加算はしっかり継続・維持されている重要な加算ですので、変わらず適切に算定しましょう。
「緊急訪問看護加算」との違い
24時間対応体制加算と混同しやすい加算に「緊急訪問看護加算」があります。名称が似ているため、両者の違いを整理しておきましょう。
| 比較項目 | 24時間対応体制加算 | 緊急訪問看護加算 |
|---|---|---|
| 保険種別 | 医療保険 | 医療保険 |
| 算定タイミング | 体制が整っていれば月1回 | 実際に緊急訪問を行った際に算定 |
| 料金 | 区分イ:6,800円 / 区分ロ:6,520円(月1回) | 2,650円(月14日まで)/ 2,000円(15日目以降)※1日につき |
| 緊急訪問の要否 | 体制があれば訪問なしでも算定可 | 実際の緊急訪問が算定の前提 |
| 月の算定回数 | 月1回のみ | 訪問日単位で算定(複数回可) |
| 地方厚生局への届出 | 必要 | 不要 |

ひとことで言えば、24時間対応体制加算は「準備していることへの評価」、緊急訪問看護加算は「実際に動いたことへの評価」です。夜間・休日の体制にかかるコストを両方の加算で適切に評価してもらうことが、ステーション経営の安定につながります。
届出の方法と実務上のポイント
24時間対応体制加算を算定するには、事前に地方厚生(支)局長への届出が必要です。届出なしで算定することはできませんので、新規に体制を整えた場合や体制内容を変更した場合は速やかに手続きを行ってください。
- 届出様式の入手管轄の地方厚生(支)局のウェブサイトから最新の届出様式をダウンロードする。様式は局によって異なる場合があるため必ず管轄局の様式を使用する。
- 必要書類の準備体制に関する書類を整える。区分イを届け出る場合は、負担軽減取組(ア〜カ)の実施状況を記載・整理した書類も必要。
- 届出の提出地方厚生(支)局または支局の窓口・郵送等で提出する。提出方法も局によって異なるため事前に確認を。
- 受理後から算定開始届出が受理された月(または翌月)から算定が可能になる。受理日の確認は必須。
非看護師等を連絡相談担当者として配置する場合も別途届出が必要です。「24時間対応体制の届出」と「非看護師等担当者の届出」の2種類の届出が必要になるケースがありますので、漏れのないよう管轄の地方厚生局に確認してください。
よくある質問(Q&A)
緊急訪問が1件もない月でも算定できますか?
はい、算定できます。24時間対応体制加算はあくまで「対応できる体制が整っていること」への評価です。実際に緊急訪問が発生したかどうかは問われませんので、体制要件・届出・同意・記録の要件を満たしていれば、緊急訪問がゼロの月でも問題なく算定可能です。
2つの訪問看護ステーションを利用している場合、両方で算定できますか?
できません。24時間対応体制加算は1人の利用者に対して1つのステーションのみ算定できます。複数のステーションから訪問を受けている場合でも、算定できるのは1か所に限られます。どのステーションで算定するかをあらかじめ利用者・家族と相談して決めておくことが大切です。
区分イとロは毎月変わってもよいですか?
はい、月ごとに変わっても問題ありません。算定する月に「看護業務の負担軽減の取組(ア・イを含む2項目以上)」の要件を満たしている場合は区分イを、満たしていない場合は区分ロを算定します。取組状況に応じて月ごとに区分が変わること自体は認められています。
事務職員が夜間の電話を受けた場合、記録はどうすればよいですか?
事務職員(非看護師等)が電話で対応した際は、その内容を保健師または看護師に報告し、報告を受けた看護師が訪問看護記録書に記録します。事務職員が直接記録書を作成するのではなく、看護師が記録の責任を持つ点がポイントです。報告漏れや記録忘れが起きないよう、マニュアルに明記しておきましょう。
介護保険の利用者にも同様の加算がありますか?
介護保険には「緊急時訪問看護加算」という類似の加算があります。医療保険の24時間対応体制加算とは保険種別・料金・算定要件が異なります。詳しくは「緊急時訪問看護加算【介護保険】」の記事をご参照ください。
令和8年度改定で新設された「機能強化型訪問看護管理療養費4」は、24時間対応体制加算の届出が算定要件の一つとなっています。機能強化型を目指すうえでも24時間対応体制は重要な基盤です。
機能強化型訪問看護ステーションとは?認定要件と取得のメリットまとめ|24時間対応体制加算を適切に算定して夜間体制コストを評価しよう
24時間対応体制加算(医療保険)は、訪問看護ステーションが夜間・休日も含めた24時間対応の体制を整えていることを評価する重要な加算です。令和6年度改定で区分が新設され、負担軽減の取組の有無により区分イ(6,800円)または区分ロ(6,520円)を月1回算定します。この料金体系は令和8年度改定でも据え置きとなっています。
実務上の最重要ポイントは「区分イの要件(ア・イを含む2項目以上の取組)」と「非看護師等を連絡担当者とする場合の6要件」です。適切に体制を整え、届出を行うことで24時間対応の負担に見合った加算収入を確保しましょう。
- 24時間対応体制加算は「体制が整っていれば月1回算定可」—緊急訪問の有無は不問
- 料金は区分イ(6,800円)と区分ロ(6,520円)の2種類(令和6年度〜令和8年度も同額)
- 区分イ算定にはア(翌日勤務間隔確保)・イ(2連続まで)を必ず含む2項目以上の取組が必要
- 非看護師等を連絡担当者にするには6要件の充足と地方厚生局への別途届出が必要
- 1人の利用者につき算定できるのは1ステーションのみ(特別地域の連携特例あり)
- 算定前に地方厚生(支)局への届出が必須—届出なしでの算定は不可
24時間対応体制を適切に評価・算定することが、看護師の働き方改善とステーション経営の安定につながります。
介護保険の「緊急時訪問看護加算」とあわせて理解しておくと、保険種別をまたいだ24時間対応体制の全体像がよりクリアになります。
緊急時訪問看護加算【介護保険】の算定要件と料金を解説


















