在宅がん医療総合診療料とは|訪問看護との関係を解説

「在宅がん医療総合診療料を算定している利用者さんに、いつも通り訪問看護療養費を請求してよいのか」「医療機関からの委託金という形になるのはなぜか」——末期がんの利用者さんを担当する中で、こうした疑問にぶつかった経験はないでしょうか。

在宅がん医療総合診療料は、訪問診療・往診・訪問看護などを医療機関が一括して請求する「包括点数」です。この仕組みを正しく理解していないと、請求のダブりや利用者さんへの説明不足につながりかねません。この記事では、算定要件・点数・訪問看護ステーションとの関係を、令和8年度診療報酬改定の点数表に基づいて整理します。

この記事でわかること
  • 在宅がん医療総合診療料の算定要件と対象患者
  • 令和8年度診療報酬改定における具体的な点数・加算
  • 訪問看護療養費が算定できない「包括」の考え方
  • 訪問看護ステーションが医療機関と結ぶ委託契約の注意点

在宅がん医療総合診療料とは

在宅がん医療総合診療料(診療報酬点数表 区分番号C003)は、在宅で療養する末期の悪性腫瘍の患者のうち通院が困難な方に対し、在宅療養支援診療所または在宅療養支援病院が、患者の同意を得て計画的な医学管理のもとに総合的な医療を提供した場合に、1週を単位として算定できる診療報酬です。

最大の特徴は、訪問診療・往診・訪問看護などにかかる費用の多くがこの1本の点数に含まれる(包括される)ことです。個別に出来高で請求する通常の診療とは異なり、医療機関がまとめて算定し、訪問看護ステーションは医療機関から委託金という形で報酬を受け取る仕組みになります。

看護師 上妻
看護師 上妻

「末期がん」と聞くと医療保険の別表7(厚生労働大臣が定める疾病等)の話と混同しがちですが、在宅がん医療総合診療料はそれとは別の仕組みです。医療機関がこの点数を算定しているかどうかを、指示書や事前の連携で必ず確認する習慣をつけましょう。

算定対象となる医療機関・利用者

算定できる医療機関

在宅がん医療総合診療料を算定できるのは、在宅療養支援診療所または在宅療養支援病院に限られます。通常の診療所・病院がそのまま算定できる点数ではありません。

対象となる利用者

対象は「在宅で療養を行っている末期の悪性腫瘍の患者であって通院が困難なもの」です。利用者の同意を得たうえで、計画的な医学管理のもとに総合的な医療が提供されている必要があります。指示書等に末期がんである旨が明記されているかを確認しておくとよいでしょう。

令和8年度診療報酬改定における点数

在宅がん医療総合診療料の点数は、施設基準・病床の有無・処方箋交付の有無によって以下のように区分されています。

区分処方箋を交付する場合処方箋を交付しない場合
施設基準適合・病床あり1,800点2,002点
施設基準適合・病床なし1,650点1,852点
施設基準に適合しない在支診・在支病1,495点1,687点

いずれも1週を単位とした点数であり、週の途中で訪問日数が増減しても、この週単位の点数が変わることはありません。

主な加算

加算名点数算定単位
死亡診断加算200点死亡診断を行った場合
在宅医療充実体制加算300点施設基準適合時
在宅療養実績加算1110点施設基準適合時
在宅療養実績加算275点施設基準適合時
小児加算1,000点週1回限度(15歳未満等)
在宅データ提出加算50点月1回
在宅医療DX情報活用加算11点または9点月1回
POINT

診療に係る費用は、死亡診断加算等の一部を除き、原則としてすべて在宅がん医療総合診療料に含まれます。訪問看護療養費をはじめとする個別の出来高請求は、原則として別途算定できません。

訪問看護ステーションとしての関わり方

在宅がん医療総合診療料を算定している利用者に訪問看護を提供する場合、訪問看護ステーションは通常の訪問看護療養費を算定できません。かわりに、医療機関との間で業務委託契約を結び、医療機関から委託金として報酬を受け取る形が一般的です。

  • 医療機関が在宅がん医療総合診療料を算定するかどうかを事前に確認する
  • 委託金の金額・支払い条件について、医療機関との間で書面を取り交わす
  • 24時間対応体制加算は医療機関・訪問看護ステーションのいずれか一方でしか算定できない点に注意する
  • 訪問記録は通常の訪問看護と同様に残し、医療機関への報告方法(FAX等)を確認する
看護師 上妻
看護師 上妻

委託金の金額は法令で一律に決まっているわけではなく、医療機関ごとに異なります。訪問看護医療保険請求相当額を目安にするステーションもあれば、独自の一律単価を設定しているところもあるので、契約前に必ず確認しておきましょう。

利用者にとってのメリット

在宅がん医療総合診療料は包括点数のため、利用者の自己負担も医療機関への一括した請求分にまとまります。個別に訪問診療・訪問看護をそれぞれ出来高で利用する場合と比べ、高額療養費制度の自己負担限度額との関係で、結果的に自己負担が抑えられるケースがあります。ただし、具体的な負担額は保険の種類・所得区分・利用する医療機関の点数区分によって異なるため、一律の金額を断定することはできません。利用者への説明は、担当の医療機関を通じて行うのが基本です。

算定できないケース・注意しておきたい点

在宅がん医療総合診療料は「在宅での療養を行っている」患者が対象です。そのため、利用者が入院している期間はそもそも算定の対象になりません。一時的な入院と在宅療養が同じ月に混在する場合は、入院期間中の訪問診療・訪問看護の扱いが変わってくるため、算定の可否を医療機関側にその都度確認しておくと安心です。

注意

訪問看護ステーション側が「医療機関がこの点数を算定している」ことを把握しないまま、通常どおり訪問看護療養費を請求してしまうと、二重請求・過誤請求につながるおそれがあります。特に、他の医療機関から新たに紹介を受けた利用者や、担当医が交代した利用者については、指示書の内容だけで判断せず、医療機関の事務担当者に直接確認する習慣をつけましょう。

通常の出来高請求との違い

在宅がん医療総合診療料を算定しない場合、訪問診療料・訪問看護療養費・在宅患者訪問点滴注射管理指導料などがそれぞれ個別に出来高で算定されます。在宅がん医療総合診療料はこれらをまとめて1つの点数にする仕組みのため、医療機関・訪問看護ステーションのどちらにとっても、請求実務の流れそのものが通常とは異なる点を理解しておく必要があります。

項目通常の出来高請求在宅がん医療総合診療料
請求主体訪問看護ステーションが保険者へ個別請求医療機関が一括して算定
訪問看護ステーションの報酬訪問看護療養費として直接受領医療機関からの委託金として受領
利用者の自己負担訪問診療・訪問看護それぞれに発生医療機関への一括請求分にまとまる
算定単位訪問ごと・月ごと1週単位

よくある質問

在宅がん医療総合診療料を算定している利用者に、訪問看護療養費を請求してもよいですか?

原則としてできません。在宅がん医療総合診療料は訪問診療・訪問看護等にかかる費用を包括した点数のため、死亡診断加算など一部の例外を除き、訪問看護療養費は別途算定できません。医療機関との委託契約に基づき、委託金として報酬を受け取る形になります。

24時間対応体制加算は、訪問看護ステーションと医療機関のどちらが算定できますか?

医療機関と訪問看護ステーションが同時に算定することはできず、どちらか一方のみとなります。あらかじめ医療機関との間でどちらが算定するかを取り決めておく必要があります。

在宅がん医療総合診療料の点数は、訪問回数が多いほど高くなりますか?

いいえ。在宅がん医療総合診療料は1週を単位とした点数であり、その週の訪問日数が多くても少なくても、算定される点数自体は変わりません。

委託金の金額はどのように決まりますか?

法令で一律の金額が定められているわけではなく、医療機関と訪問看護ステーションの間で個別に取り決めます。訪問看護医療保険請求相当額を目安にする場合や、独自の一律単価を設定する場合など、事業所によって考え方が異なります。トラブルを避けるため、必ず書面で契約を取り交わしておきましょう。

在宅がん医療総合診療料と混同しやすい制度はありますか?

在宅時医学総合管理料(施設入居時等医学総合管理料を含む)と混同されやすいですが、別の点数です。在宅時医学総合管理料は末期がん以外の在宅患者も対象になる管理料で、訪問看護療養費との包括関係も在宅がん医療総合診療料とは異なる部分があります。あわせて内容を確認しておくと理解が深まります。

POINT

担当している利用者が「末期がん」の診断を受けた場合、主治医が在宅がん医療総合診療料への切り替えを検討していないか、早めに確認しておくと、請求方法の変更に慌てず対応できます。

あわせて読んでおきたい関連記事

在宅がん医療総合診療料と混同されやすい「在宅時医学総合管理料」についても、あわせて理解しておくと制度の全体像がつかみやすくなります。

在宅時医学総合管理料の解説を読む

まとめ|「包括点数」であることを理解して連携する

在宅がん医療総合診療料は、末期がんの利用者を支える医療機関にとって重要な仕組みであると同時に、訪問看護ステーションにとっては請求方法が通常と異なる特殊な点数でもあります。仕組みを正しく理解し、医療機関との連携・契約を丁寧に行うことが、利用者への安定したケア提供につながります。特に新規の利用者を受け入れる際や、既存の利用者の病状が進行した際には、この点数への切り替えが検討されていないかを、日頃から医療機関とこまめに情報共有しておくことが、請求ミスや思わぬトラブルを防ぐ近道になります。

この記事のまとめ
  • 在宅がん医療総合診療料は、在支診・在支病が末期がん患者に提供する包括点数
  • 訪問診療・往診・訪問看護等の費用の多くがこの点数に含まれ、訪問看護療養費は原則算定不可
  • 訪問看護ステーションは医療機関との委託契約に基づき、委託金として報酬を受け取る
  • 委託金の金額・24時間対応体制加算の扱い等は、事前に書面で取り決めておくことが重要

制度を正しく理解し、医療機関との事前確認を徹底することが、円滑な連携の第一歩です。

次に読むべき関連記事

在宅がん医療総合診療料と同じく「包括」の考え方が重要な、在宅時医学総合管理料の包括範囲についても確認しておきましょう。

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上妻 裕弥看護師/MBA取得
株式会社ビジケア代表取締役/看護師・MBA取得。これまで200社以上の訪問看護事業所へ経営コンサルティング・BPOサービスを実施。経営者・管理者のサロン等も含めると500社を超える。単月黒字化から複数拠点展開、事業承継まで支援し、看護師の視点で「続く経営」をつくる。別法人にて自身でも全国に訪問看護ステーション展開している。