訪問看護の現場では、1回の訪問で90分(1時間30分)を超えるケアが必要な利用者さんが増えています。医療依存度の高い方、褥瘡が深い方、複数の処置が重なる方……「どうしても時間が足りない」という現場の声は珍しくありません。
そんなとき正しく活用したいのが長時間訪問看護加算(介護保険)です。ただし、「実際に1時間30分以上かかったから算定できる」というものではなく、事前の準備と要件の確認が欠かせません。この記事では算定要件・単位数・ケアマネジャーとの連携・実地指導対策まで、現場ですぐ使える情報を徹底解説します。
- 長時間訪問看護加算の定義と算定要件(2つの条件)
- 特別管理加算の対象者16種と判断のポイント
- ケアプランへの位置付け方とケアマネジャーとの連携手順
- 単位数・利用者負担の目安と算定ミスを防ぐ注意点
- 実地指導で準備すべき書類と確認ポイント一覧
目次
長時間訪問看護加算とは?介護保険での位置づけ
長時間訪問看護加算とは、特別管理加算の対象となる利用者に対して、ケアプランに1時間30分以上の訪問看護が位置付けられており、実際にその時間以上のサービスを提供した場合に算定できる加算です。
介護保険の訪問看護では、「訪問看護費Ⅰ-4(1時間以上1時間30分未満)」が基本報酬の上限区分となっています。そのため、1時間30分以上のサービスを提供することが事前に見込まれる利用者へのケアを評価する仕組みとして、この加算が設けられています。令和6年度介護報酬改定においても、単位数・要件ともに変更はなく、引き続き算定できます。
要支援1・2の利用者(介護予防訪問看護)でも「長時間介護予防訪問看護加算」として同様に算定できます。詳細は後述します。

長時間訪問看護加算は「実際に長時間かかったから」という理由だけでは算定できません。事前のケアプランへの位置付けと、特別管理加算の対象者であることの2点が必ずセットで必要ですよ。
算定要件は2つ|どちらか一方でも欠けると算定不可
長時間訪問看護加算には、必ず両方を満たさなければならない要件が2つあります。一方でも欠けると算定はできません。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 要件① | 特別管理加算の対象となる利用者への訪問であること |
| 要件② | ケアプランに1時間30分以上の訪問看護が位置付けられていること(事前の計画が必須) |
要件①は「どの利用者が対象か」、要件②は「どのように事前計画されているか」に関するものです。急遽訪問が長引いたケースや、ケアプランに時間が明記されていない場合は、たとえ実際に1時間30分以上かかっていても算定できません。
「急変対応で時間が延びた」「アクシデントで長くなった」というケースは算定対象外です。あくまでも事前のケアプランへの位置付けが大前提です。
要件①:特別管理加算の対象者一覧(16種)
特別管理加算の対象とは、在宅において特別の管理を要する状態にある利用者のことを指します。令和6年度介護報酬改定後の現在も、以下の16種の状態・管理が対象です。
| # | 特別管理加算の対象となる状態・管理 | 区分 |
|---|---|---|
| 1 | 在宅悪性腫瘍等患者指導管理 | (Ⅰ)500単位 |
| 2 | 在宅気管切開患者指導管理 | (Ⅰ)500単位 |
| 3 | 気管カニューレを使用している状態 | (Ⅰ)500単位 |
| 4 | 留置カテーテルを使用している状態 | (Ⅱ)250単位 |
| 5 | 在宅自己腹膜灌流指導管理 | (Ⅱ)250単位 |
| 6 | 在宅血液透析指導管理 | (Ⅱ)250単位 |
| 7 | 在宅酸素療法指導管理 | (Ⅱ)250単位 |
| 8 | 在宅中心静脈栄養法指導管理 | (Ⅱ)250単位 |
| 9 | 在宅成分栄養経管栄養法指導管理 | (Ⅱ)250単位 |
| 10 | 在宅自己導尿指導管理 | (Ⅱ)250単位 |
| 11 | 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理 | (Ⅱ)250単位 |
| 12 | 在宅自己疼痛管理指導管理 | (Ⅱ)250単位 |
| 13 | 在宅肺高血圧症患者指導管理 | (Ⅱ)250単位 |
| 14 | 人工肛門・人工膀胱を造設している状態 | (Ⅱ)250単位 |
| 15 | 真皮を越える褥瘡の状態 | (Ⅱ)250単位 |
| 16 | 点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態 | (Ⅱ)250単位 |
上記①〜③は特別管理加算(Ⅰ)、④〜⑯は特別管理加算(Ⅱ)の対象です。長時間訪問看護加算の算定においては、(Ⅰ)・(Ⅱ)のどちらの対象者でも問いません。担当する利用者がいずれかに該当するかどうかを、訪問看護指示書の内容や利用者の状態から確認してください。

特別管理加算の対象かどうかは、主治医の訪問看護指示書の内容と利用者の実際の状態から判断します。判断に迷う場合は、主治医や担当ケアマネジャーに確認するのが確実ですね。
要件②:ケアプランへの位置付けと手続きの流れ
長時間訪問看護加算の算定において、ケアマネジャーが作成するケアプランに「1時間30分以上の訪問看護」が明記されていることは絶対条件です。ケアプランへの位置付けは、以下の流れで進めます。
- 訪問看護師からケアマネジャーへの情報提供利用者の状態(特別管理加算対象であること)と、1時間30分以上を要するケア内容・その理由を具体的に伝えます。医療処置の種類・手順・所要時間の目安を明確にしましょう。
- 担当者会議での確認・合意ケアマネジャーを含む担当者会議で、1時間30分以上の訪問が必要な根拠を関係者間で共有・合意します。この段階でケアプランへの反映を依頼します。
- ケアプランへの反映を確認ケアマネジャーが居宅サービス計画書(第2表・週間サービス計画表)に「訪問看護(1時間30分以上)」として明記されているか確認します。サービス提供票(第3表)にも時間が反映されているかチェックしましょう。
- 訪問看護計画書・指示書との整合確認訪問看護計画書の訪問予定時間がケアプランと一致しているか確認します。主治医の訪問看護指示書にもケア内容が適切に記載されているかあわせて確認してください。
ケアプランには「1時間30分以上」と具体的な時間が明記されていることが重要です。「長時間」「長め」などの曖昧な記載では算定根拠として不十分です。実地指導でも時間の記載が確認されます。
長時間訪問看護加算の単位数と利用者負担の目安
令和6年度介護報酬改定後の単位数は以下のとおりです。変更はありません。
| 区分 | 単位数 | 算定単位 | 職種による差 |
|---|---|---|---|
| 長時間訪問看護加算(要介護) | 300単位 | 1回につき | なし(保健師・看護師・准看護師すべて同一) |
| 長時間介護予防訪問看護加算(要支援) | 300単位 | 1回につき | なし |
300単位は、訪問看護費の基本報酬に上乗せして算定します。利用者負担(1割の場合)の目安は、標準的な地域(単価係数1.00)では1単位=10円のため、1回あたり300円となります。地域の単価係数や利用者の負担割合(1〜3割)によって変わりますので、各事業所の所在地に応じた単価で計算してください。
また、長時間訪問看護加算は支給限度額管理の対象外です。区分支給限度基準額の上限に達していても、この加算は別枠で算定できます。
算定時の注意点・よくある間違い3つ
長時間訪問看護加算は要件が明確なだけに、確認不足やケアプランとの齟齬で算定ミスが起きやすい加算です。以下の3つの注意点を必ず押さえておきましょう。
予定外の急変対応やアクシデントにより、結果的に1時間30分以上かかったとしても、ケアプランに事前の位置付けがなければ算定できません。「実際に長くなったから加算する」という発想は誤りです。
長時間訪問看護加算を算定している場合、1時間30分を超過した部分についてステーション独自の利用料を徴収することはできません。超過分は加算の範囲内に含まれます。別途請求した場合は不正請求となります。
長時間訪問看護加算は「特別管理加算の対象者」への訪問が前提です。特別管理加算を実際に算定しているかどうかは問われませんが、利用者が対象状態でないにもかかわらず算定した場合は不正請求となります。対象の状態・管理に該当するかを必ず確認してください。
ケアマネジャーへの連絡と情報共有のポイント
長時間訪問看護加算を継続的・適切に算定するには、ケアマネジャーとの日常的な情報共有が欠かせません。特に以下の場面では速やかに連絡するようにしましょう。
- 利用者の状態変化で、新たに1時間30分以上のケアが必要になったとき
- 逆に、状態改善で1時間30分未満でも対応できるようになったとき(ケアプランの修正が必要)
- ケアプランの更新・見直し時期(時間設定の確認が必要)
- 主治医の指示内容・ケア内容が変更になったとき
ケアマネジャーへの説明では、「なぜ1時間30分以上必要なのか」の根拠を具体的に伝えることが重要です。訪問看護計画書を共有しながら、処置の手順・所要時間・頻度を示すと、ケアプランへの反映がよりスムーズになります。

ケアマネジャーも加算の仕組みを詳しく知らないことがあります。「この加算にはケアプランへの具体的な時間の記載が必須なんです」と丁寧に伝えることで、連携がよりスムーズになりますよ。
実地指導で準備すべき書類と確認ポイント
実地指導では、長時間訪問看護加算の算定の適正性が必ずと言ってよいほど確認されます。事前に以下の書類を整えておきましょう。
| 書類 | 実地指導での主な確認ポイント |
|---|---|
| サービス提供票(ケアプラン第3表) | 1時間30分以上の訪問看護が明記されているか。超過分を別途通常料金として算定していないか |
| 訪問看護記録書(II) | 実際の提供時間が適切に記録されているか。提供開始・終了時刻が記載されているか |
| 訪問看護計画書 | 訪問時間の記載がケアプランと一致しているか |
| 訪問看護指示書(主治医) | 特別管理加算対象となる状態・処置の記載があるか |
| 請求書・領収証 | 超過分の利用料を別途徴収していないか |
特にサービス提供票の時間記録と訪問看護記録書の実績時間が一致していることは最低限の要件です。ケアプランの計画時間と実際の訪問時間に差がある場合は、なぜそうなったかを記録上でわかりやすく説明できるようにしておきましょう。
月に一度、長時間訪問看護加算を算定している利用者について「ケアプランの時間記載・訪問看護記録の時間・実際の請求」が一致しているかを確認する習慣をつけると、実地指導への備えになります。
介護予防(要支援者)の場合:長時間介護予防訪問看護加算
要支援1・2の利用者(介護予防訪問看護)においても、同様の加算「長時間介護予防訪問看護加算」が設けられています。要件・単位数ともに要介護者向けと同一です。
| 項目 | 介護保険(要介護者) | 介護予防(要支援者) |
|---|---|---|
| 加算名 | 長時間訪問看護加算 | 長時間介護予防訪問看護加算 |
| 単位数 | 300単位/回 | 300単位/回 |
| 算定対象 | 特別管理加算対象者 | 特別管理加算対象者 |
| ケアプラン要件 | 居宅サービス計画に1時間30分以上 | 介護予防サービス計画に1時間30分以上 |
| 担当ケアマネ等 | 居宅介護支援事業所 | 地域包括支援センター等 |
要支援者においても医療依存度の高い方は存在します。介護予防サービス計画(予防プラン)を作成する地域包括支援センターに対して、同様の手順で1時間30分以上の訪問看護が必要な根拠を丁寧に説明し、計画への位置付けを依頼しましょう。
よくある質問(FAQ)
急変・アクシデントでケアが1時間30分を超えた場合も算定できますか?
算定できません。長時間訪問看護加算はケアプランに事前に1時間30分以上の訪問看護が位置付けられていることが必須要件です。急変対応やアクシデントにより予定外に時間が延長した場合は、算定の対象になりません。
1時間30分を超えた分の費用を利用者から別途徴収してもよいですか?
できません。長時間訪問看護加算を算定する場合、1時間30分を超過した部分についてステーションが定めた利用料を徴収することはできません。超過分は加算の範囲内となります。別途請求すると不正請求になるため注意してください。
准看護師が訪問した場合の単位数は異なりますか?
異なりません。長時間訪問看護加算は、保健師・看護師・准看護師のいずれが訪問した場合でも300単位で同一です。
特別管理加算を実際に算定していない場合でも、長時間訪問看護加算は算定できますか?
利用者が特別管理加算の対象者であれば、特別管理加算の実際の算定の有無にかかわらず長時間訪問看護加算は算定できます。ただし、対象者でないにもかかわらず算定することは不正請求となります。対象状態に該当するかを必ず確認してください。
長時間訪問看護加算は支給限度額の対象になりますか?
なりません。長時間訪問看護加算は区分支給限度基準額管理の対象外の算定項目です。支給限度額を超えている利用者でも、この加算は別枠で算定できます。
長時間訪問看護加算の算定要件のひとつ「特別管理加算」について、対象者の要件・単位数・算定の注意点を詳しく確認しておきましょう。
特別管理加算(Ⅰ)(Ⅱ)とは?【介護保険】を読む
まとめ|長時間訪問看護加算は「事前の計画」が算定のカギ
長時間訪問看護加算は、医療依存度の高い在宅利用者に必要なケアを継続しながら適正な報酬を確保するための重要な加算です。算定の核心は「特別管理加算の対象者であること」と「ケアプランへの事前の位置付け」の2点に尽きます。
- 長時間訪問看護加算は特別管理加算の対象者かつケアプランに1時間30分以上が位置付けられている場合に算定できる
- 単位数は300単位/回(保健師・看護師・准看護師いずれも同一)。令和6年度改定後も変更なし
- 急変・アクシデントによる時間延長は算定対象外。事前計画が絶対条件
- 1時間30分超過分の利用料を別途徴収することは不可(不正請求となる)
- 実地指導ではサービス提供票・訪問看護記録書・訪問看護計画書の時間記録の整合性が確認される
- 区分支給限度基準額管理の対象外のため、支給限度額到達後も算定できる
- 要支援者には「長時間介護予防訪問看護加算」として同様に算定できる(300単位/回)
ケアマネジャーと密に連携し、利用者の状態とケアの根拠をケアプランにしっかり反映させることが、適切な算定への第一歩です。
長時間訪問看護加算の算定後は、ケアマネジャーへの適切な報告・情報共有も重要です。何をどのように伝えるべきか、ポイントをおさらいしておきましょう。
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