

今回は、訪問看護ステーションの多機能化で、医療ニーズと介護ニーズを併せ持つ中重度の方に対応できる療養通所介護についてご説明していきます。
こちらの記事は令和3年度介護報酬改定に対応しています。
目次
療養通所介護とは?
療養通所介護は、医療ニーズと介護ニーズを併せ持つ在宅の中重度者等の通所ニーズに対応する観点から、平成18年に通所介護における療養通所介護の創設されました。
地域密着型サービスのひとつで、難病等、認知症、脳血管疾患後遺症、又はがん末期患者の方など常に看護師による観察を必要とする利用者を対象にした通所サービスです。
療養通所介護計画に基づき、利用者が施設に通い、入浴、排泄、食事等の介護その他の日常生活および機能訓練を日帰りで行うことをができます。
可能な限り自立して自宅療養ができるよう身体機能の維持や回復に向けた訓練や、利用者の社会的孤立感の解消、ご家族の介護の身体的・精神的な負担軽減などを目的としています。
施設は利用者の自宅から施設までの送迎も行います。
訪問看護事業所と併設されている場合や、障害福祉サービス等である重症心身障害児・者を通わせる児童発達支援等を実施している事業所が多いが多くみられており、普段は訪問看護を利用し、必要に応じて療養通所介護に通うという使い方ができますので、普段から慣れている看護師のケアを受けられる、という点で利用者さんやご家族は安心感を持ったうえで療養中の気分転換や機能訓練に利用することができる施設となります。
対象者とサービス内容
- 難病
- 認知症
- 脳血管疾患後遺症等の重度要介護者
- がん末期患者で常に看護師による医療ケアが必要な方
サービス内容は以下のようになります。
体調の確認
療養通所介護では、看護師による体調の確認を受けることができます。
状態に変化が起こりやすい病状の方も、看護師によるバイタルサイン測定や身体の観察により小さな変化を逃さずに、在宅療養生活を継続することができます。
異常が発見された場合にも医療との連携がなされていますので安心です。
生活介護
一般的な通所介護(デイサービス)と同じように、入浴や排泄、食事介助などに加え、経管栄養が必要な方も対応することができます。
利用者さんの状態やご自宅の状況によっては、ご自宅で入浴が難しいケースもありますので、そのような方が安全に整った設備のなかケアを受けられる体制となっているのが療養通所介護です。
医療的ケア
常駐の看護師がいますので医療的なケアを受けることができます。
点滴やインスリン注射、在宅酸素を行っている方、人工肛門の管理が必要な方や、褥瘡などの創傷処置が必要な方の管理も主治医の指示に基づいて行うことができます。
療養通所介護を利用するにあたって新たな指示書は必要ありませんが、緊急の対応ができるように、主治医と連携を取り情報共有をしておくことが重要です。
行えるケアの内容は事業所によって異なります。
療養通所介護の事業所数
事業所数は微増であり、今後地域包括ケアシステムの推進と制度の改善と共に増加を目指し、中重度の方の療養生活とご家族の介護負担軽減をより下支えしていく必要があります。
療養通所介護の利用者の介護度の分布
療養通所介護の利用者数はのうち要介護5の方が6割を超えています。
なお、障害高齢者日常生活自立度は、C1(自分で寝返りはうてるが常時臥床している)以上の者が約6割を占めており、介護度の高さとご家族のケアの負担の大きさがうかがえます。
主症病名としては脳血管疾患の方が3割を超え、次いで神経難病の方が1割強となっており、医療的なケアが必要である方が多いことを示しています。
療養通所介護利用者へのサービス提供状況
引用:厚生労働省HP 社保審-介護給付費分科会 第180回(R2.7.20) 資料2
利用者へ提供しているケアは、入浴介助、口腔ケア、排泄の援助、といった割合が高く、医療的な処置では、摘便、服薬指導・管理、経管栄養管理、喀痰吸引、を約4割の利用者に行っています。
創傷や褥瘡に対する処置を受けている利用者も約2割の利用者になっています。
訪問看護の時間だけではできない内容の関りができること、定員も少ないため、手厚いサービスが受けられ、自宅と異なる場所で過ごせるなどのメリットがあるといえます。
施設基準
- 定員:18名以下
- 配置基準:利用者の数が1.5に対し、提供時間帯を通じて専従する従業者が1以上確保されるために必要と認められる数以上(提供時間帯においては複数の看護師等の交代も可)
- 施設・設備:1名あたり6.4㎡以上で必要な設備・備品を準備すること。
- 管理の配置要件者:・常勤・専従で、その職務に従事する常勤の正看護師
(管理上支障が無い場合、同一敷地内にある他の事業所、施設等と兼務可能) - 提供時間帯を通じて、利用者の数が1.5に対し専ら当該指定療養通所介護の提供に当たる者が1名以上必要
- 1人以上は専ら指定療養通所介護の職務に従事する常勤の看護師
指定療養通所介護の提供に当たっては、利用者の主治医や利用指している訪問看護事業者等との密接な連携に努めなければならない、とされています。
療養通所介護の機能と運営
- 利用者の社会的孤立感の解消
- 心身の機能の維持
- 利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減
療養通所介護は他の居宅サービス同様にご家族の介護負担を減らすとともに、自宅以外での居場所や人との関わり、重度の障がいや病状が厳しい場合にも安全に配慮しながら機能訓練が行えるなどの利点を持っています。
また、医療的ケアを必要とした退院直後の利用者の在宅療養を支える対応が難しい事例の課題解決や他の通所介護では受け入れてもらえない利用者に対応できる部分にニーズがあるといえます。
利用者の病状の急変等に迅速に対応するため、緊急時対応医療機関の設置や、安全・サービス提供管理委員会を概ね6月に1回開催し、安全かつ適切なサービス提供の確保等について検討が必要です。
構成委員は管理者と地域の医師会、保険、医療または福祉の専門家からなる委員3人以上とされています。
その他、感染症対策の強化や、虐待防止の推進、認知症介護基礎研修の受講の義務付け、LIFE情報の収集・活用とPDCAサイクルの推進(努力義務)、会議や多職種連携におけるICT活用・利用者の状態確認におけるICT活用などの運営基準が設けられています。
令和3年度の改定では、これまで全ての利用者について看護職員が毎回訪問し通所できる状態か確認することが求められていたのですが、長時間・定期的に事業所を利用している者については、初回のサービス利用時を除き、ICTを活用し、通所できる状態であることの確認及び、居宅に戻った時の状態等を確認することができるようになりました。
療養通所介護の報酬
報酬の仕組みと加算・減算
療養通所介護の報酬は、令和3年度の介護報酬改定後より月額包括報酬となっています。
なお、以下の場合は加算・減算となります。
(1)中山間地域に居住する利用者への加算:別に厚生労働大臣が定める地域に居住する利用者への療養通所介護は、5/100の加算とする。
(2)サービス提供体制強化加算(Ⅲ):イ:48単位/月、(Ⅳ)ロ:24単位/月
別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして市町村長に届け出た事業所
イ 職員の総数のうち、勤続年数7年以上の者の占める割合が30/100以上であること。
ロ 職員の総数のうち、勤続年数3年以上の者の占める割合が30/100以上であること。
(3)介護職員処遇改善加算:(Ⅰ)、(Ⅱ)、(Ⅲ)
(4)介護職員等特定処遇改善加算:介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)または(Ⅱ)
(5)口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅰ):20単位/回 ※6月に1回を限度
従業者が利用者の口腔の健康状態のスクリーニング又は栄養状態のスクリーニングを行い、介護支援専門員に情報を文書で共有した場合に算定する。
(1)利用定員を超えた場合の減算:所定単位数の70/100を乗じて得た単位数を用いて算定する。
(2)看護・介護職員の欠員:所定単位数の70/100を乗じて得た単位数を用いて算定する。
(3)入浴介助を行わない場合の減算:事業所の都合により入浴介助を実施しない場合や、利用者側の事情により、療養通所介護を費算定する月に入浴介助を1度も実施しなかった場合は所定単位数の95/100 を乗じて得た単位数を用いて算定する。
※利用者の心身の状況や希望により、清拭又は部分浴を実施した場合はこの限りではない。
(4)サービス提供が過少である場合:算定月における利用者1人当たり平均回数が、月4回以下の場合は、所定の単位数の70/100に相当する単位数を算定する。
なお、月の途中から登録した場合又は月の途中に登録を終了した場合は以下のようになります。
基本単位:日割り計算(1日につきの算定単位)には、登録していた期間(登録日から当該月の末日まで又は当該月の初日から登録終了日まで)に対応した単位数とします。
日割り計算においても、月単位報酬同様に、入浴介助なし(95/100)、過少サービス(70/100)の有無による減算割合と、看護・介護職員欠員減算(70/100)及び、定員超過減算(70/100)が乗じられた単位数を算定することになっています。
他の療養通所介護事業所との併用は不可
利用者が一つの事業所の療養通所介護を受けている間は、当該事業所以外の療養通所介護事業所が療 養通所介護を行った場合は算定しない。
ケアマネジメントにより、療養通所介護以外のサービスは併用できることになっています。
発達支援事業との組み合わせ
療養通所介護は発達支援事業と組み合わせ、以下のように運営することができます。
療養通所介護を活用した児童発達支援事業等(訪問看護ステーション併設例)
療養通所介護と、主に重症心身障害児・者の児童発達支援事業等の組み合わせ
訪問看護と併設の療養通所介護が8割以上
医療的ケアが必要な利用者がその他の通所系サービスから利用を断られる理由として、「医療的ケアがあるため」という理由があると考えられます。
介護度や重症度が上がってしまっても外に出ていきたい、介護負担を減らしたい、というニーズに応えていくためには、看護師が常駐できる通所施設が必要となります。
療養通所介護事業の開設主体が運営している施設としては、全体では「訪問看護ステーション」が 42 件(85.7%)で最も多く、「居宅介護支援事業所」(67.3%)が続いている。併設・隣接事業所として挙げられているのも「訪問看護ステーション」(62.6%)が最も多く、療養通所介護事業の創設時の事業モデルである訪問看護ステーションの利用者に対して、一体的に通所サービスを提供する事業形態となっていた。
訪問看護と通所施設でのやり取りがスムーズであれば利用者さんも安心してケアを受けることができます。
療養通所介護が増えていない理由
地域包括ケアシステムの中では、重度になっても最期まで地域で暮らし続けることが目標であり、療養通所介護が担う機能と役割は大きいものと思います。
しかし、いまだ事業所数が微増にとどまり、利用者数が増えない背景には看護師や介護士の確保の難しさや、まだ療養通所介護自体が知られていないこと、体調が悪ければサービスがキャンセルになってしまいやすいことで報酬の確保にばらつきがあり経営が難しいといわれている、近年では新型コロナウイルスの影響など様々な理由があります。
まとめ
地域には独居や高齢者世帯が増え、また介護力はますます低下していきますし、医療・介護業界の人手不足も長きにわたる問題です。
訪問看護ステーションと療養通所介護が併設されることにより、今後起こると考えられる問題に対し、幅広く対応することができると考えられるでしょう。

今後の在宅療養者の増加に伴い、ニーズが高まる事業であることが予測されます。
地域包括ケアシステムの推進と療養通所介護についての今後の在り方については、今後も報酬改定のたびに検討と改善が行われていくものと考えられますので、これからの動きに注目していきたいところです。
参考:厚生労働省HP 社保審-介護給付費分科会 第180回(R2.7.20) 資料2
日本訪問看護財団 療養通所介護における令和3年度介護報酬改定について























