月途中の要介護度変更|請求と限度額の扱いを解説

「月の途中で要介護度が変わったけれど、この月の請求はどの介護度で計算すればいいの?」——区分変更申請の結果が月の途中で反映されたとき、訪問看護の請求担当者なら一度は迷う場面です。

結論から言うと、報酬請求と区分支給限度基準額とでは、適用するルールが異なります。この記事では、厚生労働省のQ&Aにもとづいて、月途中で要介護度が変更になった場合の請求の考え方を整理して解説します。

この記事でわかること
  • 月途中で要介護度が変わったときの報酬請求の考え方
  • 区分支給限度基準額はどちらの介護度を基準にするか
  • 区分変更の結果が判明する前の請求はどうするか
  • 給付管理票・介護給付費明細書での取り扱い

報酬請求は「サービスを提供した時点」の要介護度で行う

まず押さえておきたいのが、報酬請求のルールです。厚生労働省のQ&Aでは、次のような例で説明されています。

具体例

4月15日に区分変更申請を行い、要介護2から要介護3に変更となった場合、14日までは「要介護2」に応じた単位数で請求し、15日からは「要介護3」に応じた単位数で請求する。

つまり、月の途中で区分が変わっても、その月の請求を一律にどちらかの介護度でまとめるのではなく、実際にサービスを提供した日がどちらの介護度の期間に属するかで、単位数を切り替えて計算するのが原則です。

看護師 上妻
看護師 上妻

訪問看護の単位数自体は要介護度によって変わらないことが多いですが、区分支給限度基準額の管理や、他のサービスとの兼ね合いを考えるときには、この「日付で区切る」という考え方を理解しておく必要がありますね。

区分変更の結果が判明する前の請求はどうなる?

区分変更申請を出してから、実際に新しい要介護度が認定されるまでには一定の期間がかかります。この間の請求について、Q&Aでは次のように整理されています。

  • 変更申請中の当該月の報酬請求は、要介護状態区分の結果が判明した後に行う
  • 結果が判明した時点で、変更前・変更後それぞれの期間に応じた単位数で請求し直す

つまり、認定結果が出るまでは請求を保留し、結果が確定してから、月内の日付ごとに単位数を振り分けて請求する、という流れになります。

区分支給限度基準額は「重い方」の要介護度を適用する

報酬請求のルールとは別に、もう一つ重要なのが区分支給限度基準額(利用者が1か月に利用できるサービス量の上限)の扱いです。こちらは報酬請求とは異なるルールが適用されます。

注意

先ほどの例(4月15日に要介護2から要介護3に変更)の場合、4月分の訪問サービスに関する区分支給限度基準額は、重い方の要介護状態区分である「要介護3」の基準額を適用するとされています。報酬の単位数計算とは別に、限度額管理は月を通して「重い方」の基準で行う点に注意が必要です。

これは、訪問サービス区分の支給限度額管理の期間が「要介護認定の有効期間に係る日が属する月について、当該月の初日から末日までの1か月間」とされていることに関連しています。月の途中で区分が変わった場合でも、限度額管理はその月単位でまとめて行うため、より重い方の要介護状態区分の基準額が適用される、という考え方です。

看護師 上妻
看護師 上妻

「請求は日付で区切る」「限度額は月単位で重い方」という、2つのルールが同時に動いている点が分かりにくいポイントです。ケアマネジャーから給付管理票の内容について問い合わせがあったときも、この2つを分けて説明すると伝わりやすいですよ。

給付管理票・介護給付費明細書での取り扱い

要介護状態区分が月の途中で変更になった場合、給付管理票や介護給付費明細書に記載する要介護状態区分、および区分支給限度額管理を行う訪問・通所サービスや短期入所サービスの要介護状態区分の取り扱いについても、実務上迷いやすいポイントです。基本的な考え方は上記のとおりですが、実際の記載方法は保険者・国保連合会によって案内が分かれる場合があるため、不明な点は居宅介護支援事業所や保険者に確認しながら進めることをおすすめします。

看護師 上妻
看護師 上妻

給付管理票の作成・提出は居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)の役割ですが、訪問看護ステーション側も「どの介護度で単位数が計算されているか」を把握していないと、請求時のズレに気づけません。疑問があれば遠慮なくケアマネジャーに確認しましょう。

要支援から要介護に変わり、担当事業所が変わる場合

もう一つ、実務でつまずきやすいのが、月の途中で要支援状態区分から要介護状態区分に変更となり、あわせて担当する事業所(地域包括支援センター・介護予防支援事業者と、居宅介護支援事業者)が変わるケースです。この場合の給付管理票の作成・提出について、厚生労働省のQ&Aでは次のように整理されています。

  • 要支援から要介護に変わった場合:月末時点で担当していた居宅介護支援事業者が給付管理票を作成・提出し、居宅介護支援費もあわせて請求する
  • 要介護から要支援に変わった場合(逆のケース):月末時点で担当していた地域包括支援センター(介護予防支援事業者)が給付管理票を作成・提出し、介護予防支援費を請求する

つまり、月の途中で担当事業所が切り替わっても、その月分の給付管理票は「月末時点で担当していた事業所」がまとめて作成・提出する、というのが原則です。訪問看護ステーションとしても、利用者の要支援・要介護の切り替わりのタイミングでは、どちらの事業所が当該月の給付管理を担当するのかを確認しておくと、請求時の行き違いを防げます。

なぜ請求と限度額でルールが違うのか

「報酬請求は日付で区切るのに、なぜ限度額は月単位でまとめて重い方を適用するのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。これは、それぞれの制度が持つ目的の違いによるものと考えられます。

報酬請求は、実際に提供したサービスの内容・時期に応じて公平に算定するための仕組みであるため、日々の実態に即して単位数を切り替える必要があります。一方、区分支給限度基準額は「1か月にどれだけのサービス量まで保険給付の対象にできるか」という上限管理の仕組みであり、月の途中で区分が変わったからといって上限自体を日割りで細かく変動させると、かえって利用者・事業所双方にとって管理が煩雑になります。そのため、限度額管理については月単位でまとめ、利用者に不利益が生じないよう重い方の基準額を採用する、という整理になっていると考えられます。

訪問看護ステーションの実務で気をつけたいポイント

区分変更にともなう請求の切り替えは、事業所内の記録・システム入力の面でもいくつか注意が必要です。

  • 訪問看護記録・請求ソフトの利用者情報を、変更日を境に正しい要介護度に更新できているか確認する
  • 区分変更の結果が届くタイミングは、訪問看護ステーションよりも先にケアマネジャー・区市町村に通知されることが多いため、担当ケアマネジャーへの定期的な確認を習慣にする
  • 区分変更のタイミングと、訪問看護の新規利用開始(初回加算の対象になるかどうか)を混同しないよう注意する。区分変更はあくまで既存利用者の要介護度が変わるだけであり、新規に訪問看護の利用が始まったわけではない
  • 月をまたいで区分変更の結果待ちになっている利用者がいる場合、請求担当者間で「保留中」の状態を共有し、請求漏れ・二重請求を防ぐ
看護師 上妻
看護師 上妻

区分変更の連絡がケアマネジャーから来たら、すぐに事業所内の利用者台帳・請求ソフトの情報を更新する運用にしておくと、月末の請求作業でバタバタしなくて済みますよ。

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区分支給限度基準額の考え方とあわせて、限度額に含まれない加算についても確認しておくと理解が深まります。

限度額に含まれない加算を読む

よくある質問

月の途中で要介護度が変わった場合、その月全体を新しい介護度で請求し直すのですか?

いいえ、月全体をどちらかの介護度でまとめるのではなく、実際にサービスを提供した日がどちらの介護度の期間に属するかで単位数を切り替えて請求します。変更日の前日までは変更前の介護度、変更日以降は変更後の介護度で計算するのが原則です。

区分変更申請の結果がまだ出ていない間の訪問看護の請求はどうすればよいですか?

要介護状態区分の結果が判明するまで、当該月の報酬請求は保留となります。結果が判明した後に、月内の日付ごとに変更前・変更後の単位数を振り分けて請求することになります。

区分支給限度基準額は、変更前と変更後のどちらの要介護度で計算するのですか?

重い方の要介護状態区分の基準額を適用します。報酬請求は日付で区切って計算しますが、限度額管理はその月を通して、より重い方の要介護状態区分の基準額でまとめて行われます。

給付管理票に記載する要介護状態区分はどちらになりますか?

基本的な考え方は報酬請求・限度額管理と同様ですが、実際の記載方法は保険者・国民健康保険団体連合会によって案内が分かれる場合があります。不明な点は居宅介護支援事業所や保険者に確認しながら進めることをおすすめします。

月の途中で要支援から要介護に変わり、担当事業所も変わった場合、給付管理票は誰が作成しますか?

月末時点で担当していた居宅介護支援事業者が、その月分の給付管理票を作成・提出し、居宅介護支援費もあわせて請求します。逆に要介護から要支援に変わった場合は、月末時点で担当していた地域包括支援センター(介護予防支援事業者)が給付管理票を作成・提出し、介護予防支援費を請求します。

出典・参考

請求・限度額管理の実務上の取り扱いは、保険者・国民健康保険団体連合会により案内が分かれる場合があります。実際の請求にあたっては、所属先の案内・システムの設定もあわせてご確認ください。

まとめ|「請求は日付で区切る」「限度額は重い方」の2段構え

月の途中で要介護度が変わった場合、報酬請求と区分支給限度基準額とで異なるルールが適用される点が、この制度のわかりにくさの正体です。

この記事のまとめ
  • 報酬請求は、サービスを提供した日がどちらの介護度の期間かで単位数を切り替える
  • 区分支給限度基準額は、その月を通して重い方の要介護状態区分の基準額を適用する
  • 区分変更の結果が判明するまで、当該月の請求は保留となる
  • 給付管理票の記載方法など実務の細部は、保険者・国保連合会に確認しながら進める

2つのルールを分けて理解しておくことで、ケアマネジャーとのやり取りもスムーズになります。

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ABOUT US
上妻 裕弥看護師/MBA取得
株式会社ビジケア代表取締役/看護師・MBA取得。これまで200社以上の訪問看護事業所へ経営コンサルティング・BPOサービスを実施。経営者・管理者のサロン等も含めると500社を超える。単月黒字化から複数拠点展開、事業承継まで支援し、看護師の視点で「続く経営」をつくる。別法人にて自身でも全国に訪問看護ステーション展開している。