介護保険で訪問看護を提供する際、新規利用者を受け入れたタイミングで算定するのが「初回加算」です。
令和6年度(2024年度)介護報酬改定により、加算が 初回加算(Ⅰ)と初回加算(Ⅱ)の2区分 に再編されました。
本記事では、令和6年度介護報酬改定(令和6年6月1日施行分)に対応した最新の算定要件と、現場で間違いやすいポイントを、厚生労働省の通知・Q&Aを根拠に解説します。
Ns上妻運営指導でも頻出の加算なので、令和6年改定後の正しい要件を一緒に整理していきましょう!
目次
初回加算とは?
初回加算は、訪問看護ステーション等が 新規に訪問看護計画書を作成した利用者 に訪問看護を提供した場合、その月に 1月につき所定単位数 を加算できる介護給付費上の加算です。
新規受け入れ時には、利用者の状態把握、医療機関・主治医・ケアマネジャー等との連携、サービス担当者会議への参加、訪問看護計画書の作成と利用者・家族への説明・同意取得など、多くの業務が発生します。これらの取り組みを評価するのが初回加算の趣旨です。
⚠ 注意
初回加算は 介護保険のみ の加算です。医療保険の訪問看護療養費には「初回加算」という名称の加算はありません。
初回加算の単位数と区分(令和6年度改定で新設)
令和6年度介護報酬改定(令和6年6月1日施行)により、初回加算は (Ⅰ)と(Ⅱ)の2区分に再編 されました。
| 区分 | 単位数 | 該当ケース |
|---|---|---|
| 初回加算(Ⅰ) | 350単位/月 | 病院・診療所・介護保険施設から 退院・退所した日に 看護師が初回の訪問看護を行った場合 |
| 初回加算(Ⅱ) | 300単位/月 | (Ⅰ)に該当しない場合(退院・退所した日の翌日以降に初回訪問/退院・退所を伴わない通常の新規利用者など) |
📝 改定前との関係
改定前の初回加算(300単位/月)は、改定後の 初回加算(Ⅱ)に相当 します。(Ⅰ)は令和6年度改定で「要介護者等の円滑な在宅移行を支援する観点」から新設された区分です。
初回加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の 併算定はできません(同一月内のどちらか一方のみ)。
参照:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)
初回加算の算定要件
初回加算(Ⅰ)(Ⅱ)に共通する基本要件は次の3点です。
📋 算定要件
- 利用者が、過去2暦月において、当該訪問看護事業所から訪問看護(医療保険による訪問看護を含む)の提供を受けていないこと
- 新規に訪問看護計画書を作成し、利用者またはその家族に説明し同意を得ていること
- 訪問看護を実際に提供したこと
この上で、初回訪問日と退院・退所日の関係により、(Ⅰ)または(Ⅱ)に区分されます。
| 初回訪問の状況 | 算定する区分 |
|---|---|
| 退院・退所した日に初回訪問 | 初回加算(Ⅰ)350単位/月 |
| 退院・退所した日の翌日以降に初回訪問 | 初回加算(Ⅱ)300単位/月 |
| 退院・退所を伴わない新規利用者の初回訪問 | 初回加算(Ⅱ)300単位/月 |
対象となる「退院・退所」の施設
病院、診療所、介護老人福祉施設(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院、介護療養型医療施設
初回訪問を担当する職種の取扱い
初回加算(Ⅰ):告示上は「指定訪問看護事業所の 看護師 が初回の指定訪問看護を行った場合」と規定されています(退院・退所当日訪問は看護師が担当することが要件)。
初回加算(Ⅱ):原則として看護職員(保健師・看護師・准看護師)が初回訪問を行います。ただし、看護職員(准看護師を除く)と理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が連携して訪問看護計画書を作成している場合は、准看護師や理学療法士等が初回訪問を行っても算定可能です。
参照:厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1213」(老企第36号 一部改正:訪問看護費の取扱いを含む/PDF)
初回加算の留意点(よくある誤算定)
退院時共同指導加算と同月の併算定は不可
退院時共同指導加算と初回加算は、同月内で併算定できません。退院時共同指導加算は「退院月またはその翌月の初回訪問月」に算定するため、退院月の初回訪問では「退院時共同指導加算」を算定するか、「初回加算」を算定するかの選択になります。
「医療保険→介護保険切替で算定不可」は条件付き
「医療保険から介護保険に切り替わった場合は初回加算不可」とまとめられがちですが、正確には次のとおりです。
⚠ よくある誤解
判定軸は「保険種別の切替」ではなく、「同一事業所による過去2暦月の利用実績の有無」 です。「同一の訪問看護事業所が、過去2暦月以内に当該利用者へ訪問看護(医療保険分を含む)を提供している場合は算定不可」と理解してください。
たとえば、次のようなケースで判定が分かれます。
例A:介護保険で訪問看護 → 特別訪問看護指示書交付で医療保険訪問看護 → 介護保険に復帰
→ 同一事業所が直前まで訪問看護を提供しているため 算定不可
例B:A事業所で医療保険訪問看護 → 終了後3か月空く → B事業所で介護保険訪問看護を開始
→ B事業所では 算定可。A事業所での実績はB事業所の判定に影響しない
要介護⇔要支援の区分変更は算定可
要支援から要介護へ、または要介護から要支援への 区分変更があった場合、新たに訪問看護計画書を作成すれば初回加算を算定できます(2暦月以内に同一事業所での利用があっても算定可)。
参照:厚生労働省「平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」問38(PDF)
要介護内の2区分以上の変更は算定不可
要介護1から要介護3など、要介護内で2区分以上変更された場合は 算定不可 です(居宅介護支援等の支援費とは取扱いが異なります)。
複数のステーション利用時はそれぞれ算定可
1人の利用者が複数の訪問看護ステーションを同時に利用する場合、それぞれのステーションで算定要件を満たせば、 各ステーションが初回加算を算定 できます。
参照:厚生労働省「平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」問37(PDF)
「過去2月」の暦月の数え方
過去2月とは 60日間ではなく、暦月(月の初日から末日まで)の2か月 を指します。
Ns上妻「2月」を“60日”と勘違いして算定すると返戻の対象になります。必ず暦月でカウントしましょう!
| 訪問月 | 「過去2暦月」に該当する月 | 算定可否の判定 |
|---|---|---|
| 7月中に初回訪問 | 5月1日〜6月30日 | この期間に同事業所から訪問なし → 算定可 |
| 11月中に初回訪問 | 9月1日〜10月31日 | この期間に同事業所から訪問なし → 算定可 |
具体例で確認
例1:8/3訪問 → 9月・10月は利用なし → 11/2訪問
→ 11月の初回加算 算定可(過去2暦月=9月・10月に利用なし)
例2:8/3訪問 → 9月は利用なし → 10/30訪問
→ 10月の初回加算 算定不可(過去2暦月=8月・9月に8月利用あり)
参照:厚生労働省「平成21年4月改定関係Q&A(Vol.1)」問33(WAM NET掲載/PDF)
退院当日の訪問看護と初回加算(Ⅰ)
退院当日に訪問看護を提供して初回加算(Ⅰ)350単位/月を算定するためには、 退院当日に介護保険から訪問看護を算定できる前提条件 を満たす必要があります。
介護保険の訪問看護で 退院当日の訪問 を算定できるのは、原則として次のいずれかに該当する場合です(令和3年4月改正で②が追加)。
① 特別管理加算の対象者(別表第8に掲げる状態にある者)
② 主治医が退院当日の訪問看護が必要と認めた場合(訪問看護指示書にその旨を記載)
この前提を満たした上で、退院当日に看護師が初回訪問を行えば、 初回加算(Ⅰ)350単位/月の算定対象 となります。
運営指導でチェックされる書類
初回加算は算定件数が多く、運営指導でも重点的にチェックされる項目です。次の書類を整備しておきましょう。
📄 サービス提供票(実績) 初回加算が算定されているか
📄 訪問看護記録書 初回訪問の前2暦月に同事業所からの提供がないことが追える
📄 訪問看護計画書 初回訪問日以前に新規作成され、利用者または家族の同意(署名・押印等)が取得されている
📄 訪問看護指示書 主治医による発行日と内容、特別指示の有無
📄 退院時の連携記録 退院前カンファレンスの記録、医療機関との連絡記録(退院時共同指導加算との関係整理に必要)
Ns上妻運営指導で一番指摘されやすいのは「同意取得の証跡」と「2月の起算」です。書類のセットで根拠を残しましょう。
初回加算のQ&A
Q
一つの訪問看護事業所の利用者が、新たに別の訪問看護事業所の利用を開始した場合、別の事業所で初回加算を算定できますか?
A
算定可能です。ただし、別事業所でも新規に訪問看護計画書を作成し、利用者の同意を得る必要があります。
Q
同一月に、2か所の訪問看護事業所を新たに利用する場合、それぞれの訪問看護事業所で初回加算を算定できますか?
A
特別管理加算などとは異なり、それぞれの事業所で算定することができます。
Q
介護予防訪問看護を利用していた方が、要介護認定の更新等にともない同じ訪問看護事業所からサービス提供を受ける場合、過去2月以内に介護予防訪問看護の利用がある場合でも初回加算は算定できますか?
A
算定できます。要支援から要介護への区分変更があった場合(その逆も)、2月以内に訪問看護の利用があっても算定可能です。必ず訪問看護計画書を再度作成し、利用者の同意を得てください。
9. まとめ
📌 まとめ
令和6年度改定で初回加算は(Ⅰ)・(Ⅱ)の2区分となり、退院・退所当日の看護師初回訪問が高く評価されるようになりました。
適切な算定のためには、次の3点を必ず確認してください。
① 過去2暦月、同一事業所での利用がないこと
② 訪問看護計画書の新規作成と同意取得
③ 退院当日訪問の場合は介護保険側の算定要件(特別管理加算対象または主治医が必要と認めた場合)を満たすこと
運営指導で指摘の多い加算でもあるため、根拠書類(訪問看護計画書、訪問記録、指示書、サービス提供票)を整え、誤算定を防ぎましょう。
参考通知・告示・Q&A
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)
- 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1213」老企第36号一部改正(令和6年3月15日/PDF)
- 厚生労働省「平成21年4月改定関係Q&A(Vol.1)」問33(WAM NET掲載/PDF)
- 厚生労働省「平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」問36・37・38(PDF)
※本記事は2026年5月時点で公表されている厚生労働省の通知・告示・Q&Aを根拠に作成しています。最新の運用については、必ず厚労省の通知・自治体の運用通知・各都道府県国保連の取扱いをご確認ください。









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