退院支援で訪問看護を導入するとき、「訪問看護指示書の日付は退院日にすればいいのか」「退院当日から訪問して大丈夫なのか」と迷う場面があります。退院当日は入院期間として扱われるため、通常の在宅療養時とは算定ルールが異なる点に注意が必要です。思い込みで対応してしまうと、算定できるはずの加算を取りこぼしたり、逆に算定できない請求をしてしまったりするリスクがあります。
この記事では、退院時の訪問看護指示書の日付の考え方と、退院当日の医療保険・介護保険それぞれの算定ルール、退院前カンファレンスで確認すべきポイントを整理して解説します。
- 訪問看護指示書の日付は退院日をどう扱うべきか
- 医療保険での退院当日の訪問看護の算定ルール
- 介護保険での退院当日の訪問看護の算定ルール
- 退院時共同指導加算の仕組み
- 退院前カンファレンスで確認しておくべきこと
目次
結論|指示書は退院日を含む入院期間中に発行してもらう
訪問看護指示書は、退院日を含む入院期間中に発行してもらい、指示期間は退院日を起算日として記載するのが基本的な考え方です。あわせて、主治医が「退院当日の訪問看護が必要である」旨を指示書に明記しているかを必ず確認しましょう。この記載の有無を見落とすと、退院当日の訪問が算定要件を満たさない扱いになってしまいます。退院日当日から訪問看護を開始する予定がある場合、この記載の有無が算定可否を左右します。逆に言えば、退院当日の訪問予定がない場合でも、指示期間の起算日だけは退院日を基準に正しく整理しておく必要があります。
医療保険における退院当日の算定ルール
医療保険で訪問看護を利用する場合、退院日は入院期間として扱われるため、その日に訪問看護基本療養費を算定することはできません。代わりに、退院日の翌日以降、初めて訪問看護を実施した日に、訪問看護管理療養費に加算して退院支援指導加算を算定する仕組みになっています。
なお、退院支援指導加算は退院に係る指導1回についての算定であり、複数回の利用は保険給付の対象外です。万一、翌日以降の初回訪問前に利用者が死亡・再入院した場合は、その時点で退院支援指導加算を単独算定できるとされています。こうした例外規定があることも知っておくと、想定外の事態が起きた際にも慌てず対応できます。

医療保険の場合、「退院日当日は算定できない」という前提を、利用者さんやご家族にも事前にお伝えしておくと、当日の請求について誤解が生じにくくなりますよ。

介護保険における退院当日の算定ルール
介護保険で訪問看護を利用する場合は、医療保険とは異なる扱いになります。特別管理加算の対象者であれば、退院当日から回数の制限なく訪問看護を利用でき、通常どおり時間区分に応じた訪問看護費を算定できます。また、令和3年度の制度改正以降は、特別管理加算の対象者でなくても、主治医が退院当日の訪問看護が必要と認めた場合には、同様の対応が可能とされています。この場合も、指示書に主治医の判断がわかる記載があることが前提になるため、記載内容の確認を怠らないようにしましょう。
| 保険区分 | 退院当日の訪問看護 |
|---|---|
| 医療保険 | 訪問看護基本療養費は算定不可。翌日以降の初回訪問時に退院支援指導加算を算定 |
| 介護保険(特別管理加算対象者) | 退院当日から制限なく利用可能。通常どおり時間区分での算定 |
| 介護保険(対象者以外) | 主治医が必要と認めた場合は、対象者と同様の対応が可能 |

退院時共同指導加算という仕組みもある
医療保険・介護保険共通の制度として、退院時共同指導があります。入院中に医療機関の職員と訪問看護師が共同で退院後の在宅療養に向けた指導を行った場合に算定できるもので、医療保険では退院時共同指導加算として一定額が、介護保険では初回訪問時に一定単位数が算定できるとされています。
退院支援指導加算・退院時共同指導加算のいずれも、訪問看護指示書の内容と密接に関わるため、指示書に必要な記載があるかどうかを事前にチェックしておくことが重要です。特に退院時共同指導は、実施した記録(誰がいつどのような指導を行ったか)を残しておかないと、後から算定要件を満たしていたことを証明しづらくなる点にも注意しましょう。
退院当日の訪問看護を予定している場合、指示書に「退院当日の訪問看護が必要」という趣旨の記載がなければ、算定要件を満たさない扱いになるリスクがあります。退院前カンファレンスの場で、この記載の要否を主治医と直接確認しておきましょう。
退院日の訪問看護指示書、確認しておきたいチェックリスト
退院支援を担当する訪問看護ステーションとして、指示書を受け取った際に次の点を確認しておくと、退院当日の対応に不備が生じにくくなります。
- 指示期間の起算日が退院日になっているか
- 退院当日の訪問看護が必要である旨が記載されているか(当日訪問を予定している場合)
- 介護保険利用の場合、特別管理加算の対象者かどうか(対象者かどうかで退院当日の扱いが変わるため必須の確認事項)
- 特別管理加算の対象外の場合、主治医が退院当日の訪問看護の必要性を認めているか
- 退院時共同指導の実施記録が残っているか

退院日は病院側もご家族もバタバタしがちなタイミングです。だからこそ、指示書の記載事項は退院前カンファレンスの段階で先回りして確認しておくのがおすすめですよ。
訪問リハビリを併用する場合の退院日の考え方
退院直後から訪問リハビリを併用する場合は、訪問看護指示書とは別に、訪問リハビリ側の指示(事業所に所属する医師による指示)も必要になります。訪問看護の指示は在宅の主治医から、訪問リハビリの指示は事業所所属の医師から、それぞれ別の流れで進む点を押さえておきましょう。退院前カンファレンスの場で、訪問看護・訪問リハビリそれぞれの指示がいつから有効になるのかを、双方の関係者で確認しておくとよいでしょう。
退院の連絡を受けたら、退院前カンファレンスの調整を
退院支援をスムーズに進めるには、退院の連絡を受けた時点で、できるだけ早く退院前カンファレンスの日程を調整することが重要です。カンファレンスの場では、指示書の日付・記載内容だけでなく、退院当日の訪問体制、緊急時の連絡方法、必要な物品の準備状況なども合わせて確認しておきましょう。参加者は病院側の医師・看護師・退院支援担当者、在宅側の訪問看護師・ケアマネジャーなど多職種にわたることが一般的で、限られた時間の中で漏れなく確認するには事前の準備が欠かせません。
退院前カンファレンスは、指示書の内容を主治医に直接確認できる貴重な機会です。「退院当日の訪問看護が必要」の記載の有無、特別訪問看護指示書の要否など、書面だけでは分かりにくい点をその場で解消しておきましょう。
特別訪問看護指示書が絡む退院支援のケースについては、以下の記事もあわせてご確認ください。
よくある質問
訪問看護指示書の日付は退院日にすればよいですか?
指示書自体は退院日を含む入院期間中に発行してもらい、指示期間は退院日を起算日として記載します。あわせて、退院当日の訪問看護が必要である旨が明記されているかを確認しましょう。
医療保険の場合、退院当日に訪問看護を行うと報酬は発生しますか?
退院当日は入院期間として扱われるため、訪問看護基本療養費は算定できません。翌日以降の初回訪問時に退院支援指導加算を算定する形になります。
介護保険なら退院当日から訪問看護費を算定できますか?
特別管理加算の対象者であれば、退院当日から制限なく利用でき、通常どおり算定できます。対象者でなくても、主治医が必要と認めた場合は同様の対応が可能とされています。
退院時共同指導加算とは何ですか?
入院中に医療機関の職員と訪問看護師が共同で、退院後の在宅療養に向けた指導を行った場合に算定できる加算です。医療保険・介護保険それぞれに設けられており、指示書の内容とあわせて確認しておく必要があります。
退院直後に訪問リハビリも併用する場合、注意点はありますか?
訪問看護指示書とは別に、訪問リハビリ側の指示(事業所所属の医師による指示)も必要です。退院前カンファレンスの場で、それぞれの指示がいつから有効になるのかを確認しておきましょう。

まとめ|退院当日の指示書記載と算定ルールをセットで押さえよう
退院時の訪問看護指示書は、退院日を含む入院期間中に発行してもらい、退院当日の訪問看護の要否を明記してもらうことが重要です。医療保険・介護保険で退院当日の扱いが大きく異なる点、訪問リハビリを併用する場合は別の指示が必要になる点もあわせて押さえておくと、退院後の在宅生活をスムーズにスタートさせやすくなります。
- 指示書は退院日を含む入院期間中に発行し、退院日起算で記載する
- 医療保険は退院当日の基本療養費算定不可。翌日以降に退院支援指導加算
- 介護保険は特別管理加算対象者なら退院当日から制限なく利用可能
- 退院時共同指導加算という医療保険・介護保険共通の仕組みもある
- 退院前カンファレンスで指示書の記載内容を主治医と直接確認する
- 訪問リハビリを併用する場合は、訪問看護とは別の指示が必要になる
入院時の指示書対応、特別訪問看護指示書の交付要件、訪問リハビリ併用時の指示の考え方については、関連記事もあわせてご確認ください。























