小児の訪問看護でよくある対象疾患を紹介します!

訪問看護とは、看護師などが居宅を訪問して、主治医の指示や連携により行う看護 (療養上の世話又は必要な診療の補助)です。

訪問看護を受けられる方は、疾病や障がいなどがあり、居宅で療養をしながら生活をされており、主治医が訪問看護を必要と認めた方です。

訪問看護の対象者は、0歳の小児から高齢者まで、年齢等を問わず全ての方を対象としますので、利用者さんには赤ちゃんやお子さんもいます。

在宅療養をしている小児はここ10年で約3倍にも増え、現在小児訪問看護のニーズは高まっています。

令和4年度厚生労働省委託事業在宅医療関連講師人材養成事業研修会「訪問看護の対象者の理解」

そこでこちらの記事では、小児の訪問看護でよくある対象疾患を紹介しています

これから訪問看護に挑戦したい方や小児の訪問看護に挑戦したい方は、ぜひ参考にしてください。

 

小児の訪問看護でよくある対象疾患

 

小児の訪問看護で関わることが多い疾患を3群にわけて解説します。

 

小児訪問看護でよくある対象疾患
  • 先天性疾患
  • 出生時障害
  • 小児がんの治療を受けている子供

 

先天性疾患

先天性疾患とは、生まれつき身体や臓器の機能に異常がある疾患のことです。

脳や心臓、消化管をはじめとする様々な臓器で異常が起こる可能性があり、その症状や程度も児によって様々です。

そのため、胎児に先天的異常が認められた場合は、その種類や症状、程度などに応じた治療法や対応を選ぶ必要があります。

日本における先天性疾患(先天奇形・先天異常)の発生率は、一般的な水準で3~5%とされています。

環境省「第10章 健康管理 10.6 妊産婦に関する調査」

先天性疾患には大きく分けると4つの種類があり、染色体によるもの、遺伝的によるもの、多因子によるもの、環境因子などによるものなどがあります。

 

  1. 心臓病(心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、ファロー四徴症など)
  2. 染色体疾患
  3. 先天性代謝異常
  4. 先天奇形

 

およそ100人に1人は、生まれたときに心臓に何らかの問題を持っています。

先天性心疾患には、心房中隔欠損症や、心室中隔欠損症、動脈管開存症などがあります。

生まれたときから心臓に異常がある病気を「先天性心疾患」と呼んでいます。

心臓の先天性疾患は、乳児期の主要な死亡原因です。

世界では先天性疾患によって、年間295,000人の赤ちゃんが生後28日以内に死亡していると報告されています。

しかし、先天性疾患が必ず生命にかかわる原因になるわけではありません。

一般的に先天性疾患の有無は、生まれた時や生後1年以内に日常の動きや乳幼児健診によって明らかになるケースが多いです。

病状の程度や状態によっては、薬で管理したり、手術で治療したりできる疾患もあります。

先天性疾患のある子どもは、適切な治療と対応によって社会に適応していくことも可能ですが、その一方で、乳児期に死亡してしまうケースも少なくありません。

代表的な染色体疾患にはダウン症候群、エドワーズ症候群、パトウ症候群があり、染色体疾患のうちの70%強を占めます。

このうち、最も割合の大きいダウン症候群は、特徴的な顔貌や知的障害などが現れる疾患ですが、他の染色体疾患に比べると寿命は長く、壮年まで生きる人も少なくありません。

症状に適した対応を行えば、社会の中で生活していくことが可能です。

一方、知的障害や重度の小頭症などを示すエドワーズ症候群や、顔面の奇形、小眼球症などが起こるパトウ症候群は生存率が極めて低く、1年以内に死亡するケースが大半を占めています。

また、先天性代謝異常とは、生まれつき食べ物に含まれる栄養素をうまく代謝できなかったり、ホルモンの分泌に異常が現れたりする疾患です。

 

厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計月報年計の概況」
1歳未満の乳児死亡のうち、先天奇形、変形及び染色体異常が占める割合は男児が32.3%、女児が38.3%と、いずれも3割を超えています。

令和3年(2021) 人口動態統計月報年計(概数)の概況

 

出生時障害

異常分娩により出生時に低酸素となり重度の障害を負う赤ちゃんもいます。

 

脳性麻痺
脳性麻痺は、出生前後の低酸素や感染症等により脳が障害を受けることによって引き起こされることがあります。
一方、原因が全く分からない場合も少なくありません。

 

脳性麻痺は、受胎から新生児期(生後4週間以内)までの間に生じた脳の非進行性病変に基づく、永続的かつ変化しうる運動および姿勢の異常です。

ただし、進行性疾患、一過性の運動障害又は将来正常化するであろうと思われる運動発達遅滞を除きます。

脳性麻痺の小児には、体が反り返りやすい、手足がこわばってかたくなるなどの症状があります。

このような特徴的な症状を示さない場合でも、生後数か月から数年経って、首の座り方や寝返り、お座り、はいはい等の時期が遅いなど運動発達の遅れで気づかれることがあります。

 

小児がんの治療を受けている子供たち

 

小児がんの治療法が進歩しており、生存率も向上しています。

しかし、治療には複雑な医療器具や治療法が必要となり、在宅でも医療的ケアが必要な子供たちが増えています。

病気の進行によって、子供が痛みや不快感を感じる場合があり、訪問看護師は、緩和ケアを提供し、子どもの症状を緩和します。

例えば、痛みのコントロール、口腔ケア、入浴のアシストなどのケアに期待されています。

 

まとめ

わが国は、周産期先進医療の進歩・発展により、500gで生まれても命が助かる「乳児死亡率が世界最低レベルの国」です。

その高い医療水準により、出生時に疾患や障害があり、これまでであれば命を落としていた赤ちゃんを救うことができるようになりました。

在宅で医療的ケアを続けながら療養する小児とそのご家族にとって、訪問看護師は頼もしい存在です。

私自身、小児科での看護経験はまったくなく訪問看護を始めましたが、管理者や同僚スタッフにレクチャーを受けながら一歩一歩学び、小児訪問看護の楽しさを感じています。

小児とそのご家族を共に支援していく小児訪問看護は、大変さもありますがとてもやりがいのある看護です。

今回紹介した小児の訪問看護でよくある対象疾患についての知識を深め、今後ますますニーズが高まっていく小児訪問看護に、ぜひ挑戦してみてください。

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ABOUT US
甲谷 多恵子看護師/ライター
看護師/急性期の総合病院で血液内科、レジデントの研修(内科混合)病棟等の病棟・外来勤務を経験。総合病院で15年間勤務後、訪問看護ステーションに転職。新規立ち上げからの管理者経験あり/デンマーク研修機会に恵まれたことを機に、訪問看護の可能性を再確認、多職種連携の中で専門性を発揮できるよう何事も勉強の毎日/北海道在住