訪問看護に「疲れた…」と感じる場面と現役訪問看護師が実践している7つの対策

 

「訪問看護はやりがいがある仕事。でも…疲れた!」

こんな風にお悩みの訪問看護師さんは、少なくないのではないでしょうか。

私も訪問看護ステーションに従事して5年になりますが、同じように感じる時があります。

この先もずっと、同じような日々が続くのかと考えると、明日の仕事に行くのが嫌になってしまうこともありますね。

では、どうしたら蓄積した疲れをとり、前を向き直すことができるのでしょう。

 

今回は、訪問看護によく聞かれる「疲れた…」と感じる場面と、その対策をまとめました。

仕事に疲れた訪問看護師さんの悩みを解決することができればと思います。

 

訪問看護に「疲れた…」と感じる場面

 

繁盛期で訪問件数が多い

訪問看護では、繁盛期と閑散期があります。

繁盛期とは、新規の利用者さんが急増する時期です。

病院で働いた経験のある看護師さんは想像しやすいと思いますが、訪問看護の繁盛期は病院の入院が増える時期から遅れてやってきます。

急性期の治療を終え、在宅復帰する利用者さんが退院して来るためです。

退院直後の利用者さんは体調変化を来しやすく、追加訪問や緊急訪問で訪問件数が増えることがよくあります。

通常より慌ただしく訪問していると、体力的にも精神的にも疲れたと感じることが増えます。

また、多忙な訪問業務に加えて、訪問看護計画書や訪問看護報告書の作成など書類作成業務も入ってくる時期には本当に忙しく感じます。

 

利用者さんの体調悪化時には頭をフル稼働する

予測可能な状態変化であれば、医療処置の多い利用者さんでも落ち着いて対応できる方が多いと思います。

在宅でも病院と同じように利用者さんの急変はあり得ます。

急な対応が必要となる場合があり、またそれが重なることも少なくありません。

急変があれば、医師に報告・連絡・指示受けを迅速に行う必要があり、そのほかにも不在のご家族やケアマネジャーへの連絡も必要となります。

場合によっては、次に訪問を予定している利用者さんの連絡・調整を検討する必要があるかもしれません。

迅速な対応や幅広い配慮を行う訪問看護の業務に慣れるまでは、特に疲労を感じます。

 

オンコールの緊張感が取れない

オンコールは出動がなくても持つことだけで緊張する、という方は少なくありません。

訪問看護は様々な年齢や疾患の利用者さんが利用しており、オンコール当番を担う際には「自分で対応できるだろうか?」と心配になることがあります。

また、スマホや携帯電話を常に持ち歩いて意識している状況は、精神的な疲れを感じさせます。

緊急訪問が必要となった場合、多くの情報を処理して対応します。

深夜に緊急訪問があった場合には、対応終了後にも緊張感が取れず寝付きにくいこともあります。

オンコールにある程度慣れるまでは、出動があってもなくてもぐっすり眠れないこともあると思います。

寝不足で翌日の仕事に向かうと、「疲れたなぁ…」と感じますね。

 

提供した看護が合っているか不安になる

通常の訪問時や、緊急訪問をした時にも起こり得るのが、提供した看護の妥当性について不安になることです。

訪問看護は1人での訪問がメインです。

提供した看護の方向性が間違っていないか、自身の対応は不足がなかったかと自問自答することもよくあります。

管理者や同僚に自発的に相談しなければ、上記のような不安は埋もれてしまう可能性があります。

職場での関係性や多忙な業務により、相談したくてもなかなか相談できないことが増えると、心が疲弊してしまいます。

 

人間関係に気を使いすぎる

 

平成23年の厚生労働省の調査によると、訪問看護事業所の運営は、5人前後で構成されていることが多いようです。

仲間内で事業所を立ち上げることもありますが、色々な前職の経歴を持つ看護師さんが集まっている場合が多いです。

事業所での人間関係が悪くなくても、考え方の違いやそれぞれのキャラクターが合わずに苦手だと感じることもありますよね。

少ない人数だからこそ人間関係に気を使いすぎて、終業後にはドッと疲れを感じることがあります。

 

上司や同僚から妥当な評価を得られない

真面目に訪問業務に取り組んでいても、上司や同僚から妥当な評価を得られないと悩み、モチベーションを維持できなくなっていることもあります。

訪問業務は楽な仕事ではありません。

的確かつ丁寧にサービス提供するだけでなく、他職種連携や書類作成など訪問以外の業務も含まれます。

一生懸命に多くの業務をこなしても、それを評価されない職場だと疲弊してしまうのも無理はありません。

 

 

訪問看護に「疲れた…」と感じた時の自分でできる7つの対策

 

様々な「疲れた…」と感じる場面を紹介しました。

では、そのような時にはどんな対策があるでしょうか。

状況別に7つの対策をご紹介します。

 

体力的に疲れたと感じた時

 

体力的な疲れは、一番に感じやすい疲労です。

訪問看護は、利用者さん宅への移動があることや、病院とは異なり自宅環境に合わせた体の使い方をする必要があるため、身体的な疲労は蓄積しやすいと言えます。

まずは夜間の休息は意識的に十分取るようにしましょう。

ついやりがちですが、夜更かしや深酒は体調を崩します。

対策その1

まずは夜の休息をしっかりと取る

 

また、訪問スケジュールの采配に偏りがあり、重症度の高い利用者さんへの訪問が続いていることがあります。

もしくは訪問ルートの距離があまりにも広範囲になっており、移動時間が極端に長くなっている場合もあるかもしれません。

他の同僚が行っている訪問と比較し、重症度の高い利用者さんや訪問範囲が広いルートに偏っている場合には、担当やスケジュールの調整が必要である可能性があります

担当制訪問看護の場合は、急な担当変更は難しいかもしれません。

しかし、キャパシティ以上の業務を続けることで、自身の体を犠牲にすることは訪問看護を続けるためによくありません。

訪問看護の経験値を積むことや、仕事以外のこと(家事、育児、介護など)が落ち着くなど条件が揃えば、同様のスケジュールも難なくこなせるかもしれません。

大切なのは、今の自分にとってのキャパシティを超えていないことです。

対策その2

管理者へ受け持ち数や訪問の内容を踏まえてリスケジュールを依頼する

自身のプライベートの状況や経験値に合わせた采配をしてもらう

 

前項でも出てきた通り、訪問看護は訪問業務だけでなく、他職種連携や書類業務も含まれます。

月末から月初めには主治医に提出する訪問看護計画書、訪問看護報告書の作成や、ケアマネジャーに提出する提供表の返送など多忙な訪問看護師が多くいます。

毎月の書類作成業務を円滑に進めるためにも、優先順位の設定は必要です。

書類関係は月末ギリギリにまとめて行うのではなく、計画的に作成していきましょう。

また、「今日はここまで終わらせる!」と短期目標のゴール設定を行い、無理なく進めることで身体的な疲弊を予防しましょう。

対策その3

優先順位とゴールを設定する

 

 

精神的に疲れたと感じた時

 

急変や緊急時には、緊張するのは当然です。

このような精神的な負担を軽減することができるのが、マニュアルです。

例えば急変時の対応方法をフローチャート式にまとめることや、救急搬送の手順をマニュアル化することで慌てずに対応することができます。

また、マニュアル化した内容を実際に行動に移せるように、メージトレーニングや模擬練習を行っておくと尚よいです。

対策その4

緊急時の対応をマニュアル化する

 

オンコールや急変時の対応後には、緊張感が続き精神的に疲弊してしまうものです。

なかなか緊張感が取れない時のために、気持ちを切り替えてリラックスできる方法を複数準備しておくことをお勧めします。

 

例えば、好きな入浴剤を入れたお風呂に入る、リラックス効果のあるBGMを聴いてみる、全身をほぐすストレッチメニューを実施してみるなど、自身に合った方法を日頃からピックアップしておくといいでしょう。

複数準備しておくことで、その時の気分や状況に応じて選択することができます。

対策その5

リラックスできる方法をいくつか準備しておく

 

人間関係に疲れたと感じた時

 

少ない人数で運営されることが多い訪問看護ステーションでは、毎日同じメンバーで顔を合わせることに疲れてしまうこともあります。

その場合、訪問中は1人で行動をすることの多い訪問看護の特性を活かし、訪問の合間の時間を有効活用することをお勧めします。

昼休みや訪問の合間の時間を、音楽を聴く、動画を見るなど自由な時間に当てることで気持ちのリフレッシュに使うことができます。

コンビニでコーヒーを買って外の空気を吸うことで気持ちを切り替えることもいいですね。

対策その6

1人になる時間を確保する

 

職場や外部との人間関係に疲れた時には、仕事に集中することで疲弊した気持ちを和らげることもできます。

私は利用者さんとの雑談や何気ない話の中で、嬉しさや楽しさを感じることがあります。

利用者さんからの「ありがとう」という言葉に、癒されることもあります。

あなたが提供する看護を評価するのは、いつだって利用者さんです。

上司や同僚から評価されないと感じる時には、利用者さんからの言葉に耳を傾けることをお勧めします。

真摯に向き合う訪問看護師さんを、利用者さんはいつも見ていてくれますし、いい反応をくださると訪問看護のやりがいを感じることもできます。

もちろん、明らかに自身の仕事と給与が見合っていないなど不当性が高い場合には、管理者への相談が必要な場合もあります。

 

対策その7

利用者さんの言葉に耳を傾ける

 

対策をとっても疲れが取れない場合は要注意

適切な休息をとり、必要な備えをして、利用者さんと対話を重ねても疲れが取れない場合には要注意です。

もしかしたら、すでに我慢の限界は近い可能性があります。

心身に支障をきたし、仕事以外の生活に影響が出ている場合には、専門的な対処が必要なことがあります。

その場合には、無理を続けず早めに受診をすることをお勧めします

看護師は我慢強い方が多く、自身のキャパシティを超えて頑張りすぎてしまう人が多い印象です。

せっかく訪問看護を選んで就職しても、心身を壊してしまうほどの仕事では長く続けることは難しいと思います。

現在の職場のカラーに合わないだけで、転職したら伸び伸びと働くことができたというパターンもあります。

訪問看護はそれぞれの事業所のカラーがあります。

きっとご自分の力を発揮できる事業所があるはずです。

この記事を見てくださっている方は、きっと我慢強い方だと思います。

どうぞ無理なさらず、ご自分を一番に大切にしてくださいね。

 

 

 

今回は、訪問看護で疲れたと感じる場面とその対処法をお伝えしました。

ビジケアでは、日々生まれる悩みを全国の訪問看護師や関係者に相談することができます。

1人で悩んでいる訪問看護師さんは、ぜひビジケアの門を叩いてみてくださいね。

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ABOUT US
石澤 明日香
埼玉県在住/看護師/急性期総合病院にて6年勤務後、訪問看護ステーションで5年半勤務。令和4年9月に訪問看護ステーションアスエイドを開設、代表取締役兼管理者を務める。そのほか重度訪問介護事業所にも所属し介護士として障害を抱える方への支援や訪問看護に特化したブログ「ウチくる看護」の運営を行う。/趣味は料理とホームパーティ