依頼したはずなのに、なかなか訪問看護指示書が交付されない——これは訪問看護の現場で、経験の浅い担当者からベテランまで、幅広く相談を受ける悩みのひとつです。原因を理解しないまま催促を繰り返すと、かえって医療機関との関係がこじれてしまうこともあります。特に長年連携してきた医療機関との関係を大切にしたいステーションほど、対応の仕方に慎重にならざるを得ません。
この記事では、訪問看護指示書がなかなか書いてもらえない主な原因を整理したうえで、原因ごとの具体的な対処法、依頼状況の記録の付け方、それでも改善しない場合の選択肢まで、訪問看護師の視点で解説します。
- 訪問看護指示書が交付されない3つの主な原因
- 原因別の具体的な対処法
- 依頼手順を見直すポイント
- 催促の連絡を入れる適切なタイミング
- それでも改善しない場合の選択肢
目次
訪問看護指示書を書いてくれない、主な3つの原因
まずは「なぜ交付されないのか」を見極めることが対処の第一歩です。訪問看護は本来、主治医への相談・承諾から指示書の依頼、交付、訪問看護計画の作成という段階を経てサービス開始に至りますが、指示書の交付が滞る背景には、次の3つのような原因が潜んでいることが多くあります。
| 原因 | 具体的な状況 |
|---|---|
| 医師の合意が得られていない | 「訪問看護の利用を希望するとは聞いていない」と、医師が必要性を認識していない |
| 主治医変更・受診間隔が空いている | 新しい主治医が状態を十分把握できていない、家族代理受診や長い外来間隔で現状把握が難しい |
| 多忙で記載する時間がない | 医師の業務多忙で作成が後回しになる、窓口への依頼が伝わるまで時間がかかる |
原因1|医師の合意が得られていない場合の対処法
利用者やケアマネジャーが主治医に相談したつもりでも、口頭での説明だけでは訪問看護の必要性が十分に伝わっていないことがあります。この場合は、訪問看護が必要な状況が具体的にわかる書面(お手紙)を作成し、持参する方法が有効です。病状や生活状況を整理した文書があると、医師も判断しやすくなります。口頭説明だけに頼らず、書面という形に残すことで、多忙な診療の合間でも医師が内容を確認しやすくなる効果も期待できます。

口頭でのやり取りだけだと、こちらの意図と医師の受け取り方にズレが生じることがあります。「言った・言わない」を防ぐためにも、書面にまとめて渡すのがおすすめです。

原因2|主治医変更・受診間隔が空いている場合の対処法
新しい主治医や、しばらく受診していない主治医は、利用者の現在の状態を十分に把握できていないために、指示書の作成をためらうことがあります。このような場合は、利用者本人の同意を得たうえで、FAXなどを使って在宅での生活状況を主治医に共有することが効果的です。日頃からの情報提供の積み重ねが、いざというときの信頼関係につながります。バイタルの推移や日常生活動作の状況など、具体的な情報を伝えることで、医師も状態を把握しやすくなります。定期的な情報提供を習慣化しておけば、いざ指示書の更新が必要になったときにもスムーズに判断してもらいやすくなります。
情報を共有する際は、必ず利用者本人の同意を得てから行いましょう。個人情報を含む内容を無断で医療機関に送付することは避けるべきです。
原因3|多忙で記載する時間がない場合の対処法
医師の診療が立て込んでいる、あるいは医療機関の窓口から医師本人へ依頼が伝わるまでに時間がかかっているケースもあります。このような場合は、依頼手順を見直し、催促のタイミングに配慮することがポイントです。

依頼手順を守ることの重要性
そもそも依頼の手順が整理されていないと、医療機関側も対応の優先順位をつけにくくなります。依頼書に必要事項を漏れなく記載し、決まったルートで確実に医師まで届く方法を選ぶことが基本です。自己流の依頼方法にこだわらず、医療機関ごとの慣習に合わせる柔軟さも求められます。依頼方法の具体的な手順については、以下の記事で詳しく解説しています。手順を一度整理しておけば、担当者が変わっても同じ品質で依頼を続けられます。
催促の連絡は「タイミング」に配慮する
依頼から一定期間が過ぎても連絡がない場合、催促の連絡が必要になりますが、連絡するタイミングへの配慮が重要です。感情的になって強い口調で催促すると、以降の連携がぎくしゃくしてしまうこともあるため、あくまで丁寧な姿勢を保ちましょう。医療機関の種類によって、適切なタイミングは異なります。事前に医療機関ごとの繁忙時間帯をある程度把握しておくと、催促の効果も高まります。
| 医療機関の種類 | 催促に適したタイミング |
|---|---|
| クリニック | 午前の診察時間が終わる頃、または夕方の営業時間内 |
| 大学病院・大規模病院 | 地域連携室や医療相談室など、適切な窓口を事前に確認してから連絡する |
診療中や外来が混み合う時間帯に電話をかけると、対応が後回しにされたり、担当者に用件が正しく伝わらなかったりすることがあります。相手の業務の流れを想像したうえで連絡することが、結果的にスムーズな対応につながります。
ケアマネジャーとの連携も対処のカギになる
指示書の交付が滞っている状況は、訪問看護ステーション単独で抱え込まず、ケアマネジャーに早めに共有することが有効です。ケアマネジャーは医療機関との調整に慣れていることも多く、別のルートから状況を伝えることで、事態が動くケースがあります。訪問看護ステーションからの依頼だけではうまく伝わらなかった内容が、ケアマネジャー経由だとすんなり通ることも珍しくありません。特に介護保険を利用している場合は、ケアプラン全体の調整にも関わる問題であるため、情報共有を怠らないようにしましょう。

訪問看護ステーションだけで何度も催促を重ねるより、ケアマネジャーや他の関係者と役割分担しながらアプローチしたほうが、結果的にスムーズに進むことが多いです。
精神科訪問看護指示書の場合はさらに注意が必要
精神科訪問看護指示書を依頼している場合、そもそも交付できる医師が精神科を標榜する医療機関の精神科担当医師に限定されているため、依頼先そのものを誤っていないかを確認することも重要です。精神科以外の医師にいくら依頼しても、要件を満たさないため交付されません。まずは依頼先が正しいかどうかを見直すところから始めましょう。
依頼状況を記録に残しておくことの重要性
いつ・誰が・どのような方法で依頼を行ったか、その記録を残しておくことも重要な対処法のひとつです。記録があれば、催促のタイミングを判断しやすくなるだけでなく、後から状況を振り返って改善点を洗い出すこともできます。
- 依頼日・依頼方法(訪問・郵送・電話・FAX)
- 依頼した相手(医師本人か、窓口の事務員か)
- 依頼時に伝えた内容の要点
- その後の催促の履歴
それでも改善しない場合の選択肢
これまで紹介した対処法を一通り試し、依頼手順を見直し、催促のタイミングにも配慮したにもかかわらず、指示書の交付が長期間にわたって進まない場合は、ケアマネジャーを交えて状況を整理し、主治医の変更も選択肢の一つとして検討する必要が出てくることもあります。ただし主治医変更にはそれ自体の手続きと注意点があるため、慎重に進めましょう。
よくある質問
訪問看護指示書が交付されない主な原因は何ですか?
大きく分けて「医師の合意が得られていない」「主治医変更や受診間隔で状態を把握できていない」「多忙で記載する時間がない」の3つが主な原因です。
催促の電話はいつかけるのがよいですか?
クリニックであれば午前の診察が終わる頃や夕方の営業時間内、大学病院などでは地域連携室や医療相談室といった適切な窓口を確認してから連絡するのがよいでしょう。
何度催促しても交付されない場合はどうすればよいですか?
ケアマネジャーを交えて状況を整理したうえで、主治医の変更を検討する選択肢もあります。ただし主治医変更には別途手続きが必要になるため、慎重に判断しましょう。
精神科訪問看護指示書が交付されない場合、まず何を確認すべきですか?
精神科訪問看護指示書は、精神科を標榜する医療機関の精神科担当医師しか交付できません。依頼先の医師がこの要件を満たしているかどうかを、まず確認しましょう。
依頼状況はどのように記録しておけばよいですか?
依頼日・依頼方法・依頼した相手・伝えた内容の要点・その後の催促履歴を記録しておくと、催促のタイミング判断や振り返りに役立ちます。

まとめ|原因の見極めが対処への近道
訪問看護指示書がなかなか交付されないときは、感情的に催促を重ねるのではなく、まず原因を見極めることが重要です。医師の合意不足なのか、状態把握の難しさなのか、単なる多忙なのかによって、有効な対処法はまったく異なります。ケアマネジャーなど周囲の力も借りながら、粘り強く、かつ相手への配慮を忘れずに対応していきましょう。
- 主な原因は「医師の合意不足」「状態把握の困難さ」「多忙」の3つ
- 依頼状況を記録に残しておくと、催促の判断や振り返りがしやすくなる
- 医師の合意が得られていない場合は、状況がわかる書面を用意する
- 状態把握が難しい場合は、同意を得たうえで在宅の様子を共有する
- 催促は医療機関の種類に応じたタイミング・窓口に配慮する
- 改善しない場合は、主治医変更も選択肢として検討する
依頼の役割分担、具体的な依頼方法、主治医変更時の対応、精神科訪問看護指示書の交付要件については、関連記事もあわせてご確認ください。


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