看護体制強化加算とは?【介護保険】算定要件・単位数を解説

「看護体制強化加算って聞いたことはあるけれど、どんな要件を満たせば算定できるの?」「ⅠとⅡの違いがよくわからない」――そんな疑問を持つ訪問看護ステーションの管理者・経営者の方は多いのではないでしょうか。

看護体制強化加算は、緊急対応・重症者ケア・ターミナルケアの実績が豊富なステーションを評価するための加算です。要件はやや複雑ですが、しっかり理解して体制を整えれば、安定した加算収入と事業所の「強み」のPRにもつながります。この記事では、令和6年度介護報酬改定の内容をもとに、算定要件・単位数・届出の流れまでをわかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 看護体制強化加算の目的と概要(介護保険・訪問看護)
  • 令和6年度改定後の単位数(Ⅰ:550単位・Ⅱ:200単位)
  • 看護体制強化加算(Ⅰ)(Ⅱ)それぞれの算定要件の詳細
  • ⅠとⅡの違いを一覧表で比較
  • 算定に向けた届出の流れと実務上の注意点
  • よくある疑問をFAQで解決

看護体制強化加算とは?目的と背景を整理する

看護体制強化加算とは、介護保険の訪問看護費において、緊急時対応・重症者(特別管理が必要な利用者)へのケア・ターミナルケアの実績が一定水準以上あるステーションを評価するための加算です。1月ごとに算定します。

訪問看護ステーションの役割として、近年ますます重要視されているのが「重症化した利用者の在宅療養継続への支援」です。がん末期・神経難病・医療的ケアが必要な利用者が自宅で安心して過ごすためには、いつでも駆けつけられる緊急対応体制、専門的な処置ができる看護体制、そして人生の最期を自宅で迎えたいという希望に寄り添うターミナルケアが不可欠です。

こうした高度な機能を持つステーションを積極的に評価・推進するために設けられているのが看護体制強化加算です。令和6年度介護報酬改定でも、この方向性は継続・強化されています。

看護師 上妻
看護師 上妻

看護体制強化加算は「うちはそういう重たい利用者さんをしっかり診ていますよ」という実績を数値で証明して評価してもらう加算ですね。加算を取るために体制を強化するというよりも、すでにしっかり対応しているステーションが届出をして評価を受けるイメージです。

POINT:算定できるのは訪問看護ステーションのみ

看護体制強化加算(介護保険)は、指定訪問看護ステーション(=訪問看護費イ・ロを算定している事業所)のみ算定できます。定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所との連携によって訪問看護費ハを算定している場合は算定対象外です。病院・診療所の訪問看護についても算定要件が異なります。

看護体制強化加算の単位数(令和6年度介護報酬改定)

令和6年度介護報酬改定(令和6年4月施行)における看護体制強化加算の単位数は以下のとおりです。

区分単位数算定単位
看護体制強化加算(Ⅰ)550単位1月につき
看護体制強化加算(Ⅱ)200単位1月につき

看護体制強化加算(Ⅰ)は要件が厳しい分、単位数が高く設定されています。(Ⅰ)と(Ⅱ)は同時には算定できず、要件を満たす上位の区分を届け出て算定します。

なお、看護体制強化加算は支給限度基準額(区分支給限度額)の管理対象に含まれます。緊急時訪問看護加算・特別管理加算・ターミナルケア加算などが限度額管理の対象外なのとは異なる点に注意が必要です。利用者の支給限度額の使用状況を踏まえて算定可否を確認しましょう。

訪問看護師が利用者宅でケアを提供している様子

看護体制強化加算(Ⅰ)の算定要件【5つの条件を全て満たす】

看護体制強化加算(Ⅰ)を算定するためには、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。いずれか一つでも欠けると算定できません。

要件①:緊急時訪問看護加算の算定実績(50%以上)

算定日が属する月の前6月間において、緊急時訪問看護加算を算定した利用者数が、全利用者数の50%以上であること。

緊急時訪問看護加算とは、24時間連絡・緊急訪問体制を整えていることを届け出た事業所が算定できる加算です。看護体制強化加算(Ⅰ)では、そうした体制のもとで実際に対応した利用者の割合が半数以上である必要があります。

看護師 上妻
看護師 上妻

50%以上というのは意外とハードルが高く感じるかもしれませんね。「緊急時訪問看護加算」は利用者ごとに算定するものなので、加算の届出をしているだけでなく、実際に各利用者の計画に盛り込んでいるかどうかが問われます。どれだけの利用者に算定できているか、毎月確認する習慣をつけることが大切ですね。

要件②:特別管理加算の算定実績(20%以上)

算定日が属する月の前6月間において、特別管理加算を算定した利用者数が、全利用者数の20%以上であること。

特別管理加算は、在宅悪性腫瘍患者指導・気管カニューレの使用・留置カテーテルの使用・在宅自己腹膜灌流・在宅血液透析・在宅酸素療法・中心静脈栄養・人工呼吸器の使用など、特別な管理が必要な処置を行っている利用者に算定できる加算です。全利用者の5人に1人以上がこうした重症度の高い利用者であることが求められます。

要件③:ターミナルケア加算の実績(5名以上)

算定日が属する月の前12月間において、ターミナルケア加算を算定した利用者が5名以上いること。

ターミナルケア加算は、在宅等で死亡した利用者に対して、死亡日前14日以内に2日以上ターミナルケアを実施した場合に算定できます。12ヵ月で5名というのは、毎年コンスタントに看取りに関わっているステーションであれば、決して難しい基準ではありません。

要件④:看護職員の割合(60%以上)

訪問看護サービスに従事する従業者の総数のうち、看護職員(保健師・助産師・看護師・准看護師)の占める割合が60%以上であること。

この要件は(Ⅰ)のみに課されているもので、(Ⅱ)には設けられていません。リハビリ職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)のスタッフが多い事業所では、この比率をクリアできているか確認が必要です。

要件⑤:緊急時訪問看護加算の届出

緊急時訪問看護加算の届出を行っていること。つまり、24時間の緊急連絡・緊急訪問体制が整備されていることが前提条件となります。

注意:前6月・前12月の計算期間に注意

要件①②は「算定日の属する月の前6月間」、要件③は「前12月間」の実績を問われます。直近の月だけ良ければよいというわけではなく、継続的な実績が必要です。月次で実績を記録・管理する仕組みを作っておきましょう。

看護体制強化加算(Ⅱ)の算定要件【4つの条件】

看護体制強化加算(Ⅱ)は(Ⅰ)より要件が緩やかで、4つの要件をすべて満たすことで算定できます

要件①:緊急時訪問看護加算の算定実績(30%以上)

算定日が属する月の前6月間において、緊急時訪問看護加算を算定した利用者数が、全利用者数の30%以上であること。(Ⅰ)の50%より低い水準です。

要件②:特別管理加算の算定実績(20%以上)

算定日が属する月の前6月間において、特別管理加算を算定した利用者数が、全利用者数の20%以上であること。(Ⅰ)と同じ水準です。

要件③:ターミナルケア加算の実績(5名以上)

算定日が属する月の前12月間において、ターミナルケア加算を算定した利用者が5名以上いること。(Ⅰ)と同じ水準です。

要件④:緊急時訪問看護加算の届出

緊急時訪問看護加算の届出を行っていること。24時間対応体制の整備が必要な点は(Ⅰ)と変わりません。

POINT:(Ⅱ)には「看護職員60%以上」の要件がない

看護体制強化加算(Ⅱ)には、看護職員の割合に関する要件が設けられていません。リハビリ職が多い事業所でも、他の要件を満たせば算定できる可能性があります。まず(Ⅱ)を目指し、体制を強化して(Ⅰ)へステップアップする戦略も有効です。

訪問看護ステーションのスタッフが書類を確認している様子

看護体制強化加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いを比較する

(Ⅰ)と(Ⅱ)の要件の違いを一覧表で整理します。

要件加算(Ⅰ)
550単位/月
加算(Ⅱ)
200単位/月
緊急時訪問看護加算の算定実績
(前6月間)
全利用者の50%以上全利用者の30%以上
特別管理加算の算定実績
(前6月間)
全利用者の20%以上全利用者の20%以上
ターミナルケア加算の実績
(前12月間)
5名以上5名以上
看護職員の割合60%以上(必須)規定なし
緊急時訪問看護加算の届出必要必要

(Ⅱ)を算定できるステーションが要件を満たしていれば(Ⅰ)へ移行することができ、1月あたり350単位の差が生まれます。利用者数30名のステーションであれば、年間で大きな収入差につながります。算定できるなら(Ⅰ)を目指すことが経営上も望ましいといえます。

算定の流れ・届出の手続き

看護体制強化加算を算定するには、介護保険の体制等に関する届出(加算の届出)が必要です。主な流れは以下のとおりです。

  1. 実績の確認と記録算定に向けて、前6月間・前12月間の緊急時訪問看護加算・特別管理加算・ターミナルケア加算の算定実績を月次で記録・管理します。訪問看護システムのレポート機能を活用すると便利です。
  2. 要件の充足確認(Ⅰ)または(Ⅱ)のいずれの要件を満たしているか確認します。看護職員の割合についても、勤務形態一覧表をもとに算出します。
  3. 届出書類の準備各都道府県・市町村所定の届出書(大阪府では「看護体制強化加算に係る届出書 別紙19」など)を準備します。書式は各自治体の窓口またはホームページから入手できます。
  4. 届出の提出算定開始希望月の前月末(自治体により異なる)までに、指定権者(都道府県・市町村)の窓口または郵送で届出を行います。
  5. 算定開始・月次管理の継続届出が受理されたら算定を開始します。要件の充足状況は翌月以降も継続してモニタリングし、要件を下回った場合は速やかに届出を変更します。
注意:要件を満たさなくなった場合は速やかに変更届出を

実績が要件を下回った月が生じた場合、速やかに変更届出を提出する必要があります。要件を満たさないまま加算を算定し続けると、過誤請求となる可能性があります。毎月の実績管理を徹底しましょう。

算定に向けた実務上のポイント

①緊急時訪問看護加算の「計画的な算定」を増やす

看護体制強化加算の要件の中でもとくに差がつくのが、緊急時訪問看護加算の算定割合(Ⅰ:50%以上・Ⅱ:30%以上)です。緊急時訪問看護加算は、利用者が同意し訪問看護計画に盛り込むことで算定できます。重症度の高い利用者はもちろん、急変リスクのある利用者についても積極的に計画に組み込み、計画書・同意書を整備していくことが重要です。

②特別管理加算の対象利用者の把握と適切な算定

特別管理加算の対象となる処置(カテーテル・人工呼吸器・中心静脈栄養・在宅酸素療法など)を受けている利用者がいるにもかかわらず、加算の算定漏れがあるケースがあります。入院中に医療的ケアが追加された利用者の退院時にも、対象となる処置がないか確認を徹底しましょう。

③ターミナルケア加算の算定を適切に記録する

ターミナルケア加算は「死亡日前14日以内に2日以上ターミナルケアを実施」が要件です。ターミナルケアの実施内容・日時・本人・家族への説明内容を訪問看護記録に正確に記載し、算定の根拠を残しておくことが重要です。年間5名以上という実績は、意識して取り組めば多くのステーションが達成できる水準です。

④看護職員比率の定期的な確認((Ⅰ)を目指す場合)

看護体制強化加算(Ⅰ)を算定するには、従業者に占める看護職員の割合が60%以上必要です。採用・退職・労働時間の変更のたびに比率が変わります。少なくとも月1回は比率を計算し、要件を維持できているか確認する仕組みを作りましょう。

看護師 上妻
看護師 上妻

実務では「毎月チェックシートで3つの実績割合を計算する」ルーティンをつくることが大事ですね。数値を見える化しておくと、「来月は要件ギリギリかも」という早期警戒にもなりますし、スタッフへの目標共有にも役立ちます。

よくある質問(FAQ)

看護体制強化加算は医療保険の訪問看護にも同じ加算がありますか?

医療保険の訪問看護にも「訪問看護体制強化加算」(令和6年度診療報酬改定で整備)がありますが、名称・要件・算定方法は介護保険のものとは異なります。この記事では介護保険の看護体制強化加算(訪問看護費の加算)を解説しています。医療保険の内容については別途ご確認ください。

看護体制強化加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の両方を同時に算定することはできますか?

できません。(Ⅰ)と(Ⅱ)は選択制であり、要件を満たす上位の区分のみを算定します。要件を満たしているなら(Ⅰ)を優先して届け出るのが基本です。

「前6月間」の起算日はどのように考えればよいですか?

「算定日が属する月の前6月間」とは、たとえば6月分の加算を算定する場合、前年12月〜当年5月の6ヵ月間の実績を指します。毎月ローリングで更新されるため、月次で最新の実績を管理することが重要です。

ターミナルケア加算の5名は累計でよいですか?

前12月間のターミナルケア加算算定実績が延べ5名以上であれば要件を満たします(同一人物が対象となるケースは基本的にありません)。人数のカウントは「ターミナルケア加算を実際に算定した利用者数」で確認します。実績の記録と管理を月次で行いましょう。

看護体制強化加算は区分支給限度額(支給限度基準額)に含まれますか?

看護体制強化加算は支給限度額管理の対象に含まれます。緊急時訪問看護加算・特別管理加算・ターミナルケア加算などは限度額管理対象外ですが、看護体制強化加算は対象内です。利用者の支給限度額の残枠を確認してから算定を判断してください。

算定要件を満たさなくなった月はどうすれば?

要件を満たさなくなった場合は、速やかに変更届出を提出します。要件を満たさない月に算定を継続すると不正請求となるリスクがあります。毎月の実績管理を徹底し、余裕をもって対応できるよう早期に把握する仕組みをつくることが重要です。

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令和6年度介護報酬改定における訪問看護全体の改定内容は、以下のまとめ記事で詳しく解説しています。看護体制強化加算以外の改定ポイントも一緒に確認しておきましょう。

【令和6年度介護報酬改定】訪問看護まとめを読む
看護体制強化加算のポイントまとめ図解

まとめ|看護体制強化加算は「体制の見える化」と「月次管理」がカギ

看護体制強化加算は、緊急対応・重症者ケア・看取りに継続的に取り組んでいるステーションが正当に評価される制度です。要件の数字だけを見ると難しく感じるかもしれませんが、日常的にこうした対応をしているステーションにとっては、実績をきちんと記録・集計して届け出るだけで算定できるものです。

この記事のまとめ
  • 看護体制強化加算は、緊急対応・重症者ケア・ターミナルケアの実績を評価するための加算(介護保険・訪問看護ステーションのみ)
  • 令和6年度改定後の単位数は(Ⅰ)550単位/月・(Ⅱ)200単位/月(1月につき)
  • (Ⅰ)の要件:緊急時50%以上・特別管理20%以上・ターミナル5名以上・看護職員60%以上・緊急時訪問看護加算の届出
  • (Ⅱ)の要件:緊急時30%以上・特別管理20%以上・ターミナル5名以上・緊急時訪問看護加算の届出(看護職員比率の要件なし)
  • 看護体制強化加算は支給限度基準額の管理対象(緊急時・特別管理・ターミナルは対象外)
  • 月次で実績を記録・管理し、要件を下回ったら速やかに変更届出を提出することが重要

体制を整えながら月次で数値を確認し、まず(Ⅱ)から算定をスタートして(Ⅰ)へのステップアップを目指すことが、無理なく安定した加算収入につながる近道です。

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