
筆者の私は、去年まで広島市に住んでおり、被爆者健康手帳は身近なものでした。
ほかの都道府県ではあまり見たことがないかもしれませんが、全国には原爆被爆者の方がおられますので、被爆者の方の訪問看護にあたる場合に参考にしていただけたら幸いです。
- 原子爆弾被爆者のことについて知る
・被爆者とは?
・被爆者健康手帳とは?
・原爆の及ぼす健康被害
・原子爆弾被爆者に対する援護 - 原子爆弾被爆者の訪問看護についての制度
・被爆者の医療の給付について
・介護保険利用の助成について - 原爆被爆者の訪問看護についての請求方法
・療養費の請求
・医療費の負担割合 - 原子爆弾被爆者への訪問看護についてのQ&A
目次
原子爆弾被爆者のことについて知る
被爆者とは?
昭和20年8月に広島市と長崎市に投下された原子爆弾によって被害を受けた、被爆者(被爆者健康手帳の所持者)の方々の数は令和3年3月31日現在、全国で12万7,755人となっています。(都道府県別被爆者数はこちらを参照してください。)
被爆者援護法に定める「被爆者」とは次のいずれかに該当する方で、被爆者健康手帳を所持している方をいいます。
被爆者健康手帳とは?
被爆者健康手帳は、原子爆弾の被爆者であることを示す証明書になります。
都道府県知事(広島市長、長崎市長を含む)は、以下のいずれかに該当すると認めるものに、「被爆者健康手帳」を交付しています。
①原爆が投下された際、当時の広島市、長崎市など一定の区域にいた者
②原爆が投下されてから2週間以内に、一定の区域内に立ち入った者
③原爆が投下された際、または、その後に、身体に放射能の影響を受けるような事情の下にあった者
④当時、①~③の者の胎児であった者
被爆者が病気やけがなどで医者にかかりたいとき、この手帳を健康保険の被保険証とともに、都道府県知事が指定した医療機関等にもっていけば、無料で診察、治療、投薬、入院がうけられます。
原爆の及ぼす健康被害
原爆の放射線による健康の障害には、被爆直後の急性原爆症に加えて悪性腫瘍、白血病、白内障などの晩発障害があり、これらは被爆後数年ないし10年以上経過してから発生するという特殊性があります。
数年から10年以上経過してから発生するという点が、ほかの戦争被害とくらべると特殊性があります。
原子爆弾被爆者に対する援護
「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」(平成6年法律第117号)があり、被爆者には以下のような援護策があります。
①健康診断、がん検診
②医療の給付
③介護保険利用の助成
④医療特別手当、健康管理手当、介護手当等の各種手当の毎月支給
訪問看護では、②と③が関係ありますので、次に「医療の給付」と「介護保険利用の助成」について説明していきます。
原子爆弾被爆者の訪問看護についての制度
被爆者の医療の給付について
医療の給付とは?
病気やけがが治るまで、国の負担で医療をうけることができる制度をいいます。そして「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」にもとづき行われる医療の給付には2つの制度があります。
それが、「認定疾病医療」と「一般疾病医療」です。
認定疾病に対する医療の給付
認定疾病医療は、原爆被爆者の放射線に起因する疾病(白血病など)を対象とします。
認定となる病名などは、はっきり決まっているわけではありません。最近の認定事例から認定となっている病気やけがは、悪性腫瘍、悪性リンパ腫、心筋梗塞、副甲状腺機能亢進症、白内障などがあります。
厚生労働大臣の認定をうけた人は、その認定をうけた病気やけがについて、厚生労働大臣の指定した医療機関等で、全額国費をもって医療をうけることができます。
病気やけがが、原子爆弾の放射線の傷害作用によるものの1つであり、現に治療を要する状態にあるという厚生労働大臣の認定を指します。
この原爆症認定は、「被爆者であることの認定」(被爆者健康手帳の交付)とは異なるものです。
原爆症として認定を受けると、主に次の 2 点が変わります。
① その病気の医療にかかる費用の全額を国が負担する
② その病気について、現に医療を要する状態が続く間、「医療特別手当」を受給することができ、その病気が治った後には「特別手当」を受給することができる。
原爆症の認定にあたっては、以下の2つの条件を満たすことが必要です。
①原子爆弾の放射線に起因していること(放射線起因性)
②現に医療を要する状態にあること(要医療性)
「原爆症」認定の審査にあたっては、医学や放射線医学の高度な知識が必要になるため、医学・放射線学の第一線の学者から成る合議制の審査会(疾病・障害認定審査会原子爆弾被 爆者医療分科会の意見を聴いて、審査が行われています。
一般疾病に対する医療の給付
認定疾病以外の疾病を対象としています。
被爆者は、原子爆弾による放射線を浴びたためにその影響で
①病気やけがにかかりやすいこと
②病気やけがをしたとき、その病気やけがが治りにくいこと
③病気やけがをしたことによって認定疾病を誘発するおそれがあること
などから、一般疾病医療の給付の制度が設けられています。
この制度によって被爆者が認定疾病以外の一般の病気やけがをして医者にかかる場合、都道府県知事が指定した医療機関等に行けば健康保険等の患者負担分を負担しないで、医療をうけることができます。
一般疾病に対する医療の給付をうけることのできない場合
①自分の故意の犯罪行為によって病気やけがをしたとき
②故意または重大な過失により病気やけがをしたとき
③けんかまたは泥酔など自分の不行跡によって病気やけがをしたとき
④医師の療養についての指示に理由なく従わなかったとき
⑤遺伝性の病気、先天性の病気 、被爆以前にかかった精神病、軽い虫歯
被爆者が、①~⑤の場合は原子爆弾の放射線との関連がないので、一般疾病医療の給付をうけることはできません。
認定をうけている病気やけがについては、認定疾病に対する医療の給付が行われていますので、一般疾病医療の給付からは除外されています。
訪問看護ステーションの指定とは?
原子爆弾被爆者の訪問看護を行う場合は、「認定疾病医療」「一般疾病医療」の指定をうける必要があります。
所定の事項を記載した申請書を、訪問看護ステーションの所在地の都道府県知事を経由して厚生労働大臣に提出し、被爆者援護法に規定する指定医療機関としての指定を受ける必要があります。
所定の事項を記載した申請書を、訪問看護ステーションの所在地の都道府県知事に提出し、被爆者援護法大19条に規定する被爆者一般疾病医療機関としての指定を受ける必要があります。
この指定をうけずに、レセプトで請求することはできません。
訪問看護ステーションが被爆者指定医療機関の指定申請をする場合は、都道府県または市区町村の窓口に「被爆者一般疾病医療機関指定申請書」と「指定通知書(写し)」を届け出ましょう。
給付の対象
認定疾病医療:訪問看護療養費の全額が公費負担の給付対象
一般疾病医療:医療保険及び介護保険での自己負担金が給付対象
どちらも:基本利用料は公費負担、その他の利用料は対象外
介護保険利用の助成について
介護サービスには、大きく分けて「医療系サービス」「福祉系サービス」「地域密着型サービス」があり、訪問看護は「医療系サービス」にあてはまります。
被爆者が介護保険によるサービスをうけたときは、原則としてかかった費用の1割から3割が自己負担となりますが、訪問看護の「医療サービス」では、この自己負担分を助成する制度があります。
訪問看護(医療系サービス)は、一般疾病医療費の給付と同じように国が代わってその費用を支払いますので、被爆者本人の自己負担分は原則的に無料となります。
ただし、食事代や滞在費など介護保険に含まれないものは、被爆者も自己負担しなければなりません。
【医療系サービス】
| 対象となるサービス | 助成内容 | 食費・居住費 | 利用方法 |
| 訪問看護 介護予防訪問看護 |
利用(入所)した場合の
1割から3割までの負担分 |
自己負担 | 被爆者健康手帳及び
介護保険被保険者証の提示 |
| 居宅療養管理指導 介護予防居宅療養管理指導 |
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| 訪問リハビリテーション 介護予防訪問リハビリテーション |
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| 通所リハビリテーション 介護予防通所リハビリテーション |
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| 短期入所療養介護 介護予防短期入所療養介護 |
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| 介護老人保健施設入所 | |||
| 介護療養型医療施設入所 |
参照)山梨県 原爆被爆者への医療または介護保険医療系サービスの給付について
原爆被爆者の訪問看護についての請求方法
療養費の請求
各審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合)に対し、 診療報酬明細書(レセプト)を用いて請求します。
レセプト作成の際必要な法別番号は、「認定疾病医療」の対象者は「18」、「一般疾病医療」の対象者は「19」となっています。
①通常の場合:公費併用の扱いとし、診療報酬明細書及び診療報酬請求書により、社会保険は社会保険支払基金、国民健康保険は国民健康保険団体連合会に請求します。
②後期高齢者医療制度の場合:国民健康保険団体連合会に請求します。
③生活保護受給者の場合:社会保険支払基金に請求します。
④介護保険の医療系サービスを提供した場合:介護給付費明細書及び介護給付費請求書により国民健康保険団体連合会に請求します。
医療費の負担割合
原則として、保険給付の残りの部分を公費負担します。 (下図を参照してください)
※前期高齢者医療において、一部負担金等の軽減特例措置については、原爆医療(法別番号 19)が優先しますので、1 割負担の方は保険 8 割、公費 2 割とな ります。
原子爆弾被爆者への訪問看護についてのQ&A
令和2年4月版 訪問看護業務の手引 より引用
Q被爆者手帳を交付されている場合、利用者負担はどうなるのか?
A被爆者一般疾病医療機関としての指定をうけた訪問看護ステーションによる訪問看護では、介護保険、医療保険での自己負担額が公費となり、利用者負担はない。
Q事業所としての届け出をおこなっていない場合、訪問はできるのか?
A訪問はできるが、自己負担額を利用者から直接負担してもらうことになる。被爆者健康手帳を所持している利用者の訪問看護をおこなう場合は「被爆者援護法第19条に規定する被爆者一般疾病医療機関」としての」届け出申請を都道府県に早急に行い、指定をうける必要がある。事業所指定をうけていない事業所が月の初日に訪問を開始しても、同月に事業所指定の申請を行い承認されれば、事業所は1日にさかのぼり被爆者の一般疾病医療の請求ができる。令和2年版 訪問看護実務相談Q&Aより引用
Q被爆者手帳を持っている利用者です。認知症で訪問看護をすることになりました。介護保険ですか?また自己負担はありますか。
A被爆者の医療には認定疾病医療(放射線に起因する疾病)と一般疾病医療があります。認知症は一般疾病なので要介護認定が出ていれば、介護保険です。自己負担分が公費になり、自己負担はありません。
まとめ
今回は、原子爆弾被爆者への訪問看護についての制度や請求方法について解説しました。
原爆被爆者の方に、広島市や長崎市以外の都道府県ではあまり接する機会が少ないかもしれませんが、被爆者の方の訪問看護にあたる場合も十分あるため、原爆被爆者の方についての制度や請求方法を知っておくといいかと思います。
























今回は公費負担医療制度のひとつにある「原子爆弾被爆者」の方への訪問看護について、制度や請求方法について説明していきます。
原子爆弾被爆者の方の訪問看護にあたる場合もあると思いますので、勉強しておきましょう!