訪問看護のカンファレンスは重要です!効果的なカンファレンステーマとは?

病棟で勤めていた時には、毎日決まった時間に病棟カンファレンスがあったり、他職種とともに行う症例検討がありました。

訪問看護でも同様に、日々カンファレンスを行い看護の方向性の検討や症例検討を行う事業所が多くあります。

では、訪問看護ではどのようにカンファレンスが行われるのでしょうか?

また、カンファレンスによるメリットやデメリット、実際にカンファレンスを行う際の具体的な方法や内容はどのようなものがあるでしょうか?

今回は、訪問看護におけるカンファレンスについて詳しく解説します。

訪問看護に関わる看護師さんやセラピストの皆さんは、日々のカンファレンスの参考にしてくださいね。

この記事でわかること
  • 訪問看護でのカンファレンスの種類
  • 訪問看護ステーション内のカンファレンスのメリット、デメリット
  • 訪問看護で行われるカンファレンスの方法
  • 訪問看護でのカンファレンスで効果的なテーマ、議題

 

訪問看護でのカンファレンスとは?

カンファレンスとは、「会議」や「協議会」を意味するもので、医療の現場では身近な言葉です。

病院内では、「14時から病棟カンファレンス」や「毎週水曜日の16時から緩和ケアチームカンファレンス」など、定期的にカンファレンスの予定が決められていることが多く、参加したことのある看護師さんがほとんどだと思います。

 

訪問看護でのカンファレンスには、大きく分けて以下のようなカンファレンスがあります。

 

訪問看護ステーション内カンファレンス

事業所ごとに行われるカンファレンスです。

事業所によって開催される頻度や内容は異なります。

主には訪問している利用者さんの情報共有や、ケア方針の検討を行います。

普段一人で訪問して看護を提供する看護師さんは「この看護で本当に合っているのか」と不安になることも多くあります。

カンファレンスは、看護の方向性を共有し意見を出し合ったり評価する機会となります。

現場で働く看護師さんが、利用者さんの前で自信を持って看護を提供するためにも重要な時間となります。

 

 

退院前(退所前)カンファレンス

 

入院中の医療機関等で行われるカンファレンスです。

退院後(退所後)の生活に向けて、入院中の患者さんや家族とともに医師や看護師等と訪問看護ステーションの看護師等が話し合いや情報共有を行います。

医療機関によってカンファレンスの規模は異なりますが、医師や看護師だけでなくリハビリを担当している理学療法士等や、薬剤師、栄養士が参加することもあります。

退院後訪問看護が開始された際に、「退院時共同指導加算」を算定します。

 

 

在宅患者緊急時等カンファレンス

 

在宅療養をしている利用者さんの急変や診療方針の変更等に伴い、主治医の求めにより開催されるカンファレンスです。

利用者さんの治療方針や療養に関する希望や、現状で抱えている問題点を共有し、在宅療養が希望に沿ったものになるよう話し合います。

訪問看護師は、利用者さんや家族の代弁者としての役割もあります。

日々の関わりの中で利用者さんの思いや希望を十分に情報収集し、解釈に相違がないよう利用者さんに確認しながら主治医へ伝えるようにします。

主治医の求めにより訪問看護ステーションから看護師等が参加すると、「在宅患者緊急時等カンファレンス加算」が算定できます。

 

サービス担当者会議

 

ケアプランの変更や更新に伴い、ケアマネジャーが開催する介護保険制度上の会議です。

サービスが新たに導入される等でケアプランは変更されるときや、介護認定の更新などにより開催されます。

サービス事業所の一つとして、訪問看護ステーションからも看護師等が参加します。

他サービス事業所との顔合わせや、利用者さんの利用状況の共有を行う機会になります。

利用者さんの在宅生活を支えるためのサービス事業者ですので、十分に情報共有して利用者さんにとって最善のサービスとなるよう意見を出し合います。

 

 

このように、加算が算定できたり、制度上必要な会議である場合には参加している事業所が多いと思います。

しかし、訪問看護は仕事の性質上、ほとんどの時間を利用者さん宅の訪問をしていて、事業所は不在にしています。

そのため、事業所によってカンファレンスを行う時間や頻度は様々で、大々的な訪問看護ステーション内カンファレンスは行っていないという事業所もあります。

 

訪問看護ステーション内カンファレンスのメリット・デメリットとは?

では、訪問看護ステーション内でのカンファレンスは、実際必要なのでしょうか?

訪問看護ステーション内でのカンファレンスについて、メリットとデメリットを比較してみます。

 

メリット
  • 利用者さんの状況を把握することができる
  • 看護ケアの統一を図ることができる
  • 意見や対応方法を聞くことで今後に生じる症例にも対応のバリエーションが増える
  • 自分が訪問先で行った看護の妥当性を評価できる
  • 訪問時の不安やプレッシャーなどによる心の負担を仲間と共有できる
デメリット
  • 事務所でカンファレンスを行う場合には事務所に立ち寄る時間を作る必要がある
  • ステーション内カンファレンスをしている時間は事業所としての収益はない
  • 訪問先での出来事を訪問したスタッフが「共有した方がいい」と思わなければ議題に上がらない

 

このように、メリットもありますがデメリットもあるのが事実です。

デメリットにもあるように、経営面での不利益もあります。

しかし、メリットである内容は、看護の質の維持向上やスタッフが安心して訪問看護を続けることで結果的に利用者さんにとっても有益と言える内容です。

また、看護サービスの質の維持向上は、医療機関やケアマネジャーから信頼を得ることにもつながります。

長い目で見て新規利用者の獲得に貢献することが考えられ、訪問看護ステーション内カンファレンスは重要であると言えます。

 

訪問看護ステーション内カンファレンスの方法

訪問看護ステーション内のカンファレンスは、どのような方法があるでしょうか。

色々な方法がありますので、自身の事業所の状況に合わせて選択してみてください。

 

事業所で実施する

 

一つ目は、事業所で定時を決めて集まりカンファレンスを行う方法です。

朝一の朝礼を行う事業所は、朝礼後にカンファレンスを行うとスムーズです。

昼休憩で事業所に戻り、その後午後の訪問前にカンファレンスを行う事業所もあります。

いずれにしろ訪問の状況で参加でないスタッフもいる可能性はありますが、顔を合わせて話し合うことで非言語的コミュニケーションを図ることにもなります。

また、話が脱線してしまい時間を要してしまうこともあるため、司会進行役や話し合う議題を決めて段取りよく進めていくと良いでしょう。

 

テレビ電話で実施する

 

二つ目は、テレビ電話を使用してオンライン上でのカンファレンスを行う方法です。

スマホやタブレットを全員に支給したり、オンライン上でも問題ない通信環境を要します。

しかし、どこにいても参加することができ、訪問看護の現場にも理にかなった方法と言えます。

メッセージやチャットと異なり、自分の投げかけにリアルタイムで返答があり、スピーディな対応が可能です。

 

ビジネス用SNS等のやり取りで実施する

 

三つ目は、SNSを使用してメッセージやチャットでのカンファレンスを行う方法です。

上記と同様に、機材の普及は必要ですが、時間を問わずメッセージを残すことができるため訪問の空いた時間に自分のペースで行うことができます

文字入力が苦手な人は慣れるまで時間がかかり、「話した方が楽!」と感じるかもしれません。

また、自分の出した議題に返信があるまでタイムラグがあることもあります。

しかし、メッセージや返信を見返すことができることもメリットと言えるでしょう。

 

訪問看護ステーション内カンファレンスの議題

 

カンファレンスでは、どのような内容を話し合っているのでしょうか?

私の働く訪問看護ステーションでは、定時を決めて職員が事業所に集まり、以下のような内容を議題としてカンファレンスを行っています。

 

新規利用者さんの情報共有

新規の利用者さんの基本的な情報は、契約してすぐにスタッフに共有できるようにしています。

契約日から緊急訪問が必要となる場合もあり、住所や電話番号、主治医及び主疾患、契約時の心身の状況を簡潔にカルテに残します。

翌日のカンファレンスでは、改めて主疾患や病状と利用者さんの希望を踏まえてアセスメントした看護計画も合わせて共有します。

利用者さんの心身の状況だけでなく、家族状況や主治医、ケアマネジャーの情報も共有しておくと、どの看護師さんが訪問しても安心です。

 

訪問中の利用者さんの情報共有・相談

訪問看護をすでに利用している利用者さんも、月日が経過すると状態の変化が見られます。

病状の悪化や治療の変更についてはカンファレンスで共有します。

また、状態変化に伴い訪問看護計画の見直しを行い修正する際に、看護の方向性が事業所の方針とズレていないか、利用者さんにとって有益なものになっているか他の職員と協議します。

1人の考えで看護を提供していると、小さな歪みに気が付かないことがあります。

看護はチームで行うものですから、他の職員と共有し他の角度から物事を見ることで、利用者さんにとってより良い看護を提供することができます。

状態変化や看護の方向性を共有していると、オンコールを持つ看護師さんも安心して待機できますし、オンコールでの対応がとてもスムーズになります。

 

デスカンファレンス

訪問看護では在宅看取りに関わることが多くあります。

在宅での看取りは、利用さん本人の不安が強いだけでなく介護者さんの心身の負担も大きく、支援する看護師もまた大きな負担を抱えます

そのため、利用者さんをお看取りした後にはデスカンファレンスを行っています。

1人の利用者さんが在宅でどのように生き抜いたか、どのような学びがあったか、訪問看護としてよかった関わりや改善すべき問題点を抽出して共有することで、看護師自身の精神的な整理がつきます。

そして、また新たに関わる利用者さんに対し、前向きでより丁寧な看護を提供することができるのです。

 

まとめ

 

今回は、訪問看護でのカンファレンスについて解説しました。

カンファレンスは、病院内と同じく訪問看護ステーションでも重要な業務の一つです。

ぜひカンファレンスで積極的に意見交換や情報共有を行い、利用者さんにとってより良い在宅療養を支援してください。

ビジケアでは、全国各地の訪問看護ステーションの管理者さんや経営者さん、看護師さんやセラピストの皆さんが日々活発に情報交換を行っています。

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ABOUT US
石澤 明日香
埼玉県在住/看護師/急性期総合病院にて6年勤務後、訪問看護ステーションで5年半勤務。令和4年9月に訪問看護ステーションアスエイドを開設、代表取締役兼管理者を務める。そのほか重度訪問介護事業所にも所属し介護士として障害を抱える方への支援や訪問看護に特化したブログ「ウチくる看護」の運営を行う。/趣味は料理とホームパーティ