利用者さんの状態が急変したときや、主治医から診療方針の大幅な変更を伝えられたとき、自宅にケア関係者が集まってカンファレンスを行うことがあります。「このとき看護師が参加した分は、何か算定できるのだろうか」「点数や算定回数の上限がよく分からない」——こうした疑問を持つ訪問看護ステーションの管理者・看護師は少なくありません。
この記事では、在宅患者緊急時等カンファレンス加算(医療保険)の算定要件・料金・月2回の上限を、厚生労働省告示に基づいて整理します。ビデオ通話での参加条件や、レセプト請求・記録で気をつけたいポイント、似た名前の加算・診療報酬との違いまで、現役看護師の視点であわせて解説します。
- 在宅患者緊急時等カンファレンス加算とはどんな加算か
- 料金と月あたりの算定回数の上限
- 誰が・どのように参加すれば算定できるか(算定要件)
- ビデオ通話(オンライン)で参加する場合の条件
- レセプト請求・記録で気をつけたい留意点
- 在宅患者連携指導加算やC011料など、似た制度との違い
目次
在宅患者緊急時等カンファレンス加算とは?【医療保険】制度の概要
在宅患者緊急時等カンファレンス加算とは、利用者の状態の急変や診療方針の変更等に伴い、保険医療機関の保険医の求めにより開催されたカンファレンスに、訪問看護ステーションの看護師(准看護師を除く)が参加し、共同で利用者や家族に対して療養上必要な指導を行った場合に算定できる、訪問看護療養費の加算です。厚生労働省告示「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」(平成20年3月5日厚生労働省告示第67号)の区分番号02・注9に規定されています。
あくまで「緊急時」の加算であることがポイントです。通常の定期訪問の延長でケア関係者と情報共有するような場面ではなく、病状が急変した、あるいは治療方針が大きく変わったという、非定例のカンファレンスを評価する加算だと理解しておくと整理しやすくなります。

「定期的な多職種連携」ではなく「急変・方針変更のときに開くカンファレンス」を評価する加算、という点をまず押さえておくと、他の加算と混同しにくくなりますよ。
どんな場面で開催されるカンファレンスが対象になるか
告示上の要件は「利用者の状態の急変や診療方針の変更等」とされており、具体的な場面としては次のようなケースが想定されます。
- 症状が急激に悪化し、今後の治療方針を関係者で協議する必要が生じた場合
- 看取りへの移行など、ケアの方向性を大きく見直す必要が生じた場合
- 疼痛コントロールが困難になり、投薬内容や医療処置の変更を検討する場合
- 退院直後に病状が不安定で、在宅での対応方針を急ぎ確認する必要がある場合
算定要件|誰が・どのように参加すれば算定できるか
この加算は、単に「カンファレンスに看護師が参加した」だけでは算定できません。保険医療機関の保険医の求めがあったこと、そして参加者が共同で療養上必要な指導を行ったことが前提になります。告示・関連通知で示されている参加者の組み合わせと留意点を整理すると、次のようになります。
| 参加パターン | 算定できるか |
|---|---|
| 保険医+訪問看護師+歯科医師等・薬剤師・介護支援専門員等 | 算定可能 |
| 保険医+訪問看護師の2者のみ | 算定可能 |
| 特別の関係にある関係者のみでの参加(平成30年度改正) | 算定可能 |
| 複数の訪問看護ステーションが同一カンファレンスに参加(平成30年度改正) | それぞれ算定可能 |
| 複数の訪問看護ステーションのみが参加(保険医が参加していない) | 算定不可 |
| 准看護師が参加 | 算定不可(看護師のみが対象) |
なお、開催場所は原則として利用者の居住する場ですが、利用者または家族がそれ以外の場所での開催を希望する場合は、別の場所での開催でも算定できるとされています。また、特別の関係にある医療機関の関係者のみで構成されたカンファレンスであっても算定可能である点は、意外と見落としやすいポイントです。

在宅患者緊急時等カンファレンス加算の料金と算定回数の上限
料金と算定回数の上限を整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 料金 | 2,000円/回 |
| 算定条件 | 保険医の求めによるカンファレンスに参加し、共同で療養上必要な指導を行った場合 |
| 算定回数の上限 | 月2回を限度 |
| 対象となる職種 | 訪問看護ステーションの看護師(准看護師を除く) |
カンファレンスの開催回数がそのまま算定回数になるわけではありません。月2回が上限のため、同一月内に3回以上開催しても、算定できるのは2回分までです。また、カンファレンスの目的のみで訪問した場合、訪問看護基本療養費(Ⅰ)・(Ⅱ)は算定できず、この加算のみの算定となる点にも注意してください。
算定の流れ
在宅患者緊急時等カンファレンス加算の算定に至るまでの流れを整理すると、次のようになります。
- 利用者の状態の急変・診療方針の変更等が生じる在宅で療養を行っている利用者に、病状の急変や治療方針の大幅な見直しが必要な事態が発生します。
- 保険医からカンファレンス開催の求めがある利用者の在宅療養を担う保険医療機関の保険医が、カンファレンスの必要性を判断します。
- 関係職種が共同でカンファレンスを実施する保険医・訪問看護師のほか、必要に応じて歯科医師・薬剤師・介護支援専門員等が参加し、共同で利用者・家族へ療養上必要な指導を行います。
- 実施内容を訪問看護記録書等に記録するカンファレンスの実施日、参加した医療関係職種等の氏名、カンファレンスの要点、指導の要点を記録に残します。
ビデオ通話(オンライン)でカンファレンスに参加する場合の条件
このカンファレンスは、原則として関係者全員が利用者の居宅に赴いて実施することが前提です。ただし、やむを得ない事情により参加できない関係者がいる場合は、一定の条件を満たせば、いずれかの関係者がビデオ通話が可能な機器を用いて参加しても算定できるとされています。主な条件は次のとおりです。
- 当該カンファレンスに3者以上が参加すること
- そのうち2者以上は、利用者の居宅に赴いてカンファレンスを行っていること
- 訪問看護ステーションの看護師がビデオ通話で参加することも可能
「やむを得ない事情」としては、天候不良で会場への移動手段がない場合、利用者への急な対応で間に合わなかった場合、退院予定日など対応が必要な日までに関係者全員の予定を確保できない場合などが挙げられています。また、画面上で利用者の個人情報を取り扱う場合は、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠した機器を用いることが求められています。
ビデオ通話が可能な機器であれば、種類そのものは問われません。携帯電話による画像通信でも、リアルタイムで画像を含めたやり取りができるものであれば対象になるとされています。とはいえ、個人情報の取扱いに配慮した機器・環境かどうかは、事業所として事前に確認しておきたいポイントです。

レセプト請求・記録で気をつけたい留意点
算定要件を満たしていても、レセプト請求や記録の残し方でつまずくケースがあります。実務上、特に確認しておきたい点を整理しました。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 訪問看護基本療養費との関係 | カンファレンスの目的のみでの訪問では基本療養費(Ⅰ)・(Ⅱ)は算定できない |
| 複数ステーションの参加 | それぞれ算定可能。ただし保険医が参加しない「訪問看護ステーションのみ」の構成では算定不可 |
| 特別の関係にある関係者のみの参加 | 算定可能(平成30年度改正) |
| 記録すべき項目 | 実施日、参加した医療関係職種等の氏名、カンファレンスの要点、指導した内容の要点 |

緊急時のカンファレンスは記録が後回しになりがちですが、算定の妥当性を後から説明できるようにするためにも、参加者の氏名とカンファレンスの要点はその日のうちに記録しておくことをおすすめします。
在宅患者連携指導加算・C011料など、似た制度との違い
在宅患者緊急時等カンファレンス加算は、名称が似ている制度や、同じカンファレンスでも請求元が異なる制度と混同しやすい加算です。主な違いを整理します。
| 制度名 | 請求元 | 評価する場面 |
|---|---|---|
| 在宅患者緊急時等カンファレンス加算(本記事) | 訪問看護ステーション(訪問看護療養費) | 急変・方針変更時のカンファレンスへの参加 |
| 在宅患者緊急時等カンファレンス料(C011) | 保険医療機関(診療報酬・200点) | 同じ趣旨のカンファレンスに保険医療機関側として参加 |
| 在宅患者連携指導加算 | 訪問看護ステーション(訪問看護療養費) | 緊急時に限らない、日常的な医療機関との情報共有・連携指導 |
同じ1回のカンファレンスであっても、訪問看護ステーション側は在宅患者緊急時等カンファレンス加算、保険医療機関側はC011の在宅患者緊急時等カンファレンス料として、それぞれ別建てで算定する仕組みになっています。名前がよく似ているため、レセプト作成時に取り違えないよう注意しましょう。
よくある質問
准看護師がカンファレンスに参加した場合、この加算は算定できますか?
算定できません。在宅患者緊急時等カンファレンス加算の対象は訪問看護ステーションの看護師であり、准看護師は対象から除外されています。
カンファレンスの目的のみで利用者宅を訪問した場合、訪問看護基本療養費も算定できますか?
算定できません。カンファレンスの目的のみで訪問した場合は、訪問看護基本療養費(Ⅰ)または(Ⅱ)は算定できず、在宅患者緊急時等カンファレンス加算のみを算定することになります。
同一のカンファレンスに複数の訪問看護ステーションが参加した場合、それぞれ算定できますか?
平成30年度改正により、それぞれの訪問看護ステーションが算定できるようになりました。ただし、保険医が参加せず、複数の訪問看護ステーションのみが参加した場合は算定できません。
ビデオ通話で参加しても算定できますか?
原則は関係者全員が利用者の居宅に赴くことが前提ですが、やむを得ない事情がある場合に限り、カンファレンスに3者以上が参加し、そのうち2者以上が利用者の居宅に赴いていることを条件に、いずれかの関係者がビデオ通話が可能な機器を用いて参加しても算定できるとされています。
特別の関係にある医療機関の医師とのカンファレンスでも算定できますか?
算定可能です。平成30年度改正により、特別の関係にある関係者のみで構成されたカンファレンスであっても算定できることが明確化されています。
1か月に3回以上カンファレンスを行った場合、3回目以降も算定できますか?
算定できません。在宅患者緊急時等カンファレンス加算は月2回が算定の上限のため、開催回数が3回以上であっても、算定できるのは月2回分までです。

複数の訪問看護ステーションが同時にケアに関わっているケースでは、この加算に限らず「どの事業所が算定できるか」の整理が重要になります。あわせて確認しておきましょう。
関連記事を読むまとめ|「保険医の求め」と「月2回の上限」を押さえておく
在宅患者緊急時等カンファレンス加算は、利用者の状態急変や診療方針の変更等に伴い、保険医の求めで開催されたカンファレンスに訪問看護師が参加し、共同で療養上必要な指導を行った場合に算定できる加算です。料金は2,000円/回、月2回が上限であり、准看護師は対象外という点も忘れずに確認しておきたいポイントです。
- 保険医の求めによるカンファレンスに参加し、共同で指導を行った場合に算定できる(厚生労働省告示で確認済み)
- 料金は2,000円/回、月2回を限度に算定できる
- 対象は訪問看護ステーションの看護師(准看護師を除く)
- やむを得ない事情がある場合に限り、条件付きでビデオ通話での参加も可能
- 複数の訪問看護ステーションが参加した場合はそれぞれ算定できるが、保険医の参加が前提
緊急時のカンファレンスは記録が後回しになりがちですが、参加者・要点・実施日をその都度記録に残す習慣をつけておきましょう。























