「訪問看護ステーションを開設したいが、指定申請にどんな書類が必要なのか分からない」「申請から実際に事業を始められるまで、どのくらい時間がかかるのか見通しが立たない」——開設準備を進める中で、この2つの不安を抱える方は少なくありません。
訪問看護ステーションの指定申請は、介護保険法・健康保険法に基づく行政手続きであり、都道府県(指定都市・中核市を含む)ごとに書式や運用の細部が異なります。この記事では、申請の全体像・標準的な流れ・必要書類・スケジュールの目安・注意点を、実際の自治体資料をもとに整理して解説します。
- 訪問看護ステーションの指定申請とは何か、介護保険・医療保険との関係
- 法人設立から事業開始までの標準的な9つのステップ
- 指定申請で求められる主な必要書類
- 申請から指定までのスケジュール感と、申請時の注意点
目次
訪問看護ステーションの指定申請とは?
訪問看護は、介護保険法に基づく「指定居宅サービス事業者」の指定と、健康保険法に基づく「訪問看護療養費」の指定という、2つの制度にまたがるサービスです。実務上は、介護保険の指定申請を行う際に医療保険(健康保険法)の訪問看護にも対応する形で手続きが進むのが一般的で、指定は事業所の所在地を管轄する都道府県知事(指定都市・中核市の場合はその市長)が行います。
また、介護保険の指定には6年間の有効期間があり、期間満了までに更新の手続きを行わなければ指定の効力を失い、介護報酬の請求ができなくなります。多くの自治体では有効期間満了日の2ヶ月前を目安に更新手続きの案内が届く運用になっていますが、新規開設の準備段階でも「指定を受けたら終わりではなく、その後も定期的な更新手続きが発生する」という点は押さえておきましょう。

指定申請の窓口や様式は自治体ごとに公開されていますが、書式の細部・提出部数・受付期間は本当にバラバラです。開業予定地の都道府県・市のホームページを必ず確認してから準備を進めてくださいね。
指定申請までの流れ|法人設立から事業開始まで
訪問看護ステーションの開設は、おおむね次のようなステップで進みます。自治体により順序や名称に違いがあるため、あくまで標準的な流れとして参考にしてください。
- ①法人格の取得訪問看護ステーションは法人でなければ指定を受けられません。株式会社・NPO法人・医療法人など、事業計画に合った法人形態で設立登記を済ませます。
- ②申請先の確認事業所を置く予定地を管轄する都道府県・指定都市・中核市のどこが申請窓口になるかを確認します。
- ③事前相談・指定申請の予約多くの自治体で、正式な書類提出の前に事前相談や予約手続きが設けられています。
- ④手数料の納付指定申請には手数料がかかる自治体が多く、納付書の交付を受けて納付します。
- ⑤指定申請書類の提出指定申請書・付表・添付書類一式を、定められた受付期間内に提出します。
- ⑥審査提出書類をもとに、人員基準・設備基準・運営基準を満たしているかどうかの審査が行われます。
- ⑦指定時研修自治体によっては、指定前後に管理者等を対象とした研修の受講が求められます。
- ⑧医療保険(健康保険法)の届出地方厚生局に対して、訪問看護療養費に関する届出や施設基準の届出を行います。
- ⑨事業開始指定日をもって正式に事業を開始できます。
指定申請の審査が完了し、正式な指定日を迎えるまでは、利用者との契約・サービス提供はできません。開業日を見込んで先に利用者募集や契約を進めてしまうと、無資格でのサービス提供とみなされるおそれがあるため、必ず指定日以降に契約を行いましょう。
指定申請に必要な主な書類
指定申請で提出を求められる書類は自治体によって様式・名称が異なりますが、一般的に共通して求められる主な書類は次のとおりです。
| 書類 | 内容・ポイント |
|---|---|
| 指定申請書 | 自治体所定の様式に基づく申請書本体 |
| 付表(事業内容の詳細) | サービス提供体制や事業内容を記載する様式 |
| 法人登記事項証明書 | 発行から一定期間内(3ヶ月以内など)のもの |
| 運営規程 | 営業日・営業時間、利用料、緊急時の対応等を定めた規程 |
| 勤務体制一覧表 | 4週間分など、一定期間の職員の勤務時間・体制を示す表 |
| 資格証の写し | 看護師・保健師等、従業者全員分の免許証等の写し |
| 管理者の経歴書・免許証の写し | 管理者の実務経験・資格を証明する書類 |
| 平面図 | 事務室・相談室等のレイアウトを明示した図面 |
| 写真 | 事業所の外観・相談室・鍵付きロッカー等のカラー写真 |
| 苦情処理方法の概要 | 苦情受付の窓口・対応方法を示す書類 |
| 誓約書 | 欠格事由に該当しないこと等を誓約する書類 |

上記はあくまで一般的な例です。自治体によっては誓約書の様式が複数に分かれていたり、消防法令適合通知書の添付が求められたりするなど、追加の書類が必要になるケースがあります。必ず開業予定地の自治体の最新の申請案内を確認してください。
申請から指定までのスケジュールの目安
指定申請の受付には、多くの自治体で毎月決まった受付期間が設けられており、指定日は月の初日(1日付)となるケースが一般的です。ただし、受付締切日・審査期間・研修の実施時期は自治体によって異なるため、余裕をもったスケジュールを組むことが重要です。
法人設立から書類準備、事前相談、審査期間までを含めると、開設を思い立ってから実際の事業開始まで数ヶ月単位の準備期間がかかると見込んでおくとよいでしょう。物件の契約・人員の確保(管理者となる看護師、常勤換算2.5人以上の看護職員等)も並行して進める必要があるため、早めに自治体の窓口へ相談することをおすすめします。

「毎月1日指定」という運用が多いとはいえ、これも自治体によって差があります。事前相談の段階で「今から準備を始めた場合、最短でいつの指定を目指せますか」と具体的に聞いてしまうのが一番確実です。

指定申請をする上での注意点
- 都道府県・指定都市・中核市により、申請書の様式・提出部数・受付期間が異なる
- 審査には一定の期間がかかるため、開業希望時期から逆算して早めに準備を始める
- 指定後、事業所名・管理者・従業者・運営規程等に変更が生じた場合は、都度届出が必要
- 指定日より前に利用者との契約・サービス提供を行うことはできない
指定申請で審査される人員基準
必要書類をそろえるにあたって前提となるのが、訪問看護ステーションに求められる人員基準です。指定申請の審査では、この基準を満たしているかどうかが厳しくチェックされます。
| 職種 | 基準 |
|---|---|
| 看護職員(保健師・看護師・准看護師) | 常勤換算方法で2.5以上。うち1名は常勤であること |
| 管理者 | 専らその職務に従事する常勤の者を1名配置。原則として保健師または看護師であること(やむを得ない理由がある場合を除く) |
| 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等 | 事業所の実情に応じた適当数 |
これらは「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(厚生省令第37号)で定められている基準です。常勤換算方法とは、従業者の勤務延時間数を、その事業所の常勤者が勤務すべき時間数で割ることで人数に換算する計算方法を指します。看護職員2.5人以上という基準は、パート職員を組み合わせて満たすことも可能ですが、そのうち少なくとも1名は常勤でなければならない点に注意が必要です。
管理者は「専従・常勤」が原則です。管理者を別事業所の管理者と兼務させたり、非常勤で配置したりする計画は、指定申請の審査で認められない可能性が高いため、開業準備の早い段階で管理者候補を確保しておくことが重要です。
よくある質問
指定申請の必要書類は全国共通ですか?
基本的な書類の種類(指定申請書・運営規程・勤務体制一覧表・平面図・誓約書等)は共通する部分が多いものの、様式や提出部数、追加で求められる書類は自治体によって異なります。必ず開業予定地の都道府県・指定都市・中核市の最新の申請案内を確認してください。
指定申請から事業開始までどのくらいかかりますか?
多くの自治体で指定日は月初(1日付)となる運用が一般的ですが、受付締切日や審査期間は自治体により異なります。法人設立や人員確保の準備期間も含めると、開設を検討し始めてから事業開始まで数ヶ月単位の期間を見込んでおくとよいでしょう。
指定申請の審査中に利用者との契約はできますか?
できません。正式な指定日を迎える前にサービス提供や契約を行うと、無資格でのサービス提供とみなされるおそれがあります。指定日以降に契約手続きを進めましょう。
指定後に管理者や事業所の情報が変わった場合はどうすればよいですか?
事業所名、管理者、従業者、運営規程等に変更があった場合は、指定権者である自治体への変更届出が必要です。届出の期限や様式も自治体ごとに定められているため、変更が生じた際は速やかに確認・提出しましょう。
指定申請には手数料がかかりますか?
自治体によっては指定申請の手数料が定められている場合があります。手数料の有無や金額は自治体ごとに異なるため、申請書類の準備を始める段階で、開業予定地の自治体の案内で確認しておきましょう。
- 大阪府「訪問看護・介護予防訪問看護 新規指定申請について」
- 厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)第60条・第61条
- 大阪府「介護保険事業者の指定の更新について」
必要書類・様式・受付期間は自治体ごとに異なります。記事中の内容は一例であり、実際の申請にあたっては、必ず開業予定地を管轄する自治体の最新の案内・様式をご確認ください。
まとめ|指定申請は早めの情報収集と準備がカギ
訪問看護ステーションの指定申請は、法人設立から必要書類の準備、審査、指定時研修まで複数のステップを踏む手続きです。自治体ごとの違いが大きいテーマだからこそ、開業予定地の窓口に早い段階で相談し、必要書類とスケジュールを具体的に確認しておくことが、スムーズな開業につながります。
- 指定申請は介護保険法・健康保険法に基づく行政手続きで、都道府県等が指定権者
- 法人設立から事業開始まで、標準的には9つのステップで進む
- 必要書類は指定申請書・運営規程・勤務体制一覧表・平面図など多岐にわたる
- 様式・受付期間・スケジュールは自治体ごとに異なるため、早めの窓口確認が重要
正確な情報を早期に集め、余裕をもったスケジュールで準備を進めましょう。
























