【徹底解説】訪問看護ステーションを立ち上げるには?(準備、開設の流れ等)

 

訪問看護ステーションを立ち上げるには何をすれば良いのだろうか?

このような疑問を解決できる記事です。

 

この記事では訪問看護ステーションの立ち上げについて徹底解説します。

この記事で分かることは以下の通りです。

 

この記事で分かること
  • 訪問看護ステーションの立ち上げの概要
  • 訪問看護ステーション立ち上げの詳細
    (備品、保険、手続き、設備、基準、書類、届出など)

 

ぜひ参考にしてください。

 

訪問看護ステーションを立ち上げるには

 

訪問看護ステーションを立ち上げるにはさまざまな準備が必要です。

一つずつについて説明していきます。

 

法人を設立する

訪問看護事業を始めるには法人格が必要となります。

株式会社、有限会社、NPO法人など設立手続きを行い、法人を設立します。

定款に訪問看護事業を行う旨を記載します。

既に法人がある場合は、その文言を追加して本社の住所を管轄する法務局で登記変更を行います。

訪問看護ステーションを開設する意義、理念、提供する訪問看護サービスの内容や方針を決定していきます。

また、法人印の作成・銀行口座の開設、税務・労務に関して今後関わってもらう、税理士さんや社労士さんの選定についても考えていきます。

知人に紹介してもらうなどして、信頼できる方を探しましょう。

 

指定基準を満たす

訪問看護事業所を開設するには、指定基準(人員基準・設備基準・運営基準)を満たさなくてはなりません。

 

人員基準

訪問看護ステーションを立ち上げるためには看護師または保健師が管理者になる必要があります。

また、病院または診療所以外の指定訪問看護事業所の場合、看護職員が常勤換算で最低2.5人必要です。

管理者として常勤の保健師または正看護師が必要で、管理者は看護職員を兼ねることが可能なので、

残り1.5人、例えば常勤看護師1名と半日勤務の非常勤看護師など、最低数の看護職員が集まれば人員基準を満たすことが可能です。

 

POINT
  1. 管理者は常勤の保健師または正看護師
  2. 管理職は看護職員を兼ねてよい
  3. 看護職員が常勤換算2.5人必要
  4. セラピストの採用は任意

 

病院または診療所である指定訪問看護事業所の場合は看護職員は1名以上の常勤職員がいれば開設可能となります

 設備基準

事業の運営を行うためには以下のような条件があります。

 

  • 専用の事務室を設ける
  • 利用申込みの受付、相談等に対応するのに適切なスペースを確保する
  • 指定訪問看護に必要な設備及び備品等を確保する。特に、感染症予防に必要な設備等に配慮する必要がある

 

スタッフの場所と相談室はパーテーションなどで仕切り、プライバシー保護に気をつけなくてはなりません。

 

 運営基準

指定訪問看護ステーションの運営については、基準第5条から第 31 条(平成 12 年厚生省令第 80 号)に定められています。
また、以下のような項目ごとに実際にどのような対応、準備が必要なのかが記されています。
  • 内容及び手続の説明及び同意(基準第5条関係)
  • 提供拒否の禁止(基準第6条関係)
  • 提供困難時の対応(基準第7条関係)
  • 受給資格の確認(基準第8条関係)
  • 心身の状況等の把握(基準第9条関係)
  • 保健医療サービス及び福祉サービス提供者との連携(基準第 10 条関係)
  • 身分を証する書類の携行(基準第 11 条関係)
  • 利用料(基準第 13 条関係)
  • 指定訪問看護の基本取扱方針及び具体的取扱方針(基準第 14、15 条関係)
  • 主治医との関係(基準第 16 条関係
  • 訪問看護計画書及び訪問看護報告書の作成(基準第 17 条関係)
  • 利用者に関する全国健康保険協会、後期高齢者医療広域連合又は健康保険組合へ
    の通知(基準第 18 条関係)
  • 緊急時の対応(基準第 19 条関係)
  • 管理者の責務(基準第 20 条関係)
  • 運営規程(基準第 21 条関係)
  • 勤務体制の確保等(基準第 22 条関係)
  • 衛生管理等(基準第 23 条関係)
  • 掲示(基準第 24 条関係)
  • 秘密保持(基準第 25 条関係)
  • 広告(基準第 26 条関係)
  • 苦情処理(基準第 27 条関係)
  • 事故発生時の対応(基準第 28 条関係)
  • 会計の区分(基準第 29 条関係)
  • 記録の整備(基準第 30 条関係)
  • 事業報告(基準第 31 条関係)

 

 

開設資金を確保する

開設には資金調達が必要です。

必要な資金は、設備資金と運転資金です。

訪問看護ステーション開設に必要な設備資金

設備資金とは、資産等になる設備を購入または契約するために使う資金のことです。

設備資金には以下のようなものがあります。

 

  • 事務所の家賃
  • 携帯電話やタブレット等の機器
  • 自動車・自転車
  • 求人広告・宣伝費
  • デスクやコピー機、電話、FAX、パソコン、書類を保管するための鍵がかかる書棚・書庫
  • 看護業務に必要な血圧計、体温計
  • 指定申請手数料
  • 会社設立費用

 

訪問看護ステーション開設に必要な運転資金

運転資金とは、事業を持続して運営するために必要な資金です。

訪問を開始して介護保険請求を行っても、支払いされるのは2カ月後となります。

開設当初は訪問件数も少ないですから、軌道に乗るまでまでの給与支払いや家賃、その他固定支出を含めた額を準備しておかなければなりません。

運転資金には以下のようなものがあります。

 

  • 人件費(給与や社会保険、福利厚生費等)
  • 消耗品・雑費
  • 文具
  • コピー用紙・プリンターのインク
  • 名刺
  • 医療衛生材料
  • 光熱費
  • 通信費
  • ガソリン代

 

訪問看護ステーションの立ち上げ資金には約700~1000万円程が必要といわれていますが、

特に、人件費が多くかかる傾向にあります。

訪問看護ステーションの人員基準、看護職員(常勤換算2.5人以上)が満たされなくなると、運営自体に影響が出るため、人員確保が大変重要になります。

自己資金と融資を合わせて余裕のある資金を準備しておくことで、収益が上がるまでの運営がしやすくなります。

訪問看護立ち上げの資金に関してはこちらの記事もご覧ください。

 

 

市場の調査

訪問看護ステーションを立ち上げて、収益を上げていくには市場の調査が重要になってきます。

 

POINT
  • 地域の特徴や人口動態(現在の人口、将来推計、高齢者数、高齢化率など)
  • 競合の訪問看護ステーションの分布や特徴
  • 事業所の開設後の利用者の見込み(要介護認定者数、訪問看護サービスの利用状況)
  • 病院や診療所等の医療機関の数
  • 訪問看護需要予測

 

訪問看護事業者が増加してきていることにより、競合他社が多すぎる地域も出てきています。

しっかりと調査することにより、開設後の安定的な経営が望めます。

ここは大変重要なポイントですから、しっかり行っていきましょう。

 

 

情報共有ツール・電子カルテ・請求ソフト準備

情報共有ツール・電子カルテや請求ソフトを導入すると、業務効率がアップします。

電子カルテは色々なソフトがありますから、メーカーの営業担当者に説明を聞くとともに、他事業所がどのツールを使用していて、評判はどうか、などと言うことも確認してみましょう。

電子カルテ導入のメリット
  • 訪問看護記録の入力
  • 計画書・報告書の作成
  • 利用者情報の確認
  • 利用者情報と地図アプリとの連動で移動がスムーズになる
  • 請求業務の効率化
年齢や経験の様々な看護師やセラピストが働く訪問看護ステーション。
タブレットやスマートフォンの操作が苦手な職員ももちろんいますから、ストレスになならないよう、あまりに色々なツールを導入しすぎず、情報管理や連絡がスムーズできるようにしていきましょう。

賠償責任保険に加入する

利用者が増えるにつれて発生するリスクも増大します。

看護事業を行う事業者として法的な責任を負うことが求められるケースがあります。

万が一、業務の遂行に際して、医療事故等が発生し、損害賠償請求を受けた場合にその法律上の賠償責任を補償するために、損害賠償保険への加入が義務付けられています。

安心してサービス提供を行えるように、十分な補償のあるものに加入しましょう。

 

指定申請手続きや運営規定等作成

健康保険法に基づく訪問看護事業を行うためには、あらかじめ地方厚生(支)局長による指定訪問看護事業者の指定を受ける必要があります。

ただし、介護保険法に基づく都道府知事(指定都市、中核市、区市町村)による指定居宅サービス事業者・指定介護予防サービス事業者の指定を受けた場合、健康保険法に基づく指定訪問看護事業者の指定もなされたことになりますので、申請は不要となります。

 

指定申請には以下のような書類の提出が必要になります。

申請書類は開設する地域により異なる場合がありますので、それぞれ確認が必要です。

 

  • 指定居宅サービス事業者・指定介護予防サービス事業者申請書
  • 指定に係る記載事項(付表、付表別紙)
  • 申請者の登記事項証明書又は条例等
  • 当該申請に係る事業に係る従業者の勤務の体制及び勤務形態を記載した書類
  • 事業所の管理者等の経歴を記載した書類
  • 事業所の平面図並びに設備の概要を記載した書類
  • 運営規程
  • 利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要を記載した書類
  • 介護保険法 70 条第2項の各号等に該当しない旨の誓約書

 

 

書類を整備する

訪問看護事業の運営や利用者に対する訪問看護サービス提供等に関する記録、事業の状況を適正に維持するための諸記録や規程を準備します。

 

ⅰ)訪問看護サービス提供や事業運営に必要な書類

・管理記録(事業日誌、職員の勤務状況・給与・研修等に関する記録、月間・年間の事業計画表、事業実施状況表)・市町村等との連絡調整に関する記録・利用者との契約に関する書類(契約書、重要事項説明書、個人情報使用同意書、利用料金表等)・指定訪問看護に関する記録(訪問看護記録書、訪問看護指示書、訪問看護計画書、訪問看護報告書、市町村等に対する情報提供所(医療保険)等)・会計経理に関する記録・設備・備品に関する記録・運営規程(事業の目的・運営の方針、従業者の職種・員数・職務内容、営業日・営業時間、指定訪問看護の内容及び利用料その他の費用の額、通常の事業の実施地域、緊急時等における対応方法、その他訪問看護ステーションの運営に関する重要事項)・事業所のパンフレット・訪問看護サービス提供のための各種マニュアル

 

ⅱ)事業運営に必要な規程等

・組織諸規程(個人情報保護規程、旅費規程、学会・研修会参加規程、慶弔見舞金規程、福利厚生に関する規程、車両管理規程、防災防火管理に関する規程)・人事諸規程(就業規則、育児休業規程、介護休業規程、再雇用規程、給与規程、退職金規程、人材評価規程)・業務諸規程(感染症に関するマニュアル、交通事故に関するマニュアル、クレーム対応マニュアル)

 

 

備品の準備をする

事業所が決定して、賃貸契約が完了したら事務所の備品準備をしていきましょう。

訪問看護ステーションの運営にはこんなものが必要になってきます。

 

設備用品

看板、電話機、携帯電話、自動車、自転車、掃除機、FAX、机、いす、パソコン、ホワイトボード、ロッカー、プリンター、コピー機、シュレッダー、テレビ、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、ポットなど

 

事務用品
パンフレット、印鑑、名刺、記録用紙、ファイル、筆記用具、封筒切手、電池など

 

訪問に関する物品
ユニフォーム、エプロン、ガウン、訪問バッグ、ゴム手袋、マスク、靴下、アルコール消毒、血圧計、体温計、パルスオキシメーター、聴診器、ペンライト、メジャー、衛生材料など
以上のような物品をスタッフの人数分に加えて、故障した場合にすぐに交換できるように予備を準備しておくことが必要です。

 

衛生材料が急に必要となる場合もありますので、ステーションにガーゼやテープ、フィルム保護剤等を準備しておきます。

衛生材料についてはこちらの記事を参考にしてください。

 

 

加算等の体制の届け出をする

事業者は、介護報酬で定める届出事項(加算体制等)、サービス計画策定・支給限度額管理上で必要となる事項を都道府県等に届け出ます。

介護保険法に基づく指定申請により、健康保険法上の指定訪問看護事業者とみなされている場合であっても、算定要件において届出が必要とされる24時間対応体制加算、特別管理加算、個別管理加算申請、精神科訪問看護基本療養費等の項目を算定する場合は、介護保険法に関する届出とは別に、地方厚生(支)局への届出が必要です。

届出先は、訪問看護ステーションが所在する府県を管轄する事務所となります。

 

介護保険関係の届け出

・訪問看護事業変更届
・訪問看護事業の休止、廃止、再開届
・緊急時訪問看護加算
・特別管理加算
・ターミナルケア加算 等

→届け出先:都道府県、市区町村等

 

医療保険関係の届け出

・訪問看護事業変更届
・訪問看護事業の休止、廃止、再開届
・精神科訪問看護基本療養費
・24 時間対応体制加算又は 24 時間連絡体制加算
・特別管理加算
・専門の研修を受けた看護師
・精神科複数回訪問加算
・精神科重症患者早期集中支援管理連携加算
・機能強化型訪問看護療養費1・2

→届け出先:地方厚生(支)局

 

業務管理体制の届け出をする

事業者には、法令遵守の義務の履行を制度的に確保し、指定取消につながるような不正行為を防止し、利用者の保護と介護事業運営の適正化を図るために、業務管理体制の整備をすることが義務付けられています。

事業所数に応じた事項(表参照)を、事業実施地域等に応じて国・都道府県(指定都市)に届出し、変更があった場合は、改めて届出が必要です。

 

 【事業所数に対して必要な業務管理体制整備の内容】

 
法令遵守責任者の選任 法令遵守規程の整備  業務執行の状況の監査を定期的に実施
1以上20未満
20以上100未満
100以上

 

※1 事業所等の数には、介護予防及び介護予防支援事業所を含みますが、みなし事業所は除いてください。

※2 総合事業における介護予防・生活支援サービス事業は、事業所等の数から除いてください。

 

これから開業される場合には、まず法令遵守責任者の選任が必要になります。

法令遵守責任者の役割については、法令等で明確に定められていませんが、事業者自らが試行錯誤しながらコンプライアンスを高めていただくことが重要です。

 

業務内容の具体例

・年に1回以上、各事業所等の取組状況を各事業所等の従業員又は管理者からの聞き取り及び書面での報告等により把握する。
※自己点検シート等の活用或いは各種会議の場を活用する。
・各事業所等から選出された従業員又は管理者(以下「法令遵守担当者」という。)で組織された委員会を設置し、法令遵守責任者は事業者全体の法令遵守を徹底する連絡体制を確保する。
・研修等を実施し、従業員の法令遵守意識を高める。
・定期的に、介護保険法その他の関連情報等(制度改正及び介護報酬に関する通知・Q&A等)の収集等を行う。
・苦情・事故等の問題が発生した場合には、速やかに報告を求め、事実関係の把握を行い、迅速に解決を図る。 その原因を究明し、防止策を法令遵守担当者で組織された委員会等の場で検討し、各事業所等の運営に反映させる。

 

参考)厚生労働省 介護サービス事業者の業務管理体制整備に関する届出について

 

事業を開始する

指定申請が承認されるまでには通常1ヶ月~2ヶ月かかります。

開設準備と同時に訪問看護ステーションの広告宣伝をはじめ、医療機関や居宅介護支援事業所などとも連携を図っておき、利用者の依頼がスムーズに受けられるような態勢を構築しておきましょう。

また、職員の研修も早期から行い、チームワークを高め、訪問看護サービスが提供できるようにしておくことが重要です。

 

 

ビジケアの訪問看護ステーション開設支援

 

訪問看護ステーションの開設は様々な準備を並行して進めることが必要になります。

開設準備全体には最短でも3ヶ月ほどかかりますので、立ち上げメンバーで協力して、運営開始に向け準備していってください。

 

制度面の他にも働きやすい環境づくりも大切です!

色々工夫しながら、地域に欠かせない素敵な訪問看護ステーションづくりをしてください!

 

Ns上妻

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