在宅酸素療法や気管切開、中心静脈栄養など、医療的な管理が必要な利用者を訪問看護で支える場面は少なくありません。こうした利用者への対応は、通常の訪問看護よりも手間と専門性が求められます。こうした利用者に対して計画的な管理を行った場合に算定できるのが「特別管理加算」です。
この記事では、医療保険における特別管理加算の対象となる状態、料金(5,000円・2,500円)、算定要件、複数の訪問看護ステーションが関わる場合の扱いまで、実務でのケア場面の具体例も交えてわかりやすく解説します。
- 特別管理加算とは何か
- 5,000円・2,500円それぞれの対象となる状態
- 算定するために整えておくべき体制要件
- 複数の訪問看護ステーションが関わる場合の算定可否
- 実務でつまずきやすい留意点(留置カテーテル・褥瘡管理等)
目次
特別管理加算とは?
特別管理加算とは、医療保険の訪問看護管理療養費における加算のひとつで、在宅酸素療法や気管切開、留置カテーテルの使用など、特別な医療的管理が必要な利用者に対して計画的な管理を行った場合に、月1回に限り算定できるものです。医療的ケアの負担が大きい利用者ほど手厚い体制が必要になるため、この加算はその対価としての性格を持っています。対象となる状態によって、加算額が5,000円と2,500円の2区分に分かれています。この加算は訪問看護管理療養費の一部として位置づけられており、通常の訪問看護療養費とは別立てで算定されるものです。
5,000円の対象となる状態
次のいずれかに該当する場合、月5,000円の特別管理加算を算定できます。
- 在宅麻薬等注射指導管理を受けている状態
- 在宅腫瘍化学療法注射指導管理を受けている状態
- 在宅強心剤持続投与指導管理を受けている状態
- 在宅気管切開患者指導管理を受けている状態
- 気管カニューレを使用している状態
- 留置カテーテルを使用している状態
2,500円の対象となる状態
次のいずれかに該当する場合は、月2,500円の特別管理加算の対象です。
| 対象区分 | 具体的な状態 |
|---|---|
| 在宅療法関連 | 在宅自己腹膜灌流指導管理、在宅血液透析指導管理、在宅酸素療法指導管理 |
| 栄養管理関連 | 在宅中心静脈栄養法指導管理、在宅成分栄養経管栄養法指導管理 |
| 排泄・呼吸管理関連 | 在宅自己導尿指導管理、在宅人工呼吸指導管理、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理 |
| その他の状態 | 人工肛門・人工膀胱を設置している状態、真皮を越える褥瘡の状態 |

「真皮を越える褥瘡」は特別訪問看護指示書の月2回交付要件とも共通するキーワードです。あわせて押さえておくと制度理解が深まりますよ。

特別管理加算を算定するための体制要件
特別管理加算を算定するステーションは、次のような体制を整えている必要があります。
- 24時間対応体制加算を算定できる体制の整備緊急時に24時間対応できる体制を整えていることが前提です。オンコール担当の配置や連絡フローの整備が実務上のポイントになります。
- 重症者対応が可能な職員・勤務体制の確保特別な医療的管理を要する利用者に対応できるだけの人員配置・スキルの確保が必要です。
- 連携する医療機関との密接な体制の確保主治医・医療機関との情報連携が緊密に取れる体制であることが求められます。日頃からの報告・連絡・相談の頻度と質が、この要件を満たしているかどうかの判断材料になります。

複数の訪問看護ステーションが関わる場合の算定
特別管理加算のもうひとつの重要なポイントが、複数の訪問看護ステーションが同じ利用者に関わる場合の扱いです。介護保険と混同したまま算定してしまうと、返戻の原因になりかねません。医療保険の特別管理加算は、複数のステーションが関わっている場合、それぞれのステーションで算定することができます。
これは介護保険の特別管理加算とは異なるルールであり、実務担当者が最も混同しやすいポイントのひとつです。介護保険の場合は、複数のステーションが関わっていても算定できるのは1事業所のみとされており、どのステーションが算定するかを事業所間で調整する必要があります。医療保険・介護保険のどちらで運用しているかを混同しないよう注意しましょう。
複数の訪問看護ステーションが関わる場合の加算全般の整理については、以下の記事もあわせてご確認ください。
留意点|留置カテーテルのみでは算定できないケースがある
実務でよくある疑問として、「留置カテーテルが入っているだけで特別管理加算を算定できるか」というものがあります。結論として、単にカテーテルが留置されているという状態だけでは算定できません。排液の観察や薬剤の注入など、計画的な管理を実際に行っている場合にのみ算定の対象になります。なお、ドレーンも留置カテーテルに含まれる扱いです。
また、点滴注射を実施した場合は、訪問看護記録に指示書の内容を添付し、実施内容(薬剤名・投与量・実施時刻等)を正確に記録しておく必要があります。真皮を越える褥瘡で算定する場合は、週1回以上の観察・評価記録が求められる点も忘れずに押さえておきましょう。
算定要件を満たしているかどうかは、訪問看護記録・報告書の記載内容で裏付けられている必要があります。「対象状態に該当している」ことと「計画的な管理を行っている」ことの両方を、記録として残しておく習慣をつけましょう。日々の記録の積み重ねが、算定の正当性を支える最大の根拠になります。
特別管理加算の対象になりやすい具体的なケア場面
特別管理加算の対象となる状態は制度上のリストだけを見ると分かりにくいため、実際の現場でどのようなケアが該当するのか、いくつか例を挙げます。
| 対象状態 | 具体的なケアの例 |
|---|---|
| 在宅中心静脈栄養法 | 点滴ルートの管理、刺入部の観察・消毒、輸液バッグ・ポンプの交換介助、感染徴候の確認 |
| 気管カニューレ使用 | カニューレの固定状態確認、吸引、周囲皮膚のトラブル観察、加湿・気道クリアランスの管理、緊急時対応の確認 |
| 真皮を越える褥瘡 | 創部の洗浄・処置、週1回以上の状態評価と記録(創部のサイズ・滲出液の量や性状・周囲皮膚の状態・感染徴候の有無など) |
| 在宅酸素療法 | 酸素流量・機器の確認、SpO2測定、労作時の呼吸状態の観察、生活指導 |

制度上の対象リストだけを覚えるのではなく、実際にどんなケアを行っているかとセットで理解しておくと、算定漏れや誤りに気づきやすくなりますよ。
算定前に確認しておきたいチェックリスト
特別管理加算を算定する前に、次の項目を確認しておくと、後からの返戻や過誤請求のリスクを減らせます。
- 利用者の状態が対象リストのいずれかに該当しているか
- 訪問看護指示書に該当する管理内容の記載があるか
- 訪問看護計画書・報告書に計画的な管理の実施が記録されているか
- 24時間対応体制加算の届出等、事業所側の体制要件を満たしているか
- 複数のステーションが関わる場合、算定するステーションの認識が正しいか(医療保険と介護保険でルールが異なる点に注意)
よくある質問
特別管理加算は月に何回算定できますか?
月1回に限り算定できます。対象となる状態が続いている限り、毎月算定することが可能です。
複数のステーションが関わる場合、それぞれが特別管理加算を算定できますか?
医療保険の場合はできます。複数のステーションが関わっていても、それぞれが算定可能です。ただし介護保険の場合は1事業所のみの算定となるため、混同しないよう注意が必要です。
留置カテーテルが入っていれば自動的に加算を算定できますか?
いいえ。カテーテルが留置されているだけでは算定できません。排液の観察や薬剤注入など、計画的な管理を実際に行っている場合にのみ算定対象になります。
真皮を越える褥瘡で算定する場合、何が必須ですか?
週1回以上の創部の観察・評価記録が必須とされています。処置を行っているだけでなく、評価の記録が残っているかどうかも確認しておきましょう。
5,000円対象と2,500円対象、両方に該当する場合はどうなりますか?
特別管理加算は利用者1人につき月1回のみの算定であり、複数の対象状態に該当していても加算額が合算されることはありません。どちらの区分で算定するかは、一次情報での確認ができなかったため、判断に迷う場合は所轄の地方厚生局にご確認ください。

まとめ|対象状態と体制要件、複数事業所の扱いを正しく理解しよう
医療保険の特別管理加算は、対象となる状態によって5,000円・2,500円の2区分に分かれ、計画的な管理を行っている場合に月1回算定できます。介護保険の特別管理加算とは複数事業所での算定可否が異なる点、留置カテーテルや褥瘡のように「状態に該当しているだけ」では算定できない項目がある点を押さえておくことが、正確な請求の第一歩になります。
- 気管切開・在宅麻薬等注射等は5,000円、在宅酸素療法・褥瘡等は2,500円が対象
- 24時間対応体制・重症者対応体制・医療機関連携の3要件を満たす必要がある
- 医療保険は複数ステーションでもそれぞれ算定可能(介護保険は1事業所のみ)
- 留置カテーテルは「留置されているだけ」では算定不可、計画的管理が必要
- 褥瘡での算定は週1回以上の観察・評価記録が必須
介護保険の特別管理加算との違い、複数事業所での加算算定ルール全般、特別訪問看護指示書との関連については、関連記事もあわせてご確認ください。























