「利用者さんが小規模多機能型居宅介護(小規模多機能)を利用し始めたが、これまで通っていた訪問看護を続けられるのか」——訪問看護ステーションの管理者や相談員から、こうした問い合わせを受けることは少なくありません。ケアマネジャーからの依頼を安易に受けてしまうと、後から給付調整のルールに反していたことが発覚し、返戻や過誤請求につながるおそれもあります。
この記事では、小規模多機能型居宅介護と訪問看護の併用可否を「利用者がどこにいるか」という場面ごとに整理し、医療保険に切り替わる条件、宿泊中に算定するための実務要件までをまとめます。ケアマネジャーへの説明や、自事業所の契約可否の判断にそのまま使える内容です。
- 小規模多機能型居宅介護と訪問看護が併用できる場面・できない場面
- 介護保険の訪問看護から医療保険の訪問看護に切り替わる2つの条件
- 宿泊(ショートステイ)利用中に医療保険の訪問看護を算定するための要件
- 小規模多機能事業所・ケアマネジャーとの連携で失敗しないための実務ポイント
目次
小規模多機能型居宅介護と訪問看護は併用できるのか?結論
結論から言うと、小規模多機能型居宅介護と訪問看護は「無条件では併用できない」が「条件付きで併用できる」のが正しい理解です。小規模多機能は「通い」「訪問(ヘルパー)」「宿泊」の3つのサービスを組み合わせて提供する地域密着型サービスで、原則として利用者は同一時間帯に複数の居宅サービスを重複して利用できません。訪問看護もこの原則の対象になるため、小規模多機能の職員が家に来ている・利用者が通所している時間帯に、外部の訪問看護ステーションが訪問して介護保険で算定することは基本的にできません。
一方で、利用者が自宅にいて小規模多機能のサービスを利用していない時間帯であれば、訪問看護は通常どおり利用可能です。さらに、疾病の状態によっては医療保険の訪問看護に切り替わり、通い・訪問・宿泊中でも訪問看護の提供が認められるケースがあります。次章から場面別に整理します。

「小規模多機能を使っているから訪問看護は一切ダメ」と誤解しているケアマネジャーさんも意外と多いんです。まずは「今どの保険で・どの時間帯の話をしているか」を分けて考えるのがコツですよ。
場面別の併用可否|自宅・通い・訪問・宿泊でここまで違う
併用可否は、利用者が「小規模多機能のどのサービスを利用中か」によって変わります。まず全体像を表で整理します。
| 利用者の状況 | 訪問看護の可否 | 適用される保険 |
|---|---|---|
| 自宅にいて小規模多機能のサービスを利用していない時間帯 | 利用可能 | 介護保険(通常どおり) |
| 「通い」(デイサービス相当)を利用中 | 原則不可 | 該当疾病等・特別指示書があれば医療保険で可 |
| 「訪問」(ヘルパー相当)を利用中 | 原則不可 | 該当疾病等・特別指示書があれば医療保険で可 |
| 「宿泊」(ショートステイ相当)を利用中 | 原則不可・条件付きで可 | 該当疾病等・特別指示書があれば医療保険で可 |

「通い」「訪問」「宿泊」の定義や運用は事業所によって幅があります。個別の利用者について判断に迷う場合は、自己判断せず小規模多機能事業所の管理者・ケアマネジャー、必要に応じて保険者(市町村)や国民健康保険団体連合会に確認してください。
医療保険の訪問看護に切り替わる2つの条件
「通い」「訪問」「宿泊」の利用中であっても、次のいずれかに該当すれば、訪問看護は介護保険ではなく医療保険での提供に切り替わり、小規模多機能のサービス利用中であっても訪問看護を実施できます。
- 厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)に該当する場合末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病関連疾患、人工呼吸器を装着している状態などが対象です。該当する利用者は、要介護認定の有無にかかわらず訪問看護が医療保険の給付対象になります。
- 急性増悪等により特別訪問看護指示書が交付された場合病状が急に悪化し、主治医が頻回の訪問看護が必要と判断して「特別訪問看護指示書」を交付したときは、原則14日間を上限に医療保険の訪問看護に切り替わります。詳しい交付要件・交付回数の制限は関連記事で解説しています。
この2条件は、訪問看護の保険選択全般に共通する基本ルールです。小規模多機能に限らず「介護保険の訪問看護と医療保険の訪問看護の使い分け」を理解しておくと、他サービスとの併用判断にも応用できます。
宿泊(ショートステイ)中に訪問看護を算定するための実務要件
前章の2条件のいずれかに該当し、小規模多機能の「宿泊」利用中に医療保険の訪問看護を算定する場合は、さらに実務上の要件を満たす必要があります。複数の専門メディアの記載が一致した内容は次のとおりです(確度中〜高。告示原文の一次確認は本記事末の出典リンクからご確認ください)。
- 宿泊サービスの利用開始前30日以内に、利用者の自宅を訪問し訪問看護基本療養費を算定した実績のある訪問看護ステーションの看護師等が訪問看護を実施すること
- 末期の悪性腫瘍の利用者を除き、宿泊サービスの利用開始後30日までの間に限り算定できること
- 算定する費用は訪問看護基本療養費(Ⅰ)または(Ⅱ)であること
- 宿泊サービスを同時に利用している複数の利用者は「同一建物居住者」として扱われる点に留意すること

「30日以内に自宅訪問して基本療養費を算定した実績がある事業所」という条件、意外と見落としがちです。宿泊が決まってから慌てて新規の訪問看護ステーションに依頼しても、この要件を満たせないことがあるので事前確認が必須ですよ。
小規模多機能事業所・ケアマネジャーとの連携で失敗しないためのポイント
医療保険で訪問看護を提供できる要件を満たしていても、現場での連携が不十分だと、記録の不備や情報共有の遅れからトラブルになりがちです。実務では次の点を押さえておくとスムーズです。

- 訪問看護指示書の疾病名・特別訪問看護指示書の交付有無を、小規模多機能事業所のケアマネジャーと事前に共有する
- 「今日は通い利用中か、宿泊利用中か、自宅にいるか」を訪問前に必ず確認し、記録に残す
- 宿泊中に医療保険で訪問する場合は、事前訪問実績(30日ルール)を満たしているかをカルテで確認する
- 小規模多機能事業所と訪問看護ステーションの間で、緊急時の連絡体制・情報共有のルールを文書で取り決めておく
ケアマネジャー側が「小規模多機能を使っているのに訪問看護を頼んでよいのか」を正確に把握していないケースは珍しくありません。訪問看護ステーション側から場面別のルールを説明できると、依頼のミスマッチや算定誤りを未然に防げます。
訪問看護と訪問介護の同時併用との違いに注意
小規模多機能との併用ルールは、「訪問看護と訪問介護(ヘルパー)を同一時間帯に併用できるか」という別の論点と混同されやすいテーマです。訪問介護との同時併用は、小規模多機能とは異なる考え方・要件で整理されています。あわせて理解しておくと、複数サービスが絡む複雑なケースでも判断を誤りにくくなります。
まとめ|場面ごとの可否を正しく整理すれば併用トラブルは防げる
小規模多機能型居宅介護と訪問看護の併用は、「原則不可・条件付きで可能」という一言では終わらせず、利用者が今どの場面にいるかを分けて整理することが実務上の要になります。
- 自宅にいてサービス未利用の時間帯は、訪問看護(介護保険)を通常どおり利用できる
- 「通い」「訪問」「宿泊」の利用中は原則併用不可だが、別表7の疾病等または特別訪問看護指示書があれば医療保険の訪問看護に切り替わり利用できる
- 宿泊中に医療保険で算定するには、30日以内の事前訪問実績など追加の要件を満たす必要がある
- ケアマネジャー・小規模多機能事業所との事前の情報共有が、算定誤りとトラブル防止の鍵になる
個別のケースで判断に迷う場合は、本記事の内容を出発点にしつつ、必ず保険者・国保連や小規模多機能事業所の管理者と最終確認を行ってください。

よくある質問
小規模多機能型居宅介護を利用しながら、訪問看護を毎日受けることはできますか?
自宅にいてサービスを利用していない時間帯であれば、介護保険の訪問看護として利用できます。ただし「通い」「訪問」「宿泊」の利用中は、厚生労働大臣が定める疾病等に該当するか、特別訪問看護指示書が交付されていない限り、原則として併用できません。毎日の訪問が必要な場合は、どの時間帯に訪問するかをケアマネジャー・小規模多機能事業所とあらかじめ調整してください。
小規模多機能型居宅介護と「看護小規模多機能型居宅介護(看護小規模)」は何が違いますか?
看護小規模多機能型居宅介護(旧称:複合型サービス)は、小規模多機能のサービスに訪問看護の機能をあらかじめ組み込んだ、別の介護保険サービスです。本記事で扱っているのは、通常の小規模多機能型居宅介護(訪問看護機能を含まないもの)と、外部の訪問看護ステーションとの併用可否についてです。看護小規模を利用している場合は、給付調整の考え方が異なるため、別途確認が必要です。
訪問看護と訪問介護(ヘルパー)を同じ時間帯に併用することはできますか?
小規模多機能とは別の論点になりますが、訪問看護と訪問介護の同時併用にも独自のルールがあります。詳しくは関連記事「訪問看護と訪問介護が同時間で併用利用するのは可能???」をご確認ください。
特別訪問看護指示書はどのようなときに交付されますか?
病状の急性増悪、終末期(末期の悪性腫瘍を除く)、退院直後などのケースで、主治医が頻回の訪問看護が必要と判断した場合に交付されます。原則月1回、気管カニューレを使用している状態や真皮を超える褥瘡がある場合は月2回まで交付可能で、指示期間は交付日から最大14日間です。詳しい交付要件は関連記事「特別訪問看護指示書の交付要件」で解説しています。
宿泊(ショートステイ)利用中に訪問看護を依頼された場合、まず何を確認すべきですか?
まず、利用者が厚生労働大臣が定める疾病等に該当するか、または特別訪問看護指示書が交付されているかを確認します。そのうえで、自ステーションが利用開始前30日以内に利用者宅を訪問して訪問看護基本療養費を算定した実績があるかを確認してください。実績がない場合は、算定要件を満たせない可能性があるため、事業所として対応可否を事前に判断しておく必要があります。



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