「特定疾病」「厚生労働大臣が定める疾病等」「別表第七」「別表第八」——訪問看護の制度を勉強していると、似たような名前の区分が次々に出てきて混乱した経験はないでしょうか。名称が似ているだけに、介護保険の話と医療保険の話を混同してしまい、加算の算定や保険の切り替え判断を誤ってしまうケースも見られます。
この記事では、介護保険の「特定疾病」16項目と、医療保険の「別表第七」「別表第八」に掲げる疾病等・状態等を、それぞれの根拠となる告示・政令に沿って整理します。それぞれが「何のための区分か」を押さえておくと、日々の算定判断がぐっとスムーズになります。
- 介護保険の「特定疾病」16項目の一覧と、この区分が使われる場面
- 医療保険の「別表第七」に掲げる疾病等20項目と、要介護者でも医療保険に切り替わる仕組み
- 「特定疾病」と「別表第七」の違い(名称は似ているが目的が異なる)
- 特別管理加算・週4日以上の訪問に関わる「別表第八」の状態等
目次
なぜ疾病等の区分は混乱しやすいのか
訪問看護に関わる「厚生労働大臣が定める疾病等」は、実は複数の告示・政令にまたがって存在しています。代表的なものが次の3つです。
- 介護保険法施行令に定める「特定疾病」(40〜64歳の第2号被保険者が要介護認定の対象となる病気)
- 特掲診療料の施設基準等・別表第七に掲げる「厚生労働大臣が定める疾病等」(要介護者でも医療保険の訪問看護が使える病気)
- 同じく別表第八に掲げる「厚生労働大臣が定める状態等」(特別管理加算や週4日以上の訪問に関わる状態)
いずれも「厚生労働大臣が定める」という言葉が使われるため混同しやすいのですが、根拠となる法令が異なり、対象となる項目にも重なりと違いがあります。ひとつずつ整理していきましょう。

私自身、新人の頃はこの区分をよく混同していました。「筋萎縮性側索硬化症」は特定疾病にも別表第七にも出てきますが、それぞれ別の制度の話をしている、という点を意識すると整理しやすくなりますよ。
介護保険の「特定疾病」16項目
特定疾病とは、介護保険法施行令第2条に定められた16種類の疾病です。40歳から64歳までの第2号被保険者が要介護・要支援認定を受けられるのは、この特定疾病に該当する場合に限られます(65歳以上の第1号被保険者には、この疾病要件はありません)。
| No. | 特定疾病 |
|---|---|
| 1 | がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る) |
| 2 | 関節リウマチ |
| 3 | 筋萎縮性側索硬化症 |
| 4 | 後縦靱帯骨化症 |
| 5 | 骨折を伴う骨粗鬆症 |
| 6 | 初老期における認知症 |
| 7 | 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病 |
| 8 | 脊髄小脳変性症 |
| 9 | 脊柱管狭窄症 |
| 10 | 早老症 |
| 11 | 多系統萎縮症 |
| 12 | 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症 |
| 13 | 脳血管疾患 |
| 14 | 閉塞性動脈硬化症 |
| 15 | 慢性閉塞性肺疾患 |
| 16 | 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症 |
特定疾病はあくまで「介護保険の要介護認定を受けられるかどうか」の話です。医療保険の訪問看護をどう使うか、という話とは別の制度であることを押さえておきましょう。
医療保険の「別表第七」に掲げる疾病等(20項目)
別表第七とは、「特掲診療料の施設基準等」(平成20年3月5日厚生労働省告示第63号)に定められた疾病等の一覧です。正式名称は「在宅患者訪問診療料(Ⅰ)及び在宅患者訪問診療料(Ⅱ)並びに在宅患者訪問看護・指導料及び同一建物居住者訪問看護・指導料に規定する疾病等」で、訪問看護の実務では単に「別表7」と呼ばれることが多い区分です。
この別表第七に該当する利用者は、要介護認定を受けていても医療保険の訪問看護を利用でき、かつ週4日以上の訪問や複数の訪問看護ステーションからの訪問が可能になるなど、介護保険では認められていない柔軟な対応ができるようになります。

| No. | 別表第七に掲げる疾病等 |
|---|---|
| 1 | 末期の悪性腫瘍 |
| 2 | 多発性硬化症 |
| 3 | 重症筋無力症 |
| 4 | スモン |
| 5 | 筋萎縮性側索硬化症 |
| 6 | 脊髄小脳変性症 |
| 7 | ハンチントン病 |
| 8 | 進行性筋ジストロフィー症 |
| 9 | パーキンソン病関連疾患 |
| 10 | 多系統萎縮症 |
| 11 | プリオン病 |
| 12 | 亜急性硬化性全脳炎 |
| 13 | ライソゾーム病 |
| 14 | 副腎白質ジストロフィー |
| 15 | 脊髄性筋萎縮症 |
| 16 | 球脊髄性筋萎縮症 |
| 17 | 慢性炎症性脱髄性多発神経炎 |
| 18 | 後天性免疫不全症候群 |
| 19 | 頸髄損傷 |
| 20 | 人工呼吸器を使用している状態 |
「筋萎縮性側索硬化症」「脊髄小脳変性症」「多系統萎縮症」など、特定疾病と別表第七の両方に登場する疾病もあります。ただし同じ疾病名でも、参照している制度が異なる点に注意してください。特定疾病は「介護保険の要介護認定」の話、別表第七は「医療保険への切り替え・訪問回数の緩和」の話であり、目的がまったく違います。
要介護被保険者等であっても、別表第七に該当すれば医療保険の訪問看護を利用できますが、この判断は主治医の指示・医学的な状態評価に基づくものです。訪問看護ステーション側の判断だけで保険の種別を切り替えることはできません。
医療保険の「別表第八」に掲げる状態等
別表第八は、同じく「特掲診療料の施設基準等」に定められた区分で、正式名称は「退院時共同指導料1の注2に規定する特別な管理を要する状態等にある患者並びに退院後訪問指導料、在宅患者訪問看護・指導料及び同一建物居住者訪問看護・指導料に規定する状態等にある患者」です。訪問看護の実務では「別表8」と呼ばれ、特別管理加算の算定要件や、週4日以上の訪問が必要と判断される状態等に関わります。
| 号 | 状態等 |
|---|---|
| 一 | 在宅麻薬等注射指導管理、在宅腫瘍化学療法注射指導管理又は在宅強心剤持続投与指導管理若しくは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者、又は気管カニューレ若しくは留置カテーテルを使用している状態にある者 |
| 二 | 在宅自己腹膜灌流指導管理、在宅血液透析指導管理、在宅酸素療法指導管理、在宅中心静脈栄養法指導管理、在宅成分栄養経管栄養法指導管理、在宅自己導尿指導管理、在宅人工呼吸指導管理、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理、在宅自己疼痛管理指導管理、在宅肺高血圧症患者指導管理又は在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受けている状態にある者 |
| 三 | 人工肛門又は人工膀胱を設置している状態にある者 |
| 四 | 真皮を越える褥瘡の状態にある者 |
| 五 | 在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者 |
「気管カニューレ」「留置カテーテル」「人工肛門・人工膀胱」「褥瘡」といったキーワードは実務でもよく話題になりますが、正確には上記のように複数の在宅療養指導管理と併記された条文構成になっています。号の一部だけを覚えてしまうと、実際の告示の記載と食い違うことがあるため、算定にあたっては最新の告示・通知本文を確認することをおすすめします。

特定疾病・別表第七・別表第八の違いを整理する
ここまでの内容を、目的別に整理すると次のようになります。
| 区分 | 根拠法令 | 主な効果 |
|---|---|---|
| 特定疾病 | 介護保険法施行令第2条 | 40〜64歳の第2号被保険者が要介護・要支援認定を受けられる |
| 別表第七 | 特掲診療料の施設基準等(告示第63号) | 要介護者でも医療保険の訪問看護に切り替わり、週4日以上の訪問等が可能になる |
| 別表第八 | 同上 | 特別管理加算の算定や、週4日以上の訪問が必要な状態として扱われる |

私は新人指導のとき、「特定疾病は“介護保険に入れるかどうか”、別表7・8は“医療保険での扱いをどうするか”」という2行に整理して伝えるようにしています。まず大枠を掴んでから細かい項目を覚えると、混乱しにくいですよ。
よくある質問
特定疾病と別表第七はどう違うのですか?
特定疾病は介護保険法施行令に定められた区分で、40〜64歳の第2号被保険者が要介護・要支援認定を受けられるかどうかに関わります。一方、別表第七は「特掲診療料の施設基準等」に定められた医療保険側の区分で、要介護認定を受けていても医療保険の訪問看護に切り替わり、訪問回数の制限が緩和される仕組みです。名称は似ていますが、根拠となる法令も目的も異なります。
別表第七に該当すると、なぜ医療保険に切り替わるのですか?
別表第七に掲げる疾病は、進行性で医療的な管理の必要性が高いと国が判断した疾病等です。こうした疾病等に該当する場合、介護保険の訪問看護費ではなく医療保険の訪問看護療養費を算定することとされており、あわせて週4日以上の訪問や複数の訪問看護ステーションからの訪問が可能になります。
別表第八の「気管カニューレ」「留置カテーテル」はどの号に含まれますか?
別表第八の一号に含まれます。ただし一号は「在宅麻薬等注射指導管理、在宅腫瘍化学療法注射指導管理又は在宅強心剤持続投与指導管理若しくは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者、又は気管カニューレ若しくは留置カテーテルを使用している状態にある者」という条文構成になっており、気管カニューレ・留置カテーテルの使用状態単独ではなく、複数の在宅療養指導管理と併記されている点に注意が必要です。
特定疾病と別表第七の両方に載っている疾病はありますか?
あります。筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症などは、特定疾病(介護保険法施行令)と別表第七(特掲診療料の施設基準等)の両方に掲げられています。ただし、同じ疾病名であっても、特定疾病は要介護認定の話、別表第七は医療保険への切り替えの話であり、参照している制度が異なる点を押さえておく必要があります。
- 厚生労働省「介護保険法施行令(平成10年12月24日政令第412号)」第2条・特定疾病
- 厚生労働省「特掲診療料の施設基準等(平成20年3月5日厚生労働省告示第63号)」別表第七
- 厚生労働省「特掲診療料の施設基準等(平成20年3月5日厚生労働省告示第63号)」別表第八
告示・政令は改正されることがあります。実際の算定にあたっては、必ず最新の告示本文と、所属する地方厚生局の通知をご確認ください。
まとめ|3つの区分は「目的」で覚えると混乱しない
「特定疾病」「別表第七」「別表第八」は、いずれも訪問看護の算定に関わる重要な区分ですが、根拠となる法令も、区分の目的もそれぞれ異なります。項目名を丸暗記するのではなく、「何のための区分か」を軸に整理しておくことが、実務での判断ミスを防ぐことにつながります。
- 特定疾病(介護保険法施行令)は、40〜64歳が要介護認定を受けられるかどうかの区分
- 別表第七(特掲診療料の施設基準等)は、要介護者でも医療保険に切り替わる疾病等の区分
- 別表第八(同告示)は、特別管理加算や週4日以上の訪問に関わる状態等の区分
- 同じ疾病名が複数の区分に登場することがあるが、参照している制度は別物として整理する
算定判断に迷ったときは、この記事の一覧を出発点にしつつ、最終的には最新の告示本文で確認する習慣をつけましょう。







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