「障害福祉サービス事業所から、看護職員の派遣を頼まれたけれど、どういう仕組みで報酬が発生するのか分からない」「委託契約って何を決めておけばいいの?」——訪問看護ステーションが障害福祉サービス事業所に介入する際、よく出てくるのが医療連携体制加算という言葉です。
医療連携体制加算は、訪問看護ステーション自体が算定する加算ではなく、障害福祉サービス事業所側が算定する加算という点が最初につまずきやすいポイントです。この記事では、医療連携体制加算の仕組み・対象サービス・区分ごとの単位数、そして訪問看護ステーションとして押さえておきたい算定のポイントを、厚生労働省の一次資料をもとに整理します。
- 医療連携体制加算の基本的な仕組みと、訪問看護ステーションとの関係
- 加算の対象となる障害福祉サービスの種類
- 区分(Ⅰ〜Ⅶ)ごとの単位数と算定要件
- 訪問看護ステーション側が押さえておくべき算定のポイント・注意点
目次
医療連携体制加算とは?訪問看護ステーションとの関係
医療連携体制加算は、看護職員の配置を人員基準上求められていない障害福祉サービス事業所が、医療機関等(訪問看護ステーションを含む)との連携により看護職員を事業所に訪問させ、利用者に対して看護を提供した場合等に、事業所側が算定する加算です。
訪問看護ステーションは、この加算を直接算定するのではなく、障害福祉サービス事業所とあらかじめ委託契約を締結したうえで看護職員を派遣し、事業所から契約に基づく報酬を受け取るという構造になっています。

訪問看護療養費や介護報酬のように、訪問看護ステーションが保険者・国保連に直接請求する仕組みとは違うんですね。あくまで事業所との契約に基づく報酬、という点を最初に押さえておくと理解しやすいですよ。
医療連携体制加算の対象サービス
厚生労働省の資料によれば、医療連携体制加算(連携型の看護職員にかかる加算)が設けられているのは、指定基準上、看護職員の配置を要しない以下のサービスです。
- 短期入所(福祉型)
- 重度障害者等包括支援
- 自立訓練(生活訓練)
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型・B型
- 共同生活援助(グループホーム)
- 児童発達支援(重症心身障害児以外)
- 放課後等デイサービス(重症心身障害児以外)
一方、生活介護・施設入所支援・福祉型障害児入所施設等、人員基準上すでに看護職員の配置が予定されているサービスには、この「連携型」の医療連携体制加算は設けられていません。

医療連携体制加算の区分と単位数
医療連携体制加算は、看護の提供時間・対象人数・内容に応じてⅠ〜Ⅶの区分に分かれています(サービスによっては一部区分のみが設けられている場合があります)。厚生労働省告示(平成18年9月29日厚生労働省告示第523号)に基づく単位数は以下のとおりです。
| 区分 | 単位数 | 内容 |
|---|---|---|
| Ⅰ | 600単位/日 | 看護職員が利用者1人に対して看護を行った場合(4時間以下) |
| Ⅱ | 300単位/日 | 看護職員が利用者2〜8人に対して看護を行った場合(4時間以下、1回の訪問につき8名を限度) |
| Ⅲ | 500単位/日 | 看護職員が認定特定行為業務従事者に喀痰吸引等に係る指導を行った場合(看護職員1人あたり) |
| Ⅳ | 100単位/日 | 認定特定行為業務従事者が喀痰吸引等を実施した場合 |
| Ⅴ | 39単位/日 | 日常的な健康管理・医療ニーズへの対応体制を整備している場合(施設基準の届出が必要) |
| Ⅵ | 1,000単位/日 | 看護職員が利用者1人に対して看護を行った場合(4時間超) |
| Ⅶ | 500単位/日 | 看護職員が利用者2〜8人に対して看護を行った場合(4時間超、1回の訪問につき8人を限度) |
なお、ⅥとⅦは、Ⅰまたはロ(Ⅱ)を算定している場合には算定できないとされています。サービスの種類によって設けられている区分の組み合わせが異なるため、実際の算定にあたっては対象サービスごとの告示・留意事項通知を確認してください。
上記の単位数は令和3年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた検討資料に基づくものです。単位数・要件は報酬改定のたびに見直される可能性があるため、実際の算定にあたっては、最新の告示・留意事項通知を必ず確認してください。
医療連携体制加算の算定要件
厚生労働省の留意事項通知(平成18年10月31日障発1031001)等によれば、医療連携体制加算の算定にあたっては、次のような要件を満たす必要があります。
- 加算の届出障害福祉サービス事業所が、あらかじめ都道府県等に医療連携体制加算に係る届出を行っていること。
- 委託契約の締結事業所と医療機関等(訪問看護ステーション等)が、看護の提供に必要な費用について委託契約を締結していること。契約書に特別な様式はなく、費用は当事者間の合意による。
- 医師の指示日頃から利用者を診察している主治医等から、看護の提供や喀痰吸引等の指導に関する指示を個別に受けていること。
- 情報提供事業所は、保護者等・主治医等を通じて利用者に関する必要な情報をあらかじめ入手し、本人の同意を得たうえで連携する医療機関等に提供するよう努めること。
- 看護の提供時間の考え方医療的ケアを必要としない利用者の場合、算定の基礎となる時間は、利用者それぞれに対して直接看護を提供した時間となること。
- 運営規程等への記載医療機関と連携した看護サービスについて、運営規程や重要事項説明書に規定を追加すること。

「利用者全員に同じ指示書を適用する」「面接や診察なしで指示書を作成する」といった実施形態は、実際に自治体から不適切とされた事例として報告されています。医師の個別の指示・利用者ごとの状態確認は、必ず徹底しておきたいところです。
訪問看護ステーションとして押さえておきたい注意点
委託契約を受ける訪問看護ステーション側にも、見落としやすい注意点があります。
委託契約先の施設・事業所で健康状態の確認等を行った時間は、訪問看護ステーションの「訪問看護に従事している時間」とはみなされません。また、委託契約先での業務時間を除いた常勤換算数が2.5人を下回る場合、委託契約を受けることができないとされています。看護職員の配置状況を踏まえたうえで、委託契約を検討する必要があります。
看護の提供や喀痰吸引等の指導に必要な衛生材料・医薬品等の費用は、原則として障害福祉サービス事業所側が負担するものとされています。医薬品等が医療保険の算定対象となる場合は、別途、適正な診療報酬請求が必要になる点にも注意しましょう。

自治体で不適切とされた算定事例
厚生労働省の検討資料では、実際に確認された不適切な算定の実施形態がいくつか紹介されています。訪問看護ステーション側としても、委託契約先でこうした運用が行われていないか、意識しておく価値があります。
- 1枚の指示書に10名以上の児童の名前が書かれており、指示の内容が「メンタルケアお願いします」とだけ記載されている
- 指示書に児童の名前がなく、希望があったすべての利用者に同一の指示書を適用している
- 面接や診察なしで医師が指示書を作成している
- 問診や体温・血圧測定程度のケアを、原則毎日、複数名まとめて短時間で実施している
また、「医療連携体制加算の取得支援」を謳った営業や、加算の契約を前提とした起業支援の営業が行われている実態も指摘されています。訪問看護ステーション側は、こうした営業の是非を問われる立場になり得ることを踏まえ、利用者一人ひとりに対する個別の医師の指示・看護内容の記録を徹底することが重要です。
実際に、児童発達支援・放課後等デイサービスについては、バイタルチェックのみで医療連携体制加算(Ⅰ)(Ⅱ)を算定している事業所が実地指導等で確認されたことを受け、自治体が独自に「利用者ごとの医師の指示書取得」「個別支援計画への記載」「医療機関等との文書による契約締結」という3要件を明示した通知を発出した例もあります。
よくある質問
医療連携体制加算は訪問看護ステーションが算定する加算ですか?
いいえ、医療連携体制加算は障害福祉サービス事業所側が算定する加算です。訪問看護ステーションは、事業所とあらかじめ委託契約を締結したうえで看護職員を派遣し、契約に基づく報酬を事業所から受け取る形になります。
医療連携体制加算の対象となるサービスにはどのようなものがありますか?
短期入所(福祉型)、重度障害者等包括支援、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、共同生活援助、児童発達支援、放課後等デイサービスなど、指定基準上看護職員の配置を要しないサービスが対象です。生活介護など、すでに看護職員の配置が予定されているサービスは対象外です。
医師の指示はどのように受ける必要がありますか?
日頃から利用者を診察している主治医等から、利用者ごとに個別の指示を受ける必要があります。複数の利用者に同一内容の指示を適用したり、診察を行わずに指示書を作成したりする運用は、自治体から不適切とされた事例が報告されています。
訪問看護ステーションが委託契約を受けられない場合はありますか?
委託契約先の施設で健康状態確認等を行った時間は訪問看護に従事している時間とみなされないため、その時間を除いた常勤換算数が2.5人を下回る場合は、委託契約を受けることができないとされています。自ステーションの看護職員の配置状況を確認したうえで検討する必要があります。
単位数・算定要件は報酬改定のたびに見直される可能性があります。実際の算定にあたっては、最新の告示・留意事項通知をご確認ください。
まとめ|医療連携体制加算は「事業所側の加算」であることを踏まえて連携しよう
医療連携体制加算は、訪問看護ステーションが直接算定する加算ではなく、委託契約に基づいて障害福祉サービス事業所を支える仕組みです。対象サービス・区分ごとの単位数・算定要件を正しく理解し、委託契約と医師の個別指示という基本を押さえたうえで連携することが、適正な運用につながります。
- 医療連携体制加算は障害福祉サービス事業所側が算定し、訪問看護ステーションは委託契約に基づき報酬を受け取る
- 対象は短期入所・就労系サービス・共同生活援助・児童発達支援・放課後等デイサービス等、看護職員配置が不要なサービス
- 区分Ⅰ〜Ⅶは看護時間・人数・内容によって単位数が異なる
- 委託契約先での業務時間により常勤換算数が2.5人を下回る場合は契約を受けられない点に注意
制度の基本構造を理解したうえで、事業所側との丁寧な情報共有・契約整備を進めましょう。
























