訪問看護はグループホームへ訪問できる?医療保険・医療連携体制加算まで管理者向けに解説

「グループホームに入居している方から訪問看護を依頼されたけれど、そもそも訪問していいの?」「医療連携体制加算ってよく聞くけど、訪問看護ステーション側はどう関わればいいの?」——管理者・現場の看護師から、こうした相談を受ける機会は年々増えています。

本記事では、訪問看護がグループホームへ訪問できる条件を、介護保険と医療保険の使い分け、令和6年度介護報酬改定後の医療連携体制加算、契約の進め方まで、訪問看護ステーションの管理者・看護師の実務目線で一気通貫に整理します。読み終えるころには、「どの利用者なら、どの保険・どの加算で関われるか」を迷わず判断できる状態になります。

この記事でわかること
  • グループホーム(認知症対応型共同生活介護)に訪問看護が「介護保険では原則訪問できない」理由
  • 例外として「医療保険」で訪問可能になる3つのケース(末期がん・急性増悪・別表第7など)
  • グループホームと業務委託契約を結んで連携する「医療連携体制加算」の仕組み(令和6年度改定後)
  • 訪問看護ステーションの管理者が押さえておきたい契約・運用のチェックポイント
  • 営業・連携の進め方と、現場でよくある疑問(FAQ5問)

目次

グループホームと訪問看護の関係をまず整理しよう

本題に入る前に、議論の前提となる「グループホーム」の位置づけを確認しておきましょう。ここを曖昧にしたまま「訪問できる/できない」を判断すると、現場で迷うことになります。

本記事で扱う「グループホーム」=認知症対応型共同生活介護

一般に「グループホーム」と呼ばれる施設はいくつかありますが、訪問看護の現場で議論になるのは主に介護保険制度上の「認知症対応型共同生活介護」です。要介護認定を受けた認知症の方が、家庭的な環境のもとで5〜9人の少人数ユニットで共同生活を送る、地域密着型サービスに位置づけられています。

本記事では、特に断りがない限り「グループホーム=認知症対応型共同生活介護」として解説します。障害者総合支援法の「共同生活援助(障害者グループホーム)」とは制度が別なので、混同しないよう注意が必要です。

看護師 上妻
看護師 上妻

「グループホーム」と一言で言っても、認知症対応型共同生活介護と障害者グループホームでは制度がまったく違います。利用者さんから依頼が来たときは、まずどちらのグループホームかを確認しましょうね。

なぜ「訪問できるかどうか」が論点になるのか

グループホームは介護保険の「特定施設」に近い性格をもつ生活の場で、入居者は基本的に介護保険サービスを包括的に受けています。そのため、外部の介護保険サービス(訪問介護・訪問看護・通所介護など)と原則として給付調整がかかり、二重に介護給付を使うことができません。

一方で、医療ニーズが高まれば看護が必要になります。「介護保険では訪問できない、でも医療は必要」というジレンマがあるからこそ、医療保険による訪問可否と、グループホーム側の医療連携体制加算という2つの論点が出てくるわけです。

結論|訪問看護はグループホームへ「介護保険では原則訪問できない」

結論からお伝えします。介護保険による訪問看護は、グループホームの入居者には原則として算定できません。これは、グループホームの介護報酬に「日常的な健康管理」や生活支援が包括的に含まれているため、外部の介護保険給付と重複してしまうからです。

訪問看護師がグループホームを訪問するイメージ
注意:給付の二重取りは不可

グループホームの入居者に介護保険の訪問看護費を請求するとレセプト返戻の対象になります。「介護保険給付の重複」という原則を、まずチームで共有しておきましょう。

例外的に「事業者の費用負担」で利用させることは可能

厚生労働省の解釈通知では、グループホーム側が「必要がある」と判断した場合に、事業者の費用負担で外部の訪問看護(居宅サービス)を利用させることは差し支えないとされています。つまり、入居者の自己負担や介護保険ではなく、グループホーム事業者が自費で訪問看護を依頼する形であれば、運用上は可能です。

ただしこれはあくまで「介護保険を使わない」前提です。次章で説明する「医療保険による訪問看護」とは別物なので、混同しないようにしましょう。

グループホームへの訪問看護が「医療保険」で訪問可能になる3つのケース

「介護保険ではダメ」と聞くと諦めてしまいがちですが、医療保険による訪問看護なら、要件を満たせばグループホームの入居者にも訪問できます。主に以下の3つのケースが該当します。

ケース根拠訪問可能な期間・条件
① 末期の悪性腫瘍等厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)に該当制限なし(要件を満たす限り)
② 急性増悪等で頻回訪問が必要主治医による特別訪問看護指示書の交付指示日から原則14日以内(月1回まで、気管カニューレ・真皮を超える褥瘡は月2回)
③ 精神科訪問看護の対象者精神科訪問看護基本療養費の算定要件主治医の精神科訪問看護指示書に基づく

ケース① 末期の悪性腫瘍など「別表第7」に該当する場合

厚生労働大臣が定める疾病等、いわゆる「別表第7」に該当する利用者は、要介護認定の有無にかかわらず自動的に医療保険による訪問看護の対象になります。末期の悪性腫瘍はその代表例で、グループホーム入居中であっても看取り期の支援を医療保険で行うことが可能です。

別表第7には、末期の悪性腫瘍のほか、多発性硬化症、重症筋無力症、パーキンソン病関連疾患(ホーン・ヤール重症度ステージⅢ以上かつ生活機能障害度Ⅱ度またはⅢ度)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、進行性筋ジストロフィー症など、約20の疾病・状態が含まれています。詳細は本記事末尾の「出典」から厚生労働省の資料で確認してください。

ケース② 急性増悪等で「特別訪問看護指示書」が交付された場合

普段は別表第7に該当しない方でも、急性増悪・終末期・退院直後など主治医が「一時的に頻回の訪問看護が必要」と判断した場合は、特別訪問看護指示書が交付されます。指示書の交付日から原則14日間は、医療保険による訪問看護として、グループホーム入居中でも訪問が可能です。

交付回数は原則として月1回が上限ですが、気管カニューレを使用している状態の方と真皮を越える褥瘡の状態の方は月2回まで交付できます。発熱や肺炎、急性増悪、看取り期への移行など、グループホームの現場で起こりやすい局面で活用される指示書です。

看護師 上妻
看護師 上妻

急性増悪時こそ、グループホーム側は「どこに頼めばいいの?」と慌てがちです。日頃から連携している訪問看護ステーションがあると、特別訪問看護指示書での介入がスムーズに進みますよ。

ケース③ 精神科訪問看護の対象者の場合

精神科訪問看護基本療養費を算定する対象者についても、グループホーム入居中の医療保険訪問看護が可能です。ただし、精神科重症患者支援管理連携加算等を算定する患者については別途取扱いが定められているため、精神科訪問看護を展開する場合は施設基準と指示書区分を必ず確認しましょう。

共通の前提:契約・指示書・記録は通常通り

医療保険で訪問する場合の前提

① 入居者(または家族)と訪問看護ステーションが直接、訪問看護契約を結ぶ
② 主治医から「訪問看護指示書」もしくは「訪問看護指示書+特別訪問看護指示書」を発行してもらう
③ 訪問看護記録・訪問看護報告書・訪問看護計画書は通常通り作成し、主治医へ提出する

「施設に行くだけ」と捉えず、自宅訪問と同じ手続きを踏むのがポイントです。指示書なしで訪問することは認められません。

もう一つの選択肢|業務委託契約+医療連携体制加算でグループホームと連携する

医療保険による単発の訪問とは別に、グループホームと訪問看護ステーションが業務委託契約を結び、継続的に医療連携体制を整える方法があります。グループホーム側は「医療連携体制加算」を算定し、訪問看護ステーションは委託料を受け取る——という形です。

グループホーム管理者と訪問看護管理者が委託契約書を確認するイメージ

医療連携体制加算(Ⅰ)(Ⅱ)の単位数(令和6年度介護報酬改定)

令和6年度介護報酬改定では、医療的ケアが必要な方の受入れを進める観点から、医療連携体制加算が「体制要件」と「受入要件」に再編されました。具体的には次の通りです。

区分単位数主な要件のイメージ
医療連携体制加算(Ⅰ)イ57単位/日看護師を「常勤換算1名以上」確保(事業所職員として配置)
医療連携体制加算(Ⅰ)ロ47単位/日看護師1名以上を「配置または契約により確保」+24時間連絡体制等
医療連携体制加算(Ⅰ)ハ37単位/日看護師1名以上を「契約により確保」+24時間連絡体制等
医療連携体制加算(Ⅱ)5単位/日(Ⅰ)算定が前提+医療的ケアが必要な入居者の受入れ実績

訪問看護ステーションとの業務委託契約で看護師を確保する場合は、主に(Ⅰ)ハの対象になります。(Ⅰ)ロは「配置または契約」の選択肢があり、(Ⅰ)イは「配置」が前提となるため、外部委託の場合は基本的に該当しません。具体の区分は保険者・自治体によって解釈が異なるケースがあるため、契約前に必ず保険者へ確認しましょう。

注意:単位数・要件は最新告示で確認

本記事は令和6年度介護報酬改定の内容を基準としています。令和8年度の臨時改定や、それ以降の改定があった場合は、厚生労働省の最新告示・通知で必ず数値・要件を確認してください。

(Ⅱ)算定の対象となる「医療的ケア」

医療連携体制加算(Ⅱ)は、(Ⅰ)を算定したうえで、算定日が属する月の前3か月間に次のような医療的ケアを必要とする入居者が1人以上いることが要件です。

  • 喀痰吸引/経鼻胃管・胃瘻等の経腸栄養/中心静脈注射/人工腎臓
  • 人工呼吸器の使用/常時モニター測定/気管切開/人工膀胱・人工肛門の処置
  • 留置カテーテルの使用/インスリン注射/褥瘡(真皮を越える等)に対する治療

令和6年度改定では、対象となる医療的ケアの範囲が見直され、現場ニーズに合った形で整理されています。「重度化対応に強いグループホーム」を支える訪問看護ステーションとして連携するなら、(Ⅱ)算定を見据えた体制設計が鍵になります。

訪問看護ステーション側のキャッシュフローと契約の考え方

業務委託契約では、グループホームから訪問看護ステーションに対して委託料が支払われます。委託料の金額は法令で決まっておらず、両者の交渉で決定します。次のような項目を契約書に明記しておくと、現場での齟齬を防げます。

項目記載例
業務範囲健康管理、医療機関との連絡調整、看護計画書の助言、重度化対応の指針整備への協力
派遣頻度・時間原則 週○回×○時間/月○時間まで/延長は別途協議
24時間連絡体制電話による相談対応・必要時の緊急訪問体制を明記(オンコール手当の有無含む)
委託料月額○○円(消費税別)/時間単価○○円/緊急訪問1回○○円
医療保険訪問との区別診療報酬の算定要件に合致する急性増悪時等は、医療保険による訪問看護として別途請求できる旨
事故・損害賠償賠償責任保険の加入、事故報告のフロー、責任分担

24時間連絡体制は「単なるオンコール」ではNG

医療連携体制加算では、「看護師による24時間の連絡体制」の整備が要件として求められます。ここで重要なのは、「必要なときだけ駆けつけるオンコールだけでは要件を満たさない」と整理されている点です。電話・SNS等で常時連絡が取れる体制を明文化し、勤務実態・記録を残すことが必須となります。

看護師 上妻
看護師 上妻

「夜間は管理者の携帯に連絡してくださいね」だけでは、実地指導で指摘されることがあります。連絡フロー、転送先、不在時の代替手段までを文書化し、グループホーム側にも掲示してもらうのが安心ですよ。

看護師1人で連携できる利用者数の上限にも注意

1人の看護師が医療連携体制加算の対象として連携できる入居者数は、原則として20名までとされています。法人内外で他事業所にも派遣されている場合は、その入居者数を合算して20名以内に収める必要があるため、複数のグループホームと契約する場合は配置調整が不可欠です。

訪問看護ステーション管理者が押さえておきたい5つのチェックポイント

ここからは、訪問看護ステーションがグループホームとの連携を実際に進めるにあたって、管理者が事前に確認しておくべき5つの実務ポイントを整理します。

  • ① グループホームの種別を確認する(認知症対応型共同生活介護か、障害者グループホームか)
  • ② 入居者が別表第7/別表第8に該当するか、指示書区分を確認する
  • ③ 介護保険・医療保険・委託契約のどの枠組みで関わるかを整理する
  • ④ 委託契約・覚書を整え、24時間連絡体制と派遣頻度を明文化する
  • ⑤ 連携先のグループホーム数・対象入居者数(20名上限)を可視化する
POINT|現場の混乱を防ぐ「3つの切り分け」

① 介護保険給付外(事業者自費)の訪問
② 医療保険による訪問(指示書ベース)
③ 業務委託契約+医療連携体制加算
この3つを管理者・現場・グループホーム側で共通言語にしておくと、依頼の受付・請求ミスが減ります。

グループホームと連携を始める実務ステップ

新たにグループホームから連携の打診があった場合、または自ステーションから営業をかける場合の標準的な流れを5ステップでまとめます。

  1. STEP1|連携目的のヒアリンググループホーム側のニーズを聞き取ります。「重度化対応を強化したい」「医療連携体制加算(Ⅱ)まで算定したい」「看取り対応を始めたい」など、目的によって契約内容が大きく変わります。
  2. STEP2|対象入居者と医療的ケアの把握現入居者の医療ニーズ、別表第7/別表第8該当者の有無、今後想定される医療処置を一覧化します。これが(Ⅱ)算定や派遣頻度の根拠資料になります。
  3. STEP3|契約形態の決定業務委託契約か、医療保険訪問のスポット対応か、両者併用か。グループホーム側の保険者にも事前に解釈を確認しておくと安全です。
  4. STEP4|契約書・覚書の作成派遣頻度、時間、24時間連絡体制、委託料、急性増悪時の医療保険訪問の取扱い、損害賠償、解約条件などを記載します。看護記録の保管・共有方法もここで取り決めます。
  5. STEP5|運用開始と定期的な見直し3か月、6か月、12か月のタイミングで派遣実績・委託料・医療連携体制加算の算定状況を振り返り、必要に応じて契約条件を見直します。
看護師 上妻
看護師 上妻

契約は「結んで終わり」ではなく、半年〜1年単位で振り返るのが大切です。グループホーム側の入居者層が変われば、必要な医療連携の中身も変わってきますからね。

よくある質問|訪問看護×グループホーム

グループホーム入居者に介護保険で訪問看護を提供すると、どうなりますか?

原則として給付の重複となり、介護保険による訪問看護費は算定できません。レセプト返戻の対象になる可能性が高いため、ケアマネジャーや保険者と算定可否を必ず確認してください。

特別訪問看護指示書による訪問看護は、何日間訪問できますか?

指示書の交付日から原則14日間が上限で、月1回まで交付できます。気管カニューレを使用している方と、真皮を越える褥瘡の状態の方については月2回まで交付可能です。グループホーム入居中であっても、この期間は医療保険による訪問看護を実施できます。

業務委託契約で連携している場合、急性増悪時の医療保険訪問はどう扱いますか?

診療報酬の算定要件に合致すれば、業務委託契約とは別に、医療保険による訪問看護として算定可能です。委託契約書に「医療保険算定要件を満たす場合は別途請求できる」旨を明記しておくと、現場運用がスムーズになります。

医療連携体制加算(Ⅱ)はどのような状態の入居者がいると算定できますか?

喀痰吸引、経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養、中心静脈注射、人工腎臓、人工呼吸器の使用、常時モニター測定、気管切開、人工膀胱・人工肛門の処置、留置カテーテルの使用、インスリン注射、褥瘡に対する治療など、令和6年度改定で整理された医療的ケアが必要な方が、算定月の前3か月間に1人以上いることが要件です。

1人の看護師が、複数のグループホームの医療連携を担うことはできますか?

可能ですが、医療連携体制加算の対象となる入居者数の合計が原則20名以内に収まるよう調整する必要があります。法人内外を問わず合算となるため、複数施設と契約する場合は配置計画を慎重に検討しましょう。

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まとめ|「介護保険で訪問不可」でも、医療保険と委託契約で十分つながれる

訪問看護はグループホーム(認知症対応型共同生活介護)に対し、介護保険では原則訪問できません。しかし、医療保険による訪問看護や、医療連携体制加算を活用した業務委託契約という形で、現場のニーズに応える道は確かに用意されています。

この記事のまとめ
  • グループホーム=認知症対応型共同生活介護。介護保険による訪問看護は原則算定不可。
  • 医療保険なら、別表第7該当者・特別訪問看護指示書交付時・精神科訪問看護対象者は訪問可能。
  • 業務委託契約+医療連携体制加算(Ⅰ)(Ⅱ)で、継続的な連携と委託料収入が両立できる。
  • 令和6年度改定で医療連携体制加算は(Ⅰ)イ・ロ・ハ+(Ⅱ)に再編。最新告示で要確認。
  • 24時間連絡体制・派遣頻度・医療保険訪問の扱いを契約書に明文化することが運用のカギ。

「介護保険で行けないから諦める」ではなく、「どの枠組みなら関われるか」を切り分けて、地域の重度化対応を支えられる訪問看護ステーションを目指しましょう。

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