訪問看護事業所を開設・運営するうえで、まず押さえておかなければならないのが人員基準と設備基準です。基準を満たせなければ指定を受けられず、指定後も基準を下回れば運営指導で指摘を受けるリスクがあります。
この記事では、訪問看護ステーションと病院・診療所(みなし指定訪問看護事業所)それぞれの人員基準・管理者要件・設備基準を、厚生労働省令の条文に基づいて整理します。
- 訪問看護ステーションの看護師等・理学療法士等の人員基準
- 「常勤換算2.5以上」の意味
- 訪問看護ステーションの管理者要件
- 病院・診療所(みなし指定)の人員基準の違い
- 訪問看護ステーション・みなし指定それぞれの設備基準
目次
訪問看護ステーションの人員基準
指定訪問看護ステーションの人員基準は、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)第60条に定められています。
看護師等の人員基準(常勤換算2.5以上)
訪問看護ステーションは、保健師、看護師又は准看護師を常勤換算方法で2.5以上配置しなければならず、そのうち1名は常勤である必要があります。
常勤換算方法とは、事業所の従業者の勤務延時間数を、常勤の従業者が勤務すべき時間数で割ることで、非常勤職員も含めた人員数を「常勤の従業者が何人分に相当するか」に換算する方法です。複数の非常勤看護師を組み合わせて2.5以上を満たすことも可能です。
理学療法士等の人員基準
理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士については、看護師等のような具体的な人数基準はなく、「実情に応じた適当数」を配置することとされています。
訪問看護ステーションの管理者の基準
指定訪問看護ステーションには、専らその職務に従事する常勤の管理者を1名置かなければなりません。管理者は保健師又は看護師であることが原則で、准看護師は管理者になれません(第61条。ただし、やむを得ない理由がある場合はこの限りでないとされています)。

管理者は保健師・看護師限定で、准看護師は原則対象外という点は、採用計画を立てる際に見落としやすいポイントですね。

病院・診療所(みなし指定訪問看護事業所)の人員基準
病院又は診療所が行う指定訪問看護(みなし指定)については、訪問看護ステーションのような具体的な人数基準(常勤換算2.5等)は定められておらず、指定訪問看護の提供にあたる看護職員を適当数置くこととされています(第60条第2号)。また、みなし指定では理学療法士等による訪問看護費の設定自体がなく、訪問看護ステーションとは人員構成の考え方が異なります。
管理者についても、訪問看護ステーションのような明示的な配置要件はなく、病院・診療所としての管理体制の中に位置づけられます。
| 項目 | 訪問看護ステーション | 病院・診療所(みなし指定) |
|---|---|---|
| 看護師等の人員基準 | 常勤換算2.5以上(うち1名常勤) | 看護職員を適当数 |
| 理学療法士等 | 実情に応じた適当数 | 訪問看護費の設定なし |
| 管理者 | 専従常勤・保健師又は看護師 | 明示的な配置要件なし |
訪問看護ステーションの設備基準
指定訪問看護ステーションには、事業の運営を行うために必要な広さを有する専用の事務室を設けるほか、指定訪問看護の提供に必要な設備及び備品等を備えなければなりません(第62条)。「専用」とされている点がポイントで、他の事業と共用のスペースをそのまま事務室として使うことは認められません。
具体的にどの程度の広さ・設備が必要かは条文上一律の数値では定められておらず、事業運営に支障がない広さであるかを、都道府県・指定都市・中核市が個別に確認する運用になっています。開設準備の段階では、指定申請前に所轄の窓口へ事務室のレイアウトや備品構成を事前相談しておくと、指定申請時の手戻りを防ぎやすくなります。

病院・診療所(みなし指定訪問看護事業所)の設備基準
病院・診療所が行う指定訪問看護では、訪問看護ステーションのような「専用の事務室」までは求められておらず、専ら指定訪問看護の事業の用に供する区画を確保することとされています(第62条)。病院・診療所内の既存スペースの一部を、訪問看護の事業専用の区画として位置づける形が想定されています。
人員基準・設備基準を満たせない場合のリスク
人員基準・設備基準は指定を受けるための要件であると同時に、指定後も継続して満たし続ける必要がある基準です。常勤換算2.5を下回った状態が続いたり、専用の事務室が確保できていなかったりする状態が運営指導等で発覚した場合、是正指導や、悪質な場合は指定の取消しにつながる可能性があります。
職員の退職・休職等で一時的に常勤換算が基準を下回りそうな場合は、早めに採用計画を見直すか、所轄の都道府県・指定都市・中核市の窓口に相談することをおすすめします。
複数の訪問看護ステーションを運営する場合(本体事業所とサテライト等)は、事業所ごとに人員基準・設備基準を満たす必要があるのが原則です。事業所を新設・分割する際は、それぞれの拠点で常勤換算2.5以上・専用の事務室の確保という要件を独立して満たせるかを、計画段階から確認しておく必要があります。
開設準備・日々の運営で確認したい実務ポイント
- 常勤換算の月次モニタリングを行う非常勤職員の勤務時間の変動により常勤換算が2.5を下回っていないか、月次で確認する仕組みを作りましょう。
- 管理者の要件(保健師又は看護師)を満たしているか確認する管理者交代の際は、准看護師を配置してしまわないよう、事前に要件を確認しましょう。
- 事務室・区画が「専用」の状態を保てているか確認する他の事業と共用してしまっていないか、定期的にセルフチェックしましょう。
- 複数事業所展開時は拠点ごとに基準充足を確認するサテライト等で事業所を増やす場合は、新設拠点ごとに人員基準・設備基準を独立して満たせるか、開設計画の段階で確認しましょう。

まとめ|人員基準・設備基準は「指定後も満たし続ける」ことが前提
訪問看護ステーションの人員基準は「看護師等は常勤換算2.5以上(うち1名常勤)」「理学療法士等は実情に応じた適当数」「管理者は専従常勤の保健師又は看護師」の3点、設備基準は「専用の事務室の確保」が基本です。病院・診療所(みなし指定)はこれらの基準がやや緩やかですが、看護職員の適当数配置と専用区画の確保は必要です。
- 訪問看護ステーションの看護師等は常勤換算2.5以上、うち1名は常勤が必要
- 理学療法士等は具体的な人数基準がなく「実情に応じた適当数」
- 管理者は専従常勤の保健師又は看護師(准看護師は原則不可)
- 設備基準は「専用の事務室」の確保が必須
- 病院・診療所(みなし指定)は人員・設備の要件がやや緩やかだが、看護職員の適当数配置と専用区画は必要
基準は開設時だけでなく指定後も継続して満たす必要があるため、定期的なセルフチェックを習慣にしましょう。
常勤換算2.5とは具体的にどういう意味ですか?
常勤換算方法とは、事業所の従業者の勤務延時間数を常勤職員が勤務すべき時間数で割ることで人員数を換算する方法です。例えば常勤看護師2名に加え、非常勤看護師の勤務時間を合算して0.5人分に相当すれば、合計2.5となり基準を満たします。
訪問看護ステーションの管理者に准看護師はなれますか?
原則としてなれません。指定訪問看護ステーションの管理者は保健師又は看護師でなければならないと定められています。ただし、やむを得ない理由がある場合はこの限りでないとされています。
理学療法士だけでも訪問看護ステーションを開設できますか?
できません。訪問看護ステーションの人員基準では、保健師・看護師・准看護師を常勤換算2.5以上(うち1名常勤)配置することが必須であり、理学療法士等はこれに加えて実情に応じた適当数を配置する位置づけです。
病院・診療所が訪問看護を行う場合も専用の事務室が必要ですか?
訪問看護ステーションのような「専用の事務室」までは求められていません。ただし、専ら指定訪問看護の事業の用に供する区画を確保することとされています。
サテライト型で複数拠点を展開する場合、人員基準はどう考えればよいですか?
本体事業所とは別に、拠点ごとに人員基準・設備基準を満たす必要があるのが原則です。新設する拠点でも、常勤換算2.5以上(うち1名常勤)の看護師等の配置と、専用の事務室の確保が求められるため、開設計画の段階から人員体制を検討しておく必要があります。



















