訪問看護には、介護保険法および健康保険法により人員基準というものが存在します。
規定の人数の基準を満たさなければ、事業所を開所することができません。
また、その基準を満たさなかった場合、人員基準違反となり罰則を受けることになります。
今回は、訪問看護における人員基準違反について解説していきます。
訪問看護師の人員維持が課題となっている経営者さんや管理者さんはぜひ確認しておいてくださいね!
目次
訪問看護の人員基準とは?
訪問看護における人員基準は、介護保険法および健康保険法により常勤換算で2.5人以上と定められています。
常勤換算に数えられる職種は、保健師、看護師、准看護師です。
助産師については、健康保険法でのみ訪問看護の従事者として含まれますが、常勤換算としての職種には数えられません。
常勤換算の方法については以下の記事を参考にしてください。
訪問看護の人員基準違反とは?
急な退職などにより看護職員が常勤換算2.5人に満たない場合には、介護保険法および健康保険法により休止、廃止の届出を行うことになっています。
この届出を行わず、人員基準を満たさないままで営業を続けることを人員基準違反と言い、発覚した場合には各自治体により処分を受けることになります。
訪問看護の人員基準違反をするとどうなるの?
厚生労働省による「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」には、以下のように違反に対する措置が記されています。
1 基準は、指定居宅サービスの事業がその目的を達成するために必要な最低限度の基準を定めたものであり、指定居宅サービス事業者は、常にその事業の運営の向上に努めなければならないこと。
2 指定居宅サービスの事業を行う者又は行おうとする者が満たすべき基準等を満たさない場合には、指定居宅サービスの指定又は更新は受けられず、また、基準に違反することが明らかになった場合には、①相当の期間を定めて基準を遵守するよう勧告を行い、②相当の期間内に勧告に従わなかったときは、事業者名、勧告に至った経緯、当該勧告に対する対応等を公表し、③正当な理由が無く、当該勧告に係る措置を採らなかったときは、相当の期限を定めて当該勧告に係る措置を採るよう命令することができるものであること。また、③の命令をした場合には事業者名命令に至った経緯等を公示しなければならないなお、③の命令に従わない場合には、当該指定を取り消すこと、又は取消しを行う前に相当の期間を定めて指定の全部若しくは一部の効力を停止すること(不適正なサービスが行われていることが判明した場合、当該サービスに関する介護報酬の請求を停止させること)ができる。
人員基準を満たさない場合には、指定居宅サービスの指定や更新は受けられない。
人員基準を満たしていないことが明らかになった場合には、3段階の措置が取られる。
- 期間を定めて注意勧告がされる
- 勧告に従わなかった場合は事業所が公表される
- 正当な理由なしに勧告に従わなかった場合には期限を定めて命令がされる
命令に従わなかった場合には、指定の取り消し、指定の効力を停止することができる。
人員基準が満たない訪問看護の取り扱いは?
では、各自治体では人員基準が満たない訪問看護の取り扱いについて、どのような対応をとっているのでしょうか。
厚生労働省の平成22年の調査によると、各自治体による訪問看護の人員基準が満たない場合の具体的な取り扱いの基準は、47都道府県中43カ所が「無い」と回答しています。
※現在では変動がある可能性があるため、詳細は各自治体にご確認ください。
また、看護職員の急な退職により人員基準に満たない場合の対応は以下のようになっています。
このように、各自治体により対応が異なり、人員確保までの猶予も様々なことがわかります。
自身の事業所を管轄する自治体ではどのように対応いただけるのか、万が一のために確認しておくといいですね。
訪問看護の人員基準違反をしないために
では、訪問看護の人員基準違反をしないためには、どのような対策が必要でしょうか。
常勤換算のルールを把握する
2016年に神奈川県横須賀市で実際にあった、訪問看護ステーションの人員基準違反に対する指定効力の全部停止処分の内容がこちらです。
このように、常勤換算のルールを把握していないことにより人員基準違反をしていることに気がつかないこともあります。
訪問看護ステーションの経営者や管理者は、訪問看護における常勤換算のルールを十分に把握しておくことが重要です。
また、常勤換算で人員基準を満たすことができないとわかった際には、早急に自治体に相談しましょう。
職員との信頼関係を構築する
看護職員の常勤換算を下回る要因は、看護職員の急な退職です。
もちろん体調不良や家庭の事情など、やむを得ず退職する場合もあると思います。
普段から十分なコミュニケーションを図り、経営者や管理者と看護職員が信頼関係を構築している場合には、急な退職を回避することができることもあります。
退職を希望する際に、事前に退職時期を把握しておくことができれば、退職時期に合わせた求人活動ができます。
求人活動を適切な時期に行う
訪問看護師は、看護師の中でも数少ない存在であり、人員確保は大変な職種です。
そのため、在籍している看護職員の退職に合わせて求人活動をしても採用時期が合わない可能性もあります。
求人活動での採用方法についても、求人広告だけでなくそのほかの方法を試してみると良いでしょう。
まとめ
今回は、訪問看護の人員基準違反について解説しました。
次々と人員を増やしていくことができれば理想的ですが、経営面では看護師を1人増やすことは簡単なことではありません。
人員基準違反にならないよう、ルールの把握と計画的な採用を行いましょう。