「理学療法士の実習生を受け入れることになったけれど、訪問看護ならではの注意点が分からない」——そんな不安を抱える訪問看護ステーションの担当者は少なくありません。病院や施設と違い、実習の舞台は利用者さんの生活そのものの場です。
本記事では、訪問看護ステーションにおける理学療法士(PT)学生の見学実習の流れを、事前準備から実習当日、フィードバックまで段階別に解説します。受け入れる側が意識しておきたいポイントも紹介するので、初めて実習生を受け入れる事業所の方はぜひ参考にしてください。
- 訪問看護ステーションで理学療法士の学生実習が増えている背景
- 実習前の準備(学校・学生との連携、利用者さんへの同意確認)
- 実習当日〜最終日までの具体的な流れ
- 受け入れ側が意識したいマナー指導・フィードバックのコツ
目次
訪問看護ステーションでの理学療法士学生実習が増えている理由
理学療法士の学生実習は、これまで病院や介護老人保健施設などの施設系で行われることが一般的でした。近年は在宅医療のニーズの高まりを背景に、訪問看護ステーションが実習の受け入れ先として選ばれるケースが増えています。
背景には、訪問看護ステーションで新卒の理学療法士を採用したいという事業所側の思惑もあります。実習を通じて訪問看護の仕事を知ってもらうことは、将来の人材確保につながる大切な機会でもあるのです。
病院・施設での実習と、訪問看護ステーションでの実習には、いくつかの違いがあります。受け入れ側としてあらかじめ押さえておきたい点を整理しました。
| 項目 | 病院・施設での実習 | 訪問看護での実習 |
|---|---|---|
| 実習の場 | リハビリ室・病棟など施設内 | 利用者さんのご自宅(生活の場) |
| 移動 | 基本的になし | 訪問先ごとに車・自転車などで移動 |
| 関わる対象 | 患者本人が中心 | 本人に加えてご家族との関わりも多い |
| 1件あたりの時間 | 比較的長め・柔軟 | 訪問時間があらかじめ決まっている |
| マナー面での配慮 | 院内ルールが中心 | 訪問先ごとの生活習慣・マナーへの配慮が必要 |
特に「利用者さんの生活の場にお邪魔する」という点は、訪問看護ならではの大きな特徴です。実習前のオリエンテーションでこの違いを伝えておくと、学生も気持ちの面で準備がしやすくなります。

学生さんにとって訪問看護の実習は、病院とは違う在宅ならではの視点を学べる貴重な機会ですね。受け入れる側も「良い経験をしてもらいたい」という気持ちを持って準備することが大切です。

訪問看護における理学療法士学生実習の流れ
実習は大きく分けて「事前準備」「スケジュール調整」「実習当日〜最終日」の3段階で進みます。それぞれの段階で押さえておきたいポイントを見ていきましょう。
①学校の先生・学生本人との事前連携
実習が始まる前に、学校側の実習担当教員から受け入れ事業所へ連絡が入るのが一般的です。この段階で共有しておきたい情報は次のとおりです。
- 学生の性格・授業態度・体調面の配慮事項
- これまでの授業の進行状況(既に学んだ範囲)
- 今回の実習で達成したい目標
- 実習中に配慮してほしい注意点
あわせて、実習中にトラブルが発生した場合の連絡体制を、学校側とあらかじめすり合わせておくことも欠かせません。
実習開始の1週間ほど前には、学生本人からステーションへ挨拶の電話が入ることが多くあります。電話でのやり取りに慣れていない学生も多いため、受け入れ担当者側で「集合場所」「集合時間」「持ち物」「服装」「予習しておいてほしい内容」「事業所独自のルール」をあらかじめリスト化しておくと、電話がスムーズに進みます。
学生は初めての在宅実習に強い緊張を感じていることが多いものです。事前連絡の段階から丁寧な対応を心がけることで、実習全体の雰囲気づくりにつながります。
②スケジュール調整と利用者さんへの同意確認
学生の同行訪問に向けては、通常の訪問スケジュールとは別に調整が必要です。同行させる利用者さんには、事前に学生同行の目的を説明し、同意を得ておくことが前提になります。
また、訪問後にフィードバックの時間を確保できるよう、複数のスタッフで学生をサポートする体制を組んでおくと、実習担当者一人に負担が偏らずに済みます。
③実習当日〜最終日の流れ
実習当日の大まかな流れは、以下のステップで整理できます。
- 初日:オリエンテーション実習の目標共有、実習期間中の流れの説明、提出書類の確認、同行訪問時のマナー・注意点の説明を行います。
- 同行訪問利用者さんの状態や評価、治療内容、リハビリの目的について、できるだけ平易な言葉で説明します。血圧測定や体温測定など、利用者さんと直接関わる経験も学生にとって貴重な学びになります。
- 1日の振り返り事業所に戻ってから、気づいた点・良かった点・改善点・疑問点・次回までの学習課題をその日のうちに共有します。
- 2日目以降デイリーノートの提出を受け、その日の実習目標を共有したうえで、簡単なフィードバックを行います。
- 最終日:総括フィードバック実習全体を通して学んだ内容を確認し、学校へ提出する書類に不備がないかを一緒に確認します。

受け入れ側が意識したいポイント
訪問看護ステーションでの実習は、利用者さんの生活の場を訪ねるという特性上、病院・施設以上にマナーや礼儀が目に付きやすい環境です。受け入れ担当者として、次の点を意識しておくと実習がスムーズに進みます。
分かりやすい言葉で説明する
学生は生理学・運動学・解剖学といった基礎知識は身につけていますが、実際の臨床現場での言葉の使い方には慣れていません。利用者さんの状態や治療の意図を説明するときは、できるだけ専門用語を噛み砕いて伝えることを意識しましょう。
同行訪問時のマナーを事前に伝える
利用者さんのご自宅にお邪魔する立場である以上、挨拶や身だしなみ、言葉づかいといった基本的なマナーは、実習初日のオリエンテーションで必ず共有しておきたい項目です。
利用者さん・ご家族への配慮を忘れない
実習生が同行することで、利用者さんやご家族が普段以上に緊張してしまうことがあります。訪問前には「今日は学生が同行すること」「学生がどのような立場で関わるのか」を改めて簡潔に伝え、安心して迎えてもらえるよう配慮しましょう。
また、学生が話しかけるタイミングや質問の仕方によっては、利用者さんの負担になってしまうこともあります。会話の主導権は基本的にスタッフ側が持つようにし、学生には「まずは見て学ぶ」姿勢を意識してもらうとよいでしょう。
フィードバックはその日のうちに、具体的に
気づいたことを翌日以降に持ち越さず、その日のうちに振り返る習慣をつけることで、学生の理解の定着を助けられます。「良かった点」だけでなく「次回までの課題」もセットで伝えると、学生が次の訪問に向けて何を意識すればよいかが明確になります。
実習担当者一人に対応が集中すると、通常業務との両立が難しくなり、指導の質が下がってしまうことがあります。複数のスタッフで分担できる体制を、実習開始前に整えておきましょう。
実習担当者を固定しすぎると、担当者が急な休みや他業務で対応できないときに実習が滞ってしまいます。サブ担当を1名決めておく、実習スケジュールを事業所内のカレンダーで共有しておくなど、属人化を防ぐ工夫もあわせて検討しておくと安心です。
実習を通じて学生に伝えたい訪問看護の魅力
理学療法士の学生にとって、訪問看護ステーションでの実習は初めての在宅医療の現場であることが多く、就職先としてイメージしにくい面もあります。だからこそ、実習を通じて理学療法士としての仕事内容だけでなく、訪問看護ステーションで働く魅力を丁寧に伝えることが大切です。
在宅を選ぶ訪問看護ステーションが今後も増えていくと見込まれるなかで、学生時代に良い実習経験を積んでもらうことは、将来的な新卒採用にもつながる投資といえるでしょう。
具体的には、次のような点を実習の中で伝えられると、学生の印象に残りやすくなります。
- 利用者さん一人ひとりとじっくり向き合える時間の長さ
- 生活そのものを支えるという、病院とは異なるやりがい
- 医師・看護師・ケアマネジャーなど多職種と連携しながら働く面白さ
- 移動の合間に季節の変化を感じられるといった、訪問ならではの日常
実習中に無理に良い面ばかりを伝えようとする必要はありません。大変な面も含めて率直に共有することが、結果的に学生からの信頼につながります。

実習生への対応は手間がかかる面もありますが、「訪問看護っていいな」と思ってもらえたら、それは事業所にとっても大きな財産になりますね。
よくある質問
理学療法士の学生実習は何年生のときに行われることが多いですか?
養成校のカリキュラムによって異なりますが、見学実習は1年生の早い段階で組まれることが多い傾向にあります。臨床実習としてより長期の実習が組まれるのは、学年が上がってからが一般的です。
訪問看護ステーションで実習生を受け入れる際、特別な届出は必要ですか?
受け入れの可否や手続きは養成校・実習先の取り決めによって異なるため、実習を依頼された時点で学校側の実習要項を確認し、必要な書類や手順を事業所内で共有しておくことをおすすめします。
利用者さんの同意はどのタイミングで得るべきですか?
実習当日ではなく、スケジュールを組む段階であらかじめ説明し、同意を得ておくのが望ましいです。当日いきなり学生が同行すると、利用者さんが戸惑ってしまう可能性があります。
実習担当者が一人しかいない場合はどうすればよいですか?
可能であれば複数のスタッフで役割を分担することが望ましいですが、難しい場合は無理のないスケジュールを組み、フィードバックの時間を優先的に確保するなど、負担を減らす工夫をしましょう。
学生から訪問看護に関する質問を受けたとき、何を伝えるとよいですか?
業務内容だけでなく、病院との違いや在宅ならではのやりがいなど、実際に働くスタッフの生の声を伝えると、学生が訪問看護という選択肢を具体的にイメージしやすくなります。

まとめ|丁寧な準備が、学生にとって良い実習経験につながる
訪問看護ステーションでの理学療法士学生実習は、事前の準備から当日の対応、フィードバックまで、病院実習とは違った配慮が求められます。
- 訪問看護での学生実習は、新卒採用にもつながる大切な機会
- 学校・学生との事前連携と、利用者さんへの同意確認が欠かせない
- 実習は「オリエンテーション→同行訪問→振り返り」を日々繰り返す流れで進む
- フィードバックはその日のうちに、具体的に伝えることが定着のカギ
丁寧な受け入れ体制を整えることが、学生にとって良い実習経験になるだけでなく、事業所にとっても将来の人材確保につながります。














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