腰痛に悩む訪問看護師は多いです。
訪問看護の現場では、腰痛になりやすい場面が多々あるためです。
なんの対策もせずに働き続けると、腰痛が悪化し、この先の仕事に影響が出てしまう可能性があります。
そこで当記事では、訪問看護師が腰痛になりやすい場面とその対策を徹底解説します!
- 腰痛に悩む訪問看護師
- 腰痛を予防していきたい訪問看護師
- 職場で腰痛に対する取り組みをしたいと考えている訪問看護師
気になるあなたはぜひ最後まで読んでみてくださいね。
ではさっそく解説します。
目次
訪問看護師が腰痛になりやすい場面5選
訪問看護師が腰痛になりやすい主な場面は以下の5つです。
- ベッド周囲で行うケア
- トイレ・入浴介助
- 車移動
- 冬
- デスクワーク
順番に解説します。
ベッド周囲で行うケア
ベッド周囲で行うケアは、病棟でも腰痛が出現しやすい場面ですが、訪問看護でも腰痛になりやすい場面です。
- ベッドの片側が壁についている
- 介護用ベッドを導入していない方もいる
- ふとんの方もいる
- ひとりの看護師でケアをする
- 限られた物品でケアをする
訪問看護は、ご自宅で生活される利用者さんのもとに、基本的には看護師ひとりで訪問します。
病院等と違い、在宅は普段生活を営む場所なので、ベッドを置くスペースも限られます。
ベッドの片側は壁にピッタリつけていることも多く、その場合、片側からしかケアができません。
介護用ベッドを使用していない方や、ふとんで寝起きされている方もいらっしゃいます。
いずれの場合も、腰に負担がかかる体勢でケアをしなければならないことがあります。
看護師ひとりで訪問するため、すべてのケアをひとりで行う大変さも腰に負担をかけます。
使用する物品もご自宅にあるものを使わせていただくため、病棟のように重いものをワゴンで運ぶこともできず、すべて人力で行います。
ベッド周囲のケアの場面だけ見ても、腰痛につながる要因が多々あります。
トイレ・入浴介助
トイレや入浴介助の場面も、訪問看護師の腰痛の原因となる場面です。
- 看護師ひとりで介助する
- ご自宅のトイレや浴室はかなり狭いことがある
前述したように、訪問看護は基本的に看護師ひとりでの訪問です。
ご家族の方が一緒に手伝ってくださることもありますが、そうでない場合はひとりでトイレ介助や入浴介助を行います。
ひとりの力では腰に負担がかかりやすいです。
加えて、ご自宅のトイレや浴室、脱衣所は介護用には作られていないため、かなり狭いこともあります。
不自然な体勢をとらざるを得ないこともあり、腰に負担がかかってしまいます。
車移動
訪問看護では、車移動があることも腰痛の原因になります。
- ずっと同じ姿勢で運転する
- 長時間運転することもある
- 1日の運転時間をトータルするとかなり長いことも
ずっと同じ姿勢での運転は腰痛の原因になります。
長い移動だと片道30分くらい運転することもあります。
地域によってはもっと長い運転時間のことも。
さらに、1日のトータル運転時間で見ると数時間に及びます。
車の運転が腰痛の原因のひとつになっていると感じる訪問看護師は少なくありません。
冬
訪問看護の冬は、腰痛を助長させる原因となる季節です。
訪問看護では、寒さを直に感じる場面が多々あるためです。
- 利用者さん宅までの移動
- 利用者さん宅の室内
利用者さん宅までの移動が必ずある訪問看護では、外の寒さの影響をダイレクトに受けます。
利用者さん宅の室内環境もさまざまであり、かなり底冷えするご自宅もあります。
そのような中での業務であり、寒さが腰痛を助長させてしまう原因となります。
デスクワーク
訪問看護ではデスクワークも多いです。
- 看護記録
- 訪問看護計画書・報告書作成
- FAX作成
- 他職種から求められる意見書等の作成
- 訪問スケジュール入力 など
訪問で疲れたあと、さらに同一姿勢・姿勢不良でのデスクワークを行うと、腰痛が悪化する可能性があります。
訪問の合間に、訪問車の中でタブレット端末を用いて書類業務を行うこともあります。
決して良い姿勢での作業とは言えません。
デスクワークは腰痛悪化の一因です。
訪問看護師が腰痛になりやすい場面の根拠について
訪問看護師が腰痛になりやすい場面を解説しましたが、これらは厚生労働省が発表している以下のことでも裏付けられます。
腰痛の発生要因は、次のイ〜ニのように分類され、動作要因、環境要因、個人的要因のほか、心理・社会的要因も注目されている。
イ 動作要因
(イ) 重量物の取扱い
(ロ) 人力による人の抱上げ作業
(ハ) 長時間の静的作業姿勢(拘束姿勢)
(ニ) 不自然な姿勢
(ホ) 急激又は不用意な動作ロ 環境要因
(イ) 振動
(ロ) 温度等
(ハ) 床面の状態
(ニ) 照明
(ホ) 作業空間・設備の配置
(ヘ) 勤務条件等ハ 個人的要因
(イ) 年齢及び性
(ロ) 体格
(ハ) 筋力等
(ニ) 既往症及び基礎疾患ニ 心理・社会的要因
仕事への満足感や働きがいが得にくい、上司や同僚からの支援不足、職場での対人トラブル、仕事上の相手先や対人サービスの対象者とのトラブル等。
上記の内容は、訪問看護師が腰痛になりやすい場面に当てはまることが多いです。
やはり、訪問看護では腰痛が出現しやすいと言えるでしょう。
訪問看護師ができる腰痛対策3選
腰痛の原因となるさまざまな事柄がある訪問看護において、腰痛対策は必須です。
訪問看護師ができる腰痛対策として、以下の3つをお伝えします。
- 無理はしない
- こまめにストレッチをする
- 日頃から運動習慣を持つ
順番に解説します。
無理はしない
訪問看護師の腰痛対策において、無理をしないことは非常に重要です。
日本看護協会も、「腰痛予防対策」に対する指針の中で以下のように述べています。
社会福祉施設や医療保健業などの保健衛生業は、比較的、腰痛の発生の多い職場となっています。
(中略)
看護職の場合、「患者さんの生命に関わる仕事」という意識があり、「腰痛は職業病だから」と考え、腰痛があっても休まずに無理をしてしまう傾向があるためです。
訪問看護師も現場に出た時、ひとりで訪問するからこそ「責任を持って利用者さんのために自分が頑張らなきゃ」と思う方は多いと思います。
利用者さんやご家族の前だと緊張してしまい、自身の姿勢にまで気が回らず、不自然な姿勢のままケアを続けてしまうこともあるかもしれません。
しかし、無理をして自身の体を痛めては、長く働き続けることができなくなる可能性があります。
- 腰や体に負担がかかりにくい姿勢や動作を意識しながらケアを行う
- 前屈、中腰、ひねり等の不自然な姿勢をなるべく取らないようにする
- 無理はせず、必要であればご家族にも少し手伝っていただく
- ケアを行う環境がどうしても厳しい場合は上司に相談する
- 他職種とも意見交換し、必要であれば福祉用具の導入を提案・検討する
無理をしたままずっとひとりで抱え込むことは絶対に避けましょう。
つらい時は相談することが何より大切です。
「無理はしない」
「悩んだら相談する」
このことは必ず心に留めておきましょう。
こまめにストレッチをする
こまめにストレッチをすることも腰痛対策としておすすめです。
同じ姿勢を取り続けることで腰痛が悪化するからです。
腰部にある筋肉が緊張することで腰痛が起こりやすいため、腰部周辺の筋肉をほぐすようなストレッチは腰痛予防に効果的です。
- ケア中も時々姿勢を正す
- 訪問の合間で軽くストレッチをする
- 運転中の信号待ちのときに軽く体を伸ばす など
ちょっとしたことでも、こまめに行うことで効果は必ずあります。
ぜひ意識してやってみてください。
日頃から運動習慣を持つ
日頃から運動習慣を持つことも腰痛予防において大切です。
運動不足は腰痛の原因となります。
- ウォーキング
- ジョギング
- 筋トレ など
軽く行える運動習慣を日頃から身につけられると非常に良いです。
運動習慣に加え、以下のことも意識できるとなお良いでしょう。
- 休める時はしっかり休息する
- 入浴でリラックスする
- 睡眠時間をしっかり確保する
- 栄養を摂る
基本的なことですが、心身の状態を良好に保つことは腰痛防止となります。
忙しい中とは思いますが、ぜひ意識していきましょう。
訪問看護師の腰痛を予防して笑顔で働こう!
最近では「ノーリフティング」という言葉も耳にするようになりました。
人を抱え上げる作業、不自然な姿勢を伴う作業は腰に負担がかかるため、なるべく行わないようにしようという取り組みです。
作業の全部または一部を自動化することが望ましいとされていますが、在宅の場面ではそれが難しいこともあります。
看護職の腰痛に関する調査では、腰痛があっても労災申請しないと回答した人が8割を占め、その理由について申請していない看護職の6割が、腰痛で労災申請できるという認識がないと回答しています。しかし、看護職の5〜7割が腰痛を抱えているとの調査結果もあり、潜在的な腰痛の実態は深刻といえます。さらに、腰痛の有無は看護職の離職意向にも優位に影響しているため、看護職場における腰痛予防は人材を確保する意味でも重要な課題といえるでしょう。
今自分でできることはしっかり行いながら、つらい時はひとりで抱え込まず声を上げ、相談していきましょう。
腰痛の出現・悪化を予防し、ベストなコンディションで訪問看護にあたれることを願います!
訪問看護師です。最近腰痛に悩んでます。ひどくならないうちになんとかしたいなぁ…。