訪問看護の業務は、実際に携わったことのある看護師さん以外はなかなか想像がつかないことが多いですね。
今回は、実際の業務の概要から訪問看護だからできる看護介入、訪問看護でできないことまで、詳しくご紹介して行きたいと思います。
これから訪問看護にチャレンジしたい看護師さんや、訪問看護に初めて就職する看護師さんはぜひ参考にしてください。
目次
訪問看護でできることとは?
まずは訪問看護でできることについて解説していきます。
訪問看護は、看護師が利用者さん宅に伺い看護を提供しています。
看護を提供するにあたり病院や施設とは環境が異なりますが、具体的にはどのような違いや特徴があるのでしょうか。
訪問看護と病院や施設でできることの違い
訪問看護と病院、施設での看護の違いは、実はそんなにありません。
医療的ケアや観察項目、留意点や疾患におけるリスクは病院や施設と同じです。
では、訪問看護と病院、施設で異なる点はどのようなものがあるでしょうか。
大きく違う点は3つあります。
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- 療養する環境が人それぞれ異なる
- 医師や看護師が常に近くにいることができない
- 利用者さんの自己管理や家族介護がメインとなる
実際に提供する看護は大きく変わらないのに、上記の3つが加わるだけで訪問看護を別世界のように感じてしまう看護師さんは少なくありません。
訪問看護で実際に行っている看護とは?
では、訪問看護で実際に行われることの多い看護業務はどのようなものでしょうか。
「訪問看護の現状とこれから2021年版」公益財団法人日本訪問看護財団の資料によると、訪問看護で行われる看護はこのようになっています
上の表を見ていただくと、一つ一つは病院で行う看護と大きな違いは感じられないと思います。
前述した③利用者さんの自己管理や家族介護がメインとなる、という点で、本人の療養指導や家族支援の割合が大きくなっていることがわかります。
訪問看護でできないこととは?
前項では、訪問看護で行うことができる業務は病院や施設と大きな差はないとお伝えしました。
では、訪問看護でできないこととはどのようなものでしょうか。
訪問看護でできないことについては、具体的には以下のようなものがあります。
- 利用者さんの居宅以外での訪問看護の提供
- 買い物や調理などの家事
- 受診同行(自費で行う事業所もあります)
このように、訪問看護でもできない業務は存在します。
上記のような支援が必要な場合には、担当のケアマネジャーに情報共有し、適切なサービスに繋いでいただくのが妥当と言えます。
在宅だからできる個別性の高い訪問看護とは?
ここまでは、訪問看護でできること、できないことを解説しました。
では、訪問看護だからこそできる個別性の高い看護とは、どのようなものがあるでしょうか。
訪問看護だからできる看護介入の実際をご紹介していきます。
家で安全に過ごす方法を提案する
在宅療養をする利用者さんは、療養する環境が人それぞれ異なります。
病院や施設の環境と異なり、自宅では歩行する環境も安全とは言えない場合があります。
家の構造を変えることは難しいため、家の環境に合った安全確保をします。
例えば寝室からトイレまでの動線で段差や危険な家具がないか確認し、段差にスロープを設置したり掴まる箇所を確保したり、身体機能に合わせて環境を整えます。
在宅酸素や人工呼吸器などの医療機器を必要とする利用者さんの場合には、医療機器を安全に使用して過ごすための配慮や注意喚起が必要となります。
訪問看護に連絡が必要な症状や機器アラームを、利用者さんやご家族が理解できるように説明します。
利用者さんが安全に在宅生活を送るために、訪問看護が訪問している時間以外の利用者さんやご家族のみで過ごす時間を想像して準備していくことが重要です。
安心して過ごすにはどうしたらいいかを一緒に考える
在宅療養は、医師や看護師が常に近くにいることができないことが大きな特徴です。
その反面、病院や施設とは異なり、住み慣れた家で誰にも遠慮せず自分のペースで過ごすことができることは在宅療養の最大のメリットと言えます。
訪問看護では、在宅で安心して過ごすためにはどうしたらいいかを利用者さんやご家族とともに考えます。
安心して過ごすための近道は、利用者さんが「何を不安に感じているか」を十分に聴取することです。
例えば「体調の悪化に不安を感じる」というときに、Aさんは「体調を崩して家族の負担を増やすのではないかと不安に感じている」と言い、Bさんは「体調が悪化したら入院しなければいけないのか不安に感じている」と言います。
この場合、「体調を崩して家族の負担を増やすのではないかと不安に感じている」Aさんに対しては段階に応じた家族介護指導や訪問看護、訪問介護で連携して介護負担の分担を図ることを提案します。
一方、「体調が悪化したら入院しなければいけないのか不安に感じている」Bさんに対しては在宅での療養を希望するのであれば通院ができなくなった際には訪問診療と連携して症状の緩和を図り、先を予測して体調が変化した際の対応を明確にして行きます。
このように、訪問看護では一人一人の希望を細かく聴取し、より個別性の高い看護を提供します。
家でしかできない時間を過ごす
在宅療養では、基本的には利用者さんの自己管理や家族介護がメインとなります。
どのように安全、安心に過ごせるかを考えていくのは前提としてありますが、その在宅生活を継続するためにはどうしたらいいかということも考えていく必要があります。
利用者さんやご家族に病院と同じ完璧な医療、介護を提案するならば、すぐに疲弊や不具合が生じて生活を続けていくことはできなくなる可能性が高いです。
さらに、自宅だからできるくつろぎや、リラックスした環境をも失いかねません。
訪問看護の介入時には、利用者さんやご家族が可能な範囲のポイントを押さえた目標設定を行い、完璧を求めず長く療養生活が続けられるよう支援します。
特に在宅看取りを希望する場合には、介護するご家族も不安が強いものです。
「家で死にたい」と願い、自宅で過ごすという勇気ある決意した利用者さんが安楽に、そしてご家族が安心して家でしかできない時間を過ごせるように考えます。
家での時間をできる限り穏やかに、最期に「帰ってきてよかった」と言えるように、訪問看護は在宅での安心、安全、安楽、個別性を重視していく必要があります。
まとめ
今回は、訪問看護でできること、できないことについてお伝えしました。
訪問看護でできる看護技術は病院や施設と変わりませんが、環境に合わせた支援は大きく異なります。
在宅では、利用者さん一人一人の個別性の高さから看護の壁にぶつかってしまうこともあります。
そんな時はぜひ、ビジケアにご相談ください。
ビジケアでは、全国の訪問看護ステーションの管理者、経営者、従事者が集い、日々悩みの共有や解決策の提案を行っています。
全国の仲間とともに訪問看護を楽しんでいただけると幸いです。