訪問看護の仕事内容は、とても幅広く病院での仕事内容とはまた違った大変さがあります。
この記事を見てくださるのは、在宅での看護業務に興味を持っていただいた看護師さんや、初めて訪問看護ステーションに就職する新人訪問看護師さんが多いと思います。
今回は、現役訪問看護師が訪問看護の仕事内容について詳しく解説していきます。
在宅での看護業務をイメージし、訪問看護をより身近に感じていただけたら幸いです。
目次
訪問看護の仕事内容とは?
訪問看護とは、看護師や療法士が利用者の居宅を訪問して行う看護です。
訪問看護では全ての年齢、疾患を持つ方に利用されています。
訪問看護というと、ご高齢の寝たきりの方や在宅看取りを希望する方をイメージするかもしれませんが、その限りではありません。
障害を抱えた赤ちゃんや、精神疾患を抱える成人の利用者さん、難病を抱えて療養生活を送る利用者さんなど様々です。
私たち訪問看護師は、主治医の指示のもとで利用者さんの療養上の世話または必要な診療の補助を行います。
私たちが提供する訪問看護のサービスは、大きく分けると以下のような内容になっています。
- 病状の観察
- 療養上の世話
- 医療処置
- 服薬の管理
- 褥瘡の予防や創傷処置
- 医療機器の管理
- 介護予防や介護支援
- リハビリテーション
- 精神疾患のケア
- 家族ケア
- ターミナルケア
- 他職種連携
- 24時間電話対応及び緊急訪問
実際私たち訪問看護師ができることは、病院での看護と変わりありません。
異なる点は、療養する環境と療養に関わる人です。
では、訪問看護の仕事内容の実際を、病院での看護と比較していきましょう。
病状の観察
バイタルサインの測定やフィジカルアセスメントを行います。
訪問看護は週1〜3回の訪問になることが多く、訪問時に小さな変化を見落とさないことが重要です。
また、起こりうる症状を予測し、利用者さんやご家族にどのような症状があった場合にはご連絡いただく必要があるのかを説明します。
病院では継続した症状の観察を医療従事者が行いますが、在宅ではご本人やご家族も訪問看護師とともに行います。
医療従事者以外が症状の観察をする場合には、一般の人でも分かりやすい説明が必要となります。
必要な場合には、主治医へ報告する、救急搬送の手配を行うなどの対応を行います。
バイタルサインの測定やフィジカルアセスメントを行います。
継続した観察が必要な場合には、次の勤務帯の看護師に申し送りし経過観察を行います。
院内電話での報告や病棟回診時に主治医に報告し、必要な場合には診察を受けることができます。
療養上の世話
基本的には一人の訪問看護師が清潔ケアや排泄のケアを行います。
療養する居宅の状況によっては福祉用具が必要となるなど、環境を整えることも重要です。
訪問看護では、それぞれの利用者さんの住まう環境により安全に生活するための環境整備や介助の方法を検討します。
物品が揃っていないため、自宅にあるもので代用することもあり、訪問看護の特徴と言えます。
院内の物品を使用して清潔ケアや排泄のケアを行います。
基本的には安全な環境が整っています。
場合により、一人の患者さんに複数の看護師でケアをすることができますが、入院している患者さんの数が多くチームで臨機応変にケアにあたる必要があります。
医療処置
医師の指示のもと、点滴や中心静脈栄養、創傷処置、カテーテル管理など行います。
処置材料は医療機関から払い出しされますが、数に限りがあるため不足することのないように注意して実施します。
カテーテル管理はご本人、ご家族へ留意点を説明し、トラブルなどは緊急訪問にて対応します。
万が一、腎ろうカテーテルや膀胱ろうカテーテルなど在宅では処置できないものが抜去されてしまった場合には、早急に救急搬送が必要となります。
在宅でできる処置には限界があり緊急受診が必要となり医療機関との連携が重要です。
医師の指示のもと、医療処置を行ないます。
処置材料の無駄がないよう実施しますが、必要な場合は在庫から使用することができます。
カテーテル管理は看護師が行い、勤務帯ごとの申し送りを行い、事故抜去を予防します。
カテーテルの抜去があった場合には、主治医または代理の医師が対応します。
服薬の管理
処方された薬剤の管理を行います。
毎日訪問できるわけではないので、訪問看護が介入しない日も安全に服薬ができるよう利用者さんの状態に合わせて服薬の管理をして行く必要があります。
在宅での服薬管理において、最もリスクが高いのが過剰内服です。
上記の通り、看護師が毎日お伺いすることが出来ないことも多く、利用者さんの認知力や服薬動作によって管理方法をアセスメントする必要があります。
処方された薬剤について問い合わせをする際には、薬局や医療機関に連絡をしますが回答に時間がかかる場合もあります。
薬剤科から処方された薬剤を看護師が管理し、患者さんの管理能力に合わせて配薬します。
入院中の患者さんに自己管理を指導することもあります。
褥瘡の予防および処置
褥瘡形成ハイリスクの利用者さんの場合、福祉用具からエアーマットをレンタルしたり除圧の方法をご本人やご家族にお伝えして褥瘡形成の予防を図ります。
褥瘡が発生した場合には、医師の指示に基づき治癒に向けた処置を行います。
訪問看護が介入しない日には、ご家族に処置方法をお伝えしたり、訪問介護やデイサービスの看護職員と連携を図って処置が継続できるよう調整します。
ADLや病状により褥瘡形成リスクをスクリーニングし、エアマットや定期的な体位変換により褥瘡予防を図ります。
褥瘡が発生した場合には、医師の指示に基づき治癒に向けた処置を行います。
看護師による処置を継続します。
医療機器の管理
人工呼吸器や在宅酸素などを行います。
使用する在宅用の医療機器はコンパクトに設計されていたり、設定が簡単に変わらないようロックがかかっています。
使用方法もメーカーによって異なり、定期的なメンテナンスをしています。
使用開始時にはメーカーの営業担当者の方に勉強会を依頼することもあります。
人工呼吸器や酸素投与を始め、多くの精密機器を管理します。
配属される診療科によって使用する医療機器は様々です。
機器の管理は臨床工学士が行うことが多く、メーカーによる研修会が行われることもあります。
介護予防や介護支援
在宅では、主に家族介護がメインとなります。
最近はコロナウィルスの影響により退院時の家族指導を行わずに退院することも増えています。
そのため、退院直後から訪問看護が介入し、家族介護支援を行うこともあります。
老老介護を行っていることも多く、主介護者となるご家族の力量を見ながら介護指導を進めます。
退院時の患者さんの状態に応じて、ご家族へ介護指導を行います。
退院後の生活を想定して介護指導を行い、退院後の不安を解消できるよう介入します。
リハビリテーション
看護師や療法士が自宅環境に合った生活期のリハビリテーションを行います。
自宅に退院してから困りごとが見えてくることもあり、適宜アセスメントを繰り返しながらリハビリテーションします。
週に数回のリハビリテーションになりますので、自主トレーニングの提案も重要です。
療法士が配置されていない訪問看護ステーションもありますので、看護師によるリハビリテーションを行うことも多いです。
入院中は主に療法士によるリハビリテーションを行います。
疾患によるADLの低下や耐久性の低下を向上させる目的で、急性期から慢性期のリハビリテーションが主となります。
療法士と連携して病棟で看護師によるリハビリテーションを行うこともあります。
精神疾患のケア
精神疾患を抱える患者さんが、在宅復帰することが増えてきました。
しかし、退院となっても在宅での生活に支援が必要な方も多く、訪問看護の介入により精神面のサポートを行います。
主に服薬管理や体調の観察、危機的状況の回避や社会生活における助言などを行います。
精神症状の悪化がある場合には、早期に医療機関への受診を促し重篤な悪化を防ぎます。
精神疾患の急性期症状の治療を行います。
病棟での生活をするためのセルフケア支援や退院後の生活を予測したリハビリテーションも行います。
家族ケア
在宅で介護されるご家族へのケアは、訪問看護業務の中でもとても重要です。
利用者さんが体調を維持できても、介護者であるご家族が倒れてしまっては在宅生活の継続は難しくなるためです。
訪問看護は週に1〜3回程度、1回の訪問で概ね1時間程度であることが多いです。
そのため、そのほかの時間はご家族が24時間介護を行っており、ご家族の健康が利用者さんの生活の要となっています。
必要な場合にはご家族の休息を確保するため、ケアマネジャーなどと相談してレスパイト支援を行うこともあります。
入退院時や主治医の病状説明前後にはご家族の意向を伺うため、関わることが多いです。
以前は面会時に関わることが主でしたが、現在はコロナウィルス感染予防のため面会禁止になっている病院が多くあります。
ご家族へ患者さんのご様子をお伝えすることで安心しておまかせいただけるよう家族ケアを行います。
ターミナルケア
ターミナル期を在宅で過ごすことを希望される場合、苦痛を少なく過ごせるように療養環境やサービスを整え、訪問医との連携を図り緩和ケアに努めます。
最期に近づくにつれ、利用者さんの明らかな症状の変化が現れるため、ご家族の精神的支援も重要です。
穏やかに最期を迎えられるよう、他職種連携を図りチームとして利用者さんを支えます。
病院でターミナル期を過ごす患者さんに、心身ともに緩和ケアを提供します。
在宅と異なり、患者さんは医療者が常にそばにいるという安心感を得られます。
在宅よりもさらにスピーディな症状緩和のための治療を行うことができるメリットがあります。
他職種連携
在宅療養では、自身の勤める事業所のほかに多くの事業所や医療機関と連携を図る必要があります。
訪問看護指示書を交付していただく主治医を始め、ケアマネジャー、訪問介護、通所介護、ショートステイ、訪問入浴、訪問リハビリ、訪問薬剤師などほとんどが他事業所の担当者になります。
そのため、電話やメール、FAXを駆使して日々連絡を取り合い、一人の利用者さんを支援します。
医師、療法士、医療相談員、薬剤師など多くは院内の職員との連携がメインとなります。
院内で直接顔を合わせることができ、密接に連携が図ることができます。
24時間電話対応及び緊急訪問
訪問看護の特徴的な仕事に、オンコールがあります。
多くの事業所が24時間対応、オンコール業務を行っています。
訪問看護ステーションの管理者や看護職員が当番制で24時間電話対応を行い、必要な場合には緊急訪問を行います。
病院での夜勤とは異なり、自宅で待機することが多いため電話相談や緊急訪問がない限りは通常の生活と概ね同じように過ごすことができます。
病棟での勤務の場合、シフト制で夜勤を行います。
2交代または3交代制での勤務が多く、夜間帯も継続して入院中の患者さんの看護を行います。
まとめ
今回は、病院での看護と訪問看護を比較して訪問看護の仕事内容を解説しました。
こうして比べてみると、看護師国家資格でできる業務は共通していても、病院での看護と訪問看護では大きな違いがあることがわかります。
訪問看護は、幅広い内容で大変なこともありますが、その反面で利用者さんの在宅生活をよりよくするために看護の力を大いに発揮できる仕事です。
訪問看護に興味を持ってくださった方は、ぜひチャレンジしてみてください!
訪問看護に関する疑問や質問は、お気軽にビジケアまでお問い合わせくださいね。