病院等での治療や療養を終えた患者さんは、退院して住み慣れた住宅に帰ってきます。
この場合、退院する人の訪問看護指示書の日付は退院日で良いのでしょうか?
- 入院している患者さんが退院後に訪問看護を新規で開始する場合
- 元々訪問看護を利用していた方に退院後訪問看護を再開する場合
退院する人の訪問看護指示書の発行については、「退院当日の訪問看護が必要だろうか?」「どのような記載が必要か?」など迷うことがあると思います。
そこでこちらの記事では、退院する人の訪問看護指示書は日付の設定、算定ルール、退院前に必要なことについて詳しく解説していきます。
目次
退院する人の訪問看護指示書の日付は退院日で良いのか?
退院日の訪問看護は、原則算定不可です。
退院日は「入院期間中」という位置付けとなるため、基本的に保険での訪問看護サービスは退院日翌日からの算定となります。
しかし患者さんの状態によっては、退院日に訪問看護を利用しなければならないことも少なくありません。
- 体調・病状が81.8%
- 緊急時の対応53.8%
- 服薬50.7%
- 医療処置42.8%
- 家族の介護負担39.9%
引用)厚生労働省_訪問看護
そのため例外として、退院当日に訪問看護を利用できる場合があります。
退院当日から訪問看護を利用できるのは、以下の状態にある場合です。
- 別表7「厚生労働大臣が定める疾病等」
- 別表8「厚生労働大臣が定める状態等」
- 主治医が退院日の訪問看護が必要と認めた場合
- 訪問看護指示書に退院日の訪問看護が必要と記載されている
- 退院日当日からの期日で特別訪問看護指示書が発行されている
これらの条件を満たしていれば、退院当日に訪問看護を実施することが可能です。
令和3年度の介護報酬改定で、これまで疾病や状態により制限があった退院当日の訪問看護が、主治医が必要と認めた場合も可能となったことで、スムーズな在宅移行が期待されます。
退院してくる方の状態をしっかり見極め、以下のことに留意して退院してくる人の訪問看護指示書を発行してもらいましょう。
- 発行日は、退院日を含む入院期間中
- 退院日からの期間で発行
- 主治医が退院当日の訪問看護が必要である旨を明記
退院当日の算定ルール
退院当日の訪問は前項で説明した3つの場合に限られます。
退院当日に訪問する場合、医療保険適用での訪問看護か介護保険適用での訪問看護かにより算定方法が違います。
それぞれの算定方法は以下となります。
医療保険による退院支援の訪問看護
退院当日は入院期間の扱いとなるため、退院日に訪問看護基本療養費は算定できません。
そのため、退院日の翌日以降初日の指定訪問看護の実施時に、訪問看護管理療養費に加算して退院支援指導加算を算定します。
ただし、複数回利用等は保険給付の対象とはなりません。
介護保険による退院支援の訪問看護
特別管理加算を算定できる方であれば、退院日当日から制限なく訪問看護サービスを利用することができます。
通常通り時間で区分された訪問看護費を算定します。
令和3年4月からは、医療保険と同様に主治医が必要と認めた場合にも訪問看護サービスを利用できることになりましたので、この場合も通常通りの訪問看護費を算定します。
その他の訪問看護による退院支援
介護保険、医療保険に共通して行われる退院支援の仕組みとして、退院時共同指導というものがあります。
これは病院や老健などに入院(所)中に、主治医、訪問看護師、家族、その他支援者と共に退院前カンファレンスを行い、在宅療養について指導を行った場合に算定する加算です。
退院時共同指導加算を算定した利用者さんが特別管理加算の対象となる状態の場合、さらに特別管理指導加算(2,000円)を算定可能です。
退院後に初回の訪問看護を実施した日に600単位/回を算定します。
初回の訪問看護が指導実施月の翌月の場合は、翌月に算定します。
特別管理加算の対象者に対して共同指導を複数日に実施した場合は、2回分を初回の訪問看護に対して算定可能です。
退院時共同指導加算は、支給限度額に含まれる加算になります。
退院の連絡を受けたら退院前カンファレンスの調整をしよう
新規依頼の方や、元々訪問看護を利用していた方の退院決定の連絡が入ったら、まず退院前カンファレンスの日程を確認しましょう。
退院前カンファレンスは、入院から在宅生活へとスムーズに移行できるよう話し合う大切な機会です。
退院前カンファレンスで、入院中の治療の内容や経過、退院後の生活上で必要なこと・必要な支援についての情報を、関係機関間で共有します。
退院当日に訪問看護が必要な場合には、退院前カンファレンスで十分に医師と相談しておくことが大切です。
退院当日に訪問看護の実施が必要な場合、訪問看護指示書に訪問看護の必要性を記載してもらい、訪問看護指示書の日付は退院日からの期日で発行してもらうようお願いしておきましょう。
また、退院してくる患者さんの状態によって、主治医が退院直後に週4回以上の頻回な訪問看護が必要と認めた場合には、退院日からの日付で特別訪問看護指示書を発行してもらいます。
まとめ
入院中の患者さんにとって、退院が決まり自宅に帰れるのは嬉しいことです。
そして嬉しさと同時に、入院によって医療的ケアや介護が必要な状態となった場合には、退院後の在宅生活に不安を感じることもあるでしょう。
そのような患者さんにとって、退院後の在宅生活を支援してくれる訪問看護の存在はとても心強いものです。
入院日数が短くなり、入退院を繰り返しながら療養する時代となった現在の医療体制では、退院後も在宅で治療やリハビリを継続することが必要となっています。
そのため、退院後の療養生活を安定させるポイントは、入院中の連携からはじめます。
入院中に退院後にどのようなサービスが必要かを見極め、制度を正しく理解して、在宅療養が安定したものにできるかを左右する大切な退院直後の時期を、訪問看護で支援しましょう。