訪問看護のこれまでの歴史〜江戸時代から現在まで〜

みなさんは訪問看護の歴史についてどれぐらいご存じでしょうか?

私は今回の記事を書かせていただくまで訪問看護の歴史については全くといっていいほど知りませんでした。

今回、記事を書かせていただく中で訪問看護の歴史について調べてみて、まとめてみたことで新しい気づきや学びがあり、歴史を知るということはとてもおもしろいことだと感じられました。

私と同じように訪問看護の歴史についてまだ知らないという方に特に読んでいただきたい内容になっているので何かのお役に立てると幸いです。

 

訪問看護のこれまでの歴史

 

訪問看護のはじまりはいつ頃だと思いますか?

なんと!江戸時代まで遡るそうです。

今回は訪問看護の長い歴史の中で訪問看護がどのようにして現在のかたちに発展していったのか。

その経緯など大きな節目ごとにピックアップしてまとめてみました。

 

近代看護活動のはじまり

 

「近代看護」といわれると訪問看護と関係があるのかと思われる方もおられるかもしれません。

近代看護の活動は江戸時代からはじまったといわれています。

その記述の中には「派出看護」という名前で訪問看護に似た内容のことが書かれています。

わが国では、江戸時代から往診による在宅治療と肉親や使用人による家庭内看護が、人々の生活に深く根をおろしていたので、富裕な人ほど在宅看護を望む傾向が強かった。日本に初めて生まれた訓練を受けた看護婦は、この特権富裕層の需めに応えて家庭へ派出し、傷病者のベッドサイドケアに従事した。したがって、わが国の近代看護活動は派出看護の形で広がったといえる。

引用)看護史研究会(1983) 派出看護婦の歴史 勁草書房 東京

 

当時は裕福な人たちを中心に専門的な医療行為が行われていたようですね。

江戸時代というと今から約200年以上も前ということになります。

訪問看護の起源は思っていた以上に歴史が古くて驚きました。

そこから「看護」というものが徐々に広がっていくことになります。

 

看護師教育のはじまり

 

明治時代になると職業としての看護師教育が開始されます。

わが国ではじめて看護師教育が開始されたのは明治17年(1884年)、有志共立東京病院看護婦教育所(現、慈恵看護専門学校)が最初である。

2年後に京都看病婦学校と桜井女学校付属看護婦養成所ができ、そこで教育訓練を受けた看護婦たちが病院や患者宅へ赴き、看護を提供した。

参考)山田雅子. “訪問看護 これまでと, これから.” 聖路加看護学会誌 20.1 (2016): 3-9.

 

しかし、この時代の訪問看護は現在の訪問看護とは違うものだったようです。

文献には以下のエピソードが記されています。

当時外務大臣であった大隈重信が路上で襲われ足に大けがを負った事件について「当時日本第一級の臨床医が立会いのもと、自宅にて下肢切断の手術を行い、その際、教育を受けた看護婦は、手術の器械を出し、麻酔薬を投与し、その後3ヶ月間にわたり術後の回復に付き添った

引用)看護史研究会(1983) 派出看護婦の歴史 勁草書房 東京

 

この当時の看護は現在のような生活期中心のケアではなく、急性期に近い状態の人たちのケアも在宅で行っていたようです。

病院や診療所が少なかった時代だったため、このようなケースは多かったのかもしれません。

 

戦後の訪問看護

 

第二次世界大戦後になると地方の病院において訪問看護が独自の活動として広がっていきました。

しかし、この当時はまだ保険制度上の診療報酬の裏付けもなく、対象者と病院の間で交わされる契約による訪問で、その多くが交通費の実費程度をいただくものであり、病院サービスの一環と位置付けられたものであった。

参考)熊倉みつ子. “地域医療における訪問看護の役割 (< 特集> 地域医療).” Dokkyo journal of medical sciences 40.3 (2013): 241-247.

 

戦後から徐々に訪問看護の活動が広がりつつあったみたいですが、保険制度などがまだまだ整っておらず、診療報酬も不十分な状態が続きました。

そこから訪問看護に対して経済的な評価がされるのは戦後しばらく経ってからのことになります。

 

老人保健法の開始

 

訪問看護において転換期のひとつといえるのが、老人保健法」(1982年)が開始、同法改正(1992年)がされたことだといえるでしょう。

これにより以下のことが制度上で定められました。

・都道府県の指定を受け、医療機関から独立した訪問看護事業所が作れるようになった。

・65歳以上の高齢者を対象に訪問看護の診療報酬が定められた。

※具体的には週2回、1日1回を限度に「老人訪問看護基本療養費 4700円」、1ヶ月あたり「老人訪問看護管理療養費2400〜20000円」、「訪問看護情報提供療養費 1000円」を請求できる。

・利用者の自己負担は1回あたり250円と定められていた。

参考)山田雅子. “訪問看護 これまでと, これから.” 聖路加看護学会誌 20.1 (2016): 3-9.

 

このときはまだ「老人」訪問看護という名称でその名の通り、高齢者を対象としたサービスに限定されていました。

そこから2年後の1994年に健康保険法が改正され「老人」という文字が外れ、年齢制限のない訪問看護制度になりました。

年代が前後しますが1986年には精神訪問看護が制度化しています。

老人保健法が開始したあとから「訪問看護」が大きく発展していき、現在の訪問看護と近いかたちに変化していきました。

 

介護保険制度の誕生

 

もうひとつの大きな転換期といえるのが介護保険制度の施行(2000年)です。

これにより訪問看護は医療保険だけでなく介護保険の2つの制度を利用して利用できるサービスになりました。

そして、2014年には医療介護総合確保推進法が制定されました。

これにより「地域包括ケアシステム」の構築がすすめられ、より地域における医療の提供体制を整えていくことが求められるようになりました。

その中でこれから超高齢化社会に向かっていくこの国において訪問看護への期待や担う役割は今後益々大きくなっていくことは間違いないと思います。

 

最後に

 

今回は訪問看護の歴史について要点をまとめてみました。

今回の記事を書かせていただき、自分が働く業界の歴史について知ることができ、とても勉強になりました。

それと同時に先人たちが築いてきてくださった歴史をこれからも大切に繋いで行かなければいけないと身の引き締まる思いにもなりました。

歴史を知ることで何か気づきが得られると思いますので、最後まで読んでいただいたみなさんにも少しでもプラスになることがあると幸いです。

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ABOUT US
松村 佑貴理学療法士/ライター
理学療法士/総合病院で4年間勤務後、訪問看護ステーションに転職し現在勤務4年目/2年間エリアリーダーとして活動後、現在は仕事と育児の両立のため常勤スタッフとして勤務。/趣味は読書。Instagramで読んだ本の紹介してます!