訪問看護では自分で思うように動けない利用者さんは必ずいますね。
皆さんもよくご存じと思いますが、寝たきりの利用者さんなど、適切なポジショニングを行っていないことで色んなトラブルが発生しますよね。
ただ、ポジショニングの必要性は何となく分かるけど、どうやって家族に指導すればいいか分からない。
そんな悩みを持っている看護師さんもいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回は、寝たきり利用者さんに対して訪問看護師が指導できるポジショニングを理学療法士が解説したいと思います。
目次
ポジショニングとは
ポジショニングの定義は以下に示します。
- リハビリテーションにおけるポジショニングとは背臥位や座位で適切な姿勢を保持することをさす
- 動作困難な患者の褥瘡予防や褥瘡治療中のポジショニングは、背臥位や座位姿勢で自重による局所的な持続的圧迫を分散させながら適切な姿勢を保持することである
(引用:リハビリテーションビジュアルブック 第1版 Gakkenより)
文献によっては、看護分野とリハビリ分野でも以下のように分けているものもありました。
(引用:看護における「ポジショニング」の定義について─文献検討の結果から─.日本看護技術学会誌 Vol. 10, No. 1 )
上記の看護と理学療法でのポジショニング定義の違いは、色々な分野ごとの論文を見て、傾向としてまとめたものになります。
看護分野の定義や目的をみたところ、実際の理学療法分野でも当てはまると思います。
恐らく、看護分野でも理学療法の部分は当てはまるのではないかと思います。
私自身としては、ポジショニングで浮腫の改善など2次障害の予防に効果的な面が認識できると、非常にやりがいを感じます。
また、ポジショニングをしっかりすることで利用者さんはリラックスができ、筋緊張亢進が緩和されます。
緩和されることで、痛みの改善、関節拘縮の悪化や呼吸、嚥下状態も変化すると思います。
もちろん、褥瘡改善もありますね。
適切にポジショニングされていれば、一か所にかかる圧の分散やズレ力軽減などから、悪化予防につながります。
自分で安楽な姿勢を変えることが困難な方には、こういった2次的な問題が色々派生してきます。
寝たきりの利用者さんは、関節拘縮や褥瘡など2次障害をすでに抱えている方もいると思います。
寝たきりで重度な要介護レベルの方でもポジショニングにより、2次障害を改善することできるので、ポジショニングの重要性を再度しっかり覚えましょう!
寝たきり利用者に対して訪問看護師が指導できるポジショニングのポイントを解説!
ポジショニングの手順と重要な点について、説明していきたいと思います。
まずはポジショニングのポイントを以下に示します。
- 姿勢アライメント※の確認
- 重さの確認
- 問題を把握し、ポジショニングを行う
- 現在のポジショニングは良かったか再確認
(参考:快適な姿勢をサポートするポジショニング実践コンパクトガイドVol3. 株式会社ケープ)
これらのポイントをまずは把握して、家族さんなどに指導してみましょう!
①姿勢アライメントの確認
まずはどういう姿勢のアライメントになっているか確認します。
正面や側面、または頭上など色んな方向から姿勢の確認をします。
例えば、仰臥位であれば体幹と骨盤が違う方向に回旋していないかなどを見ます。
理学療法士は姿勢を見る癖がついており、骨などをポイントに確認します。
肩の一番先端になる肩峰や骨盤の上前腸骨棘などの目立つ骨をざっくりでもいいので、目印にして左右の違い見ると分かると思います。
必ずしも、左右対称になっている人は少ないですが、筋緊張など体の状態を確認し、ねじれや傾きがないようにしてみましょう。
(図 引用:明日から役立つ ポジショニング実践ハンドブック P11 )
➁重さの確認
骨がしっかり飛び出ている身体部位に圧がかかると褥瘡になりやすくなりますね。
そして、姿勢は左右非対称になっており、仰臥位の場合姿勢でも左右同じ骨部位は寝ているときのかかる重さは違います。
そのため、重さがかかっていそうな部位に、実際に手を入れ確かめます。
確認する際は持ち上げようとせずに、支えるようにして確認するようにしましょう。
仰臥位で重さのかかりそうな部位は以下になります。
- 後頭部
- 肩甲骨などの胸背部
- 仙骨部
- 踵
また、筋緊張亢進や関節拘縮も重さの軽減が必要になります。
筋緊張亢進や関節拘縮には、身体の一部をしっかり支えることが必要です。
例えば、股関節や膝の屈曲拘縮のある方で、仰臥位で大腿部をしっかり支え、股関節周囲や大腿部の過剰な筋緊張を緩和します。
支える部位は重さを受ける場所にあたります。
骨だけでなく大腿部などの重さを確認し、安楽な姿勢がとれるよう身体の評価を行うことが重要になります。
③問題点を把握し、ポジショニングを行う
下肢の関節拘縮に対してポジショニングを決め、大腿部にクッションをセットしたとします。
しかし、そればかり気にしていると仰臥位でギャッジアップを行い、仙骨部の褥瘡は大丈夫でしょうか?
褥瘡は圧やずれ力などにもよって悪化しやすいため、当然ギャッジアップで仙骨部など臀部周囲にある骨周囲への負担は大きくなりますね。
下肢の屈曲拘縮ばかり気にしていると、褥瘡の悪化の恐れが増加します。
このように、問題点は一つではないので、全体を見ながらポジショニングを行いましょう。
④現在のポジショニングは良かったか再確認
せっかくポジショニングを行っても、そのポジショニングが正しかったか確認しないといけません。
「新たに問題が出てきていないか」しっかり評価することも重要です。
例えば、部屋の環境面で新たに問題が派生することもあります。
部屋のテレビ位置によって、関節拘縮が進んだり、姿勢アライメントが変化してしまうことがあります。
テレビ好きでいつも同じ格好で見ていると、頭頚部など動きが固定されてしまいますね。
何かしらの視覚情報や聴覚情報があることでそちらへ注意が向き、頭頚部と身体のアライメントにねじれが生じてしまいます。
今ある問題点だけでなく、今後も起こりそうな問題も考えポジショニングをしましょう。
また、現在のポジショニングに対して他職種や家族からの情報も大事ですよね。
更衣介助など行いやすくなったかなど、他者からの話もしっかり聞いてみましょう。
まとめ
ポジショニングのポイントは理解できたでしょうか?
今回はポジショニングのポイントをもとに看護師さんが指導できるよう解説いたしました。
もちろん、ポジショニングの対象は寝たきりの方だけではありません。
食事姿勢など座位でのポジショニングも必要な方はいます。
それぞれ、目的に応じてポジショニングを考えることが重要です。
また、色んな方が利用者一人に関わるために、共有をすることも大切ですね。
これらは簡単なようで難しいとは思いますが、セラピストも看護師さんもしっかりとみんなで利用者さんや家族を支えられればと思います。