フィジカルアセスメント症状編 〜胸痛②〜

Ns辻本

前回に続き胸痛のフィジカルアセスメントについて解説します。

よくある症状へのアプローチを知ることで、緊急対応につなげることができるようにしましょう。

 

問診による鑑別の例 胸痛

 

前回のおさらい
  • 患者の急変に気が付くためには、「何か変」をスルーしない
  • 仮説を立てて、検証していく
  • 鑑別診断を意識しながら、アプローチしていく
  • あくまで「診断」がゴールではなく、看護につなげる

 

Ns辻本

前回の事例から、どんな疾患を考え、どんなアプローチを行うか考えていきましょう

 

緊急性を判断

 

 

急変を見つける時は、どんな人でも共通で、下記のことを行います。

 

バイタルサインを測定し、ABCD評価を行い、緊急性を判断。

ショック状態、呼吸停止や心停止、意識消失があれば、緊急コールを行う。

 

事例では、ショック状態にはなく、猶予がある状態です。

このような時は問診を行います。

 

問診

 

 

問診を行うことで、状態や疾患をある程度特定することができます。

 

 

胸痛がの訴えがあった時、心臓に原因があるのか、肺・胸膜、縦隔の中の疾患なのか、消化器であっても胸痛という表現をすることもありますし、精神疾患の方で「胸が苦しい」、「胸が痛い」と訴える方もいます。また、神経、骨格筋が障害されることで胸痛を訴える方もいます。

 

突然の発症なのか、どのような痛みなのか、激しい痛みか鈍い痛みなのか、胸全体なのか局所的なのか、運動負荷で増強するのか、呼吸に伴って増強するのか、随伴症状(呼吸苦)があるのかを考えることで、疾患を推測できます。

 

Ns辻本

全てを覚えておくことは難しいと思うので、メモを持っておくと良いでしょう!

 

killer chest pain

 

Ns辻本

疾患をイメージできるように、臨床でありそうなkiller chest painを3つ解説します。

 

 

重症になるのは

  • さける
  • つまる
  • やぶれる
  • ねじれる

という状態です。

 

  • 大動脈解離=さける、やぶれる
  • 肺塞栓=つまる
  • 急性冠症候群(狭心症や心筋梗塞の総称)=つまる

という状態になっています。

 

大動脈解離

 

病態

 

大動脈は、内膜、中膜、外膜の3層構造になっています。

大動脈解離は、中膜に亀裂が入り、真腔と偽腔の二腔となることで様々な症状を呈します。

偽腔に血液が流れることで、真腔に血液が流れなくなるので栄養を送れず臓器障害になったり、出血性のショックに陥ることがあり、見逃せば致死的であると言われています(2週間以内の死亡率は7〜8割)。

 

大動脈解離にはA型とB型の2種類があるのですが、何が違うかというと、

  • 上行大動脈に解離がある場合をA型
  • 下行大動脈に解離がある場合をB型

と呼んでいます。

どちらが緊急性が高いかというと、A型になります。

上行大動脈は心臓に栄養を送る血管があるため心筋梗塞になったり、脳にも血液を送っているため脳虚血を起こす可能性があります。

急激に進行した場合は、一気に症状が進むので緊急性がかなり高いです。

B型は、破れていたら準緊急性の手術になりますが、血栓ができて固まっている状態であれば保存療法で血圧を上げないよう降圧薬を投与します。

 

問診、身体所見、対応

 

Ns辻本

問診では、「突然の発症」か「移動する痛み」か「引き裂かれるような痛み」かを確認します。

 

「移動する痛み」は、上行大動脈の裂ける位置が上から下へと進むことで、胸から腰、背中、腹部へと移動する痛みのことです。裂ける範囲が広いほど、広範囲の臓器障害が起こります。痛みは「引き裂かれるような」激痛と言われています。

また、遺伝性があるため「家族歴」を聞いたり、糖尿病や生活習慣病、高血圧、喫煙歴などの「血管リスク」を確認します。

 

Ns辻本

身体所見では、血圧や心音、心不全兆候や麻痺、嗄声などを観察します。

 

大動脈解離では、裂けている位置を推測するため、上肢の左右差下肢の左右差がないか確認するため血圧を測定します。

心音が減弱している時は、心タンポナーデ(心臓の周りに血液がたまり、心臓が圧迫されることにより拍出ができなくなる状態)が考えられます。

拡張期の雑音がある時は、大動脈弁の逆流が考えられます。

心不全兆候脳虚血による片麻痺がないか観察をします。

嗄声も特徴的な症状です。弓部あたりの血管に瘤ができることで、反回神経が圧迫され、声帯が麻痺することで生じます。

脊椎動脈の虚血により、両下肢の麻痺が起こります。

 

Ns辻本

対応としては、心電図やモニター装着(心筋梗塞がないか)、レントゲンやCT(解離の有無、位置)、心エコー(心タンポナーデがないか)、採血(Dダイマー:血栓ができているか)等の検査から緊急オペか保存療法か検討しつつ、降圧薬を投与し安静にします。

 

 

肺塞栓

 

病態

 

Virchrowの3徴(血流のうっ滞、血管内皮障害、凝固能の亢進)により、血栓が深部静脈(DVT)に形成され、肺動脈に塞栓をきたします。

 

問診、身体所見、対応

 

肺動脈に血栓が急に詰まることで、突然の呼吸困難や頻呼吸、胸痛が起こります。

失神が起こる際は、血液が途絶え心配停止により生じている可能性があるので危険です。

起立時や運動時に発症していないか問診で確認します。

右心不全症状(下肢の浮腫や経静脈の怒張など)、ホーマンズ徴候(足の関節を背屈した際の腓腹筋の痛み)の観察も行います。

対応は、12誘導心電図、心エコー、採血(Dダイマー)、低酸素に対して酸素療法、右室不全管理として輸液や昇圧剤の投与、心肺停止した際は補助循環、血栓溶解療法を行います。

 

 

急性冠症候群:狭心症、心筋梗塞

 

病態

 

 

狭心症は、心臓へ栄養を送る血管がスパスム(血管が痙攣を起こした状態)となることで、血管が細くなり虚血になる状態です。

心筋梗塞は、血管内が完全に詰まり心筋が壊死を起こした状態です。こちらのほうが重症度は高いです。

 

問診、身体所見、対応

 

症状は、胸痛や心不全症状等があります。

胸痛の問診では、突然発症なのか、灼熱感(燃えるように痛いのか)圧迫感だけなのか、放散痛(疼痛物質が周囲に広がることで肩こり、歯の痛み等)の有無を確認します。

糖尿病の人は注意が必要です。痛みを感じにくいため、無症候性の心筋梗塞である場合があります。その際は、随伴症状(呼吸困難等)を注意して観察します。

狭心症と心筋梗塞の鑑別方法は、胸痛が20分以上続いていれば心筋梗塞となります。

身体所見としては、高血圧か、低血圧(心原性ショックによる)、血圧の左右差(大動脈解離の判別)、不整脈(頻脈、徐脈)、呼吸数増加、SpO2低下(心不全)を観察します。

対応は、十二誘導心電図(ST変化)、心電図モニター、心筋障害マーカー(CK –MB、トロポニンなど)、MONA(塩酸モルヒネ、酸素、硝酸薬:ニトログリセリン、アスピリン)の考慮を行います。

心筋梗塞の場合、カテーテル治療を行います。プラーク(脂肪の塊)がある場合は、カテーテルを挿入し患部に風船を膨らませることでプラークが溶け、再発を防止するためステントを留置します。病院到着後、早ければ早いほど有効と言われ、90分以内のカテーテル治療が有効です。

 

 

まとめ

 

では、今回の講義のまとめです。

 

まとめ
  • 患者の急変に気が付くためには、「何か変」をスルーしない
  • 仮説を立てて、検証していく
  • 鑑別診断を意識しながら、アプローチしていく
    胸痛(killer chest pain)を見逃さない(つまる、やぶれる、さける、ねじれる)
  • あくまで「診断」がゴールではなく、看護につなげる

 

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ABOUT US
菅野貴文看護師/ライター
看護師/産業カウンセラー/大学で心理学学士取得後、看護師に。総合病院、訪問看護ステーションを経て精神科専門訪問看護ステーションに勤務。同じく看護師の同性パートナーと切磋琢磨しながら、理想の看護師になれるよう日々精進している。