前回は前後編に渡って職員に働き続けてもらうための管理「リテンションマネジメント」のポイントについてご説明しました。
人材はどの事業においても非常に価値のあるもので、特に訪問看護業界では最重要事項のひとつですよね。
今回はリテンションマネジメントとは異なる角度から職員の会社への帰属意識を捉える考え方の記事です。

- 会社の事を好きで大切に思ってほしい。
- のびのび素敵に長く働いて、貢献してもらいたい。
このようなことを望まれているのではないでしょうか。
今回はそんな風に働いてもらうためのヒント、職員の会社に対する気持ちを理論的に捉えた、「組織コミットメント」についてお話していきます。

目次
組織コミットメント
コミットメント(commitment)には「委託する」「約束する」「引き受ける」「責任をもつ」などという意味があります。
そして、組織コミットメントは組織に所属する個人の組織に対する帰属意識などのことを言います。
組織に居ることで得られるメリットや、組織に属していることにより、持つことができる安心感などのプラスの感情が存在しています。
経営者は、職員の組織コミットメントを向上させ、会社への帰属意識を高め、成果を出してもらいたいですよね。

まずは、組織コミットメントを構成する3分類についてご説明していきましょう。
組織コミットメントの3分類
組織コミットメントは以下の3種類に分類されています。
情緒的コミットメント (want to)
組織や組織内のメンバーに対する感情的な愛着。組織に対する同一化、一体感。
会社の目指すビジョンや方向性が明確で、職員目線で共感できるということが重要です。
そして、何を大切にして働いてくかが明確であると、情緒的コミットメントは高まるといわれています。
例えばこんな気持ちが情緒的コミットメントです。

規範的コミットメント (ought to)
組織に居続けることへの義務感、忠誠心、恩義。
その会社の給与、福利厚生はもちろん、子育てや介護への支援で得られることに恩義を感じることで、組織への帰属意識が高まります。
自宅から通勤が便利、異動がないことなどの条件もあげられるかもしれません。
例えばこんな気持ちが規範的コミットメントです。

存続的コミットメント (need to)
組織を去ることによって失うデメリット、組織に居続けることのメリット。
同僚、上司などとのつながりを大切にしている、または感謝になどがこれに当たります。
小規模な事業所では、社長とのつながりを深く感じることも多く、関係性が深い場合も多いのではないでしょうか。
例えばこんな気持ちが存続的コミットメントです。

この3種類のコミットメントが、会社への帰属意識を高め、長期の雇用や、退職抑制につながっているのです。
コミットメントとモチベーションの違い
モチベーションは、人間行動を欲求と報酬で説明しようとするのですが、私たちは必ずしもそのような欲求充足だけのために行動しているわけではありません。
人は常に組織の中でモチベーションを高く持って働いているわけではなく、その他にも細かく、自分を取り巻く様々な環境の要素を考慮しながら日々を過ごしているのです。
その流れから、コミットメントはモチベーションで測りきれない、私たちが組織で働き続ける理由を説明する概念として注目されています。
組織コミットメントが高いと何が起こるのか
組織コミットメントを高めることで、離職率の低下や欠勤率を下げる、業務のパフォーマンスが向上するなどの効果が期待できます。
帰属意識が高く組織コミットメントが高い職員のサービス残業が非常に多いという研究もあり、組織の事を職員個人が考え、会社のために貢献しようという思いが強まるということがいえるでしょう。

訪問看護ステーションで組織コミットメントを高めるための3つのヒント
①会社の目指すビジョンは分かりやすく、共感できるものに
経営陣と現場との考え方の方向性が全く別のベクトルを向いてしまっていては、会社への不信感が増すばかりで、コミットメントは当然下がってしまいます。
「売り上げを上げる」それは経営上非常に重要な事。
しかし、それを前面に押し出してしまうようなことがあれば、志の高い専門職である看護師やセラピストからは、不満の声が出てしまうことも少なくありません。
経営者としてのビジョンをもちろん大切にしつつも、看護師やセラピストの求める「訪問看護の在り方」を重視したビジョンを掲げるようにしていきましょう。
目標を職員と共に考えるなどと言う取り組みもよいでしょう。
自分たちで掲げた目標はひときわ大切なものとなり、同じ方向を向いて職員が一丸となる大きな助けになります。
常に新鮮に業務に向き合ってもらうために目標は年間単位のみでなく、月間など細かいスパンで、見かけだけ、形式だけのものではなく、具体的に、かつ実践可能な行動目標を常に立て続けていくことも大切なポイントです。
②職員の待遇向上は回収可能な先行投資と考える
規範的コミットメント考え方から、会社の職員への待遇が重要であることが見えてきます。
給与面や福利厚生、急なトラブルへの対応、育児・介護への支援、そして今の時代でいうと、複業を認める、応援することなどが、これに当たるかと思います。
『こんなことさせてくれる会社、他にないだろうなあ』
と思ってもらうことで、組織コミットメントが非常に上がります。
退職を抑制できれば人員確保のための求人活動が節約できますから、必ず人件費や時間の削減に繋がります。
例えば、産休や育休だけでなく有給休暇や長期連休をもっと取りやすくしたり、ちょっとした予定のために半日休暇などを取りやすくする、新しく手当を設ける、といった柔軟な対応を取ることも非常に有効的です。
個々の職員のニーズに対応できるような形が可能な限り叶えば、本当に職員は辞めていきませんし、会社に貢献しようとそれぞれ自立して頑張ってくれるようになります。
そんな対応が取りやすいような訪問の組み方や人員配置をあらかじめしておくことで、職員の精神的負担も軽減できます。
組織コミットメントを向上させるために、このような具体的な待遇を良くしておくことは大変重要といえるでしょう。
③経営者・上司・同僚との信頼関係の構築
自分の上司が部下をよく理解し、守ってくれる会社は本当に貴重。
ずっと働き続けたい、ついていきたい!と思わせてくれます。
また、共に働きたい仲間の存在は何ものにも代えがたい大切なもの。
利用者さんのことを真剣に考えている看護師やセラピスト。
同じ目線でひとつのことを共に考えられる相手がいる、悩みがあるときもフォローしあい、支え合えるかどうかで、仕事だけでなくプライベートでも救われたりしませんか?
医療職は常日頃から様々なことにアンテナを張っていて感受性の高い人も多く、人間関係には敏感です。
まずは経営者や上司から、職員を理解しようと声をかけて、お互いを知り、よい関係を作っていきましょう。
そこからまた改善すべき課題の抽出もできると考えられます。
毎日ストレスがなく出勤ができる、職場で上司や同僚に会う・話すのが楽しみになる。
そんな会社は帰属意識が非常に強く、組織コミットメントが確実に高い会社でしょう。

いかがでしたでしょうか?
上記をヒントに各々の事業所に合うようにアップデートしていただき、組織コミットメントを高めて、みなさんの訪問看護ステーションの人材の安定と、よりよい運営に役立てていただきたいと思います。
記事を読んでいただきありがとうございました。

























