精神科訪問看護と自立支援医療(精神通院医療)制度を解説

「精神科の利用者さんが『自立支援医療の受給者証を持っている』と言うけれど、訪問看護でどう関わればいいのか分からない」「レセプトに何を書けばいいのか、上限額の管理はどうすればいいのか自信がない」——精神科訪問看護に携わる中で、こうした戸惑いを感じたことはないでしょうか。

自立支援医療(精神通院医療)は、利用者さんの経済的負担を軽減する重要な公費負担医療制度であり、精神科訪問看護と密接に関わっています。この記事では、制度の基本的な仕組みから、訪問看護ステーションが指定医療機関になる方法、レセプト作成時の注意点まで、現場で押さえておきたいポイントを整理して解説します。

この記事でわかること
  • 自立支援医療(精神通院医療)制度の基本的な仕組みと対象者
  • 自己負担割合・所得区分別の負担上限額
  • 訪問看護ステーションが指定自立支援医療機関になる方法と更新手続き
  • レセプト作成時に気をつけたいポイント

自立支援医療制度とは?

自立支援医療制度は、障害者総合支援法に基づき、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担を軽減する公費負担医療制度です。対象は次の3種類に分かれます。

  • 精神通院医療:統合失調症・うつ病などの精神疾患により、継続的な通院治療が必要な方
  • 更生医療:身体障害者手帳を持つ18歳以上の方で、治療により障害の軽減が見込める方
  • 育成医療:身体に障害のある18歳未満の児童で、治療効果が見込まれる方

精神科訪問看護に関わる場面で登場するのは、このうち精神通院医療です。統合失調症・うつ病・双極性障害などにより、通院による治療を続けている方が対象となり、外来診療だけでなく、精神科訪問看護も対象医療に含まれます。

看護師 上妻
看護師 上妻

精神科訪問看護の利用者さんの多くが、この自立支援医療(精神通院医療)の受給者証を持っています。初回訪問の際は、まず受給者証の有無と有効期限を確認する習慣をつけておきたいですね。

自己負担の仕組みと負担上限額

自立支援医療の大きな特徴は、医療保険の自己負担(原則3割等)を、公費で軽減できる点です。精神通院医療の対象となる医療を利用した場合、自己負担割合は原則1割となり、さらに世帯の収入に応じて月額の負担上限額が設定されます。

所得区分世帯の状況(目安)負担上限月額
生活保護生活保護受給世帯0円
低所得1区市町村民税非課税・本人(保護者)の収入が年80万円台以下2,500円
低所得2区市町村民税非課税・上記を超える収入5,000円
中間所得層区市町村民税課税・所得割が一定額未満医療保険の自己負担限度額
一定所得以上区市町村民税課税・所得割が一定額以上原則、公費負担の対象外

なお、統合失調症等で継続的な治療が必要な「重度かつ継続」に該当する場合は、一定所得以上の方であっても、経過的な特例として上限額が設定される措置が続いています。具体的な金額や区分は制度改正により変わることがあるため、最新の情報は自治体窓口または厚生労働省の公式情報でご確認ください。

注意

負担上限額は「世帯」の収入で判定されますが、この「世帯」の範囲(医療保険上の被保険者と被扶養者の関係を基本とする等)は個別の状況によって解釈が分かれる場合があります。利用者さんから相談があった場合は、断定的に答えず、自治体の担当窓口への確認を案内するのが安全です。

「重度かつ継続」と精神障害者保健福祉手帳との関係

自立支援医療(精神通院医療)では、一定の疾病や状態にある方を「重度かつ継続」として区分し、一定所得以上の方であっても、経過的な特例として負担上限額を設ける措置が続いています。統合失調症等で継続的な治療を要する場合や、精神医療における「重度かつ継続」の対象となる状態にある場合が該当しますが、具体的な適用範囲は制度改正の対象になりやすいため、判断に迷う場合は自治体窓口での確認を案内するのが確実です。

また、精神障害者保健福祉手帳を持っている利用者さんの場合、自立支援医療の新規申請時に診断書の提出が省略できる場合があります。手帳と自立支援医療受給者証は別の制度・別の書類ですが、いずれも精神科訪問看護の利用者さんに関わる場面が多いため、両方の有無と有効期限をセットで確認しておくと、申請・更新のタイミングを見落としにくくなります。

精神科訪問看護と自立支援医療の関係を整理する

精神科訪問看護そのものは、原則として医療保険(精神科訪問看護指示書に基づく)で提供されるサービスです。自立支援医療(精神通院医療)は、この医療保険の自己負担部分をさらに軽減するための公費負担医療という位置づけになります。つまり「精神科訪問看護を利用するために自立支援医療の受給者証が必須」というわけではなく、「精神科訪問看護の自己負担を軽減するために自立支援医療を活用できる」という関係です。

このため、利用者さんが自立支援医療の受給者証を持っていない場合でも精神科訪問看護自体は利用できますが、経済的な負担が大きくなっている利用者さんに対しては、自立支援医療の申請を案内することが、ケアマネジャーや医師との連携の中で有効な支援になることがあります。

訪問看護ステーションが指定自立支援医療機関になるには

訪問看護ステーションが自立支援医療(精神通院医療)の対象医療機関として費用を請求するには、都道府県知事等から「指定自立支援医療機関」の指定を受ける必要があります。指定を受けていない訪問看護ステーションは、この制度の対象として費用を請求することができません。

指定を受けた後も、指定には期限があります。指定自立支援医療機関の指定期間は6年間で、6年ごとに更新の手続きを受けなければ、期間の経過によって指定の効力を失います。更新申請には、医療機関区分(病院・診療所、薬局、訪問看護ステーション等)に応じた様式のほか、自己点検票の提出が求められます(直近に実地指導を受けている場合等は取扱いが異なる場合があります)。更新申請は、指定の有効期間満了前の一定期間内に、所定の期限(自治体により運用が異なりますが、月ごとの締切を設けているケースが多くみられます)までに提出する必要があるため、更新期限の管理を徹底しましょう。

POINT

指定自立支援医療機関の指定更新は、通常の訪問看護ステーションの指定(介護保険・医療保険上の指定)とは別の手続きです。両方の指定管理を別々にカレンダーで把握しておくと、更新漏れを防ぎやすくなります。

利用者さん側の申請の手順

利用者さんが自立支援医療(精神通院医療)を利用するには、お住まいの市区町村の担当窓口への申請が必要です。訪問看護師として、申請の流れを理解しておくと、利用者さんやご家族からの相談にも対応しやすくなります。

  1. 申請書類の準備申請書、医師の診断書(指定医療機関の医師によるもの)、健康保険証の写し、世帯の収入を確認できる書類等を準備する。精神障害者保健福祉手帳を持っている場合、診断書の提出が省略できる場合がある。
  2. 市区町村窓口への申請お住まいの市区町村の担当窓口(障害福祉担当課等)に申請書類を提出する。
  3. 審査・支給認定都道府県・指定都市等により、対象医療の要否や負担上限額の判定が行われる。
  4. 受給者証の交付支給が認定されると、自立支援医療受給者証が交付される。
  5. 継続手続き受給者証には有効期間があり、継続して利用する場合は1年ごとの更新手続きが必要。診断書は原則2年に1回の提出となる(毎年提出が不要な運用)。

レセプト作成時に気をつけたいポイント

自立支援医療の対象となる利用者さんの訪問看護費用を請求する際は、通常の医療保険レセプトとは別に、公費負担医療としての請求処理が必要になります。

  • 受給者証に記載された公費負担者番号・受給者番号を正確に記載する(精神通院医療の公費負担者番号は「21」から始まる)
  • 利用者さんへの請求額は、原則1割の自己負担額のうち、その月の負担上限額に達するまでの範囲にとどめる
  • 同じ月に複数の医療機関(病院・薬局・訪問看護ステーション等)を利用している場合、上限額管理は「自己負担上限額管理票」を用いて、利用者さんまたは家族と共有しながら確認する
  • 受給者証の有効期限が切れていないか、訪問のたびに確認する
看護師 上妻
看護師 上妻

月をまたぐタイミングで負担上限額に達しているかどうかを見落とすと、利用者さんへの請求額を誤ってしまうことがあります。管理票の記入を利用者さん任せにせず、訪問時にこちらからも一声かけて確認する習慣をつけると安心です。

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よくある質問

自立支援医療(精神通院医療)の自己負担割合はどのくらいですか?

原則1割です。医療保険の自己負担(3割等)と比べて軽減される仕組みになっています。さらに世帯の収入に応じて、月ごとの負担上限額が設定されます。

訪問看護ステーションが自立支援医療の対象になるにはどうすればよいですか?

都道府県知事等から「指定自立支援医療機関」の指定を受ける必要があります。指定を受けていない訪問看護ステーションは、この制度の対象として費用を請求できません。指定後も6年ごとの更新手続きが必要です。

指定自立支援医療機関の指定はどのくらいの期間有効ですか?

指定の有効期間は6年間です。6年ごとに更新の手続きを受けなければ、期間の経過によって指定の効力を失います。更新申請には自己点検票の提出等が求められます。

利用者さんの受給者証の更新はどのくらいの頻度で必要ですか?

継続して利用する場合、受給者証は1年ごとの更新手続きが必要です。診断書については原則2年に1回の提出となっており、毎年の提出が求められるわけではありません。

レセプト作成で特に注意すべき点は何ですか?

受給者証に記載された公費負担者番号・受給者番号を正確に記載すること、利用者さんへの請求額をその月の負担上限額に達するまでの範囲にとどめること、複数の医療機関を利用している場合は自己負担上限額管理票で上限額の到達状況を確認することが大切です。

出典・参考(公的機関)

負担上限額の所得区分や特例措置は制度改正により変更されることがあります。実際の適用にあたっては、お住まいの自治体の担当窓口または厚生労働省の最新の公式情報をご確認ください。

まとめ|自立支援医療の仕組みを理解し、適切な連携を

自立支援医療(精神通院医療)は、精神科訪問看護を利用する多くの方にとって、経済的な負担を軽減する重要な制度です。訪問看護師としては、制度の基本的な仕組みを理解したうえで、利用者さんの受給者証の管理や、事業所としての指定・更新手続きを適切に行うことが求められます。

この記事のまとめ
  • 精神通院医療は自己負担原則1割、世帯の収入に応じた負担上限額が設定される
  • 訪問看護ステーションは「指定自立支援医療機関」の指定を受ける必要があり、6年ごとの更新が必須
  • 利用者さんの受給者証は1年ごとの更新、診断書は原則2年に1回の提出
  • レセプトでは公費負担者番号の記載・上限額管理を正確に行うことが重要

制度の正しい理解が、利用者さんへの安心できる説明と、事業所の適切な運営の両方を支えます。

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ABOUT US
上妻 裕弥看護師/MBA取得
株式会社ビジケア代表取締役/看護師・MBA取得。これまで200社以上の訪問看護事業所へ経営コンサルティング・BPOサービスを実施。経営者・管理者のサロン等も含めると500社を超える。単月黒字化から複数拠点展開、事業承継まで支援し、看護師の視点で「続く経営」をつくる。別法人にて自身でも全国に訪問看護ステーション展開している。