病院での看護方式は、チームナーシングやプライマリーナーシング、モジュール型看護方式、機能別看護方式などがあります。
最近ではパートナーシップ・ナーシングシステムが導入される病院が増えました!
訪問看護では、受け持ち制とチーム制を取り入れている事業所が多いようです。
今回は、訪問看護の受け持ち制について、メリットとデメリットを解説します。
看護方式の変更を検討している訪問看護従事者の方や、これから訪問看護ステーションに就職を考えている看護師さんはぜひ参考にしてください!
目次
訪問看護の受け持ち制とは?
筆者も経験のある、訪問看護の受け持ち制。
実際にはどのように運用されているのでしょうか?
受け持ち制の訪問看護では、訪問看護計画書の立案を行い、定期訪問の状況で必要な看護をアセスメントします。
訪問看護計画書の評価、修正まで一連の流れとして受け持ち看護師が担当します。
プライマリーナーシングに似た流れですので、病棟でプライマリーナーシングを経験された方は想像しやすいと思います。
訪問看護の受け持ち制のメリット
では、受け持ち制の訪問看護にはどのようなメリットがあるのでしょう。
受け持ち制の訪問看護では、以下のようなメリットが挙げられます。
- 一貫した関わりを提供できる
- 利用者さんの安心感を得られやすい
- やりがいや達成感が感じられる
- 得意分野を活かした訪問看護ができる
一つずつ詳しく解説していきます。
一貫した関わりを提供できる
訪問看護は数ヶ月、数年の関わりになることがあり、訪問開始から長期間に渡り看護を提供することがあります。
受け持ち制の訪問看護では、利用者さんと一対一の関係となります。
そのため、繰り返し利用者さんと顔を合わせることで信頼関係を築きやすく、希望を聴取し、一貫した関わりをすることができます。
また、ケアの内容も把握して訪問するため、効率の良いサービスを提供することができます。
毎回違う看護師さんが訪問することで、利用者さんは「何度も同じ説明をしなければならない」というストレスを抱えてしまうことがあります。
受け持ち制の場合には、利用者さんが求めるケアの方法を人の手を変えずに提供できるため、個別性に則した満足度の高いケアになることが多いです。
利用者さんの安心感を得られやすい
厚生労働省の調査によると、利用者が訪問看護に求めることの中で「いつも決まった看護師が対応してくれる」という項目が上位に入ります。
多くの利用者さんから、受け持ち制の訪問看護の希望があることがわかります。
「いつもの看護師さん」が訪問することで、安心感を得られやすいことがメリットの一つです。
特に治療方針の変更や病状の悪化などにより揺れ動く利用者さんの想いを聴取する際には、普段から顔馴染みの看護師さんの方が気持ちを表出しやすくなる傾向にあります。
もちろんどの看護師さんが訪問しても同じように関わることができるのが理想ではあります。
しかし、利用者さんからの信頼を得るためには回数を重ねて向き合うことも重要です。
受け持ち制を採用している場合には、利用者さんの精神面の支えにもなることができるため心身ともに支援することができるメリットがあります。
やりがいや達成感が感じられる
訪問看護では、看取りの場面に出会うことも多くあります。
「住み慣れた自分の家で最期まで過ごしたい」と望む利用者さんに安楽な生活を提供することで、利用者さんやご家族への満足感を与えるだけでなく看護師としてのやりがいを大いに感じることができます。
看取りの場面だけでなく、疾患を抱えた利用者さんが在宅でも安心して心地よく安全に生活している姿を拝見すると、看護師としての力を発揮できていることを実感できます。
受け持ち制ではその一連の流れを1人の看護師が主体的に展開することができるため、自身がコーディネートした看護により利用者さんの生活が向上することで大きな達成感を得ることができます。
得意分野を活かした訪問看護ができる
利用者さんは年齢や疾患によって必要とする看護が異なります。
受け持ち制の訪問看護では、自分の得意な分野に該当する利用者さんを優先して受け持つことができます。
例えば、精神科の経験がある看護師さんは精神疾患を抱える利用者さんを受け持つ、緩和ケアを得意とする看護師さんは終末期の利用者さんを受け持つ、など自分が力を十分に発揮できる分野で活躍することが可能です。
自身の得意分野を活かすことで、利用者さんにとってより専門性の高い看護を提供することができるのです。
訪問看護の受け持ち制のデメリットとカバーする方法
では、受け持ち制の訪問看護のデメリットとはどのようなものがあるでしょうか。
受け持ち制の訪問看護は以下のようなデメリットが挙げられます。
- 重症度の高い利用者さんが偏ることがある
- 看護師により提供する看護の質に差が出る可能性がある
- 休みが取りにくく感じる
- オンコール時の対応が把握しにくい
一つずつ詳しく解説するとともに、デメリットを解決する方法についても詳しく説明していきます。
重症度の高い利用者さんが偏ることがある
受け持ち制の訪問看護を行っていくと、一定の看護師に重症度の高い利用者さんが偏り職員間の受け持ち利用者の重症度に差が出てくることがあります。
一定の看護師への業務負担の偏りが生じることで、不公平感を感じることがあります。
利用者さんにはあらかじめ、受け持ち看護師は状況により変更になる場合があることを説明しておくことをお勧めします。
看護師により提供する看護の質に差が出る可能性がある
受け持ちをする看護師の経験値により、利用者さんに提供する看護の質に差が出る可能性があります。
また、訪問看護に入職したばかりの看護師さんの場合、問題やトラブルが生じた際の対応の引き出しが少なく、自信をなくしてしまう可能性があります。
特に訪問看護経験の少ない看護師が利用者さんを受け持ちする際には、管理者や先輩看護師が積極的に声をかけるよう配慮することで看護の質を保ちましょう。
休みを取りにくく感じる
勤務する曜日に合わせて受け持ちの利用者さんのスケジュールを組んでいくと、自分が休むことで他の職員に代行してもらう必要があります。
その結果、他の職員への負担を申し訳なく思い、休みを取りにくく感じることがあります。
受け持ち制でも、新規利用や状態変化があった際には同行訪問や代行訪問をスケジュールに組み込むことで、担当者が休みでも他の職員が訪問することができます。
担当したら担当者だけが訪問するのではなく、他の看護師でも代行できる形作りをしておくことで安心して休みを取ることができます。
1人の担当者を設定するのではなく、サブ担当をつけることで休みを取りやすくする方法もおすすめです。
オンコール時の対応が把握しにくい
受け持ち制の訪問看護では、利用者さんの状態変化について、訪問を担当していない他の職員に伝わりにくいことがあります。
特にオンコールを担当する際には、24時間対応を希望している全ての利用者さんから電話相談や緊急対応を求められるため、他の職員の担当する利用者さんの情報収集が必要です。
実際に顔を合わせて状態を確認しているとオンコールの際には対応がスムーズになりますが、受け持ち制の場合には一度もお会いしたことのない利用者さんからのオンコールがあると緊張するという看護師さんも多いです。
また、担当看護師は受け持ち利用者さんの情報や状態変化に伴う指示変更などを他の看護師に伝わるように情報発信していく必要があります。
情報発信が必要な場合のルールを明確化し、オンコールの際にも担当者以外の看護師がスムーズに動けるようにしましょう。
まとめ
今回は、訪問看護の受け持ち制についてメリット、デメリットを解説しました。
- 一貫した関わりを提供できる
- 利用者さんの安心感を得られやすい
- やりがいや達成感が感じられる
- 得意分野を活かした訪問看護ができる
- 重症度の高い利用者さんが偏ることがある
- 看護師により提供する看護の質に差が出る可能性がある
- 休みが取りにくく感じる
- オンコール時の対応が把握しにくい
受け持ち制は良し悪しがありますが、利用者さんからはとてもニーズのある看護方式です。
訪問看護ステーションで取り入れる場合には、デメリットをうまくカバーして運用していってくださいね。
ビジケアでは、訪問看護ステーションで働く中で「こんな時どうしているの?」「うまくいかない時にはどうしたらいい?」と言った相談にお答えしています。
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