訪問看護でのリハビリは、看護業務の一環で行うと定義されています。
つまり、看護師がリハビリを行なうこともありますが、基本的には、専門的知見が求められることが多いため、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(以下PT・OT・ST)によって、実施されます。
しかし、各資格者の全体的な実数が違うことから、PT・OT・STの3職種が揃っているステーションは少ないのが現状です。
そのため、PTが巧緻動作や嚥下動作のリハビリをしたり、OTが歩行練習をしたりと、病院とは違い領域を超えて、幅広くリハビリを実施しています。
つまり、少数の職場によっては、様々な知識を取り入れていかないと、利用者さんのニーズに合ったリハビリを行なうことはできません。
そこで今回は、訪問看護でのリハビリの内容を説明していきます。
目次
状態観察
まずは、入室時から利用者さんを診ることは始まります。
状況によっては、リハビリができる状態ではないこともあり、看護師との連携の下、訪問できるか確認する必要があります。
状態観察においては、以下の3点を軸に確認していきます。
訪問と訪問の間に起きたことや困ったことなど変化を聴取
・疼痛状況
・転倒の有無
・日常生活状況
・家庭内での状況
表情や反応・動作などを入室時から観察
その日の状態把握のためにも、以下のような細かな変化を確認します。
・顔色
・移動の状況
・移乗動作の状況
・睡眠や排便状況
・精神状態
前回のリハビリ後から、身体の変化はどうか
前回の訪問時に実施したリハビリ内容から、痛みや動作はどのように変化したのかを確認します。
状態が良くなっていれば、リハビリ内容的には方向性が正しく、続けて行なっていくか、ステップアップにつなげられます。
逆に筋肉痛や揉み返しのような症状が出ていれば、実施内容を再検討する必要があります。
バイタル測定
バイタル測定は、看護師のみならず、リハビリ職でも実施します。
訪問に来る前に病院では、あまり気にしていなかった聴診については、特にしっかりと技術を身につける必要があります。
最低限、以下の6点はしっかりと行える必要があります。
訪問看護に所属する理学療法士等によるリハビリは、訪問看護業務の一貫です。そのため、訪問先で観察した利用者さんの状態変化は看護師と共有し、安全に考慮した上で看護師と協働して支援を実施していく必要があります。
実際のリハビリ
訪問看護は、「訪問看護計画書」を必ず作成し、利用者さんに同意を得て進めていきます。
この「訪問看護計画書」は、目標を立てて、それを達成するための問題点を列挙し、それに対する解決策を記載します。
一般社団法人全国訪問看護事業協会「訪問看護事業所における看護職員と理学療法士等の より良い連携のための手引き」より引用
各利用者さんにおいて、目標や問題点はもちろん違います。
それぞれの機能的な問題点に対して、リハビリでは、筋緊張を緩和させたり、筋力増強や動作練習を実施します。
利用者さんがどうなりたいか、現状がどの程度で、何が必要なのかを明確にして、お伝えしていくことで、利用者さんは不満なく進めることが多いです。
ここで、具体的な症例でのリハビリ例を以下に挙げてみます。
脳梗塞左片麻痺で、奥さまの介助なしではトイレ動作ができない方
HOPE:トイレ動作を1人でできるようになりたい
NEED:立位での下肢の踏みかえ動作
短期目標(1か月):左下肢の支持性向上、体幹機能賦活、左側の注意機能向上、立位バランス向上
問題点及び解決策
・神経筋促通療法や徒手療法を利用して、神経の賦活をしていき、筋使用の再学習を図る。
・代償動作の獲得により、左上下肢の動きを補助する。
・筋緊張調整のため、リラクセーションやストレッチを実施する。
・装具作成の検討
・体幹の筋出力向上目的に座位でのプッシュアップ練習
・臥位での腹式呼吸や重錘を使用しての体幹筋賦活練習
・立ち上がりや着座の際の動作学習
・各動作のポイントとなる場所に色付のビニールテープで印をつける⇒意識付け
・机上での注意機能トレーニング
・自己肯定感を向上させるために繰り返し動作学習
・できること、できないことを明確にして、良いところは伸ばすようにして、良くない部分は、原因を細分化して、利用者さんに理解してもらいながら進める
まとめ
今回は、訪問看護におけるリハビリの内容をお伝えしました。
訪問看護に所属する理学療法士等によるリハビリは、訪問看護業務の一貫です。
そのため、訪問先で観察した利用者さんの状態変化は看護師と共有し安全に考慮した上で看護師と協働して支援を計画していく必要があります。
それに付随して、専門的見地から、PT・OT・STでのトレーニングをしていきます。
そして、訪問看護計画書に沿って、進めていくことで、利用者さんも現状を理解しながら介入をしてくことができます。
最後に
事業所によってPT・OT・STの雇える人数が変わっていくことから、領域を超えた内容まで実施することもあり、大変と思う人もいると思います。
しかし、リスク管理を抑えて、自分で学んでいく姿勢のある方であれば、技術・経験を積んでいけることから、先に活きる職業とも言えます。
今後、ご自身で独立してやっていきたい方は、多くの経験が自分の力となり、ステーションの体制を考えていくことが、より明確になります。
是非、訪問を通して、利用者さんの住み慣れた地域を活性化させていきましょう。
・血圧
・脈拍
・酸素飽和度
・肺副雑音
・腸の蠕動音