
多くの経営者や人事の方々から、スタッフが立て続けに辞めてしまう、求人にコストがかかりすぎる、人員不足により業績が伸び悩んでいる、などという悩みが多く聞かれます。
働く人の大切さを感じてはいますが実際にどのような取り組みをしていけば、人員不足や離職が改善されるのでしょうか?
今回はこの「リテンションマネジメント」に焦点を当て、どのようなことに注意が必要なのかを前後編に分けて解説していきます。
目次
リテンションマネジメントとは
「リテンションマネジメント」とは英語で、
”retention”(維持する・引き留める)と
”management”(管理する)
を組み合わせた言葉です。
一般的には、”顧客との関係を維持し顧客で居続けてもらうための戦略”という意味合いで使われ、
欧米諸国ではすでに「リテンションマネジメント」は人事マネジメントとして広く認知されています。
人事用語としては、”従業員のモチベーションを向上させ、会社と良好な関係性を築いて働き続けてもらうための戦略”を意味します。
つまりリテンションマネジメントとは、「優秀な人材が長く能力を発揮し続けていけるように、労働環境を整える」ための、具体的な施策のことです。
リテンションマネジメントが必要な背景
世界的な経済悪化に伴う不安感や、自然災害や新型コロナウイルス感染症などの様々な社会環境の変化から、雇用の流動化がより進んでいく時代を迎えています。
さらに2018年6月に成立し、2019年4月から施行が始まった働き方改革関連法。
ワークライフバランスを重要視したり、個人がそれぞれの生活の質の向上を求めはじめ、働く環境や、自分がそこで何を得られるか、ということを人々が考え始めています。
これまでのような人と会社との関係性が大きく変化し、置かれている状況に応じて自分に適した仕事や環境、条件を求めて転職をする、という選択肢が一般的になりつつあります。
昨今、転職先が豊富にある医療介護業界でも顕著にその兆候が表れています。
このような背景から、企業の魅力を高めて人材流出を引き留める「リテンションマネジメント」が重要になってきます。
リテンションマネジメントが有効な従業員
リテンションマネジメントは、自己実現欲求の高い若手のモチベーション向上に効果があり、特に優秀な職員に有効な施策です。
訪問看護の現場では、”一通り問題なく仕事をこなせる職員や、そのポテンシャルがある職員”を対象に加えてもよいでしょう。
今後の会社の発展を担い、経営・運営の安定化につながる職員の雇用の継続に大きな効果を発揮します。
「働かせてもらう」時代から、「働き方を選ぶ」時代へ
医療・介護業界は超売り手市場であり、働き手の確保は大変重要です。
訪問看護では特に、看護師の人員確保が経営の安定化に直結しているデータは多く、最重要事項のひとつと考えられます。
職員には「働かせてもらう」という意識がほとんどないと言ってよい状態になっているのです。
他にも働く場所の選択肢があるわけですから、経験が多く、いわゆる「できる人」ほど、職場と自分のライフスタイルの相性が悪ければ離れていってしまいます。
企業は必要な人材の流出を食い止めるために、給与や福利厚生などの待遇面の充実や、企業自体の魅力を高めるなど、働く人にとっての幸福感を高めていく必要があるのです。
訪問看護にはリテンションマネジメントが重要
人材の流出による損失の大きさは訪問看護ステーションのような小規模事業では一人の看護師を失うことは大打撃。
新しい職員を急いで採用したとしても、利用者さんの引継ぎはすぐにできるものではないので、育成にも時間がかかってしまいます。
スピーディーで法制度にも変化の多い社会環境の中で成長し続けていくため、採用した人材には継続的に活躍してもらう必要があります。
そのような背景から、リテンションマネジメントは重要なのです。
リテンションマネジメントに取り組むメリット
職員とのエンゲージメントの向上
会社がよい職場環境を提供できずに一人の職員が退職してしまうことになれば、その補填のために他の職員に負担がかかってしまい、さらなる退職希望者が出ることに繋がってしまう可能性もあります。
既存の職員の待遇面や研修に投資し、成長を促すことによって会社と職員とのエンゲージメントの向上を図ることができます。
採用コストの軽減
優秀な人材を積極的に採用すること自体が非常に困難な時代。
まず人材を確保するということ自体に、求人サイトや紹介会社を使うなど大きなコストと時間がかかります。
さらに採用した職員が早期に退職してしまっては投資した時間コストと時間が回収されず、大きな損失になります。
教育コストの軽減
訪問看護では、入職してしばらくは一人で訪問せず、OJT・同行研修という形をとる事業所が多いため、研修中1回の訪問に対して看護師やセラピスト2人分のコストがかかってしまいます。
独り立ちしてからが売り上げに関わる労働になってきますので、事業拡大を伴わない職員の入れ替えは人件費が増してしまいます。
採用した人材をしっかりと教育して大切にし、辞めさせないことは会社にとって経営面で非常に重要な課題です。
生産性の向上
自立した職員が増えると、作業の効率化が進み、生産性が向上します。
自分で判断して対応できることから、管理者や他スタッフに余裕が生まれます。
全体的な仕事に目が届くようになることから、空き時間を有効活用して業務の効率化や、忙しい職員の業務の補助などにも繋がります。
また、外部の病院や診療所、包括支援センターなどとの関りも深くなってくることから信頼が得られ、新規の依頼なども増えてきますので良い循環が生まれます。

リテンションマネジメントとはどんなものか、そして人事管理にいかに重要な考え方かということが分かっていただけたかと思います。
次回の後編では、リテンションマネジメントを実際にどのように行っていくかをお話していきます。
























みなさんはリテンションマネジメントという言葉をご存じでしょうか?
リテンション”retention”とは、従業員(顧客)の”維持”・”引き留め”を意味します。