「難病や末期がんの利用者さんを、ご家族の負担を減らしながら安心して通わせられる場所がない」——訪問看護の現場でこうした声を耳にしたことはないでしょうか。医療依存度が高い利用者は、一般的な通所介護(デイサービス)の受け入れが難しく、在宅生活の継続を諦めざるを得ないケースも少なくありません。
そこで知っておきたいのが「療養通所介護」です。看護師が中心となって医療ニーズの高い利用者を受け入れる、地域密着型の通所サービスで、訪問看護ステーションとの親和性が非常に高い制度でもあります。この記事では、療養通所介護の対象者・人員基準・報酬体系から、訪問看護ステーションとの関係まで、厚生労働省の資料をもとに解説します。
- 療養通所介護の対象者と、一般的な通所介護との違い
- 人員基準・定員・設備基準の具体的な内容
- 基本報酬・加算・減算の仕組み
- 訪問看護ステーションと療養通所介護の関係、併設のメリット
目次
療養通所介護とは?
療養通所介護とは、難病等を有する重度要介護者や末期の悪性腫瘍(がん末期)の利用者であって、サービス提供にあたり常時看護師による観察が必要な方を対象とする、地域密着型の通所介護サービスです。難病、認知症、脳血管疾患後遺症等を有する重度者やがん末期の利用者が主な対象として想定されています。
通所介護計画(療養通所介護計画)に基づき、入浴・排せつ・食事等の介護その他の日常生活上の世話および機能訓練を行うことで、利用者の社会的孤立感の解消、心身機能の維持、そして家族の身体的・精神的負担の軽減を図ることを目的としています。一般的な通所介護(デイサービス)では受け入れが難しい医療依存度の高い利用者を、看護師主体の体制で受け入れられる点が最大の特徴です。

人工呼吸器を使っている方や、頻繁な吸引が必要な方でも通所できる場があるというのは、ご本人にとってもご家族にとっても大きな支えになりますね。

療養通所介護の人員基準・定員・設備基準
療養通所介護は、看護師が中心となって運営される点が最大の特徴です。人員・定員・設備の基準は次のとおりです。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 看護職員・介護職員 | 提供時間帯を通じて、利用者の数が1.5人に対し専従の従業者が1人以上(うち1人以上は専従の常勤看護師) |
| 管理者 | 専従の常勤看護師(管理業務に支障がなければ同一敷地内の他事業所等との兼務可) |
| 利用定員 | 18人以下 |
| 専用の部屋 | 利用者1人につき6.4平方メートル以上。他の部屋等から完全に区分・遮断されていること |
この定員基準は制度創設以来、段階的に見直されてきました。平成18年の創設当初は定員5人からのスタートでしたが、医療・介護ニーズを併せ持つ利用者の増加を背景に、平成21年に8人、平成24年に9人へと引き上げられ、平成30年には地域共生社会の実現に向けた取り組みを推進する観点から現行の18人以下に見直されています。
療養通所介護は平成28年4月から「地域密着型通所介護」の一類型として位置づけられています。地域密着型サービスであるため、原則として事業所が所在する市町村の被保険者のみが利用対象となる点に留意が必要です(他市町村の利用者を受け入れる場合は市町村間の協議・同意等の手続きが必要になります)。
療養通所介護の報酬体系
療養通所介護の報酬は、令和3年度介護報酬改定で大きく見直されました。それまでの「3時間以上6時間未満」「6時間以上8時間未満」といった時間区分ごとの日単位報酬から、月単位の包括報酬に一本化されています。これは、医療と介護の両方のニーズを持つ中重度の要介護者の状態やニーズに合わせた柔軟なサービス提供を図る観点からの見直しです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 基本報酬 | 12,691単位/月(療養通所介護費) |
| 入浴介助を行わない場合 | 所定単位数の95/100に減算 |
| サービス提供量が過少な場合 | 登録者1人あたり平均利用回数が月5回未満の場合、所定単位数の70/100に減算 |
| 定員超過・人員基準違反の場合 | 所定単位数の70/100に減算 |
| 中山間地域等でのサービス提供 | 所定単位数に5%加算 |
| サービス提供体制強化加算Ⅲ | (イ)48単位/月・(ロ)24単位/月 |
| 口腔・栄養スクリーニング加算 | 20単位/回(6か月に1回を限度) |
このほか、介護職員等処遇改善加算をはじめとする処遇改善系の加算も算定対象です。処遇改善加算の区分・加算率は制度改正のたびに見直されるため、算定にあたっては最新の告示・通知を確認するようにしましょう。

療養通所介護の沿革|定員はどう変わってきたか
療養通所介護は平成18年に創設されて以来、医療・介護双方のニーズを持つ利用者の増加を背景に、たびたび制度が見直されてきました。主な変遷は次のとおりです。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 平成18年 | 通所介護における療養通所介護の創設(定員5人) |
| 平成21年 | 利用定員を5人から8人に引き上げ |
| 平成24年 | 利用定員を9人に引き上げ |
| 平成27年 | 入浴介助体制強化加算・個別送迎体制強化加算を新設 |
| 平成28年 | 地域密着型通所介護の一類型に位置づけ |
| 平成30年 | 利用定員を18人に引き上げ(現行の基準) |
| 令和3年 | 日単位の報酬体系から月単位の包括報酬に見直し。ICTを活用した状態確認も一定要件のもとで可能に |
特に令和3年度の見直しでは、長期間状態が安定している利用者について、人材の有効活用を図る観点からICTを活用した状態確認が認められるようになった点も実務上のポイントです。
療養通所介護と類似サービスとの違い
在宅の医療ニーズが高い利用者を支えるサービスには、療養通所介護のほかにも複数の選択肢があります。それぞれの特徴を整理しておきましょう。
| サービス | 特徴 |
|---|---|
| 療養通所介護 | 看護師主体の通所サービス。難病・がん末期等の重度要介護者が対象。定員18人以下 |
| 一般的な通所介護 | 要介護者全般が対象。医療依存度の高い利用者の受け入れ体制は事業所により差が大きい |
| 看護小規模多機能型居宅介護(看多機) | 「通い」「訪問(看護・介護)」「泊まり」を組み合わせて柔軟に提供する複合型サービス |
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、通所に加えて訪問・宿泊まで一体的に提供する点が療養通所介護と異なります。どちらのサービスを選ぶかは、利用者の状態や在宅生活を支える体制全体を踏まえて検討する必要があります。実際に、療養通所介護の今後のあり方について、看多機の機能・役割を踏まえつつ検討していくべきという指摘も審議の場で示されています。

「通いだけでいいのか」「訪問や泊まりも組み合わせたいのか」で選ぶサービスが変わってきます。ケアマネジャーやご家族の希望を丁寧にヒアリングして提案することが大切ですね。
訪問看護ステーションと療養通所介護の関係
療養通所介護の運営にあたっては、利用者の主治医および当該利用者が利用している訪問看護事業者等との密接な連携が求められています。サービス提供にあたっては、主治医による医療保険のサービスや訪問看護サービス等、様々なサービスが提供されている中で、多職種協働により計画的なサービス提供を行うことが基本方針として定められています。
また、療養通所介護は利用日において、事業所の看護職員が利用者の居宅で状態を観察し、通所できる状態であることを確認したうえで送迎を行い、居宅に戻った際にも状態の安定等を確認する、という一連の流れ全体をサービス提供時間として捉える点も特徴的です。看護師による観察が前提となっている制度設計そのものが、訪問看護との親和性の高さを表しているといえます。

訪問看護ステーションが療養通所介護を併設しているケースは実際に多く見られます。看護師の人材やノウハウを活かしやすく、利用者さんにとっても在宅生活の選択肢が広がるという意味で、相性の良い組み合わせだと感じています。
療養通所介護は児童発達支援・放課後等デイサービス等との「共生型」的な定員設定も可能とされています(18歳未満の障害児サービスの利用定員は5名以上で、療養通所介護の定員の枠内で設定する仕組み)。医療的ケア児の受け入れ拡大を検討する事業所にとっても押さえておきたい制度です。
よくある質問
療養通所介護と一般的な通所介護(デイサービス)は何が違いますか?
一般的な通所介護は要介護者全般を対象としますが、療養通所介護は難病等を有する重度要介護者やがん末期の方など、常時看護師による観察が必要な医療依存度の高い利用者を対象とする点が異なります。人員基準でも看護師の配置が重視されており、管理者も専従の常勤看護師であることが求められています。
療養通所介護の利用定員は何人までですか?
利用定員は18人以下です。制度創設当初は5人でしたが、医療・介護ニーズを併せ持つ利用者の増加を背景に段階的に引き上げられ、平成30年の見直しで現行の18人以下となりました。
療養通所介護の報酬はどのような仕組みですか?
令和3年度介護報酬改定により、月単位の包括報酬(基本報酬12,691単位/月)に見直されています。入浴介助を行わない場合やサービス提供量が過少な場合は減算、中山間地域等でのサービス提供では加算が適用されるなど、利用者の状態や事業所の体制に応じた調整が行われます。
療養通所介護は訪問看護ステーションと併設できますか?
併設は可能です。療養通所介護は主治医や訪問看護事業者等との密接な連携が制度上求められており、看護師主体の人員体制であることから、訪問看護ステーションが併設して運営するケースが多く見られます。
報酬・基準は介護報酬改定のたびに見直される可能性があります。実際の算定・運営にあたっては、最新の告示・通知をご確認ください。
まとめ|療養通所介護は看護師主体で医療ニーズに応える通所サービス
療養通所介護は、難病等を有する重度要介護者やがん末期の利用者を、看護師中心の体制で受け入れる地域密着型の通所サービスです。訪問看護との連携が制度上求められていることもあり、訪問看護ステーションにとって併設・連携の選択肢として理解しておく価値があります。
- 対象は難病・認知症・脳血管疾患後遺症等を有する重度者やがん末期の利用者
- 利用定員は18人以下、専従の常勤看護師配置が必須
- 報酬は月単位の包括報酬(基本12,691単位/月)で、入浴介助やサービス提供量に応じて加減算される
- 主治医・訪問看護事業者との密接な連携が制度上求められている
制度の背景を理解したうえで、地域の医療ニーズの高い利用者の受け皿として、療養通所介護の活用や連携を検討してみてはいかがでしょうか。















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