厚生労働省は令和8年9月30日、「医療情報化推進方針」(令和8年厚生労働省告示第370号)を公布し、10月1日から適用しました。方針では、電子カルテ情報共有サービスで共有する情報を「訪問看護指示書・計画書・報告書等」に広げ、2027年度以降の開発・実装を目指すことが示されています。
主治医とのあいだで紙やFAXでやり取りしている書類が、将来は国の仕組みを通じて電子的に共有される方向です。まだ具体的な運用ルールは決まっていませんが、訪問看護ステーションの経営者・管理者が今のうちに押さえておきたいポイントを整理します。
- 「医療情報化推進方針」とは何か(根拠法・対象期間・適用日)
- 訪問看護指示書・計画書・報告書等の電子共有に関する記述と、そのスケジュール
- 介護情報基盤など、訪問看護に関係するほかの取組
- 訪問看護ステーションが今から進めておきたい準備
目次
何が決まったのか(ニュースの概要)
医療情報化推進方針は、医療DXの取組を国としてどう進めるかをまとめた方針です。「地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律」第11条の2第1項にもとづいて定められました。厚生労働省の各局長などの連名で、令和8年9月30日付で都道府県知事・市区町村長・地方厚生(支)局長あてに通知されています。全国訪問看護事業協会・日本訪問看護財団などの関係団体にも、同日付の事務連絡で周知が依頼されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 医療情報化推進方針(令和8年厚生労働省告示第370号) |
| 公布日・適用日 | 令和8年9月30日公布、令和8年10月1日から適用 |
| 根拠 | 地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律 第11条の2第1項 |
| 対象期間(第1期) | 令和8年10月1日〜令和12年3月31日(3年半) |
| 通知 | 医政発0930第1号・老発0930第1号・保発0930第3号ほか(連名) |

この方針は、医療DXの「工程表」に近いものです。訪問看護の点数や算定要件を変えるものではありません。ただ、指示書や報告書のやり取りがどう変わっていくかの方向性が書かれているので、目を通しておく価値があります。
内容の詳細
訪問看護指示書・計画書・報告書等を電子共有の対象へ
方針は、電子カルテ情報共有サービスについて「2026年度冬をめどに、臨床現場等で支障なく運用が可能な文書・情報から、全国で運用を開始する」としています。そのうえで、共有する情報を広げていく方針を示し、介護・看護情報については次のように書いています。
介護・看護情報については、2026年度から介護事業所向けの診療情報提供書の開発及び実装を進め、2027年度以降に訪問看護指示書・計画書・報告書等について開発及び実装することを目指す。
方針の概要資料でも、2027年度の主な取組として「電子カルテ情報共有サービスで共有する情報を『訪問看護指示書・計画書・報告書等』に拡大」が挙げられています。
訪問看護に関係するおもなスケジュール
| 時期 | 取組(方針より) |
|---|---|
| 2026年度 | 電子カルテ情報共有サービスを冬めどに全国で運用開始。介護事業所向けの診療情報提供書の開発・実装を進める。介護情報基盤は、介護保険システムの標準化対応が完了した自治体から順次利用開始。ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の記録として共有すべき項目を検討 |
| 2027年度以降 | 訪問看護指示書・計画書・報告書等の開発・実装を目指す |
| 2028年度めど | 介護情報基盤を全ての自治体で利用開始 |

表現は「2027年度以降に〜目指す」です。2027年度に全国で一斉に始まる、という意味ではありません。開発の順番として、訪問看護の書類が対象に入ったと受け止めるのが正確です。
訪問看護ステーションへの影響
方針に書かれているのは方向性とスケジュールです。訪問看護ステーションがどう受け取り、どう返すのかといった具体的な運用は、まだ示されていません。そのうえで、次の点は経営に関わってきそうです。
- 主治医との書類のやり取り:指示書の受け取りや、計画書・報告書の提出が電子的に行えるようになれば、郵送・FAX・持参の手間や、書類の届く時期のずれが減ることが期待されます
- 記録システムの対応:電子カルテ情報共有サービスとつなぐには、使っている記録・請求システムが対応している必要があります。ベンダーの対応方針が、事業所の選択肢を左右します
- 介護保険側の情報共有:介護情報基盤は、利用者・自治体・介護事業所・医療機関が介護情報を共有するための基盤です。介護保険の訪問看護も、自治体ごとの利用開始時期の影響を受ける可能性があります
- マイナ保険証まわりの環境:方針には、マイナ保険証やオンライン資格確認を利用しやすい環境の整備も盛り込まれています。訪問看護でのオンライン資格確認の運用を、改めて点検しておくとよいでしょう
今回の方針は、電子共有の対象や時期の目安を示したものです。対応が義務になる時期、報酬上の評価、具体的な手順は書かれていません。「2027年度から指示書が電子化される」と言い切らず、今後の厚生労働省の通知や仕様の公表を確認してください。
今からやるべき実務対応
- 指示書・計画書・報告書の流れを書き出す主治医ごとに、指示書をどう受け取り、計画書・報告書をどう送っているか(郵送・FAX・持参など)を一覧にしておくと、電子化されたときの切り替えを判断しやすくなります。
- 記録・請求システムのベンダーに方針を確認する電子カルテ情報共有サービスや介護情報基盤への対応予定を、早めに問い合わせておきましょう。
- オンライン資格確認の運用を点検するマイナ保険証での資格確認が、訪問先で問題なく行えているかを確認します。
- 今後の通知を継続して確認する運用ルールや仕様は、今後の通知などで示されるとみられます。全国訪問看護事業協会や厚生労働省の発信を定期的に確認してください。
訪問看護指示書はいつから電子でやり取りできるようになりますか?
具体的な開始時期は決まっていません。医療情報化推進方針は、電子カルテ情報共有サービスで訪問看護指示書・計画書・報告書等について「2027年度以降に開発及び実装することを目指す」としています。実際の運用開始時期や手順は、今後示される予定です。
医療情報化推進方針で、訪問看護の報酬や算定要件は変わりますか?
この方針は医療DXの進め方を定めたもので、訪問看護の報酬や算定要件を直接変えるものではありません。報酬上の評価は、診療報酬・介護報酬の改定の中で別に議論されます。
医療情報化推進方針の対象期間はいつまでですか?
第1期の対象期間は、令和8年10月1日から令和12年3月31日までの3年半です。
まとめ|訪問看護の書類も「電子共有」の対象に
令和8年9月30日に公布された医療情報化推進方針で、電子カルテ情報共有サービスの共有対象に訪問看護指示書・計画書・報告書等が加わる方向が示されました。運用の詳細はこれからですが、主治医との書類のやり取りが変わっていく前提で、準備を始めておくと安心です。
- 医療情報化推進方針(告示第370号)は令和8年9月30日公布、10月1日から適用
- 第1期の対象期間は令和8年10月〜令和12年3月の3年半
- 訪問看護指示書・計画書・報告書等は「2027年度以降に開発及び実装することを目指す」とされた
- 介護情報基盤は2028年度をめどに全ての自治体での利用開始を目指す
- 具体的な運用ルールや報酬上の扱いは未定のため、今後の通知を確認する必要がある
今のうちに書類の流れを整理し、システムベンダーの対応方針を確認しておくと、仕組みが動き出したときにすぐ対応できます。






















