看多機の機械浴・残薬確認が論点に|第269回介護給付費分科会(R8.10.9)

令和8年10月9日に開かれた第269回社会保障審議会介護給付費分科会で、厚生労働省は令和9年度介護報酬改定に向けて、看護小規模多機能型居宅介護(看多機)と定期巡回・随時対応型訪問介護看護の論点を示しました。看多機では「在宅療養を支える訪問看護提供体制の強化」が論点の1つになり、専門性の高い看護師による地域での相談支援や、利用者宅での残薬確認が取り上げられています。

看多機を運営している、または併設を検討している訪問看護ステーションにとって、今後の報酬の方向性を読むうえで重要な資料です。資料の中身と、経営者・管理者が押さえておきたいポイントを整理します。

この記事でわかること
  • 第269回介護給付費分科会(令和8年10月9日)で議論されたサービスと資料
  • 看多機の3つの論点と、機械浴に関する対応案の中身
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護の論点(夜間対応型訪問介護との統合など)
  • 訪問看護ステーションへの影響と、今から準備しておきたいこと

何が決まったのか(ニュースの概要)

厚生労働省は令和8年10月9日(金)13:00〜16:00、第269回社会保障審議会介護給付費分科会をWeb会議と会場の併用で開催しました。議題は「令和9年度介護報酬改定に向けて(各サービス)」で、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護、小規模多機能型居宅介護、看多機、認知症対応型共同生活介護の4つの資料が示されています。

9月30日の第268回分科会で示された「基本的な視点(案)」を受けて、サービスごとの各論に入った回です。今回の資料は「論点」と一部の「対応案」を示した段階で、単位数や算定要件はまだ決まっていません。

項目内容
会議名第269回社会保障審議会介護給付費分科会
開催日令和8年10月9日(金)13:00〜16:00
議題令和9年度介護報酬改定に向けて(各サービス)
主な資料資料1 定期巡回・随時対応型訪問介護看護及び夜間対応型訪問介護/資料2 小規模多機能型居宅介護/資料3 看護小規模多機能型居宅介護/資料4 認知症対応型共同生活介護
位置づけ論点と対応案の提示。単位数・算定要件は今後の議論で決まる
看護師 上妻
看護師 上妻

看多機の資料には「訪問看護に関する介護給付費分科会において説明及び議論を実施予定」という書き込みもあります。訪問看護そのものの議論はこれからなので、今回は看多機を通して方向性を読む回と考えるとよいでしょう。

内容の詳細

看多機の3つの論点

資料3「看護小規模多機能型居宅介護(改定の方向性)」では、次の3つの論点が示されました。

論点主な内容(資料3より要約)
①利用者のニーズ及びサービス提供の実態を踏まえた評価の見直し機械浴に対応していない事業所が外部の訪問入浴介護を使う場合、1回1万円以上(平均11,376.7円)を看多機事業所が負担していることがある。入浴サービスの評価のあり方、身寄りのない独居高齢者を支えるための地域資源との連携、区域外でサービス提供する事業所の評価、利用者数が急に減った場合の人員配置基準の「前年度の平均値」の解釈などが論点
②在宅療養を支える訪問看護提供体制の強化専門性の高い看護師が、認知症の利用者への支援などについて地域での相談支援も担っていることをどう考えるか。令和8年度診療報酬改定で残薬の確認と医師・薬剤師への報告が明記されたことを踏まえ、介護報酬でも利用者宅の残薬を確認したうえで適切な服薬管理を行う方策をどう考えるか
③住まいの形態に合わせたサービス提供に係る報酬の在り方同一建物等の居住者へのサービス提供について、高齢者住まいでの提供実態や経営への影響を踏まえ、住まいの形態に合わせたあり方をどう考えるか

機械浴については「報酬の調整」の対応案

論点①のうち機械浴については、具体的な対応案も示されました。機械浴による入浴を提供できない事業所について、併算定できるサービスを見直したうえで、費用をすべて事業所負担にするのではなく、療養通所介護などの減算方法を参考に、利用者の状態に応じて報酬を調整するという案です。

論点②・③については、資料上「訪問看護に関する分科会」「高齢者住まいに対するサービス提供の在り方に関する分科会」で説明・議論する予定とされています。

関係団体からの要望

資料には、9月の関係団体等意見交換会で日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会が出した要望も整理されています。

  • 病院で働く看護職員との賃金格差が広がっているため、処遇改善加算等による賃金上昇分を本体報酬に溶け込ませること
  • 看多機の短期利用は重度のケースが多いのに、報酬が小規模多機能型居宅介護より低いため、実態に即した評価にすること
  • 認知症看護・ケアの専門研修を修了した看護師の取組を、現行の専門管理加算の対象とするなどの検討

定期巡回・随時対応型訪問介護看護の論点

資料1では、定期巡回・随時対応型訪問介護看護について次の点が論点になりました。

  • 夜間対応型訪問介護との統合:令和11年3月までの猶予期間に、夜間対応型訪問介護から円滑に移行するための体制づくり。対応案として、定期巡回(Ⅲ)で24時間の通報・相談対応機能を確保し、日中の支援を行う事業所の取組を新たに評価する案が示された
  • 新規開設時の配置基準:開設直後で利用者の確保が難しい場合などに、訪問介護員等の配置基準を見直す案
  • 区域外のサービス提供・同一建物等への提供:区域外で多様なサービスを提供する事業所の評価や、住まいの形態に合わせた報酬のあり方
看護師 上妻
看護師 上妻

残薬確認は、令和8年度の診療報酬改定で医療保険の訪問看護に入った考え方です。介護保険側にも同じ流れが来るかが、今後の訪問看護の議論でも注目点になりそうです。

訪問看護ステーションへの影響

今回は看多機と定期巡回の資料ですが、訪問看護ステーションの経営にも関係する記述があります。

  • 残薬確認・服薬管理の評価:看多機の論点として、利用者宅の残薬確認を介護報酬でどう扱うかが示されました。訪問看護の議論でも同様のテーマが出る可能性があります
  • 専門性の高い看護師の評価:認知症ケア等の専門研修を修了した看護師の地域での役割が論点になり、団体からは専門管理加算の対象拡大も要望されています
  • 看多機を運営する法人:機械浴を提供できない場合の報酬調整(減算的な扱い)の案が示されており、入浴の提供体制によって影響が出る可能性があります
  • 定期巡回と連携している事業所:夜間対応型訪問介護との統合に向けて定期巡回の体制評価が見直される方向で、連携先の体制が変わる可能性があります
  • 住まいの形態による報酬:同一建物等への提供は看多機・定期巡回の両方で論点になっており、高齢者住まいへの訪問が多い事業所は今後の議論を注視する必要があります
注意

今回示されたのは論点と対応案で、決定事項ではありません。看多機・定期巡回・訪問看護の単位数や算定要件は、今後の分科会の議論、審議報告、告示などを経て決まります。

今からやるべき実務対応

  1. 残薬確認・服薬管理の実施状況を記録する利用者宅での残薬確認や、主治医・薬剤師への報告をどの程度行っているかを、記録として残しておきましょう。評価の議論が具体化したときに、自事業所の実績をすぐ確認できます。
  2. 専門資格・研修修了者を整理する認知症ケアなどの専門研修を修了した看護師の人数と、地域での相談支援などの活動実績をまとめておくと、評価の見直しに対応しやすくなります。
  3. 看多機を運営する場合は入浴の提供体制を確認する機械浴の有無や、外部の訪問入浴介護を使ったときの費用負担を把握しておきましょう。
  4. 訪問看護をテーマにした分科会の開催を確認する訪問看護単独の議論は今後の回で行われます。資料は厚生労働省の分科会ページに掲載されます。
第269回介護給付費分科会で、看多機の報酬は決まりましたか?

決まっていません。第269回で示されたのは論点と一部の対応案です。看多機の単位数や算定要件は、今後の議論を経て決まります。

看多機の機械浴について、どのような対応案が示されましたか?

機械浴による入浴を提供できない事業所について、併算定できるサービスを見直すとともに、費用のすべてを事業所負担とするのではなく、療養通所介護等の減算方法を参考に、利用者の状態に応じて報酬を調整する案が示されました。

訪問看護の報酬については議論されましたか?

第269回の議題は看多機や定期巡回などで、訪問看護単独の議論は行われていません。看多機の資料には、残薬確認などの論点について「訪問看護に関する介護給付費分科会において説明及び議論を実施予定」と記載されています。

あわせて読んでおきたい関連記事

訪問看護の業界団体が分科会でどのような要望を出したかは、第267回分科会の記事で確認できます。

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まとめ|看多機の議論から訪問看護の論点が見えてきた

第269回介護給付費分科会では、看多機や定期巡回などの各論が始まりました。看多機では機械浴の評価見直しや訪問看護提供体制の強化が論点となり、残薬確認や専門性の高い看護師の役割など、訪問看護の議論にもつながるテーマが示されています。

この記事のまとめ
  • 令和8年10月9日の第269回分科会で、看多機・定期巡回・小多機・グループホームの論点が示された
  • 看多機の論点は「評価の見直し」「訪問看護提供体制の強化」「住まいの形態に合わせた報酬」の3つ
  • 機械浴を提供できない看多機について、報酬を調整する対応案が示された
  • 利用者宅での残薬確認や、専門性の高い看護師の地域での相談支援が論点になった
  • 定期巡回では、夜間対応型訪問介護との統合に向けた新たな評価や、新規開設時の配置基準の見直し案が示された
  • 訪問看護単独の議論は今後の分科会で行われる予定

残薬確認や専門研修修了者の活動を今のうちに記録しておくと、評価の議論が具体化したときにすぐ対応できます。

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令和9年度改定の議論が始まった第263回分科会の内容は、こちらで整理しています。

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上妻 裕弥看護師/MBA取得
株式会社ビジケア代表取締役/看護師・MBA取得。これまで200社以上の訪問看護事業所へ経営コンサルティング・BPOサービスを実施。経営者・管理者のサロン等も含めると500社を超える。単月黒字化から複数拠点展開、事業承継まで支援し、看護師の視点で「続く経営」をつくる。別法人にて自身でも全国に訪問看護ステーション展開している。