令和8年8月28日、厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会(第263回)が開催され、令和9年度介護報酬改定に向けた議論がスタートしました。
初回のテーマは介護職員等の処遇改善、介護現場の生産性向上、高齢者虐待の防止、災害時の業務継続(BCP)、ハラスメント対策の5つ。中でも処遇改善は、令和8年度の期中改定で訪問看護にも加算が新設されたばかりということもあり、次期改定に向けた最初の論点として大きく取り上げられました。
- 第263回介護給付費分科会(8月28日開催)で何が議論されたか
- 介護職員の賃金は全産業平均とどれだけ差があるか(厚労省データ)
- 令和9年度改定に向けて処遇改善がどう論点になっているか
- 訪問看護ステーションとして今後どう情報をウォッチすべきか
目次
何が決まったのか(会議の概要)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開催日 | 令和8年8月28日(金)14:00〜16:00 |
| 会議名 | 第263回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議) |
| 主なテーマ | 令和9年度介護報酬改定に向けて(①処遇改善等 ②生産性向上等 ③高齢者虐待防止・リスクマネジメント ④業務継続(BCP) ⑤ハラスメント対策) |
| 位置づけ | 令和9年度介護報酬改定に向けた議論の初回。今回は決定事項ではなく、厚労省事務局が示した論点をもとに委員が議論する回 |
今回はまだ結論が出る段階ではなく、事務局(厚労省老健局)が現状データと論点を提示し、委員が意見を述べる「たたき台」の回にあたります。議事録は本稿執筆時点(8月30日)ではまだ公開されていません。

介護報酬改定の議論は、こうした分科会での「論点提示→委員の議論→審議報告」という流れを経て、最終的に改定内容が固まっていきます。今回はまさにそのスタート地点ですね。
内容の詳細|処遇改善はどこまで進み、何が論点になっているか
厚労省が示した資料では、まず現状のデータが整理されています。令和7年賃金構造基本統計調査によると、賞与込み給与(月額換算)は次のとおりです。
| 区分 | 賞与込み給与(令和7年) |
|---|---|
| 全産業平均(産業計・役職者抜き) | 39.6万円 |
| 全産業平均(100人未満企業・役職者抜き) | 36.9万円 |
| 介護職員 | 30.3万円 |
介護職員の賃金は、産業計の全産業平均と比べて月9万円超の差があります。累次の処遇改善の取組で改善は進んでいるものの、依然として差が残っている状況です(厚労省資料より。100人未満企業との比較でも約6.6万円の差)。
この差を踏まえ、令和8年度は「令和9年度改定を待たない期中改定」として、介護職員のみならず介護従事者を対象に月1.0万円(3.3%)の賃上げ措置に加え、生産性向上や協働化に取り組む事業者ではさらに月0.7万円(2.4%)を上乗せする措置(合計最大月1.9万円・6.3%、定期昇給0.2万円込み)がすでに実施されています。あわせて、これまで処遇改善加算の対象外だった訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援・介護予防支援にも、新たに処遇改善加算が創設されました。
今回の分科会で厚労省が示した論点は、大きく次の3点に整理できます。
- 他職種と遜色ない処遇改善に向けて、令和9年度改定でどのような方策をとるべきか
- 処遇改善加算Ⅰ・Ⅱの取得状況の進展を踏まえ、持続的な賃上げと事業所の事務負担軽減をどう両立させるか
- 加算の種類・取得要件が複雑化している中、利用者のわかりやすさや事業者の事務負担軽減の観点から報酬体系を簡素化できないか
複数の報道では、委員から全産業平均との賃金格差是正に向けた大幅な処遇改善を求める意見が出たと伝えられていますが、正式な議事録は本稿執筆時点で未公開のため、発言の詳細は今後の続報で確認する必要があります。

訪問看護は令和8年度改定でようやく処遇改善加算の対象になったばかりなので、次の令和9年度改定でこの加算がどう扱われるかは特に気になるところです。
このほか、資料2〜5では以下の論点も示されています。
| 議題 | 主な内容 |
|---|---|
| 生産性向上等の推進 | 介護テクノロジー活用やタスクシフトによる業務効率化を、令和6年度改定に続きどう評価していくか |
| 高齢者虐待防止・リスクマネジメント | 虐待防止の取組状況を踏まえた今後の対応 |
| 業務継続(BCP)の強化 | 令和6年度改定で導入されたBCP未策定減算(研修・訓練は入所年2回以上、通所・訪問は年1回以上)の実施状況を踏まえた対応 |
| ハラスメント対策 | 介護現場におけるハラスメント対策の状況を踏まえた今後の対応 |
訪問看護ステーションへの影響
訪問看護は令和8年度の期中改定で初めて処遇改善加算の対象になりました。今回の議論は、この加算が令和9年度改定でどう見直されるか(拡充されるのか、取得要件が変わるのか)を左右する起点にあたります。人員基準や生産性向上、BCPの評価も、訪問系サービスの経営に直結するテーマです。
- 訪問看護向けに新設されたばかりの処遇改善加算が、次期改定でどう変わるかはまだ未確定
- 「加算の複雑化・事務負担」も論点に上がっており、今後の要件見直し・簡素化の動きに注目
- BCPの研修・訓練実施状況(訪問系は年1回以上)は、すでに義務化・減算対象になっている点を再確認しておく
今回はあくまで論点の提示段階であり、具体的な加算率や要件が決まったわけではありません。「処遇改善が拡充される」といった断定的な情報が出回っても、正式な審議報告・パブリックコメントの前に方針が固まることはないため、続報を待って判断してください。
今からやるべき実務対応
- 自事業所の処遇改善加算の取得状況を確認する令和8年度改定で新設された訪問看護向けの処遇改善加算について、自事業所がどの区分を取得しているか、賃金改善の実績報告が漏れなく行われているかを確認する。
- BCP(業務継続計画)の整備・研修実施状況を確認する訪問系サービスは年1回以上の研修・訓練が求められている。未実施であれば減算対象となるため、早めに実施状況を点検する。
- 介護給付費分科会の続報を継続的にウォッチする令和9年度改定に向けた議論は今後も複数回にわたって行われる見込み。処遇改善加算の見直し方向性が具体化した段階で、経営計画への反映を検討する。
今回の会議で処遇改善加算の内容が変わったのですか?
いいえ、今回は令和9年度介護報酬改定に向けた論点の提示・議論の段階であり、加算の内容や要件が変更されたわけではありません。訪問看護向けの処遇改善加算は令和8年度の期中改定ですでに新設されており、その運用状況を踏まえて次期改定でどう見直すかが今後の論点になります。
介護職員の賃金は全産業平均とどれくらい差がありますか?
厚労省の令和7年賃金構造基本統計調査によると、賞与込み給与(月額換算)は全産業平均(産業計・役職者抜き)が39.6万円であるのに対し、介護職員は30.3万円で、約9.3万円の差があります。100人未満企業の全産業平均(36.9万円)と比べても約6.6万円の差があります。
次の情報はいつ頃出そうですか?
介護給付費分科会は令和9年度改定に向けて今後も複数回開催される見込みです。今回の議事録の公開や、次回以降の分科会での論点の具体化にあわせて続報が出ると考えられるため、継続してのウォッチをおすすめします。
まとめ|令和9年度改定の議論はまだ序盤、処遇改善の続報に注目
第263回介護給付費分科会は、令和9年度介護報酬改定に向けた議論のスタート地点にすぎません。ただし、訪問看護にとっては令和8年度に新設されたばかりの処遇改善加算の今後を左右する重要な議論であり、継続的なウォッチが欠かせません。
- 8月28日開催の第263回介護給付費分科会で、令和9年度介護報酬改定に向けた議論がスタート
- 介護職員の賃金は全産業平均より月9万円超(100人未満企業比でも約6.6万円)低く、処遇改善が最大の論点
- 訪問看護向けの処遇改善加算(令和8年度新設)の今後の見直し方向性はまだ未確定
- 生産性向上・虐待防止・BCP・ハラスメント対策も継続審議中のテーマ
具体的な加算率や要件は今後の分科会・審議報告で固まっていくため、続報を継続的に確認していきましょう。























