独立行政法人福祉医療機構(WAM)は、貸付利率を令和8年7月1日以降の貸付けから改定しました。設備資金や運転資金の借入・借換えを検討している訪問看護ステーションの経営者・管理者にとっては、金利水準を左右する見逃せない情報です。
結論から言うと、今回の改定は償還期間が長い区分を中心に最大0.1%引き下げられ、短期の区分や経営資金・運転資金の多くは据え置きとなっています。本記事では通知の内容を整理し、訪問看護ステーションの資金調達にどう関わるかを解説します。
- WAM貸付利率改定の概要と適用開始日
- 改定前後の利率の変化(区分ごとの一覧)
- 訪問看護ステーションの資金調達への影響
- 借入・借換えを検討する際に今すぐ確認すべきこと
目次
何が決まったのか(ニュースの概要)
WAM(理事長:松縄正)は令和8年6月29日付の通知「企企第0629001号」により、貸付利率の変更を発表しました。改定後の利率は令和8年7月1日以降に実行される貸付けから適用されます。対象となるのは、社会福祉施設・介護施設向けの「福祉貸付」と、病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院・訪問看護事業所などが利用する「医療貸付」の両方です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発出元 | 独立行政法人福祉医療機構(WAM) |
| 通知日 | 令和8年6月29日(企企第0629001号) |
| 適用開始日 | 令和8年7月1日以降の貸付けから |
| 対象 | 福祉貸付・医療貸付(固定金利貸付/10年経過毎金利見直し貸付/経営資金等) |
| 周知元 | 一般社団法人全国訪問看護事業協会(会員向け周知) |

WAMの貸付利率は年に数回見直されるものなので、「またか」と思う方もいるかもしれませんね。でも借入や借換えのタイミングと重なると資金計画に直結するので、7月1日という適用日はしっかり押さえておきましょう。
内容の詳細|改定前後の利率
今回の通知で「変更前→変更後」が明示されているのは、福祉貸付(社会福祉事業施設・介護関連施設・営利法人等が行う認知症高齢者GH等)と、医療貸付のうち病院・診療所(新築・甲種増改築、乙種増改築)・介護老人保健施設・介護医療院です。傾向としては、償還期間11年超〜30年以内あたりの区分で0.1%前後の引き下げが多く、10年以内の短期区分は据え置きとなっています。代表的な区分の例は次のとおりです。
| 資金・区分(固定金利貸付) | 償還期間 | 変更前 | 変更後 |
|---|---|---|---|
| 介護老人保健施設・介護医療院 | 10年以内 | 2.600% | 2.600%(据置) |
| 介護老人保健施設・介護医療院 | 18年超19年以内 | 3.300% | 3.200% |
| 福祉貸付・介護関連施設 | 18年超19年以内 | 3.300% | 3.200% |
| 病院・診療所(乙種増改築) | 10年超11年以内 | 3.100% | 3.000% |
そのほか、経営資金・運転資金など短期の資金は多くが据え置きです。訪問看護ステーションの経営に関わりが深いものを抜粋すると、次のようになっています。
| 資金の種類 | 償還期間 | 変更前 | 変更後 |
|---|---|---|---|
| 経営資金(福祉貸付) | 5年以内 | 2.800% | 2.800%(据置) |
| 長期運転資金(医療貸付) | 3年以内 | 2.800% | 2.800%(据置) |
| 機械購入資金(医療貸付) | 5年以内 | 2.800% | 2.800%(据置) |
| 働き方改革支援資金(医療貸付) | 10年以内 | 2.900% | 2.900%(据置) |
| 経営資本強化資金(資本性劣後ローン) | 5年1月 | 3.200% | 3.100% |
訪問看護ステーションが医療貸付を利用する場合の代表区分「指定訪問看護事業」(償還期間7年以内)は、令和8年7月1日時点の主要貸付利率表では年3.000%となっています。今回の通知本体の比較表には区分として掲載されていないため、他の10年以内の短期区分と同様に据置き傾向にあると考えられますが、実際の適用利率は必ずWAMの窓口・金利情報ページで最新の数値を確認してください。
訪問看護ステーションへの影響
訪問看護ステーションの多くは、開設時の設備資金や運転資金を福祉医療機構・日本政策金融公庫・民間金融機関からの借入でまかなっています。WAMの利率は民間金融機関より低めに設定されている区分が多く、開設資金や増改築資金の借入先として選ばれやすいため、利率改定は資金計画への影響が小さくありません。
今回の改定は引き下げ方向の区分が中心のため、これから長期の借入・借換えを予定している法人にとってはややプラスに働く可能性があります。一方で、経営資金・長期運転資金など日常的な資金繰りに使う短期資金の多くは据え置きのため、既存の借入条件が大きく変わるわけではありません。

「利率が下がった=すぐ借りるべき」ではなく、あくまで自法人の資金計画・返済能力に照らして判断することが大切です。特に長期の設備資金は、償還期間によって適用利率が細かく分かれているので、見積り段階で担当窓口に試算してもらうのがおすすめです。
今からやるべき実務対応
- 自法人が利用中・検討中の資金区分を確認する福祉貸付か医療貸付か、償還期間は何年かによって適用利率が異なります。まずは自法人がどの区分に該当するかを整理しましょう。
- WAMホームページの最新金利情報で数値を確認する本記事の数値は令和8年7月1日改定分の抜粋です。実際の借入手続きの前には、必ずWAM公式サイトの金利情報ページで最新の利率表(福祉貸付・医療貸付・代理貸付)を確認してください。
- 借換え・新規借入のタイミングを検討する長期の設備資金を予定している場合は、引き下げられた区分に該当するかどうかを担当窓口に相談し、資金計画に反映しましょう。
- 顧問の金融機関・社労士・税理士と資金繰りを共有するWAMの利率だけでなく、民間金融機関や日本政策金融公庫の条件とも比較したうえで、総合的に借入先を判断することが重要です。
保証人不要制度を利用する場合は、福祉貸付で「上記利率+0.050%」、医療貸付で「上記利率+0.150%」が上乗せされます。実際の借入条件は施設の種類・整備内容・優遇措置の有無によって異なるため、必ずWAMの担当窓口で個別に確認してください。
訪問看護ステーションの開設・運営にかかる資金の全体像を知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
訪問看護ステーションの開設にかかる費用ってどれくらい!?を読むまとめ|資金計画は最新の金利情報を必ず確認して
WAMの貸付利率は令和8年7月1日から改定され、長期の設備資金を中心に引き下げが行われました。一方で経営資金・運転資金など短期の資金は据え置きが多く、訪問看護ステーションの日常的な資金繰りへの直接的な影響は限定的です。
- WAM貸付利率は令和8年7月1日以降の貸付けから改定
- 償還期間の長い区分を中心に最大0.1%の引き下げ、短期区分は据置きが中心
- 訪問看護事業の借入は「指定訪問看護事業」区分(7年以内・3.000%)が目安
- 借入・借換えの前には必ずWAM公式サイトで最新利率を確認する
設備投資や資金繰りを検討中のステーションは、この機会に借入条件を見直してみましょう。
よくある質問
WAMの貸付利率はいつから変わりますか?
令和8年7月1日以降に実行される貸付けから、改定後の利率が適用されます。それ以前に契約済みの貸付けの利率がさかのぼって変わるものではありません。
訪問看護ステーションが使える資金区分はどれですか?
医療貸付の「指定訪問看護事業」区分(償還期間7年以内)が代表的な資金区分です。ただし法人形態や整備内容によって利用できる資金区分は異なるため、詳細はWAMの担当窓口で確認してください。
今回の改定ですべての利率が下がったのですか?
いいえ。償還期間が長い一部の区分では利率が引き下げられましたが、経営資金・長期運転資金・機械購入資金など短期の資金の多くは据え置きです。区分ごとに変更内容が異なるため、個別の確認が必要です。
正確な利率はどこで確認できますか?
WAM公式サイトの「金利情報」ページに、福祉貸付・医療貸付・代理貸付それぞれの最新利率表(PDF)が掲載されています。借入手続きの前には必ず最新の数値を確認してください。



















